永水編、宮守編ときたら次はきっと白糸台編……。
ちなみに今度のインタビューのテロップでは須賀照(予定)。
今日は咲の許可を得て京ちゃん独占の日。
忘れもしない。私と京ちゃんが初めてあった日のこと……。
あれは咲と和解して、咲が彼氏を連れてくると言った日だった。
『須賀京太郎です。
その、宮永咲さんとお付き合いをさせてもらっています』
『……そう。
京太郎くん、君が咲にふさわしいかしっかり見させてもらう』
『は、はい!
あとこのゴディバのチョコを挨拶代わりに……』
『京ちゃん。結婚して』
『はいィ!?』
確かに『ハイ』って言ったのを覚えている。うん、言った。
……冗談は置いておく。うん、冗談。
彼は私たちが出来なかった咲の心の隙間を埋めてくれた。
咲と家族になることによって、咲が求めているものを埋めてくれた。
咲から離れていた私に、何か言う資格なんてなかった。
「お義姉さん?」
京ちゃんは卑怯だ。
京ちゃんは咲が声をかけて欲しい時に声をかけてくれる。
お父さんが酔って弱っている時に一緒に酔ってあげる。
こうして私が声をかけて欲しいと思ってるときにも、的確に声をかけるんだから。
「なんでもない」
「なんでもなくないです。
ほら、仏頂面やめて」
むにゅ、と私の頬をつまんで横に伸ばす。
京ちゃん、既婚者がやることじゃないよ?
妹の旦那にそんなことされたら興奮しちゃうよ。
「京ちゃん。私を呼ぶときは照でいい。
『おねえさん』は嫌。それが誕生日プレゼントでいい」
「はぁ……。それでいいならそうします。
というかお義姉……、照さんの誕生日なのに咲のやつどこに行ったんだ」
何を隠そう咲との取引で今日は京ちゃんを独占する日なのだ。
咲が京ちゃんと一緒にいると安心するのがよく分かる。
彼は人を安心させる雰囲気を持っている。麻雀しか知らなかった私にも、咲のついででもいい、こうして人の優しさを教えてくれた。
私はただ、誰かに側にいて欲しかった。
一番いて欲しいときに、父親がいなかったから、父親を求めたんだと思う。
でも今日は『お父さん役』を求めてるわけじゃない。
「照さん?」
後ろから抱きしめる。『あすなろ抱き』と言うらしい。
この格好で耳元で囁くとイチコロだって尭深が言ってた。
……あれ、なんて囁けばいいんだっけ。
いいや、私の思いをそのまま言葉にしよう。
「京ちゃんお菓子」
「ひいぃゃぁぁぁぁ!?」
京ちゃんがすごい勢いで暴れる。くすぐったかったのかな。
確かにこれはイチコロだ。京ちゃんは耳元が弱いんだ。
「照さん、何を……。
まぁいいです。お菓子ですね」
「うん。帰ってきたら膝枕して」
「はいはい」
うむ、満足。
今日はこのまま一日中甘えよう。
営業スマイルだって疲れるんだから、家でくらいこうしていたっていいはず。
……あれ、そう言えば私が借りてる家ってどこだっけ? カン
最終更新:2015年10月05日 18:51