帳もすっかり下りて、夜の世界に包まれた公園のベンチに腰掛けると、すっかり心が決まった


月はもうすぐ雲のなかに隠れるだろう、恐らくそのときになる

ちか、ちか、と水銀灯が瞬いている

何故だか、もうすぐ消えるという確信があった



全ては清澄のみんな、そして咲の笑顔のためだった



何の戦力にもならない俺を置いてくれた彼女たちの為に出来ること、

男である俺にしか出来ないこと

それは単純かつ、万死に値する行為だった



「君が涙のときには……僕はポプラの枝になる…」

最近、一人のときにこの歌を口ずさむようになった

その理由はわかっている

俺が始めたのは危ない相手となる高校の女の子たちへ接触することだった

声をかけ、『仲良く』なり、去っていく

これを繰り返した

それだけだが、精神的に不安定にさせるには充分すぎる効果をもたらした



ポケットのなかの携帯電話からメール着信の音が聞こえる

それぞれの高校用に携帯電話を複数持っていたが、いずれも不要になるたびに処分してきた

だが、それでもどこからか俺のアドレスを入手した子がこうして想いをつづった文を送ってくる



豊音『どうして会ってくれないの? さびしいよ……お願い、声だけでも聞かせて』


憧『もう!ケータイかえたなら連絡してよね!これからはちゃんと朝と夜だけでもメールすること!』


恭子『今どこ? すぐ行くから教えて どこにおるの?』


泉『うちが何か悪いことしたなら教えてください 会ってください 切な過ぎてホンマに死にそう』


淡『何で黙ってどっかに行っちゃうの…きょーたろーの笑顔が忘れられないよ……』




こうした俺の『工作活動』は各校内で不和を生み、結果として実力が出しきれない彼女達は皆、清澄の前に散った


けど、咲の姉の照さんには手を出さなかった

彼女たちには全てをぶつけ合って欲しかったし、試合が終わったあと、涙しながら抱擁する姉妹の姿を見たかったからだ



それは現実の形となった

あんなに眩しい咲の笑顔は、初めて見た

もう思い残すことはない



俺宛のメールの中には変わらぬ思慕を伝えるものだけではなく、隠せないほどの憎悪をぶつけた文も少なくなかった

当然だ、それだけの事をやった

女の子たちの心を弄びに弄んで、利用し尽くしたのだ



だからこそ、俺はこうして誰もこないであろう時間、誰もこないであろう公園を選んで一人で来た

大げさなほど無防備でいよう、ついでに寝てしまおうか

寝ている間に終わっていれば俺としてはいいけど、少しは苦しむ姿を見せるべきだろうか

まあ、それは相手に任せよう


考えていると、またメールがきた




  『今そこに行く 絶対に許さない』



…ああ、きっとこの子だ

この子が決着をつけてくれるのだろう




目いっぱい、腕と足を伸ばし、だらんとした姿勢のまま、審判の時を待つことにした

「君が笑ってくれるなら…僕は悪にでもなる…」





月はもうすぐ雲のなかに隠れるだろう、恐らくそのときになる

ちか、ちか、と水銀灯が瞬いている

何故だか、もうすぐ消えるという確信があった





がさりと、後ろから音がした




カンッ