京太郎「……」ソロリ…ソロリ…



煌「京太郎くん…?」


京太郎「!」


煌「どこへ…行くんですか?」

京太郎「あ、あの…その、アルバイトの面接を……」


煌「…アルバイト?」

京太郎「は、はい……」


美穂子「花田さん、どうしたの?」


京太郎「!」


煌「…京太郎くんが、アルバイトの面接をしに行くと…」


美穂子「え?」


京太郎「その…いつまでも皆の負担になりたくないと思って……」

煌「……」

美穂子「……」

京太郎「……」


煌「ごめ……ごめんなさい…」ポロポロ

京太郎「う…」

美穂子「…京太郎くんに、心配させてしまうなんて……」ポロポロ

京太郎「あ、あの…」



煌「京太郎くん…!お金のことなら何も心配しなくていいんですよっ!」

美穂子「私たちじゃ頼りないかもしれないけどっ…でもっ…でもっ…」

京太郎「……」



1年前、俺は荒れに荒れていた

人間は何か打ち込めば、それなりに能力は上がるはずだ

勉強なりスポーツなり、それは間違いないはずだった


でも、麻雀だけは違った


何をしても、どうしても、誰に教わっても

勝てなかった


それでも俺はあきらめないで、色んな雀荘を巡った

自分に足りないのは経験だと思ったからだ


面白い打ち手がいると聞けばどこへでもいった

勿論、どこへ行っても勝てなかった


今度は危機感が足りないからだと思い、向かった先は大阪のN区…

そこで初めて勝てるようになった

初めて味わった勝利、すっかりいい気分になった俺はその日、賭けて勝った金で酒を飲んだ


それから勝っても負けても酒を飲むようになり、どんどん抜け出せなくなっていった


麻雀で勝つという事が達成されてしまった俺は、今度はとにかく酒を飲んで酔っ払うことが新しい目的になってしまっていた


落ちぶれに落ちぶれて、ある日、安ウィスキーを飲み干してボロ雑巾のように道路で眠っていた俺を揺り起こす人がいた

うるせぇと怒鳴ったが、その人は立ち去ろうとしなかった

どんな物好きだよ、と顔でも見てやろうと目を開けたら、そこにいたのが……




竜華「ただいま~」


美穂子「あ…清水谷さん」

煌「お疲れ様です…」


竜華「どうしたん、みんな?」




竜華さんは俺をその場から無理やり引っ張っていった

かつてスポーツでならした俺の体も、すっかりボロボロになっていて女の子の腕力に勝てないほどになっていた


それから竜華さんは大きめの部屋を一つ借りて、そこに俺を住まわせてくれるようになった


そこに話を聞きつけた煌さんや美穂子さんもやってきて、今の生活が始まった




そして、この生活が始まって半年


俺は一度も外に出ていない




せいぜいベランダから外の景色を眺めるくらいになった



俺の荒みぶりを知っている竜華さん、その様を聞いた煌さんたちが異常なほど過保護に世話するからだ


三人交代で外へ働きに行き、俺の世話をし、外へ出る機会なんかすっかりなくなった

たまに隙を見て出ようとしてもすぐに見つかり…


竜華「…なんやて!アカンで京太郎くん!京太郎くんにはまだまだ休養が必要なんや!」

美穂子「そうです!あなたはもう一生分苦しんだ、もうこれからは傷つかなくていいんです!」

煌「私たちがずーっと守りますから!だから……!!」



京太郎「……あ…あぁ……」




……結局、またいつもの生活に戻ってしまった


何もしなくても、何でも手に入る生活


俺はただ生きているだけでいい、それだけで彼女達は喜んでくれる


いずれ甘やかされる事になれてしまえば、もうこの部屋から出ることは出来なくなるだろう


だけど、なんだかそれを心待ちにしている俺もいた


もう俺には目標も何もない


それならいっそのこと………




……来週から怜さんもこの部屋に来るという話をこの日の夕食時に聞いた

更に玄さんと宥さんも来るらしい、三人ともすごいはりきっているとか



――明日……酒でも買ってきてもらおうかな



カンッ