「さて、準備するか」
「あ、京ちゃん。私も手伝うよ」
「咲は子供の面倒見ててくれ」
どうも、須賀咲ちゃんです。
今日はおとなしいよ! なんたって家族麻雀の日ですから!
最初に京ちゃんが企画した時、お父さんもお母さんも申し訳なさそうな顔でいた。
でも、お姉ちゃんが言ったんだ。
『今こうして家族でいられるんだから、親睦の麻雀をしたっていいと思う。
あと京ちゃんお菓子』
昔の過ちは反省し、これからみんなで仲良くなるための家族麻雀
もちろん何も賭けたりせず、最近あったことなんかを話す近況報告かな。
麻雀で賭けなんて良くないよね? ……精液麻雀? し、知らない!
「今日こそは役満あがるぞー」
「京ちゃんはまず1位目指そうよ」
「うっ……でも照さんと咲がいる卓でそれは」
「お姉ちゃんだって本気でやってないよ。
本気でやってたら私だって勝てないし」
みんな無理して役満狙ったり、好きな役を狙ったりと好き勝手にできる麻雀だ。
麻雀にこんな楽しみ方があるんなんて、思ってもみなかった。
まぁ本気でやったらお姉ちゃんがダントツで、次に私とお母さん、京ちゃんとお父さんで最下位争いだしね……。
「よし、みんな揃った。やりましょう!」
ここに揃ったのは家族みんな。
お父さん、お母さん、お姉ちゃん、京ちゃん、私、子供二人。
ルールはラス抜けで、抜けている人は子供たちと遊ぶってルールだよ!
何試合かやって、みんなそこそこ温まってきたところです。
メンバーは私、京ちゃん、お姉ちゃん、お父さんでの半荘。
「うーん、勝てないな」
「はは……本当に負けてばかりですよ。
惰性で続けてるだけじゃ勝てないんですかね」
「それは違う」
ほのぼのと喋りながらやっていると、お姉ちゃんが真面目な顔をする。
ま、またいいこといって京ちゃんを取る気?
「京ちゃんの麻雀はすごくわかりやすい。
『牌に愛されていない』
これが京ちゃんのオカルト」
「『愛されていない』って……運が悪いってことですか?」
「端的に言えばそう。
不要牌のツモが多いのも、きっとそう」
「それはまぁ……。
反応に困りますね。
運が悪いんじゃどうしようもないですし」
「ちなみにお父さんが弱いのは集中力不足」
「」
あ、お父さんが萎んじゃった。
京ちゃんの方見ても今は京ちゃん忙しいの! 慰めてあげられないよ!
「……ごめんなさい。いきなり変なことを言った」
「いえ! 全然気にしていないですよ!
こうして麻雀うってるの楽しいですし」
「……京ちゃん、ありがとう」
……あ、蚊帳の外に置かれてるうちにお姉ちゃんといい空気になってる!
「しかし牌に愛されるって、どうしたらいいんですかね」
「浮気してみる」
「はは、咲、牌に寝取られちゃうぞ」
むっ……む!!
お姉ちゃんも……お父さんも……好き勝手なこと言って……もー!!!
京ちゃんも京ちゃんだよ!
そんな牌のことじっと見つめてないでさ!
ちょっとこっちきて! ほら、横座って!
「京ちゃんは!
牌に愛されてない代わりに嫁さんに愛されてるからいいの!」
ちゅっ
……もうやだ、死にたい。
恥ずかしくて顔をあげられない……。
せめて人がいないところで、よりにもよって家族の前で……。
お姉ちゃんがポカンとして……いや、その顔はその手があったかって顔だ。だめだよ渡さないよ。
お父さんがニヤニヤしながらこっち見てる……今度飛ばす……。
きょ、京ちゃんは……
「……あ、う」
京ちゃんも真っ赤だ。か、かわいい。
「はい、今日の家族麻雀はここまで。
今日は子供を預かるから、二人でゆっくりしなさい」
「カッコよかったから今回は譲る。私たちが片付けておく」
うえぇぇぇ!?
え、なにこの展開、ちょっと!?
っていうかお姉ちゃん、譲られなくても私のだもん!
「咲、ちょっと休もうか」
「あっ、京ちゃん」
京ちゃんがちょっと強引に私の手を引いて部屋に帰ろうとする。胸がキュンとした。
私たちの部屋に入った途端、後ろから京ちゃんに壁ドンされた。
えっ、なに、ちょっと待って、や、きょうちゃ
……か、かん
最終更新:2015年10月15日 15:57