今日はお姉ちゃんの応援! 須賀咲ちゃんです!

 日本代表レベルの実力を持つお姉ちゃんともなれば、マネージャーやスポンサーも本気。

 私たちの助力なんていらないんだろうけれども、家族の応援は別腹だよね!

 と、言うわけで、今日は私と京ちゃんが現場に行って応援するよ!

 ちなみに、お姉ちゃん特権で控え室にまで入れます。

 試合まで時間がないお姉ちゃんを京ちゃんと行かせたんだけれども、……私が迷子です。

 でも侮る事なかれ! 他の人に聞いて目的地に着くって事を覚えたよ!


 「あ、あの、あの、宮永照の応援のものです……」

 「ああ、噂の家族さん? あっちですよー」


 ……噛まずに言えるのはもう少しかかるかな!

 そもそも、京ちゃんにはちゃんと迷子を連れて行く義務があるんだよ!

 私とお姉ちゃんとお母さんを放置したらどうなるかわかるよね!?

 もー、京ちゃんってばわかってないんだから!


 「京ちゃん、お姉ちゃん。ここー?」

 『ちょっ、ヤバイですって照さん!』

 『そうだよね。奥さんがいるのに嫁さんのお姉ちゃんのお尻を揉みしだくのはまずいよね』

 『照さぁぁん!?』


 え、ちょっと待って何事!?


 「二人とも! 何してるの!」

 「さ、咲!?」

 「見ての通り」

 「照さん!?」

 「ロッカーの中に一緒に入ってお尻を揉みしだかれただけ」

 「マジで勘弁してください!」


 ……ふー、OK。落ち着け咲ちゃん。

 嫁さんは優しいから理由くらいは聞いてあげないとね! 暴力系ヒロインは良くないもんね!

 理由聞いたから許すとは言ってないけど……ね!?


 ………
 ……
 …


 京ちゃんと手を繋いで控え室に入る。

 うん、人の体温って安心する。

 京ちゃんを専属マネージャーにしたいくらい。

 名残惜しいながらも、京ちゃんの手を離す。


 「着きましたね、照さん」

 「うん。京ちゃんのおかげで迷わなかった」

 「いや、照さんの方がここに来てるでしょ。

  なんで俺が案内しているんですか」

 「私はお菓子を食べるのに集中する。

  京ちゃんは私を案内する。

  WIN WINの関係」

 「せめて麻雀に集中してくださいよ!?」

 「今さら麻雀を考えても仕方ない。

  そうプロは甘くはない。

  私は打つべき時に合わせて調整しているから、今日はその結果を出すだけ」

 「おお、格好いいですね」


 ふふん。京ちゃんに褒められた。

 私もお菓子ばかり食べているようで、麻雀の世界に関しては頑張っている。

 何より、プロのライバルたちは高校生の比ではない。

 プロの世界とは、それこそ高校時代に傑出していた魔物が当たり前で、その中でさらに才を見出す世界。

 油断をしてしまえばすぐに喰われる。

 それでも、私は京ちゃんがいる限り負けない。


 「照さん、何やってるんですか」

 「嬉しいから」


 褒められた嬉しさに、クルクルと回ってみる。

 ……あれ、方向が


 「あっ……」

 「照さん!」


 京ちゃんの手が私に伸びる。

 あれ、何が……?


 凄まじい音を立ててロッカーの中に飛び込む私と京ちゃん。

 私に痛みはなく、固く暖かい腕に包まれ、音に反比例した安心感を与えた。


 「痛っ」

 「京ちゃん!?」


 京ちゃんはその分の痛みを一身に背負ったようで、呻き声を上げる。

 大人がロッカーに入ってしまったわけで、入る際に腕や肩、押し付けた際に頭も打ったようだ。

 どうにか外に出ようと思っても、勢いで扉が閉まってしまい、一瞬暗闇に包まれる。


 「えっ」


 ドキッとする、男の子の匂い。

 鍛えられた胸板、体のどこを触っても、咲と違って固い。

 体をギュッと抱きしめられて、少し痛いけれども、その痛みが逆に嬉しい。

 そして、抱きしめられた際に……。


 「あっ」


 お尻を鷲掴みにされて、変な声が出ちゃった……。


 「んっ、ダメ、京ちゃ」

 「……あ、照さん!?」


 意識を混濁させていたのは一瞬だったようで、荒々しく、痛みがないように外に出してくれる京ちゃん。


 「ご、ごめんなさい!」

 「京ちゃん……」


 彼の胸板に頭を乗せる。

 ……チューしちゃダメかな。さすがに咲が怒るかな。


 「ちょっ、ヤバイですって照さん!」


 …
 ……
 ………


 須賀咲ちゃんです。割と怒ってます。

 本気で体が痛そうな京ちゃんにも、飄々としているようでシュンとしているお姉ちゃんにも怒ってます。


 「ラッキースケベはいいとして、いやよくないけれども!

  危ないでしょ!」

 「ご、ごめん」

 「ごめんさい、咲。

  私の不注意で京ちゃんを怪我させてしまった」

 「いや、怪我ってほどじゃ」

 「京ちゃんはちょっと黙ってて!」


 このままだと京ちゃんが下手な言い訳でお姉ちゃんをフォローする。

 本当に女心がわかってないんだから!

 お姉ちゃんに手を伸ばす。怒られると思ったのか、お姉ちゃんがビクッと体を揺らす。


 「京ちゃんじゃなくて、お姉ちゃんも危ないでしょ」

 「咲……」


 それに構わず、ゆっくり抱きしめる。

 京ちゃん、こんな時にフォローされても、お姉ちゃんが余計落ち込んじゃうでしょ?


 「まぁ京ちゃんは頑丈だし体は固いし男臭いし女心わかってないから怪我してもいいとして」


 本当はよくないけど。


 「お姉ちゃんは女の子なんだし、嫁入り前だし、何より、試合前でしょ」

 「咲……」


 全く、お姉ちゃんも自分のことは考えないんだから!

 「うん。ありがとう咲」

 「どーいたしまして。

  京ちゃんは帰ってからお仕置き」

 「えっ」

 「嫁さんのお姉ちゃんのお尻を揉みしだいておいて許されると思ってたの?」

 「ごめんなさい!」


 まぁ、本当は嘘。お仕置きなんてしないけどね。

 せ、狭い場所でお尻を揉みしだくプレイ……い、いや何でもないよ!?


 「咲。この借りは試合で返す」

 「そーこなくちゃ。

  頑張って、お姉ちゃん!」

 「照さん! 応援してます!」

 「ありがとう。

  ……それと、咲」

 「なぁに、お姉ちゃん」


 ? お姉ちゃんが私の耳元に顔を近づける。


 「傷物になったら京ちゃんに貰ってもらうから大丈夫」

 「……またそういうこと言うー!!」


 私が言い返す前にヒラリと身をかわし、控え室を後にするお姉ちゃん。

 ……よろけてるけど、あれは多分ヒラリと身をかわしたかったんだろう。


 「京ちゃん。胸板固くて気持ち良かった。

  お尻くらいならまた今度揉ませてあげる」

 「照さん!?」

 「お姉ちゃん!?」

 「じゃあ、行ってきます」


 お姉ちゃんはこんな時でも、営業スマイルではなく、身内用の表情でVサインを出す。

 うん、お姉ちゃん、頑張れ! カン!