「咲ー。休日どっか出かけようぜー」

 「え。もうちょっと早く言ってよ」

 「どうせいつ言ったって予定ないだろ」

 「失礼な!」

 「なんか予定あんの?」

 「……ないけど」

 「よし、じゃあ駅前に集合な!」


 宮永咲です。今日はやけにテンションの高い京ちゃんに絡まれました。

 全く、京ちゃんも失礼だよ! 私に何も予定がないと思って!

 まぁないんだけどさ……。図書館行ったりするかもしれないじゃん。

 もー! 京ちゃんはいっつもそうなんだから!

 中学の頃から私の意志に関係なくいつも引っ張り回して!

 京ちゃんのハンドボール応援に行かされたり! ゲームセンターに行かされたり!

 ……まぁ、ハンドボールやってる京ちゃんはちょこっとだけ、ほーんのちょっぴり! カッコよかったこともないわけじゃないけどさ。


 「咲ちゃん! 今週末は三人でパフェでも食べに行こうじぇ!」

 「アリですね。

  それにしてもゆーきがタコス以外を提案するのも珍しいですね」

 「私だってたまには女子高生っぽい食べ物を食べるじょ」

 「あー。ごめん。今週末は京ちゃんがどっか行くって無理やり誘ってきてさ」


 ふふーん! 京ちゃんも甘いね! 私にだって予定はあるんだよ!

 もしあと少し遅かったら先に予定が入ってたもんね!

 ……? 二人とも苦々しい目をしてこっちを見てる?


 「咲ちゃん。初デート?」

 「そういえば二人がくっついてから初めての週末ですね」


 え

 初デート?

 そう言えばなんやかんやあって恋人らしいことなんかしてなかったような。

 !?

 え、デート!?

 「咲ちゃん顔真っ赤だじぇ」

 「意識してなかったんですね。

  ……羨ましいです」

 「……私だって羨ましいじょ」


 ちょ、ちょっと待って!

 デ、デートなんてしたことないし、どんな服着ていけばいいのか、どうしたらいいの!?

 し、下着とかもやっぱり気合を入れて……? ま、まだ早いよー!?


 「ど、どどどどうしよう!?」

 「それを私たちに聞くかー」

 「咲さん以上に男っ気がないですよね」

 「だ、だってデートだと思ってなかったんだもん!」

 「あれ? 今までも咲ちゃんは京太郎と出かけてなかったっけ?」

 「あ、あれは別にデートなんかじゃなかったもん!」

 「ゆーき」

 「のどちゃん」

 「「ギルティ」」

 「え、なに、ちょ、やめてぇぇぇ」

 「ええい! 彼氏とデートは乙女の憧れだじぇ!」

 「それに憧れないなんてありえません!」

 「く、くすぐったいよぉ!」


 優希ちゃんはともかく和ちゃんは普段から百合百合レズレズ言ってるのになんでぇー!?

 そんなことより週末どうしたらいいの!?

 と、とりあえず帰ったらどこか服を買いに行って! し、下着も念のため買いに行った方がいいのかな!?




 う、うう。なんだかんだ言って週末がやってきてしまいました。

 あの後、和ちゃんと優希ちゃんが服を選んでくれて、……下着は自分で選んだけれど、ちょっとおめかししました。

 普段化粧なんてほとんどしたことなかったけど、私なりにちょっとだけお化粧もしました。

 京ちゃんとお出かけするなんてそんなに珍しいことじゃないのに、どうしてこんなに緊張するの!?

 心臓の音が聞こえる。こんなに緊張するなんて麻雀どころか、人生で初めてだ。

 家で時間を待つこともできず、30分前なのに集合場所に来ちゃいました。


 「お、おかしいとこないよね!?」


 自分の服や着こなしを見直す。

 こうなると他の人の視線も気になってくる。挙動不審な私をみんなが見ている気がする。

 ちゃんと新しく買った白いワンピースも着たし、値札だって(お父さんが気付いて)取ったし! お母さんから渡されてちょこっと背伸びしたネックレスもつけた!

 ……は! 頑張りすぎて京ちゃんに引かれたらどうしよう!?


 「咲?」

 「うひゃぁ!? きょ、京ちゃん!?」

 「うひゃぁって……。随分早いな。まだ1時間前だぞ」

 「30分前じゃなかったの!?」

 「30分前でも早くないか」


 時計もちゃんと見れてなかった!? は、早くこれたからよかった!

 ……? そう言えば京ちゃんも1時間前って早くない?


 「そ、その。俺は咲が迷子になってないか心配で早く来たんだけどさ」

 「む」


 駅までじゃ迷子にならないよ! ……たぶん。

 ……? 京ちゃんもなんか様子がおかしい。頬をぽりぽりと掻きながら目を逸らす時は嘘をついたり罰が悪い時だ。

 京ちゃんもデート用の格好なのかな。長身だから何を着ても似合ってる。悔しい!


 「……咲、に、似合ってるよ」


 ……

 ………

 え、えへへ。




 その後のデートは緊張しつつもそんなに特別なことはしませんでした。


 「まずはお昼だ。

  イタリアンのお店があるんだけど」

 「そ、そこでいいよー」


 お昼前に集合したのでそんなに高くないところで昼食を取って、……今まで気づかなかったけれど、自然にソファー側を譲ってくれてたんだね。


 「あ、新刊出てる」

 「買うのか?」

 「い、いい。お小遣いないもん」

 「……お、俺が買おうか?」

 「え、いいの?」


 お散歩気分で本屋を回って、……今まで気づかなかったけれど、車道側を歩いてくれてたんだ。

 高校生のデートだからそんなにお金もないし、遠出も出来ないからいつものお出かけの延長線みたいで。

 最初は緊張していたけれど、気付けばいつもみたいに突っかかって、お互いからかいあって、何も変わらない。


 「咲は何頼む?」

 「うーん。私はチョコレートチップがいい」

 「わかった。俺は抹茶を頼むよ」


 3時頃には二人で別々のアイスを頼んで、一休憩。

 普通なら物足りないなんて思うのかもしれないけど、今の私にとっては緊張がほぐれてありがたかった。

 ……でも、ちょっとだけ。


 「甘い」

 「そりゃチョコだからな……!?」


 首を伸ばして京ちゃんの抹茶をいただきます。

 ……えへへ。




 楽しい時間は流れるのが早くて、1時間前に来てデートを始めたのに、もう夕方。

 あまり遅くなっても危ないからと、京ちゃんが私の家に送ってくれることになった。

 デートって、これでいいのかな? あまりいつもとしていることが変わらなかったけれど。


 「その、さ」

 「?」

 「デート。調べたんだけどさ。

  みんなに聞いても、俺たちがいつもしていることをしてるって言ってて」


 ああ。そうか。

 普段私たちがしていることがデートだったからあまり変わらないわけなのか。

 それなら仕方ないよね。

 ……え。


 「!?」

 「……」


 じゃ、じゃあ。普段から恋人みたいなことをしてたってこと!?

 や、やだ。恥ずかしい。京ちゃんの顔が見れない。

 心臓がバクバク言ってる。


 「だから、さ。恋人らしいことをしたいんだ」


 そう言うと京ちゃんはクイッと私の顎を持ち上げた。

 そのまま時が止まってしまったかのように錯覚する。

 とっても近くて、でも離れている距離。

 私は静かに目を閉じた。

 そのあと距離は近づいて、ゼロになった。


 帰り道、デート前よりちょっぴり近づいた距離。

 京ちゃんの左手と、私の右手が繋がっていて。

 手を繋いだことなんていっぱいあったけれど。

 いつもより近くなった距離。

 家の前について、また明日って言うまで何も話せませんでした……。カン!