夏季オリンピックの季節になりましたが、ぶっちしてやった。

こっちは先生やってて忙しいの。

テストの答案作ったり、部活中は生徒の面倒見たり、お菓子食べたり、お茶飲んだり、だらーっと休んだり。

とにかく忙しいの。

もう一回念押しで言うけど忙しいの。

もし私を出させたいと言うなら前回の3倍は強い人を3人連れて来て。

そしたら暇つぶしに行ってあげるから。

もし私を倒せるっていう人が居たら今すぐに飛んで行ってあげる。

まぁ今まで私に勝った人なんて片手で数えるくらいしか居ないっていうか二人くらいなんだけど。

一人は元世界一位だし、今はもう結婚しやがったから期待は出来ない。

あ、そういえばまだお祝いしてなかった。

今度結婚祝いに麻雀しよう。

待ってろよー、今素敵な台詞考えてるから。

よし、思いついた、今度会ったらこう言ってやろ。


「どーも奥さん、知ってるでしょう?」

「世界一位でございます。」


「おい、牌食わねぇか?」






京太郎君のオカルトの炎をより実践的に使えるようにしてみた。

炎を振舞う。

そしてそれは徐々に燃え広がり対局者を不利にさせていく。

つまり後半になればなるほどツモが悪くなり、引けなくなってくる。

地味に厄介だが京太郎君のオカルトはこれだけじゃない。

まだ発展しそうである。

そういえば前に見た鳥の幻像は何か関係あったのだろうか?

それよりも今は弱点の克服の方が先決である。

能力のせいで後半にならないと効いて来ない。

つまり遅い。

それにツモが悪くなるといっても決して和了れないと言うわけでもない。

何より地力が無ければ早めに和了られてしまって終わるということもあるだろう。

要改善である。

今後の課題は早めに使えるようにするか若しくは炎を別に使うかだ。









先日のお話。

私はフェレッターズに呼び出されていた。

夏季オリをぶっちしたのがそんなにいけなかった?

どうやらそういうわけでもないらしい。

元々好きなときに来て好きなときに打つという内容の契約だったからそこは何も言わないとのこと。

それよりも問題なのは中学の方だった。

同業者やらファンやらが私が着ぐるみを着ていたいことを見られていた。

そしてそれが所属事務所に行った。

苦情の内容は概ねこんな感じ。


「何故世界一位にあんなことをやらせているの?」

「今回夏季に出なかったのは所属事務所のせい?」

「小鍛治プロがあんな格好してるなんて幻滅しました、はやりんのファンやめます。」


などなど。

放っておけ、余計なお世話だよ。

私の人生なんだから私の好きなように生きさせてよ。

世間では私の事を牌に愛された女とか何とか言われてるけど正確には違う。

私は牌に愛されてるのではなく、牌が私に媚び諂ってるだけ。

だから牌は私に嫌われないように私が可愛がる京太郎君にも媚び諂う。

プロで私に勝てる人三人くらい寄越してよ。

私が本気で打っても戦えるくらいの三人を。

でもいないんだよね、この世界には。

私が本気出すと一方的になっちゃう。

ねぇ、一回でいいから私にも普通の麻雀させてよ。

あと最後、瑞原プロは関係ないでしょ、いい加減にして!







やってまいりました、小鍛治健夜宅開催第一回お菓子杯。

賞品をお菓子にしてやったらみんなやる気になるかなと冗談みたいな思い付きで開催したんだけど思ったより乗り気でよかった。

というか照ちゃんの目がマジ過ぎて怖い。

そのときにオカルトの併せ技を披露してきたのは驚いた。

京太郎君の辺りに振りまく炎に照ちゃんのトルネードツモ。

これが合わさって炎の竜巻になる。

炎と竜巻の威力は何倍にもなる『火災旋風』と言ったところかな。

逆に咲ちゃんの嶺上開花と京太郎君の炎を組み合わせた時には人の心を惹く『花火』を咲かせる。

火災旋風と花火。

花火は見る人の目を惹きつけて止まない。

火災旋風は見た人を目が離せないくらいに怯えさせる。

どちらも見た者はその姿に釘付けになる。

その姿の恐ろしさと華やかさで。

全くもって末恐ろしい子供たちだ。

でもまぁ滅多に使う機会はなさそうだね、ほぼタッグ打ちに限られるし。

何か勿体無いなぁ……






色々有って私の誕生日や年末年始や京太郎君の誕生日などが過ぎる。

その間にも京太郎君たちは成長していく。

京太郎君のオカルトはどんどん伸びて南場だと優れた武器になっていた。

そして迎えた春。

照ちゃんと福路さんが三年生になり、京太郎君と咲ちゃんが中学一年生になって私たちがいる中学校に入ってきた。

二人に一応聞いておく、何処の部活に入るかを。


「おっぱい部。」


「そんな奇天烈な部は無いからね!?」


「冗談だって、俺はちゃんと入るよ。」


「麻雀部。」


「あ、私も。」


やったー、正式に部員が増えたぞ!

といっても普段と変わりないわけですが。

正式な部員4人に教師1人やっと部活っぽい感じ。

え? 部と呼ぶには最低でも顧問1人に部員5人いないとダメなの?

あちゃー、結局同好会止まりかぁ……

でもまぁ実績あるから部と言ってもいいよね?

あ、ダメなものはダメ? やっぱり同好会のままですか?

功績を認めて前年より予算出すからそれで我慢して、と。

まぁいっか、予算出るなら。








インターミドルが近づく頃、私は子供たちの成長に関して頭を悩ませていた。

照ちゃんは福路さんに負けて、福路さんは照ちゃんに負けて、その悔しさを発条にして成長してきた。

二人はいいライバル関係だ。

同年齢で公式試合に出れるライバルが居ることはいいこと。

だが咲ちゃんと京太郎君は同学年ではあるけどライバル関係には到ってない。

誰とでも仲良くなれる京太郎君に引っ込み思案の咲ちゃん。

二人は相性はいいけどライバル関係にはなっていない。

咲ちゃんはまだライバルになりそうな子が居るからいいとして、問題は京太郎君である。

京太郎君には目標に出来る人は居てもライバルになる男の子が居ない。

これでは成長の仕方が偏ってしまう。

京太郎君には初の挫折を味わってもらわないといけない。

だがしかし、たしか京太郎君と同年代の男子ではレベルが足りない。

というか男子のレベルが年々下がっているので期待できない。

人口多いし、中々の打ち手は居るけどただそれだけ。

ぱっとしないというか中堅どころが一杯居る感じ。

多分後進を育てるのをおざなりにしていた報い。

大沼プロや南浦プロの年代層はすごく渋くてかっこよかったんだけどなぁ……

二人ともお歳だし、一線を退いてるから仕方ないと言えば仕方ないんだけど。

痺れる様な打牌、ひりつく様な卓の空気、気の抜けない心理の読み合い。

当時小さかった私がテレビの前で見ていて手に汗握るくらいかっこよかった。

年とは残酷なものだ……

それは女性にとってはより残酷だけども。

おっと、話が逸れた。

とにかく京太郎君が更に成長するには敗北と挫折を味わせないといけない。

さて、どうするか。

ちょっと知り合いに頼んでみますか。






迎えたインターミドル。

照ちゃんと福路さんは最後のインターミドルとなるけれど心配はしていない。

問題は大会など初出場の京太郎君と咲ちゃん。

咲ちゃんにとっていいライバルと巡り会えるか目標が決まると良いんだけど。

不意にメールが届いた。

どうやら知り合いに頼んでいたことが上手く行きそうだ。

私も運営側に掛け合って知り合いの子を飛び入り参加させることを了承させた。

私は女の子三人を見送ったあと、京太郎君と待つ。

女子と男子は時間がずれているので男子が始まるまで女子の観戦が出来るのだ。

女子決勝は案の定私の教え子三人。

その中に入った暫定4位の子は可愛そうだとは思うけど頑張ってね。

咲ちゃんが刻子を抱えている状態で照ちゃんは好配牌。

福路さんも中々だけど多分一歩足りない。

始まって数巡で安牌として残していた南を切り照ちゃんが立直。

そこを福路さんがずらす。

福路さんの向聴数は変わらず。

傍目から見たらただの一発消しにも見えるけど違う。

次の巡、照ちゃんが生牌をツモ切りする。


「カン。」

「もういっこカン。」

「ツモ、嶺上開花・断ヤオ・中、責任払いの6400。」


福路さんがずらして咲ちゃんが取った。

これが福路さんの強み。

周りを利用して一番警戒すべき相手を和了らせないようにする。

つまり逆を言えば福路さんは照ちゃんを最大の敵だと認めているということだ。

でも咲ちゃんも利用されっぱなしという子でもない。

少しでも気を抜いたら福路さんだろうが実の姉だろうが容赦なく和了るだろう。

それは真剣勝負だから当たり前のことなのだろうけど。

次の局、福路さんが捨てた牌を鳴いた咲ちゃん。


「ポン。」


多分次の巡目で加槓できると思ったんだろう。

実際に牌をツモってきた。

そして咲ちゃんはそのまま鳴いた牌に追加する。







「カン――「ロン。」」


「槍槓・ドラ3、7700。」


だがそこに照ちゃんが槍を突き立てた。

いつもと気迫が違う。

そしてそれは三人とも……

結果としては咲ちゃんが3位、照ちゃん2位、福路さんが優勝。

咲ちゃんの集中力が途切れた途端、勝負は決まった。

初出場にしてはいい結果だと思う。

誰が勝ってもおかしくなかったあの状況では御の字だと思う。







試合が終わって三人が戻ってきた頃、京太郎君が試合に向かう準備をしていた。

それを見て私は一言発破を掛ける。


「京太郎君、全力で行きなさい。」

「初の試合だから気合入れて行くんだよ。」


「うん、わかった。」


「京ちゃん、頑張ってね。」


「いつも通りに打てば大丈夫よ。」


「行ってきます!」


京太郎君が対局室に向かい、私達はモニターを見ながら試合を観戦している。

京太郎君の対面に座った子が居た。

見覚えがある。

帽子を目深に被った子供。

身長は中一の京太郎君と同じくらい。

名前は『氷見木 太郎』。

というか頼んだ子だった。

まさか一回戦で当たるとは。

私としては僥倖である。

それにしてももうちょっとアレは何とかならなかったのかな……

始まった対局、京太郎君にとっては初の公式の場。

いい経験を積んで欲しい。






対面、氷見木の配牌は絶一門だった。

そこから萬子を切り出す。

打一萬、ツモ四筒、打三萬、ツモ五筒。

僅か4巡目で混一ドラ3、ダマの跳満確定の聴牌が出来上がりだ。

しかもそこから尚も攻める。


「立直。」


そして次の巡。


「ツモ、立直・一発・混一・ドラ3、4000・8000。」


流石の高火力と言ったところか。

東一局で倍満を叩き出すとは思わなかった。

京太郎君は驚いているようだったが焦っては居ないようだった。

多分後半で巻き返す気満々なのだろう。

その後は京太郎君が邪魔をしつつも氷見木が満貫と跳満を和了り南場に突入。

点数は京太郎君が18000。

下家が8000。

上家が12000。

対面の氷見木が62000。

その差44000。

京太郎君はかなりきついはず。

如何に南場に入ったと言ってもこの点差をひっくり返すのは簡単ではない。




京太郎君がオカルトを最大出力にして対面に狙いを絞る。

京太郎君が北を切る。

運がいいのか、流れが分かるのか、とんとん拍子で有効牌が来る。

そして聴牌。

牌姿はこうだ。


12399m123p23789s


一四索待ちの純全三色も見える平和。

四索は残り三枚、でも他家に全て使われている。

それに対して一索は一枚。

かなり分が悪い。

そんなことは分かっているのだろう。

それでもツモらないといけない。

京太郎君は巾着袋をぎゅっと握ってツモる。


「ツモ、平和、三色純全、3000・6000。」


だけどあの子は引いた。

もしかして京太郎君のキー牌なのかな?







南二局。

速攻で攻める京太郎君、立直を掛ける。

綺麗なメンタンピン。

そしてツモった。


「ツモ、メンタンピンドラ、2000・4000。」


南三局、京太郎君の親。

対面は動かない。

あくまで動かない。

動かないことを確信してこれ幸いにと京太郎君が立直をかけた。

対面が鳴く。

一発消し……ではなく、動いたのだ。


「ポン。」

「チー。」

「ロン、8000。」


立直したところを、動けなくなったところ見計らって鳴いてずらし、一気に噛み付いた。

結果として京太郎君は放銃。

また44000差。

だが京太郎君の目は諦めていなかった。






オーラス。

京太郎君の炎が周りを苦しめてかつ京太郎君が有利な状況。

配牌でかなり偏っていて、今では索子の清一が一向聴だ。

京太郎君がツモる。


1344556677889s


牌姿がこのようになり、立直を掛ける。

だが対面も立直をかけた。

そして次の巡。


「ロン、立直一発・清一・三暗刻・対々・ドラ2。」

「32000。」


京太郎君が切った牌に刺さる。

京太郎君はその日初めて出場して初めて箱を割った。

呆然としている京太郎君。

挨拶されると我に返り、挨拶を返す。

ショックは大きかったようだけどいい経験になったはずだ。




京太郎君が戻ってきた。

京太郎君は俯いたままだった。

顔を上げたと思ったら照ちゃん達をみてまた俯いてしまった。

私は一緒に居た照ちゃんに向かって言う。


「照ちゃん、先に帰っててくれるかな?」


「……わかった。」


照ちゃんは色々と言いたい事がありそうだったが飲み込んでくれた。

多分照ちゃんは気付いているだろうな、氷見木のこと。

二人きりになって京太郎君が口を開いた。


「ごめん、健夜さん……」


「俺、負けちゃった。」


「健夜さんの顔に泥塗っちゃった……」


「そんなこと気にしなくていいんだよ。」


「それより人と打ってどうだった?」


「他人に負けてどう思った?」


「……悔しい。」


「すっげぇ、悔しい……」


「悔しいよ……」


京太郎君が私に抱きついて泣いている。

ああ、やっぱり京太郎君も男の子なんだ。

負けたら悔しいし、泣きたくても女の子の前では泣けない。









     私の胸
だから泣ける場所で泣くしかない。

     私の元
だから吐ける場所で吐き出すしかない。


まるでかつてのような寂しい場面を髣髴とさせるけど、この子は彼とは違う。

京太郎君が泣き止んだ頃、タイミングを見計らって言う。








「周りは京太郎君のの涙を拭くことは出来るけど、男の子だから自分の涙は自分で拭きたいでしょ?」

「君の悔しさは君だけのものなんだから。」

「だから、その足で立って。」

「その足で走って。」

「その手で掴みに行くんだよ。」

「君自身の手で。」

「君だけの勝利を。」

「君だけの答えを。」


京太郎君は静かに頷いた。

負けて落ち込んだばかりのあとにこういうこと言うのもなんだけど、鉄は熱い内に打たないとね。








少しして私の携帯にメールが届く。

件の氷見木太郎さんからだ。


『やっほー、小鍛治さん、坊主は元気してるかい?』

『いやーわっかんねーもんだねぃ、このあたしが久し振りに熱くなっちゃった。』

『周りまで熱くさせてくれるなんて将来有望だねぃ、さすが小鍛治さんの御眼鏡に適った子だ。』

『それじゃあたしは仕事終わったし大会は棄権しておくから。』

『PS.ところで小鍛治さん、その子が大きくなったらあたしにくんない?』


ぜったいあげない!

誰が合法ロリにくれてやるもんか!

わざわざ長野まで来てくれたのはありがたいけど今すぐ横浜に帰れ!








インターミドルが終わり、一人やる気満々の子がいる。

張り切りボーイ京太郎君である。


「よし、やるぞー!」


「京ちゃん、気合入ってるね。」


「ああ、ちょっと勝ちたい相手が出来たから。」


「あ、もしかしてこの間の?」


「来年は氷見木に絶対勝ってやるんだ。」


「そっか、頑張ってね京ちゃん。」


そんなやり取りを咲ちゃんとしていた。

どういう練習を組むか考えてる私に照ちゃんが話しかけてきた。


「健夜さん、京ちゃんに言わなくていいの?」


「本人のやる気になるんだから言ったらだめかなって……」


「そうですか……」


「あの小鍛治先生……」


一応引退したはずの三年生がジトーっとした目で私を見ている。

やめて! そんな目で見ないで!

私が悪いってのはわかってるんだから!


「健夜さん、俺もっと強くなりたい!」


「強くなって来年には氷見木にリベンジするんだ!」


「うん……そうだね……」


ごめん京太郎君……

実はその人男子じゃなくて女子でしかも21歳なんだ……

だがそんなこと今更言えるはずもなく、申し訳なさから罪悪感だけが積もっていく……

そして三年生からの私の株がリアルタイムで急落していくのがわかる……

だって仕方ないじゃん……もう来年には三年生は居ないんだから……

臨時免許も切れそうだし……これは更新するとしても。

来年色々とどうしよう……










京太郎君の練習に付き合ってオカルトの練習とかツモ切りの練習とか観察眼の練習とかをする。

オカルトばかりに傾倒するのは良くないと常日頃から言っているし、それは京太郎君が一番分かっているはずだ。

だからデジタルやロジカルの打ち方も徹底的にする。

その甲斐あって京太郎君は現在進行形で以前とは見比べられないほど成長している。

やっぱりインターミドルがいい経験になったんだろうね。

それにしても京太郎君、最近背が伸びてきてるね。

麻雀だけじゃなく体も成長しているって事かな?








季節はやがて秋になり、私の誕生日がやってきた。

この日だけはどうしても好きになれない。

さよなら二十代前半、こんにちは二十代中盤。

絶対後半なんて言わない。

あーもーみんなしねばいいのにー。

ちきゅうなんておわっちゃえー。

でもちゃんと京太郎君たちが作ってくれたケーキは美味しく頂きました。

プレゼントもありがたく頂きました。






進路指導などが入る時期。

それはご多分に漏れずうちの教え子二人にもである。

福路さんは既に行くところを決めているからいいとして、問題は照ちゃんのほうだ。

実は照ちゃん何となくでしか決めてないらしい。

照ちゃん曰く、担任からは麻雀を活かす為にも名門の風越か東京の学校に行くように勧められたらしい。

だが照ちゃんはそんな気はないらしい。

何故かと聞いたら「東京は遠いからやだ、風越は女子高だからやだ。」だそうだ。

で、結局そんな話が私のほうにもお鉢が回ってきた。

正直うちなんて今まで同好会だったから何処でもいいと思うんだ。

照ちゃんの腕だったらどの学校に行っても個人でいい成績残せそうだし。

団体に出て打ちたいって言うなら話は別だけどね。

でも別にそんな感じでもなさそうだ。

照ちゃんはマイペースに自分の好きな方向に進むべきだと思う。

まぁ、迷ったなら誰かに助けてもらえばいいじゃない。

迷うことだってあるさ、人間だもの。






結局進路が遅めに決まり各々の好きな道をとったみたいだ。

照ちゃんは近いからってだけで選んだらしいけど。

そんなことより京太郎君と咲ちゃんの練習を見てあげないといけない。

二人が来れなくなってから三麻ばかりするようになってしまった。

多少力加減はしているけどやっぱり実力が拮抗してる方がいいよね。

あー来年は部員入ってくれるといいなー。

隣の学区は青く見えるよー……

高遠原から多少生徒ちょろまかしたらいけないかな? いけないよね……







時間は飛んで、色々有って迎えた春。

三年生は卒業して高校生になり、漸く中学二年になった二人と共に麻雀部の勧誘をしていた。


「ま、麻雀いっしょにやりませんか……」


「咲、そんなんじゃ聞こえねぇって。」


完全におっかなびっくりやってる咲ちゃんと呆れてる京太郎君。

何だかんだ言うけど相性のいい関係なんだよね、この二人。

私にもそういう人は来ないかな……

もういっそのことお見合いしてみるかな……

お見合いしても相手が尻込みするから上手く行った例がないんだけどね……

…………畜生。

で、まぁ勧誘はしてみたものの。


「いつも通りだね。」


「去年と変わらず、いや、二人が卒業しちゃったからむしろ悪くなってるんじゃ……」


「今年一杯はずっと三麻かな……」


「まぁまぁ、いざとなったら健夜さんに雀荘に連れて行ってもらおうぜ。」


そんな二人の会話を聞いていて思った。

下手に雀荘行けないんですよ、プロなのも有るけど教育者としても連れて行き辛い……

何か方法考えないとなぁ……












ある日、フェレッターズからお呼びが掛かった。

今インターミドルの調整で忙しいのに傍迷惑な事務所だ。

あ、そうだ。

私はフェエレッターズに出向き社長に話を聞く。


「それで私に何の用ですか?」


「いやね、大会側から解説のオファーが来てね。」


「いやあの、私先生やってますから。」

「どうやっても贔屓目とか言われるじゃないですか。」


「ああ、でも中学でしょ?」

「来たのはインターハイからの依頼だよ。」

「とりあえず考えるだけ考えておいて。」


「はぁ……」


「ところで小鍛治、あの子供たちはなに?」


「私の教え子です。」


「何で連れてきちゃったの……」


「まぁちょっとした課外授業ですかね?」


うん、課外授業、課外授業。

京太郎君と咲ちゃんを事務所の後輩たちと打たせていた。

戦績は勝ったり負けたりのちょっと負け越し気味かな。

でも大人相手にあれだけ打てるのはすごいと思う。

さすが私の教え子。


「ありがとうございました!」


「坊やすごい気合入ってたね。」


「勝ちたいやつが居るんで。」


負けたくない相手が出来たって素敵なことだね。

本人は気付いてないけどライバルはトップランカー。

すごいよね。








そして迎えたインターミドル。

咲ちゃんは緊張しているせいか無表情でいて。

京太郎君は頻りにきょろきょろしてる。

どうやらライバルを探しているようだ。

そんなことをしている間に試合開始の時間になり結局見つけられないまま対局室に移っていった。

結果だけ言うと京太郎君も咲ちゃんもインターミドル優勝。

優勝した咲ちゃん曰く。


「今年はお姉ちゃんも美穂子さんも居なかったから。」


だって。

一方京太郎君はというと……


「……納得行かない。」


「どうして?」


「あいつと出てない限り、俺は優勝したなんて思えない。」


「でも優勝には変わりないよ。」


「うん、それは嬉しいよ。」

「でも氷見木と打って、勝ってこそちゃんと優勝したって思えるんだ。」


「そっか、もしかしたらその人にたまたま何か事情があって来れなかっただけかもしれないし、いつか別の場所で会えるかもよ?」


「うん、それまで練習して、強くなって、あいつと打ちたい。」


彼は静かに燃えていた。

まるで彼の父親のように。

でもごめんね京太郎君……

相手は大人なんだ……

間違ってもインターミドルどころかインターハイにも出場出来ない人なんだぁ……







その数日後、私の元にとある人物が訪れた。

私にある頼み事をするために。


「健夜さん、お願いがあるの。」


「あれ、照ちゃんどうしたの?」


「その、インターハイで個人全国に行くことになった。」


「ああ……おめでとう。」

「もしかしてそれを報告するために来てくれたの?」


「……ちがう。」


「あ、じゃあもしかして私と打って調整するために来たとか?」

「照ちゃんの腕なら大丈夫だと思うけど。」


「それもちがう。」


じゃあ一体何のために……

単純に京太郎君や咲ちゃんの顔を見に来たとか……?

照ちゃんがモジモジとしながら漸く口を開いた。


「その……一人で都会に行くのは心細いから付いて来て欲しい……」


私は呆気にとられていた。

あの天下の白糸台でインハイチャンプになった子が、そしてインターミドルの優勝経験者がこの体たらくである。

やはり次元を超えてもポンコツに変わりないようだ。


「うん、わかったよ。」


こんな子に負けた私って一体……

私を打ち倒した時のあの子は何処に行ったのだろうか……

とりあえず社長に連絡してこの間の解説の仕事を引き受ける旨を伝えた。

それにしても高校一年にもなって心細いから付いて来てって……

この子ったらもう……





どうも、インターハイの解説をしながら照ちゃんの引率する破目になった世界一位です。

私は中学校を空けてる間は京太郎君と咲ちゃんをフェレッターズに預けて東京に来ていた。

東京に着いたら照ちゃんを見送り解説の仕事へ。

はっはー、こーこちゃんまだ大学卒業してないから私の相手は針生さんだぜー。

よかった、まともな人で。

解説中は弄られないし、ちゃんと仕事してくれるしで頼もしいなー。

なんかちょっと物足りない感じもするけど。

解説の仕事は恙無く進み順調である。

休憩に入り、人心地つく。

そういえば照ちゃんの方はどうだろうか?

そのときに私の携帯が鳴った。

照ちゃんから電話が来て「迷った」と一言。

そのときは本当に焦ってダッシュした。

あれだけ全力疾走したのはいつぶりだろう。

久し振りなもので体力が落ちていたのを実感した。

年は取りたくないもんだ。

……いや、私まだ若いんだけどね?








女子個人戦が始まった。

どうやら今回も福路さんと照ちゃんの一騎打ちになるようだ。

風越女子に行った福路さんと清澄に行った照ちゃん。

どちらも私の教え子には変わりないけどどちらにも頑張って欲しいものだ。

さて、今回はどっちが勝つかな?










解説の仕事から漸く解放されて仕事の打ち上げに行くとそこには氷見木太郎がいた。

間違えた、三尋木咏だった。


「おう、すっこや~ん。」


「三尋木プロも解説で?」


「そうだよん、何であたしにこの仕事が来たかわっかんねーけど。」

「だってあたしまだ21だぜ? プロ入って3年目なのに解説とかまともに出来るわけねーじゃん。」

「もっと回すべき仕事があるだろうがよ~。」


そう言いながら三尋木プロは自分の頭を扇子でぺちぺちしてた。

もう既に結構酔ってるのかな……

私がお酒を呷ると不意に三尋木プロが聞いてきた。


「ところですこやん、京太郎とか言ったっけ? あの坊主どうしてる?」


「うん? まぁ今年はインターミドル優勝してたよ、氷見木さんが居ないって嘆いていたけど。」


「ふ~ん……なるほどねぃ……」


三尋木プロが扇子を開いて口元を隠してそう呟いた。

厄介事に首突っ込みそうな性格だよね、三尋木プロ。


「ところですこやん、あの子――」


「あげないよ。」


「まだ言い切ってないぜぃ。」


「うん、でもあげないよ。」


「そこまで拒否んなくてもいいじゃんかよぉ。」


「……ま、そこまですこやんが大事にしてるってことは相当お気に入りなんだろうねぃ。」


「そういうこと。」


「お二人とも何のお話ですか?」


「ん~? すこやんの彼氏の話。」


「えりちゃんも興味あるかい?」


「いえ。」


「なんだよー、にべもないねぃ。」


そんな話をしながらインターハイのお仕事を終わらせ翌日には照ちゃんと二人で長野に帰った。

三尋木プロには注意しないといけないなー、京太郎君が誑かされかねない。

悪い虫は全部私が払います。

年増のロリなんか言語道断です。











部活動をしていたときの話。

咲ちゃんがノートに何か書いている。

何を書いているのか尋ねてみると咲ちゃん曰く……


「いいポエムが浮かんだので書き留めてるんです。」


あー……あれかー、中学生特有のやつかー。

私もそんなことしていた時期もあったなー……

今思い出すと無茶苦茶恥ずかしいけどね。

まぁ何にせよ咲ちゃんはこのまま放っておこう。

そういうのは生暖かい目で見守らなくちゃ。

もう一方の京太郎君もこの間やってたし。


「闇の炎に抱かれて消えろ!」


とか何とか。

黒歴史確定だね。

ふふふ、二人とも大きくなったときそれを思い出してベッドの上で苦しみ悶えるがいい!

因みに私は黒歴史な過去は克服した!

たまに現在進行形で黒歴史を作ったりしちゃうことも有るけど……

小鍛治健夜は過去を振り返らない女なのさ!

そこ、学習しない女とか言わない。






ちょっと時間が経って夏の終わりに入った頃。

うちの部室にお客さんが来ていた。

といっても元部員だけど。


「あれ、照ちゃんどうしたの?」


「今日は部活休みだから。」

「だから打ちに来た。」


「……あ……ふーん。」


「…………」


「照ちゃんが良ければいつでも来ていいよ。」


「普段は部活で忙しいから……」


「まぁそういうことにしといてあげるよ。」


見栄を貼っちゃって。

本当は寂しくなって来たくせに。

そういえば清澄って部員は居るんだろうか?

咲ちゃんたちが高一のときは団体でインターハイに出場してたけど、今の時点ではどうなってるんだろ?

教え子のことが気になって部活のことを聞いてみるが何か濁していた。

まぁ言いたくないんならいいけどさ。

それからもちょくちょく照ちゃんはOGとして部室に来ていた。

福路さんは照ちゃんほどではないけどたまに来る。

しかも照ちゃんと一緒に。







更に時期が飛んで冬。

私の年はケーキの売れ時を過ぎた年齢となり、冬の厳しさを感じていた。

しかも既に12月の中旬を過ぎている。

そして来るべき12月25日。

今日は大掃除をする日です。

他に何か大きなイベントがあるかもしれないけど私には関係ない。

え? クリスマス? 知らない子ですね。

今までクリスマスなんて行事はしてきませんでしたし。

だから今日は家に籠もって大掃除する日なんだよ! 誰がなんと言おうと!

だって今外に出たら長野の冬の厳しさを感じさせないムードが流れてたりするじゃないですか……

それを見た私は余計に冷え込むじゃない……

畜生……カップルなんて雪に埋もれて凍えればいいんだ。

ああ、でもサンタさん、叶えてくれるなら健夜はいい子にしてますから私に素敵な旦那さんをプレゼントしてください。

出来れば若くてかっこよくて性格良くて堅い職業に就いてる旦那さんを私にプレゼントしてください。。








年末年始が過ぎ、実家に戻ったことによって体力や精神力が回復した。

実家ってやっぱりいいよね、のんびり出来て。

京太郎君と一緒に行ったから更に回復力アップ。

現在の私のライフポイントは30000くらい。

今の私は阿修羅すら凌駕してる!


「そういえば突然だけど……健夜さん、彼氏作んないの?」


きょうたろうくんのふいうち!

ぐほぉ……

今のでライフポイント29900くらい持ってかれた……

健夜さん大ピンチ。


「ま、まぁいい人と中々巡り会えなくてね……」


「ふ~ん、本当かなー?」

「あ、でも健夜さん有名人だから表向きには言えないよね。」


「そ、そうかもね……」


「でも健夜さんほどの人なら相手なんてより取り見取りだろうな。」


必死の抵抗をしたのに追加で1000ポイント削られた!

もうやめて……私のライフポイントはトび終了よ……


「あ、そういえばこの間健夜さんと一緒に実家行った時におじさんとおばさんが……」

『そろそろ健夜も結婚する年齢か。』

『健夜に浮いた話や、若しくは京太郎君の周りによさそうな人はいないかい?』

「なんて言ってましたね。」

「まぁ健夜さんは良い人と結婚できそうだけど。」


「うん……そうだね……出来るといいね……」


「出会いが無いんならお見合いでもいいんだし。」


やめて! それは マジで やばい!

『まさかの京太狼』君による不意打ちはとても効きました……







私は須賀さんと家に居た。

そして須賀さんがお礼と言いながら服を脱いでくれる。


「小鍛治さん、普段京太郎を見てくれてるお礼だ。」

「俺のをみせてやるよ。」


「うわぁ……すごい……」


とても厳つくて、見るもの目を惹き魅了するそれは私を虜にする。

多分こんな人に抱かれたら一発でノックアウトだ。


「触ってもいいよ。」


須賀さんが笑顔で私の心を擽って来る。

私は恐る恐る手を伸ばして須賀さんのそれに触れた。


「これ、すごい……」

「太くて……硬くて……逞しい……」

「今まで写真とかでしか見たことなかったけど……直に触れるととっても熱い……」


そう言いながら私は須賀さんの鍛えられた筋肉を撫で回していた。

普通の人だったら腹直筋ばかり目に行くが鍛え難い外腹斜筋もすごい。

肩の盛り上がった三角筋から流れる上腕二頭筋と上腕三頭筋は丸太のようで頼もしい。

首筋の男らしい胸鎖乳突筋と厚い胸板の大胸筋。

背中の大きい筋肉、僧帽筋と広背筋は美術品の彫像と変わらないくらい。

ズボンで隠れているけどお尻の分厚い大殿筋とそこから繋がる大腿二頭筋と大腿四頭筋が太くて逞しい。

一見見え難いヒラメ筋もかなり……


「健夜さん。」


「え、京太郎君……?」


声が掛かった方向に振り向くとそこには上着を脱いだ京太郎君が立っていた。


「俺も父さんを見習って鍛え始めたんだ。」


「わぁ……こっちも若い筋肉で瑞々しい……」


「小鍛治さん、俺と京太郎の筋肉……」

「どっちがいい?」


「そんな……選~べ~な~い~♪」


485 名前: ◆QgNdSUKOYA[saga] 投稿日:2013/12/09(月) 21:02:03.33 ID:yJJEgIaio [7/13]


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「……はっ!?」


私は気付くと自分のベッドで寝ていた。

なんだ、今のは夢だったのか……そりゃそうだよね……

でも夢の中とはいえ二人ともすごい筋肉だったなぁ……

あ、保健の授業で習ったから知ってるだけで決して筋肉フェチとかではないです、はい。

でもなんであんな夢見たんだろう……欲求不満なのかな私……







ある日、咲ちゃんにこんなことを聞かれた。


「健夜さんって服は何処で買ってるんですか?」


「えっと……」


「健夜さんって洋服お洒落だったりするから教えてもらおうと思って。」


「えっと……友達から貰ったものをコーディネートしてるだから何処で売ってるのかは分からないんだ……」


「そうなんですか……」


私は困窮した。

だってこれ社長や周りの人が私の私服が余りにひどいからといってスタイリストさんに見繕ってもらったものなのだ。

普段一人で買いに行くとなったら、適当にで済ませようとしています。

だからごめん、咲ちゃんの質問には答えられないよ……

あ、そうだ。


「咲ちゃん、今度私の行きつけの店に連れて行ってあげるよ。」


「本当!?」


「うん。」


よし、今度しま○らかジャ○コ辺りに連れて行ってあげよう。

そのときになればきっと私のファッションセンスが光るはずだよ!









中学校で実施される身体測定の日。

女の子たちは戦々恐々と体重計に乗り、男の子たちは競って背を比べる。

そして教師陣はそれを記録していく。

記載事項の不正は許しません。

特に体重。

京太郎君の身長と咲ちゃんの身長を見てみるとやっぱり伸びていた。

京太郎君は今160台で私よりちょっと大きい。

咲ちゃんは140台で私よりちょっと小さい。

二人とも昔と比べたら大きくなったよね。

ちょっとした成長が嬉しくも寂しい。

昔を懐かしむようになったらおばさんになったみたいだと言われそうだ。





今現在、私は炬燵の中に囚われている。

最近はストーブを焚かなくても良くなったけどそれでもまだ肌寒い時期だ。

だから私はおんぼろの隙間風が入るようになった一軒家で炬燵の温かみを甘受していた。

そしてそれは私の家に訪れた人もそうである。

次から次へと連鎖的に人を捕獲していくモンスター炬燵。

麻雀を打つにしても炬燵を使っている。

動くときは立ってる者は親でも使う精神なので誰も炬燵から動こうとしない。

ああ、せめて福路さんが居れば楽なんだろうけどなぁ……

でも居るのはポンコツ姉妹にまったりモードの金髪少年だけである。

なんもかんも微妙に寒い温度と炬燵が悪い。







春になり、季節も陽気になり始めると京太郎君と咲ちゃんも上級生になった。

今年も新入部員獲得のために頑張るが状況は芳しくない。

なぜだろう、実績があるのに誰も来ないとはそんなの絶対おかしいよ。

だが最近妙な噂を聞いた。

どこどこの学校の中学は魔王と大魔王と覇王と破壊神と邪神がサバトを開きながら麻雀やっている。

知らずに入った部員はミサの生贄にされて蝋人形にされるとかなんとか。

ツッコミどころが盛りだくさんである。

ミサなのにサバトとはこれ如何に。

そもそも中学校の麻雀部に魔王とかいるわけないでしょ。

というか蝋人形って明らかに閣下じゃん、魔王じゃないじゃん。

もういっそメイクでもして悪魔声でもだしてやろうか。

そんなこんなで結局新入部員はゼロ。

折角京太郎君に踊ってもらったのに。

このままだと来年には廃部かな……





初々しい新入生が落ち着いてきた頃。

今日は一年に一回の健康診断である。

片目を隠して指を刺したりするアレである。

そして私たち教師陣も健康診断かぁ……

……いやぁ、よかった、血糖値とか血圧が正常値で。

診断する項目が子供たちと違うのって何か哀愁を感じる。

肝臓の値とか子供は調べないもんねー。

なんにせよ健康は大事だよね。








今日はフェレッターズに新しい人が入ってくる日。

有望な人が入ってくれるといいな、主な理由として私が呼ばれなくて済むように。

少し見回すとやっぱり新人さんが入っていた。

私はその人に近づいて挨拶をする。


「こんにちは、新しく入った人だよね?」


「はい、藤田靖子です。」

「小鍛治さんの話は色々と聞き及んでいます。」


「そう、藤田さん、これからよろしくね。」


「あ、はい、よろしくおねがいします。」


やったぜ。

これで京太郎君と咲ちゃんに専念できる。

そして来年には助教諭をやめてやるんだー。

その為にも藤田さんには頑張って戦力になっていただこう。

なんなら私が育成しても良いよ。






今年もインターミドルの季節がやってきた。

京太郎君と咲ちゃんにとっては最後の年でもある。

悔いの無いようにって言ってもまず負けないから心配はしてない。

さて、今年は何処で練習しようかな。

やっぱり既に二人が馴染んで来たフェレッターズ?

それとも照ちゃんや福路さんを集めて打ってもらう?

思い切ってどこかコネのあるところに行って見る?

京太郎君の新技? も試してみたいし。

しておきたいことがけっこうあるなぁ。


結局フェレッターズで調整することになったんだけど……


「藤田さん、打ってもいいですか?」


「ああ、ついでに宮永も一緒にかかってこい。」


「あ、藤田さんおねがいします。」


う~む、すっかり藤田さんと馴染んでる。

京太郎君は元々人当たりがいいから良いとして。

咲ちゃんまでここに馴染むというのは予想してなかった。

これも京太郎君効果かな?

改めて考えてみると京太郎君って不思議な魅力があるんだよね。

気付いたらいつの間にか人の輪の中に入ってるというか入れられてるというか。

彼自身中心ではないのに彼が輪に入ると皆が入ってる。

不思議だ。








迎えたインターミドル。

特筆すべき点は無いけれど去年と同様幼馴染優勝したもんだから周りは揶揄してカップル優勝なんて言っている。

長年独り身だった私への当て付け?

あとで私と打とうか。

結局京太郎君の新技は披露されないままだった。

私や藤田さん相手にはバンバン使ってたけどね。

やっぱ今のインターミドルのレベルでは無理かな。

それにしても京太郎君優勝したのに若干落ち込んでいるな。

大丈夫、試合中の闇炎発言事件は将来弄られるおいしいネタだから。

え、そっちじゃない?

氷見木が出てなかったことについて?

相手の事情は仕方ないよ、来年にでも会えるんじゃないかな?

私は多分インターハイの解説に行くから会って来るけど。









「健夜さん、その……今年もお願い。」


「うん、わかった。」


はい、任されました。

うん、分かってた。

照ちゃんが今年も私に頼むのは分かってた。

だからインターハイの解説の仕事を請けたわけだし。

だって照ちゃんはすぐ迷子になっちゃうもんね……

麻雀強い人はポンコツの傾向があるのかも?

私は違います。

違いますからね?








インターハイ全国会場に照ちゃんを送ったあと解説の仕事をしに実況室に向かう。

今回で何回目の解説の仕事だろう。

何だかんだ言いながらこーこちゃんとも長くやったりしたこともあるから慣れてしまった。

そういえば十年前にも来ていたっけ、そのときは選手だったけどさ。

今回の私はAブロックの解説をしながら休憩時には反対のブロックの解説を見ていた。

あ、今回は三尋木プロではないんだ。

解説していたのは赤土プロ。

彼女の仕事振りは的確で初心者の人でも分かりやすくなっている。

三尋木プロとは対照的だね。

今年の団体優勝校はどこになるんだろ。

千里山・姫松辺りが候補かな。

あとは臨海とダークホースの龍門渕。

白糸台と永水は運次第だと思う。

こと麻雀という競技においては。

女子個人はまぁ今年も元教え子の一騎打ちだろうね。







そして仕事も終わり、今回も例の如く打ち上げである。

そこには当然同業者が居るわけで、その中には見知った顔が何人か居た。

氷見木太郎こと三尋木咏プロ。

"私より年上"の瑞原プロ。

今回のインターハイでは当たらなかった赤土プロ

私の憧れであるシニアリーグの大沼プロ。

元新道寺の野依プロ。

最後二人は明らかに実況解説向きじゃないけどまぁそんな感じ。

アナウンサーは村吉みさきアナに、針生えりアナ、そして今年から入った福与恒子アナ。

来たかー、ついに来たかーこーこちゃん。

こーこちゃん曰く十年前だかに私にサインしてもらったと言われたんだけど正直な話覚えてない。

だってあの頃色んな人にサインしてたしこーこちゃんは当時12~13歳だからわからないって……

多分あの子かなと思うけど見た目が全然違うもん。