京太郎「なあなあみんな、見てくれよ!」
少年に芽生えたちっぽけな力。
京太郎「んんんんんっ、おりゃ!」
咲「なにそれ、スプーン曲げ?」
優希「あれだけ力んでそれだけとか残念すぎるじぇ」
和「きっと何かのトリックですよ」
部長「うーん、宴会の出し物としてもいまいちかな?」
まこ「こらこら、あんたらそこまでにしときんしゃい」
それは、日常を壊す最後の一歩だった。
京太郎「アンノウン、ですか?」
久「眉唾物の都市伝説だけどね」
まこ「超能力者を襲う化け物か」
和「そ、そんなオカルトありえませんっ」
優希「のどちゃん、声が震えてるじぇ」
咲「あはは……」
超能力者を狙う正体不明の化け物の噂。
この時は、ただの与太話に過ぎなかった。
――――――
京太郎「いつつ……一体何が――」
むせ返るような熱気。
炎に照らされた部室は、まるで異世界のよう。
そして、崩れ落ちた瓦礫に囲まれた少年が見たものは――
京太郎「優希、部長……咲!」
物言わぬ仲間たちの亡骸。
こぼれた水が、再び盆に返ることはない。
和「須賀くん、その姿は……?」
京太郎「なんだよこれ……」
割れたガラス片に映る体に、異形の姿が重なる。
中途半端、不完全な変身。
京太郎「和、俺は……」
和「いやっ、近寄らないで!」
京太郎「待ってくれ!」
和「この、化け物っ!!」
京太郎「――っ」
砕け散った日常。
皮肉にも少女の拒絶が、完全な変身を促す。
――――――
京太郎「……アンノウン」
あてどなく彷徨った街の中で目にしたニュース。
不可解な、人間では不可能な犯罪。
かつて与太話と切り捨てた正体不明の化け物の話。
超能力者と、その身内を狙うという。
京太郎「あ……あぁ、ああぁぁあああ!!」
絶望、苦悩、悲憤、慟哭、そして怨讐。
堰を切ったように流れ出す。
京太郎「全部、殺す……皆殺しだ……!」
京太郎「そして、最後には……」
凍てつく炎のような決意。
その日から、少年の戦いが始まった。
――――――
京太郎「よう、ちょっと俺と遊んでくれよ」
「アギト……!」
京太郎「嫌って言っても遊んでもらうけどな――」
京太郎「――変身」
これは復讐の物語。
仲間を失った少年が、破滅へと向かう物語。
まこ「大丈夫か?」
和「はい……」
まこ「先の事件に加え、京太郎まで行方不明……なんなんじゃろな」
和「……」
『いやっ、近寄らないで!』
『この、化け物っ!!』
和「須賀くん……」
京太郎「死ね、死ね死ね死ね死ねっ!」
京太郎「お前ら全員っ……俺自身も!」
差し伸べられる救いは、あるのか?
続かない
最終更新:2015年10月02日 13:03