京太郎「これがお酒っすか」

久「ようやく須賀君も二十歳になったしね、このぐらい飲まないと」

「おぉ~須賀もようやくか!」

「今日は先輩である私が奢ってあげよう!」

京太郎の前にはなみなみと注がれたビールが鎮座している。
今日は同じサークル仲間との飲み会だ。
前までは年齢が足りず飲めなかったがようやく飲める年になった。

京太郎「ングング…苦い」

「だっはっはっは!!それがいいんだろ!」

何度も飲むがどうにも苦さだけで美味しくない。
よくこんなものを好きで飲んでるなと思いつつも先輩に背中を叩かれもう一度口に含んだ。
うん、やっぱり苦いだけだった。


「そういえば久と須賀君って同じ高校なんだっけ?」

久「というより…同じ部活で先輩後輩かしら」

「え~それじゃ須賀君もしかして久を追っかけてきたんじゃない?」

久「さすがにないわね…ないわよね?」

そういいながらチラっと京太郎の方へと視線を向ける。
京太郎は男の先輩に捕まっており酒を飲んでいた。
大きく口を開けて笑い自前である金髪を揺らしてる。

久(良く考えれば須賀君って優良物件よね)

明るくお調子者でありながらも真面目で久の我侭にも一言も文句も言わず付き合ってくれた。
久は、そんな事を思いながらお酒を一口飲んだ。

久(でも…須賀君が私を何てあるわけないわよね)

咲が入って夢のインターハイを掴みに行った際、初心者の彼を蔑ろにしてしまった。
京太郎が予選で負けて泣いていたのを知っている。
だが、久はそれを見なかったことにして勝ちを取りにいった。
見てしまえば…気づいてしまえば…心が折れてしまうから…良心を押し殺し前へと進んだ。
だからこそ京太郎が自分と同じ大学を選んだのは意外だった。

久「正直嫌われてると思ってたんだけどね」

「何か言った?」

久「なんでもないわ」

お酒のせいか頬を少しだけ赤く染め久はそっぽ向く。
酔ったのか今日はいらない事を多く考えてしまう。

京太郎「お~れは!!ひっく、ひふぁ先輩を追いかけて来たんですぅ」

久「うん?」

「こいつ酒弱いな」

何やら幻聴が聞こえて気がする。
久は高鳴る胸を押さえながら振り向いた。
そこには京太郎が真っ赤な顔をしながら息巻いて談笑している。

京太郎「もとぉもと!おれぃがまーじゃんぶ入ったのは久さんがいたからでぃ」

久「………」

京太郎「入学式のひぃに!俺がお婆ちゃんをたすけてぃ遅れたのをきょうしの人達は!おれんの髪の毛の色だけで嘘だと!」

京太郎「ひとを見かけだけで判断しやがってぃ!そんなぁ時!ひふぁしゃんが通りかかって!その子は嘘を言って無いわと!」

「あははは!久らしいな!!」

久「……あの時の」

京太郎の話を聞いて思い出した、確かにそんな事があった。
教師がやってこないので探しに行った時に教師から説教をされている京太郎と眼があったのだ。
その眼は綺麗な眼をしており一目で嘘を言うような男子ではないと判った。


京太郎「その時に俺は思ったんですよ」

京太郎は机に突っ伏すと更に言葉を続ける。
その声は先ほどの酔っている声と違いしっかりとした意思が込められていた。

京太郎「何があろうと………俺はこの人の力になろうとね」

京太郎「俺という…須賀京太郎(中身)を見てくれる人の力に」

「………」

久「………」

それだけ言うと京太郎は机に突っ伏したまま言葉を発しなくなった。
耳を近づけると小さい小さい寝息が聞こえる。
どうやら話し終え寝てしまったようだ。



「…須賀君どうする?」

「寝ちまったしな…起すか」

久「あー……私がどうにかするわ」

あれからも飲み会は続きお開きの時間になる。
京太郎は初めてのお酒のせいか、ず~と寝ていた。

久「………」

京太郎「………」

久と京太郎だけになった部屋で久は京太郎の隣へと座り顔を近づける。
口を京太郎の耳へと持ってくると一言言った。

久「私に恥をかかせたんだから……責任取ってよね?」

京太郎「……はい、ずっと傍であなたの力になります」

薄暗くなった部屋で二人は静かに微笑みあい二人の時間を楽しんだ。


カンッ