涙流しつつ怯えている天江選手が呟く。


「衣……なにかわるいことしたのかな……」


空かさず池田選手が口を挟む。


「天江は悪くないし! 何にも悪くないし!」


そういって池田選手は天江選手に抱きついて一緒に泣いていた。

鶴賀の加治木選手も一緒になって抱き合って泣いてる。


「私たちは無力だ……だからもっとお互いに強くなろう……!」


わぁ……ラグビーのノーサイドみたい。

お互いの健闘を讃えたりして友情を育むんだろうなぁ……

その内天江選手が抱きついてる二人に話す。


「衣と……衣と友達になってくれないか……?」


「ああ、勿論だとも!」


男気溢れる加治木選手の返答。


「何言ってるし! もう華菜ちゃんたちは友達だし!」


すごく良い子そうな池田選手返答。

そこに恐る恐る近づいて聞く咲ちゃん。







「あ、あの……」


「「「ヒィ!?」」」


三人は轢き付けを起こしかけていた。

尚も咲ちゃんは続ける。

割と人付き合いが苦手な咲ちゃんにとっては勇気を振り絞って。


「私も友達に……なってもいいかな?」



「「「は、はい……」」」


三人は萎縮したように剣を飲むように申し出を飲み込んだ。

正しい友達付き合いになるかな……









京太郎君が暢気な声を出して聞く。


「あ、大将戦終わりました?」


「ええ……」


竹井さんが信じられないものを見たと言った感じに答えた。

照ちゃんはそんな竹井さんを見て言う。


「だから見ないほうが良いって言った。」


「まさかこんなことになるとは思わなかったじぇ。」


「とりあえずうちの学校が優勝したんだし、咲ちゃんの迎えに行こうか。」


そういって私は空気を変えようとした。

対局室の惨状から目を逸らしながら。







そうして県予選女子団体は幕を閉じた。

色んな犠牲を払って。

私は打ち上げと称して車でファミレスに行き皆に好きなものを頼ませた。


「腹減ったな。」

「照さんや咲は何を食べる?」


「私はパスタかな。」


「パフェ。」


「ご飯食べた後にしろよ。」


「問題ない。」


キリッとした顔で京太郎君の質問に照ちゃんが答えるが全くもって決まっていない。







竹井さんがかなり悩んでいる。

私も結構悩んでいる。


「ハンバーグおいしそう……」


「小鍛治先生も目に留まりました?」


「うん、でも結構時間遅いから体型が……」


「でも疲れた後だからがっつり食べたいですよね。」


「そうなの。」


「部長、ハンバーグ美味しそうですよ。」


「わかってるわよ、でもね男の子の須賀君には解らないかもしれないけど乙女はこういうのにデリケートなのよ?」

「デリカシーのない男は嫌われるわよ。」


「へぇ~そうなのか。」

「俺は気にしてなかったし、周りの女の人も気にするような人が居なかったから勉強になります。」


「いやいや、京太郎君、私すごく気を使ってるよ?」

「一応これでも教職者だし京太郎君にご飯作ってあげるとき栄養バランス気を使ってたんだからね?」


「まじっすか。」


多分京太郎君の中では気付いてなかった上に近くに居た女の子が宮永姉妹と福路さんくらいだったからそういうのに疎いのだろう。

過去のことを掘り返しつつも素晴らしき保護者人生と自分で褒めていた。

突如片岡さんから声が上がる。


「決まったじぇ!」

「エビフライとハンバーグが入ったタコスを注文するじょ!」


体型に気を使わない女子一人追加。

畜生、女子高生の体が羨ましい。





料理が揃う前に染谷さんと京太郎君が飲み物を持ってきてくれた。

流石気遣い男に聖人染谷さん。

本当はビール飲みたかったけど生徒の前だし何より車なので我慢した。

全員に飲み物が行き渡ると竹井さんに音頭を取らせる。


「今日は団体戦お疲れ様、まだ個人戦は有るけど明日は休息を取れるから安心して。」

「それでは乾杯!」


「乾杯!」


あ~体に沁みるよ~ジュースの糖分が体に沁みるよ~。

明日は頑張って運動しないといけないかな。

料理が運ばれて各々食べ始めると京太郎君がぽろっと話す。


「そういえば俺ネット麻雀打ってたんだけど中々に強い人が居てさ。」


「え、いつ?」


「大将戦のとき。」


「何で京ちゃんは私の出番のときにネト麻やってるの!?」


「咲なら負けないって信頼してたからな。」


「ひどいよ京ちゃん……」

「まぁ信頼されてるってのは悪い気はしないけど。」

「それでどんな打ち筋だったの?」


「無駄のないデジタルって感じかな?」

「とにかく牌効率が完璧で付け入る隙がないと言うか。」

「まるで機械が打ってるんじゃないかと思うくらいだ。」


「ふ~ん、で、勝った?」


「ぎりで勝った。」

「オカルト使えなかったからかなり苦戦した。」


「どんなハンドルネーム?」


「えっと確か『のどっち』?だったっけ。」

「あと『とーか』って人もいた。」


「ふ~ん。」


京太郎君と咲ちゃんは軽く話してそれで終わった。

因みに照ちゃんはその二人とは当たらなかったがネットでは散々だったらしい。

照ちゃん曰く「オカルトが使えないのは不公平だ」とのこと。

宮永姉妹と福路さんは本当に機械ダメだよね。









皆がご飯を食べ終わると車に乗って皆を送る。

途中車内で竹井さんがこんなことを言い出した。


「あ、そうそう、明日皆水着持って部室に集合ね?」


「「「……え?」」」


みんなの満腹感に水を差す一言だった。

もっと早めに言おうよ、そういうことはさ……

さっき体型の話したじゃない……










翌日部室に行くと既にみんなが集まっていた。

全員が揃ったことを確認して竹井さんが用件を述べる。


「はーい、皆集まったわね。」

「今日は水着で部活。」

「水着で部活よ。」

「というわけでこれからスポーツランドに行って特訓よ。」


何故二回言った。

というかなんでスポーツランド?

そう思っていたのは私だけではなく疑問に思っていた咲ちゃんが聞いた。


「部長、なんでプールなんですか?」


「団体戦のお疲れ様会と個人戦に向けたリフレッシュみたいなものかしら。」


そんなこんなで京太郎君が自動卓を部室から運んで車に乗せる。

流石男の子、力持ち。

その後生徒たちを乗せてスポーツランドに向かう。

私たちは更衣室で着替えてプールに行くとそこには既にパーカーを羽織った京太郎君が居た。





「お待たせ。」


「はーい?」

「おおう……」


京太郎君が私たちの水着を見て声を漏らしていた。

私は薄い黄色のセパレートで竹井さんは濃いオレンジに腰にロングパレオを巻いている。

染谷さんは緑と白のボーダーで照ちゃんは白のフリルが付いた水着だ。

咲ちゃんと片岡さんは……うん。

似合ってると思うよ。





片岡さんがプールに飛び込んで京太郎君に言う。


「おら! 京太郎もパーカー脱いで泳げ!」

「そんでもってゴムボートの動力源になるんだじぇ!」


「おいおい、誰が動力源だ。」


竹井さんがにじり寄って須賀君の後ろに寄る。

スッとパーカーに手をかけて剥ぐと結構いい体が露わになる。


「うお!?」


「そんな格好じゃ泳げないわ……」

「!」


それと同時にあれも。

私は見慣れていたし宮永姉妹も知っているから特に驚かなかったがパーカーを剥ぎ取った竹井さんは固まっていた。


「これ……」


「ああ、これっすか? これは小さい頃に火災で負った火傷です。」


「ごめんなさい、須賀君。」


「いやいや、別に気にしないでください。」

「俺も泳ぐつもりだったんだしどっち道パーカーは脱ぎましたよ。」





竹井さんが申し訳なさそうにしているのを見て京太郎君がフォローしている。

京太郎君本人は気にしていないのだが竹井さんが気にしているようだ。

若干固まった空気を動かす為か照ちゃんが京太郎君にお願いをする。


「京ちゃん、泳ぎ教えて。」


「……え?」


「私泳げない。」


「あー、はい、わかりました。」

「すいません部長、ちょっと照さんの泳ぎのコーチしてきます。」


「ええ、わかったわ。」






横では染谷さんが準備運動している。


「神伝流の泳ぎは準備運動は欠かせんからのう。」


「小鍛治先生も一緒に泳ぎません?」


そういう竹井さんの顔は悪い表情をしていた。


「私はちょっと……」


折角大き目のパーカー手に入れたのに脱がないといけないじゃないですか。

さっきまで背筋伸ばして誤魔化してたのにまた常時背筋を伸ばさないといけないのは辛い。

あと泳いだりしたら疲れるじゃない。

私には帰りの運転があるのだよ。

だがお断りしようとしたら更なる追撃が襲う。


「小鍛治先生、最近運動不足ですよね?」

「昨日も美味しいハンバーグ食べてましたし。」

「ここで泳いでおかないと……」


ぐはぁ……

きつい一言ですよ……

でも誘うのはやめてよ……私次の日膝と腰に来るんだから……

しかも余ったお肉を見せたくないです……








直ぐ様照ちゃんを連れて京太郎君がプールに入っていった。

私はパーカーを受け取って竹井さんや染谷さんとともにプールサイドのチェアーに腰掛けた。

ついでに京太郎君のパーカー着ておく。

ほら、私の体って男の子には刺激的なスタイルだから……



折角大き目のパーカー手に入れたのに脱がないといけないじゃないですか。

さっきまで背筋伸ばして誤魔化してたのにまた常時背筋を伸ばさないといけないのは辛い。

あと泳いだりしたら疲れるじゃない。

私には帰りの運転があるのだよ。

だがお断りしようとしたら更なる追撃が襲う。


「小鍛治先生、最近運動不足ですよね?」

「昨日も美味しいハンバーグ食べてましたし。」

「ここで泳いでおかないと……」


ぐはぁ……

きつい一言ですよ……

でも誘うのはやめてよ……私次の日膝と腰に来るんだから……

しかも余ったお肉を見せたくないです……












私は飲み物を買って来るとはぐらかして逃げ出した。

暫くすると皆は各々楽しみ始めた。

一年生三人組と照ちゃんはビーチバレーをしているし染谷さんはさっきから古式泳法をしながら浮いている。

そして私はチェアーの上でパーカーで体を隠して寝そべっていた。

竹井さんはというと……


「え~、ちょっとくらい良いじゃない。」


「困ります、こんなものを持ち込まれては……」


係員さんに雀卓を持ち込んできたことを咎められていた。

一応顧問である私に責任の火の粉が掛からないうちに動き出した京太郎君たちと合流してスポーツランドの廊下を歩く。

廊下を歩いている京太郎君が突如こんなことを言い出した。


「そういえばさっきそっちにVIPルームっていうのがあってさぁ。」


「きっと私のために用意された部屋だじぇ。」


「ええ~何のために……」


「おお、あれあれ。」


そういって京太郎君指差す方向の向かい側から少女たちが出てきた。


「……無理泳ぐ必要はないと思いますわ。」


「とーかは泳げないんだよね。」


「何をお言いなさりますですか!?」

「庶民と同じ水に入りたくないからと言っておりますでしょう!」


出てきた金髪の背の高い方が小さい金髪の子供に言い訳染みた事を言っている。

あ、そういえばあの顔は龍門渕の……








「お?」


「と、透華、前……」


「へ?」


見ていた私たちに気付いた一人が声を上げて龍門渕選手に告げる。

当然私たちから見えると言うことは相手方からも見えると言うわけで。

相手側はこっちの素性に気付いたようだ。

こっちも相手の素性に気付いた京太郎君が声を上げる。


「龍門渕高校!」


「お前たちも遊びに来たのか?」


「あ、遊びに~!?」

「ここは私の家の所有物ですわ!」


そういえばスポーツランドの名前が龍門だったっけ?

なるほど、そういうことか。




「へへーんすごいだろ。」


「お前がすごいわけじゃないじょ。」


井上選手が胸を張って言った。

それに片岡さんが突っ込む。

まずい、京太郎君の視線が釘付けになっている。

今の戦力は私、照ちゃん、咲ちゃん、片岡さん。

ダメだ、圧倒的に戦力が足りない!

これでは井上選手や沢村選手どころか龍門渕選手とどっこいどっこいである。

せめて最大戦力の竹井さんと染谷さんが居れば……

他人の褌で相撲をとっても空しいだけなので考えるのをやめた。

咲ちゃんが龍門渕の邪魔をするのは悪いと思ったのか去ろうとした。


「じゃあ、私たちはこれで……」


「お待ちなさい!」


でも龍門渕選手は言いたい事があったのか私たちを引き止めた。


「団体戦では負けましたが個人戦ではそうは行きませんでしてよ!」


「個人戦……」


「そうですわ、週末の個人戦、どちらが上か白黒つけてあげますわ!」


おいおい、貴女が戦ったのは染谷さんでしょうに……

しかも多分貴女が冷えない限り染谷さんに勝つのはきついと思うよ?

絶対とは言わないけどさ。

龍門渕さんは言い切ってすっきりしたのかすごいご満悦な顔していた。

その脇から小さい子が出てきた何か携帯のマナーモードのように震えている。


「清澄の大将、さん。」

「サクヤノケッショウセンハタノシカッタデス。」

「マタアソンデクレマスカ?」


何で片言……

しかも何で敬語……?

明らかに社交辞令なのは分かっていたけど咲ちゃんは聞く。







「衣ちゃん個人戦に出ないの?」

「個人戦に出ればまた私と打てるよ?」


「衣は個人戦には出ぬぅ!」

「……衣はもう、昨日の団体戦で満足したのだ。」

「暫く麻雀は要らない。」


おおう、もう。

これはひどいね……


「昨日の団体戦で……そう。」


明らかに残念そうな咲ちゃんが呟くと慌てて天江選手が付け足す。


「マタコロモトウッテクレマスカ?」


「うん!」


でもやっぱり片言でした。








私たちが戻って竹井さんたちと合流するとまた各々遊び始める。

私と染谷さんと竹井さんは相変わらずチェアーの上だ。


「まさか全国に行けるとはのう。」


染谷さんは遊んでいる四人組みを見据えながら誰に言うとも無く呟く。

そして視線を同じ方向に向けた竹井さんが染谷さんに言う。


「言ったでしょう? 狙うは全国優勝だって。」


「そんな簡単に行くかのう?」


「大丈夫よ、うちには宮永姉妹というエースに小鍛治先生がいるんだから。」


いきなり話を振られるとは思わなかった。

まぁ出来る限りのことはするけどさ。

皆が一頻り遊んでリフレッシュしたらそろそろ帰ろうということになった。

京太郎君が声を掛けてくる。


「健夜さん、パーカー。」


「え……ちょっと待って。」


私は即座に息を吸って腹を凹ました後、背筋を伸ばしてパーカーを脱いだら京太郎君に渡した。

さぁ、更衣室で着替えるまで我慢だ。

皆が着替えて車に乗せると出発する。

今は皆遊び疲れたのか揺れる車内でぐっすりだ。

あー疲れた。

明日筋肉痛になるかも。

それより週末は個人戦か、みんなの調整しないとね。









個人戦当日。

個人戦は男女で分かれているけど同じ時間帯にやるので誰をみるのか決めておかないといけない。

女子はまぁ大体順位が分かるね。

宮永姉妹と福路さんが三本指に入るでしょ。

となると京太郎君のほうが問題だ。

技術的なほうは大丈夫だけど私がフォロー入れないといけないところがある。

全員が思い思いに向かっていく個人戦。

結局私は京太郎君についていくことにした。

京太郎君が対戦表を見て愕然とした。

というか怒っていた。


「なんで氷見木がいないんだよ!」


「えっと京太郎君。」


「あ、すみません騒いじゃって。」


「ううん、それは良いんだけど……氷見木太郎だっけ? その人の話。」

「風の噂で聞いたんだけど今横浜に居るんだって。」

「だから全国に行けば会えるんじゃないかな?」


「そうだったんですか?」

「それじゃあ三位以内に入らないとな。」


私がそういうと京太郎君が納得して気合を入れなおす。

まず京太郎君が負けることは無い。

私も出場者名簿に目を通したのでそれは保証できる。

オカルト全開で行けば京太郎君に追いつける男子はまずいない。

少しすると京太郎君の出番がやってきた。

あ、今日の屠殺会場はここですか?

炎で焼いてついでに焼き鳥も出来るから便利ですね。






始まる京太郎君インターハイ初試合。

京太郎君が北家でラス親になる。

まず京太郎君は跳満を振り込み次の局に跳満を仕返しする。

次に倍満をツモられるが取られた分は取り返した。

最後に京太郎君の親。

火の鳥で場が温められた状態でのラス親スタート。

火は充分に撒き散らして周りは火の海だろう。

多分もう京太郎君以外は和了れない。








その後はただ只管京太郎君が和了り続ける。

それは誰かがトぶまで続いた。

県予選程度ならまだ新技は使わなくて大丈夫だね。









東風20戦、終わってみれば京太郎君のスコアは+350だった。

文句なしのぶっちぎり一位、県予選の個人戦予選の通過だ。

一方女子の方では意外にも2位の照ちゃん、3位の福路さん、4位の咲ちゃんを凌いで片岡さんが1位だった。

片岡さんのスコアは+386で2位の照ちゃんは+379。

福路さんは+376で咲ちゃんは+368。

どんだけ他から搾り取った。

片岡さんは東場が強いからちょうどよく嵌まったんだろうね。

問題は県予選本選だね。

南場が入るからスピードが落ちる。

こればかりはどうしようもない。








インタビューで明日の抱負を聞かれている京太郎君と片岡さん。

片岡さんは調子に乗ったことを言ってるけど明日は辛いと思うよ。

一方の男子でのインタビューは何か軽く言ってるけど若干重いことを言ってる。

『勝ちたい相手が居る。』とか『看板を傷付けられないから負けられない。』とか。

何か重い。

もしかして私のせい?

暫くして京太郎君が戻ってくると咲ちゃんが駆け寄って賞賛する。


「すごいよ京ちゃん! 一位通過だね!」


「今回お前らが居なかったから楽に進めたぜ。」

「女に生まれなくてよかったよ、皆とかち合ったら苦労させられるもんな。」


「でも京ちゃんはよくやってる、多分女の子に生まれても個人戦を進められる。」


「勘弁してくれよ照さん、これ以上苦労したら胃に穴が開いちゃいますって。」


部員たちは笑い、柔和な雰囲気で個人戦一日目は終わった。

明日は更にきついと思うけど何とかなるよ。








二日目の今日は半荘で午前4戦、午後6戦の計10戦。

一人当たり30人と当たるのだけど、私の教え子は一部を除きぶつからなかった。

同じ高校であまり被らないようにと運営の配慮だろう。

しかし一方で物の見事に咲ちゃん被害者がかち合った。

福路さんVS咲ちゃんVS加治木選手VS国広選手とか。

照ちゃんVS福路さんVS蒲原選手VS南浦プロのお孫さんとか。

咲ちゃんVS照ちゃんVS池田選手VS井上選手とか。

では残虐ファイトの一部始終をご覧頂こう。


『ぎにゃー!!』


『ひぃぃ!?』


『透華ー!』


『ワハハ……』


『お菓子の件は本当にすみませんでした……』


誰もがかの三人には当たりたくないと祈ってる。

当たったことが分かった人は涙を流しながら「お父さん、お母さん、ごめんね。」とか言ってたけど命を取られるわけじゃないじゃん。

大袈裟だよ、そこまで絶望の顔に染まらなくてもいいと思う。

死にはしないんだから。

大丈夫大丈夫、へーきへーき。










一方の京太郎君。

昨日とは違って半荘なので火の鳥は使わなくても場は徐々に暖められる。

炎の効果は既に東二局から効いて来るけど完全に効くのは南場に入ってから。

だから東風ではそんな時間がなかったので火の鳥を使って急速に暖めたのだ。

やばくなったら新技を早めに使えばいいし問題なく進みそうだ。

と思ったがどうやら京太郎君は新技を使いそうだ。

別段相手は強くもなさそうだし、何より点差で圧倒してるのに。

もしかしたら実戦でどれだけ通用するか試したかったのだろうか?

だが京太郎君が新技をそろそろ使おうと思ったところで普通に和了って相手をトばしてしまった。

まぁ相手ならうちの学校にもいるから機会はあるでしょ。


それから計10戦が終わり、男子女子共に成績が発表される。

京太郎君は2位の男子を大きく突き放してスコア+367の一位通過。

もう一方の女子は照ちゃん一位で+375、福路さんが二位で+373、三位の咲ちゃん+358。

下に染谷さんと竹井さんが団子になってて100近く離されていた。

やっぱり染谷さんは照ちゃんと、竹井さんは福路さんや咲ちゃんとぶつかったのが痛かったね。

ある程度予想していたとは言え、こうも私の教え子ばかり残るとは。

もしかして強化しすぎたかな?









そして始まる表彰式。

男子はパパっとやって、終りっと言った印象でした。

まぁいいけどさ、後で私が褒めてあげるから。

そして続いて女子。

三人が並んで照ちゃんがトロフィーを受け取った。

表彰式が終わった後に姉にお祝いの言葉を送ろうとしたのか咲ちゃんが動く。

だが咲ちゃんの足が縺れた。

あ、咲ちゃんこけた。

そして立たせようと思ったのか近づいた照ちゃんもこけた。

上に放り出されるトロフィーを福路さんがナイスキャッチ。

幸いにも京太郎君と片岡さんが近くにいたので直ぐに立たせて上げていた。

しかし何たる無様な姿だろう。

これが長野のTOP3だという事実。

ポンコツ女私コース間違いなし。

但し私はポンコツを乗り越えましたと断言しておきます。


元々は女子が合宿に行ってる途中は京太郎とすこやんで修行させようと思ってたんだけどね














インターハイの県予選が終わり、衣替えの季節がやってきた。

「Weekly 麻雀 TODAY」と言う雑誌には一言『清澄男女個人戦女子団体戦で快挙、祝三冠。』

とだけ書かれていた。

その他のことは全マスコミメディア黙殺。

風に聞いた噂では「顧問である小鍛治プロが圧力をかけてマスコミ各社を黙らせた」とまことしやかに流れているとか。

失敬な、私そんなことしてないよ!?

そして私はというと今、期末テストの採点に追われている。

私が仕事を終わらせると数学の先生が話しかけてきた。


「小鍛治先生、ちょっといいですか?」


「はい?」


「実は片岡のことで……」


片岡さん何やったの……








数学の先生からお話を聞いて部室に行く。

そこには部員全員が揃い踏みしていた。

私は目的の人物を見つけて声をかける。


「片岡さん……」


「じょ? なんだじぇ先生。」


「実は片岡さんに数学の追試が決定しました。」

「もし追試が通らなかったら補習が入ります。」

「つまり追試が悪かったら合宿にいけません。」

「片岡さん、わかったかな?」


「……先生、マジで?」


「うん。」


私が言い終えると片岡さんが頭を抱えて唸り始める。

この子は確実に勉強が出来ないタイプだ。

前の合宿で算数ドリルをやらせていたのは正解だったかもしれない。

頭を抱えている片岡さんに京太郎君と咲ちゃんが近づいて声をかけている。


「おいおい優希、祭りあるのに大丈夫か?」


「どうしよう……京太郎……」


「優希ちゃん、私も勉強手伝うから。」

「たぶん京ちゃんもなんだかんだ言って手伝ってくれるし。」

「一緒に頑張ろ?」


「咲ちゃん……」


「ったく、しゃーねーな、俺も手伝うよ。」

「だから良い点とってスカッとした気分で祭りに行こうぜ。」


「京太郎……」

「二人ともありがとうー!」


片岡さんが涙ながらにお礼を言って勉強を始めることに。

竹井さんの提案で部室を一年に対して閉鎖して勉強に集中できるようにしていた。







京太郎君は合宿の買出しと勉強の手伝い、咲ちゃんは片岡さんと一緒にお勉強、照ちゃんはたまに二人の勉強を見ている。

竹井さんは各校の根回しと準備、染谷さんは実家の手伝い。

私は手続きの書類などの処理や学校の宿題などの仕事に追われている。

私が書類に目を通すととある事に気付いた。

私は少し職員室から抜け出して竹井さんの元へ向かう。

そこには上級生三人がそれぞれ別のことをしていたが一応揃っていた。

私は竹井さんに気になったことを質問してみる。


「竹井さん、ちょっといいかな?」


「はい、なんでしょうか?」


「うちの書類に京太郎君の名前が記載されてなかったんだけど。」


私がそういうと照ちゃんと染谷さんがピクリと反応する。

竹井さんは私にされた質問に対してこう答えた。


「ああ、それはですね……」

「さすがに男の子の須賀君を女子ばかりのところに行かせるわけには行かないのでお留守番をしてもらうことにしました。」


なるほどそういうことか、そう思ったがさすがに京太郎君一人はかわいそうな気もする。

だけどそう思ったのは私だけではなかったようだ。

染谷さんが口を出してくる。


「久、あんた鬼か。」


「え、しょうがないじゃない、彼は男子なんだし。」


照ちゃんも口を出してくる。


「久、それはない。」

「京ちゃんもインターハイ出場するし何よりうちの部員。」

「一人だけ仲間外れはかわいそう。」


「え~、彼なら大丈夫よ。」

「たぶん納得してくれるわ。」


「え、まだ京太郎君に話してないの?」


「あ、そういえばまだでした。」


そうかそうか、竹井さんの考えはわかりました。

それでは皆さん口を揃えて言いましょう。


「「「ファッキューヒッサ。」」」


「なんでよ!?」








驚いてる竹井さんに対して照ちゃんが続ける。

実質脅しに近い状態で。


「というか京ちゃんが行かないなら私行かない。」

「で、私と京ちゃんが行かないとなると咲も行かないかも。」


「ちょ、ちょっと、それはあんまりじゃないかしら……」


竹井さんは少なからず動揺しているようだ。

さらにそこへ染谷さんの追い討ち。


「というても部員の半分が、しかもインターハイ個人出場者全員が未参加となると向こうさん側から苦情が来そうじゃのう。」

「さらに言うならあれじゃ、優希も補習する可能性がある。」

「下手したらうちはわしと久だけで行くことになるかも知れんぞ?」


「うぐぐ……」

「……わかったわよ。」

「須賀君も参加させるわよ……」


竹井さんはついに折れて承諾した。

完全勝利した染谷さんと照ちゃんのガッツポーズUCだった。






結局清澄は男子を含めて全員参加することになった。

流石に男の子なのもあって多少制限は設けることになるけど。

具体的に言えば部屋は監視役である私と一緒の部屋。

これで二十四時間見張れるわけではある。

そもそも京太郎君自身そういうほかの人に迷惑をかけるような行為をするとは思えないけどね。


そして数日後、片岡さんの追試の時間がやってきた。

京太郎君と宮永姉妹と染谷さんが教室の前で待っているようだ。

私はそれを職員室の窓から眺めている。

私は私でやらないといけない仕事があるのでそれに専念していると時間が結構経っていた。

仕事が終わるころにはみんなが帰ろうとしていた。

これから花火大会に行くのだろうか?

私は仕事を終わらせて帰宅する。

すると家の前に浴衣を着た教え子三人が待っていた。

白い生地に薄い唐草模様の浴衣を着た京太郎君が聞いてくる。


「健夜さん、一緒に花火を見に行きませんか?」


「うん、いいよ。」


そう言って了承すると数年前に買った浴衣を着る。

これを着るのは三人と一緒に花火をやったとき以来だっけ。

あれが元で京太郎君のオカルト不振の原因がわかったんだよね。

私は着替え終えるとみんなと一緒に祭りに向かった。

照ちゃんはやたら屋台のあれが欲しいこれが欲しいとねだっていた。

片岡さんもそれに便乗していたが。

咲ちゃんと染谷さんは二人に少しは遠慮しろと言っていたがあまり効果はなかったようだ。

そういえば竹井さんはどうしたんだろう。

もしかして学生議会の仕事がまだ残っているのかな?

案外よろしくやっているのかもしれないね。









後日、福路さんから申し出があったのを聞いて京太郎君が浮かれていた。

そういえばうちで福路さんと打てるのは京太郎君ぐらいだもんね。

宮永姉妹は大会の規定で打てないし、染谷さんと竹井さんと片岡さんじゃ力不足。

そう考えると後一人くらいプロを呼んだほうが良いんじゃないかな?

そう思って知り合いのプロに声をかけて来てもらう事にした。

そして当日、私たちは学校から借りた車に全員乗って合宿所まで辿り着く。

さて、今回の合宿、どうなるんだろうね。







私は合宿所についたら直ぐ様引率者や責任者に挨拶をした。

円滑なスケジューリングはコミュニケーションです。

久保さんと龍門渕選手とその執事さん、そして蒲原選手と軽く説明や取り決めを行った。

何で加治木選手じゃなくて蒲原選手が……?

それにしても執事さんイケメンだったな、京太郎君親子も中々のイケメンだけど執事さんもイケメンだ。

目の保養になるね。

その後広間に全員集合して説明をする。

説明するのは竹井さん。

私と京太郎君は部屋の隅っこでおとなしくしている。

先ほどの執事さんは見えないけど。

うら若き女子がここに集結しているこの状況、しかも全員浴衣。

これは男の人にとっては嬉しい状況かもね。

……ふははは、お前らも全員喪女にしてやろうか~!

そんな閣下みたいな声が聞こえた気もする。

竹井さんが説明している途中でやたらこちらをチラチラと熱い視線を送ってきている人が数名いた。

やっぱり女所帯の中で男のは目立つね。

当の京太郎君はやたら加治木選手のほうを見て目をこすっている。

気になったので聞いてみた。







「どうしたの?」


「いや、健夜さん。」

「この旅館やばいです。」

「幽霊がいます。」


「……え?」


「ほら、鶴賀の大将の加治木さんの隣。」

「一人だけ制服着てる女の人。」


そういえば京太郎君の目線が若干加治木選手の隣に向いている気がする。

だけど私が見る限りそんな子は見当たらない。

だからと言って京太郎君が冗談を言ってるようにも見えない。

ということはつまり……マジですか……


「お坊さん連れて来た方がいいかな……」


「それよりも加治木さんに注意したほうが……」

「でも変に怖がらせるよりは……」


「どうしよう……」

「あ、そういえば鶴賀って五人のはずだよね?」

「それなのに4人しかいない……」


「もしかして鶴賀の部員に不幸な事故があって……」


「やめてよ京太郎君……」


加治木選手に言うか言うまいかのお互い悩んでいるときに竹井さんから声がかかる。


「小鍛治先生、須賀君といちゃついてないで一言お願いします。」


「え?」


説明を受けていた生徒たちが一斉にこちらへと振り向く。

私は仕方なく前へ出て軽く挨拶することに。








「えー、清澄高校の顧問、小鍛治健夜です。」

「みなさん合宿だということですが浮かれすぎて合宿中に怪我をしたりしないように気をつけましょう。」

「あくまで麻雀を打ちに……」


などと適当なことを言いつつ大人が言いそうなことを述べておいた。

怪我ってなんだ? みたいな表情をした子も居る。

うん、麻雀の合宿で怪我ってなんだろうね。

しかし京太郎君のせいで加治木選手の隣が気になる。

確かに加治木選手の隣には誰もいない。

人一人分スペースが空いてるのに誰も居ない。

何か不自然に空いた空間を眺めながら諸注意を述べておいた。

あと同じ鶴賀の津山選手、すっごい私を見ていた。

もしかして私の顔に何かあったかな……小皺とか豊麗線とか出てた?








説明が終わり一旦解散する流れになったが福路さんと京太郎君が接触した。


「お久振りです、美穂子さん。」


「久しぶりね、京太郎君。」


だがそこに割って入る女子が一名。


「なんだし、勝手にキャプテンに近付くなし!」


風越の池田選手だった。

明らかに敵意丸出しの池田選手。

だがそれを止める福路さん。


「良いのよ華菜、京太郎君とは中学からの付き合いだから。」


「でもキャプテン……」


「大丈夫よ、私も彼とお話があるの。」

「だから華菜は他の人とお話してきてくれるかしら?」


「……はい。」


「ごめんなさいね、京太郎君。」


「いえいえ、美穂子さんのことを思ってのことだと思いますから気にしてないですよ。」

「ところで美穂子さん、後で打ってもらえますか?」


「ええ、むしろこちらからお願いしようと思っていたところだわ。」


そういう福路さんの目が世話焼きなお姉さんの目から雀士の目に変わっていた。

約二年半ぶりだから確かめたいんだろうね、お互いに。








再びみんなが集まり本格的に打つこととなった。

まず京太郎君に私、福路さんが卓に着く、のだが。


「では皆さん打ちましょうか。」

「京太郎君と福路さんと私ね。」


あと一人が現れない。

宮永姉妹は福路さんと打てないし、他の子は完全に尻込みしている。


「他に入ってくれる人居ますか?」

「それでは失礼して。」


仕方ないので秘密道具のくじ引きをすることにした。

箱の中身には各部員の名前が書いてあり引かれた者は席に着く。

では一発目行ってみよう。


「じゃじゃん、風越の……」


そこまで言うと何人かびくびくしていた。


「池田さん。」


「華菜ちゃん一番槍だし!」

「キャプテンと打てるし!」

「せいぜいそこの金髪はトばないように気をつけるんだな!」


池田選手元気だね、いったいどこまで持つやら。

そして各々対局を始まった。








初っ端から両目全開の福路さんに良い所を見せようと気炎を振りまく京太郎君。

そして手を抜いた私に置物と化した池田選手。

結果は無残に池田選手のトび。

南場にすら入らなかった。


「「「「ありがとうございました。」」」」


「華菜ちゃんトンだけど金髪にキャプテンは渡さないし!」

「後で覚えてろ!」


そんな捨て台詞を言いながら池田選手は引っ込んで行った。

ありゃ置物のほうがましだったかな。

意外と池田選手はメンタル強い。

私は抜けて京太郎君と福路さんは卓に残って他の人を待つ。

その間少し他の生徒も鍛えてあげよう。

そして私の仲間を増やす。







どうやら京太郎君と福路さんのところに人が入ったようだ。

井上選手と片岡さんだ。

まぁたぶん大丈夫。

私はそのままフラフラと辺りを見回って適当にアドバイスを出していた。

途中文堂選手と津山選手にサインを求められた。

津山選手はすごく目がきらきらしてた。

文堂選手はわからない、あの子目が開いてないし、嬉しそうだったけど。

次に目に付いたのは加治木選手と天江選手、池田選手と龍門渕選手の練習。

加治木選手は色んな策で天江選手を出し抜いて、池田選手はオーソドックスに打ってはいるがかなりパワープレイだった。

ここの卓はやたらと楽しそうに打っていたのが印象に残っている。






そろそろ来るころかな。

そう思って私はある人を迎えていた。

そのある人を迎えてみんなに紹介する。


「今回はビッグゲストが来てます。」


私が紹介するとみんなが手を止めて視線をこちらに向ける。

襖を開けて入ってきたプロが私に突っ込んでくる。


「いやいや、ハードルあげないでくださいよ。」

「小鍛治さん以上のビッグゲストなんているわけないじゃないですか。」


「あ、藤田さんだ。」


「本当だ、藤田さんだ。」


「何だゴミプロか。」


「藤田プロのサインは……別にいいか。」


「うむ。」


君たち失礼すぎだよ!

一応これでもプロなんだから強いんだよ!

確かに条件揃わないとパッとしないけどさ……


「あの小鍛治さん、私帰っても良いですか……?」


若干凹み気味な藤田さんを宥めて参加させた。

今京太郎君と福路さんの卓には久保さんと藤田さんが着いている。

地味にいい勝負してるみたいだ。

伊達にコーチとプロじゃないね。






どうやら京太郎君のところの卓は終わったようだ。

藤田さんがオーラスで捲くろうとした所に福路さんと京太郎君に邪魔されて三位。

久保さんは完全にコーチの仕事をしようとしててラス。

京太郎君は稼ぎ負けて二位、福路さんは藤田さんに止めを刺した分で一位。

卓に倒れこんだ藤田さんが呟いている。


「私はもう立ち直れん……京太郎と宮永姉妹には一日三食食べさせてやってくれ……」


ちゃんと食べてるから心配ないよ。

特に照ちゃんなんか必要以上にカロリー摂取してる。

倒れた藤田さんにどこからともなくあらわれた執事さん。

手に持ってるのはカツ丼。


「よろしかったらこれをどうぞ。」


「カツ丼!」


「あ、復活した。」


いただいたカツ丼をがつがつと食べる藤田さん。

食べながら京太郎君にアドバイスしている。

一方久保さんは福路さんに問題点を指している。

なんだかんだ言ってやっぱり大人なのである。







二人の大人が色々助言をすると引き上げて行った。

次は私も入ろうかと思って近寄ってみたが先を越される。


「ノッポの金髪再戦だし、今度は華菜ちゃん負けないし!」


「衣も混ざるー。」


「天江もこう言ってる事だし華菜ちゃんたちと打つし!」


「オッケーですよ。」

「あれ?」


「衣がどうかしたか?」


「いや、この間の迷子の子……」


「衣は子供ではない! あと迷子ではない! ちょっと透華と逸れただけだ!」


「それは迷子って言うし。」


「迷子じゃない!」


あ、福路さんと京太郎君の世話焼きスイッチ入ってる。

池田選手も結構世話焼きっぽいし完全に子供一人にお兄さんお姉さんが世話焼いてる状況にしか見えない。


「そんなことはどうでもいい、打つぞ! 衣は打つぞ!」


「はいはい、衣ちゃんキャンディいるか?」


「もらう!」

「あと衣のほうが年上だ!」

「もっと年上を敬え!」

「ちゃん付けなどもってのほかだ!」


「……え。」


「何だ、知らなかったのかノッポの金髪?」

「あたしたち二人とも二年だし。」


「マジすか?」


「本当よ、京太郎君。」


福路さんはクスクスと笑いながら対局が始まる。

私は他の卓でも見てようかな?





さてさて他の卓はどうだろう。

私が周りを見回すと照ちゃんの卓が目に付いた。

相手は龍門渕選手と加治木選手と吉留選手だ。

三人は結託して如何に照ちゃんを止めるかと工夫してるようだ。

どうやら一筋縄では行かせない様である。

一方の咲ちゃんは蒲原選手、国広選手、津山選手と打っている。

こちらは防御重視の堅実な打ち方の選手が多いから点数は取りにくそうだね。













色々と見て回っていると結局京太郎君のところに戻ってきてしまった。

途中からだったけど点棒を見る限り明らかに劣勢なのに天江選手の威勢がいい。


「衣は諦めないぞ。」

「何故だか知らないが諦めようという気持ちになれない。」

「きょーたろと打ってると何故か血が熱くなる。」

「何故だろうな、不可解だ。」


「華菜ちゃんもだし。」

「普通だったらキャプテンに敵いっこないってわかってるんだけど。」

「それでも図々しいくても勝とうって気になるし。」

「だからイケメン金髪には何度でもチャレンジしてやる。」


……何故こんなにも熱くなっているのだろう。

そういえば三尋木プロも同じことを言っていた。

「周りまで熱くさせてくれるなんて将来有望だ」と。

これもオカルトの一種なのかな?