「ここが松実館…」

必要最低限の服、日用品を詰めた小さいキャリーバッグを引き、何度か道を聞きながらたどり着いた。
目の前にある建物、これから働くことになった旅館、「松実館」。

高校を卒業し、流されるように過ごしてきた。
普通の人のように、漠然と大学に行き、過ごし、卒業して就職する。
当然自分もそうなると思っていたけれど。

部活の活動の一環で、知り合いになったハギヨシさん。彼に誘われて、龍門渕のお屋敷で執事をはじめた。
適正があったのだろうか、それとも三年間雑用として使われた経験だろうか。
周りの人に必死に追いつこうといろいろなことをやってみれば、それなりには出来た。
それでもやっぱり足りない部分はおおくて、料理や洗濯、裁縫、ダンス、パーティーの知識など。
一般家庭出身の俺には無関係と思われるようなことまで、すべて叩きこまれた。

一年も経てば慣れたもので、大抵のことは出来るようにはなったけれど。
周りとの関係に振り回されることが多くなったのもこの頃だろう。

自分は一介の執事だというのに、歳が近いという理由だけで、まるで友達のように接してくれた。
灰色な高校時代を過ごして居た俺には、それがとても暖かかった。
だから、皆で仲良くやっていけた。


どうやら、それがいけなかったようで。


俺はみんなと仲良くなりすぎたらしい。
緊張感が無く、仕事中までお茶や談笑に誘い込まれる始末。
親しき仲にも礼儀あり、ということで少しの間龍門渕から離れ他の仕事場に送り込まれる事になった。
そこで初めて会う人と新しい人間関係を築いてみてくれと。

そして、辿り着いたのが奈良。紹介されたのが、松実館。

ここなら、誰も俺のことを知ってる人は居ない。
ここで、経験だけを活かして仕事を学んでいくんだと決意したところで、着物を着た人が現れる。


「あなたが…今日から働く人…ですか?」

「あ…はい!龍門渕さんの紹介で働かせてもらう須賀です。これからよろしくお願いします」

「いらっしゃいませ。松実館へようこそ。

私はここの女将…と言っても見習いですけどね。松実玄です。よろしくお願いします!」







ここから始まる、修行兼アルバイト。果たして京太郎は松実姉妹に靡くことなく無事に期限を働き終え龍門渕に帰ることができるのか!?

(公開予定は)ないです。