三月某日―――京太郎二十一歳

俺の住んでるアパートの部屋に初めて親父が来た。

別に普段話さないわけじゃないが、こうしてゆっくり腰を据えて対面するのは随分久しぶ

りのような気がする。

須賀父「ときに京太郎」

京太郎「どうしたんだ、親父」

不意に険しい顔をする親父。何か叱られることをしただろうか。

須賀父「なんだ、最近お前の金遣いが荒い、というよりは賢くない気がしてな」

京太郎「......忠告は嬉しいけど、貯金だって少しずつためられるくらいだぜ?」

少しムッとする。第一、使っている金は自分で稼いだものだ。

須賀父「お前が普通の家の子だったら何も言わん。だが、お前には俺の跡を継ぐ人間とい

う意識を持ってもらわねばならん」

龍門渕の次......の次くらいの名家、須賀。それの跡取りとしては不味いらしい。

確かに先を見越した投資をしないといけないのは分かるが日常生活までそんなことを考え

なくてはいけないのか。

須賀父「そこでだ、お前のために俺が一肌脱いでやった」

京太郎「ん?どういうことだよ」

険しい顔から一転自慢げな顔になる親父。

須賀父「聞いて驚くな。実はだな」

京太郎「おう」

須賀父「住み込みで節約のアドバイサーを雇ってやった。もちろん俺持ちだ」

京太郎「金遣い荒ァ!」

節約のアドバイサーを金で雇うとかバカじゃねーの!?

そんな訳でうちにやった来たアドバイザーは、

ネリー「私はネリー・ヴィルサラーゼ、よろしくね」

京太郎「待て待て待て、女なんて聞いてないぞ!」

ネリー「女子差別は時代遅れだよ?」

京太郎「そうじゃないだろ!住み込みで来たんじゃないのか!?」

ネリー「?そうだけど」

京太郎「何にも分かってないよこの娘!」

買い物に口を出す。

ネリー「ほら、どう見てもこっちのほうがおいしそうじゃん」

京太郎「野菜なんて見分けつかんよ......」ポイッ

ネリー「あ!今は春だからハマグリよりもアサリでしょ!?」

京太郎「あー、はいはい分かりましたよ」

ネリー「まったく。旬くらい把握してなくちゃ」ヒョイッ

京太郎「何勝手に肉入れてんだよ。まったくはこっちだ、まったく」

家事に口を出す。

ネリー「お風呂から出たらスイッチはすぐに切る!」

京太郎「はいはい、湯船の水は洗濯に使う、ね。りょーかいりょーかい」

ネリー「ドライヤー使う前にちゃんと頭ふいた?」

京太郎「......あれだ、明日はやる」

ネリー「もぉ!怒ったらお腹すいちゃったよ!」

京太郎「今日も自信作だ。ほっぺが落ちるぜ?」

外出に口を出す

ネリー「何でタクシー!?車がないなら電車で十分でしょ!?」

京太郎「時間が中途半端だと面倒だろ」

ネリー「じゃあ今日は歩き!いいね!?」

京太郎「メンド......。バイクでも買おうかしら」

ネリー「免許とって一年経ってる?」

京太郎「三年経ってるから高速道路も平気だぜ」

口うるさい同居人は、小さい体で大きな幸せを運んできたようで―――――

京太郎「一年間」ネリー「節約生活」