京太郎「背景に溶け込んでかなり立ったが潮時だ」

京太郎「このままこの立ち位置に居るだけじゃ世界から消されちまうな」

京太郎「いつの間にかいなくなってました、なんてシャレにならねぇし……なんとか目立たないと」

京太郎「こうしてても始まらねぇし、とりあえず外に出るか」

京太郎「募金でもして暇潰しするか」

京太郎「えーと、確か募金センターは……」ピポパ



京太郎「救われない子供たちに愛の手を!!」

京太郎「わずかワンコインで50人もの尊い命が助かるんです!」

京太郎「もしあなた方に少しでも慈悲の心があるのなら、ご協力お願いします!!」

京太郎(……はぁ、やっぱ通行人から敬遠されてるなぁ)

京太郎(そりゃそうか。俺だって通行人の立場なら止まらないし)

京太郎(て言うかなんで俺こんなに必死になってんだ……)

?「………」

ゆみ「なぁ、君」

京太郎「?」

ゆみ「これ、少ないがちょっとは足しになるだろうか?」ジャラッ

京太郎「……!は、はい!勿論です!ありがとうございます!!」

ゆみ「ああ、それはいいんだが……募金にしては凄い気合いの入りようだな」

京太郎「そうですか?」

ゆみ「ひょっとして君の知り合いで募金が必要な方でもいるのか?」

京太郎「いえ、そういうわけではないんですけどね」

京太郎「ただ今もこの集めたお金を頼りにしてる子供たちが世界中に居るって知ったら……居てもたっても」ハハハ

ゆみ「……そうか。優しいな君は」

ゆみ「その内君に良き事があらんことを祈るよ。それじゃ私はこれで」

京太郎「あ、ちょっと待ってください!」

ゆみ「ん?なんだ?」

京太郎「俺と、俺と一緒に募金活動しませんか!!」

ゆみ「………」

ゆみ「その、一応聞いておくがなぜだ?」

京太郎「なんだか分かんないけどピンときたんです」

京太郎「俺、貴方となら世界中の子供たちを救える……そんな気がして」

京太郎「自分でとんでもないこと言ってるって分かってますけど……これだけは言っておきたかったんです」

ゆみ「……はぁ」

ゆみ「気持ちは嬉しいがすまない」

京太郎「……そうですよね。すみません」

ゆみ「ああ、いや!嫌ってことじゃないんだ!ただ……」

ゆみ「部活に手間のかかる奴らがいてな…私が抜けるワケにはいかないんだ。本当にすまない」

京太郎「いえ。お気持ちだけで充分嬉しいです」

京太郎「募金、ありがとうございました」ニカッ

ゆみ「こちらこそ、ありがとう。君には大事な事を教えられた気がしたよ」

ゆみ(こういう男子がまだ現代に存在していたとはな……)


―――――
――――


京太郎「あんまり集まらなかったな……」

京太郎「まだ続けるか、それとももう諦めるかな」

京太郎「あーやめだやめだこんなん!世界の子供たちの前にまず俺が救われてねぇよ」

京太郎「俺も他人の心配より自分の心配しろってんだよ」

京太郎「そうと決まれば……この金でパチンコでも打ちに行くか」



ジャラララララララ ティウンティウン

京太郎「よーし、頼むぜ!」

京太郎「パチンコの神よ今だけ俺に力を!!」

京太郎「まっさかこんなボロ勝ちできるとはなー」

京太郎「えーと、ひぃふーみーの……しめて46万」

京太郎「ひょっとして俺って麻雀よりこっちの方が向いてたのかもなぁ」

京太郎「でも……へへ、でもこんだけあれば色々できるな」

京太郎「なにしよっかなー想像が膨らむぜ」ニヘラ

京太郎「ま、元手は募金の金なんだし寄付しかねーわな」

京太郎「こんだけありゃ100人くらい助かるだろ」


――――――
―――――


京太郎「寄付のお礼の手紙を大量に貰ったけど……」

京太郎「同じ紙切れでも金が手紙に変わるだけでこうも違うのか」ハァ

京太郎「……でも、感謝されるのっては気持ちいいな」

京太郎「さ、明日からまた頑張るか」

京太郎「んー、今日もいい天気だ」

京太郎「こういう日は絶好の釣り日和だな」

京太郎「よっしゃ待ってろよカピ、今日の晩飯は俺が釣ってきてやるよ」

キューイ!!


京太郎「おーし、一番乗り」

?「……」

京太郎「……じゃなかったな」

京太郎(先客か……俺も結構早く来たつもりだったんだけどな。どんな人だろ)チラッ

誠子「せいっ」パシャァ

京太郎「お、おおーー!」

京太郎(あんなデケーブラックバス一振りで連れるもんかフツー!?)

誠子「ん?」

京太郎「すごいですね、まさにお見事!って感じで!」

誠子「そ、そうかな?そんなに大したことじゃないと思うけど……」

誠子「ところでその格好見るに君も釣りに来たんだろ?」

京太郎「はい。今夜の晩飯でも釣ろうかと」

誠子「なるほどね。釣りはどんぐらいやってるの?」

京太郎「気が向いたらやるぐらいで、そんなには」

誠子「へぇー……それじゃ、ちょっとやってみせてよ」

京太郎「いやいや!あんな凄いの見せられた後じゃ恥ずかしいですよ!」

誠子「いいからいいから、ほら」

京太郎(ど、どうしてこんなことに……)

京太郎(……でも女の子の前で、格好悪いとこは見せらんないな)ヒュッ

京太郎「よし、かかった!」

京太郎「こい!」グイッ

カエル「ゲコッ」

京太郎「……」

誠子「ぷっ…!あははははは!!」

京太郎「~~~~!」ワナワナ

誠子「な、なんていうかあんまり上手くないんだね、君……ぶふっ」

京太郎(くっそ、最悪だぜ……)

京太郎「俺って釣りの才能無いんですね」ズーン

誠子「まぁまぁ、そんな落ち込まないで。私だって日によっては一匹も釣れない日もあるから」

誠子「もし良かったら釣りの初歩から教えてあげるよ?釣り仲間ができるのは嬉しいし」

京太郎(そう言ってもらえるのはありがたいけどまた恥かくのはなぁ……)

京太郎(どうしよっかな……)

京太郎「是非ともお願いします!というか弟子にしてください!!」

誠子「で、弟子はちょっと困るけど…私が教えられる範囲なら教えるよ」

京太郎「よろしくお願いします師匠!」

誠子「師匠……ま、まぁいいや」

誠子「まず、釣りって言うのは色々な釣り方から竿やオモリによって釣れる魚が変わってくるんだけど……」

京太郎「すいません難しいことは後で、とりあえず釣り方教えてくださいよ師匠」

誠子「いや待て。これ初歩中の初歩だぞ?」

京太郎「だって、釣りってもっと頭をからっぽにしてからするんじゃないですか?」

誠子「はぁ……ダメだ。君は何も分かっていない」

誠子「釣り方の前に知識と情報を知っておくことが釣りに何よりのアドバンテージなんだ」

誠子「それをこれから君に教えてあげよう」クドクド

京太郎(な、なんだか面倒くさいことになったな……)


―――――――
――――――


誠子「――というワケだ」

京太郎(やっと終わった……まさか一時間も話されるとは)

誠子「じゃあ、今からもう一回やってみて。今の話聞いてたならちょっとは変わってると思うから」

京太郎「は、はい」

京太郎(今度こそ!)ヒュッ

京太郎「な、なんかスゲーでかいの来てます!」

誠子「ホント!?とりあえず力負けしないように、すばやく引っ張って!」

京太郎「重……っ!!ぬおおおおおおお!!」グイッ


京太郎「どうですか師匠!?俺超大物釣りあげましたよ!」

誠子「……90.5って…なんだこれ」

京太郎「師匠?」

誠子「こ……こんな大きさの虹鱒見たことが無い」

京太郎「マジですか?よっしゃー!!」

誠子「凄いな君……さっきの話聞いただけでここまで成長するなんて」

京太郎「そんな、たまたまですよ」ハハ

誠子「釣りにたまたまは無いよ」

誠子「だからひょっとして……」

誠子「私の技術と知識を全て君に叩き込んだら、君は歴代史上最高の釣り師になれるかもしれない」

京太郎「えっ」

京太郎(あ、あれ?もしかしてこれ俺って釣りの才能あったってオチなのか?)

京太郎(と言うか昨日のパチンコといい……変な才能ばっか開花していってる気がするんだけど)

誠子「釣りにたまたまは無いよ」

誠子「だからひょっとして……」

誠子「私の技術と知識を全て君に叩き込んだら、君は歴代史上最高の釣り師になれるかもしれない」


―――――――
――――――


京太郎「……歴代史上最高の釣り人、か」

京太郎「そう言えば今日も亦野さん居るって言ってたっけ」

京太郎「今日はどうしようかな」

京太郎「最近身体動かしてなかったしな、サッカーでもするか」

京太郎「けど、人数集まらないとできねーし簡単に集まらないよなぁ……」

京太郎「どっかのチームの入団テストでも受けてみるか」ピポパ


京太郎「すいませーん、入団希望の須賀京太郎です」

責任者「入団希望の方ですね」

責任者「あちらで入団テストが行われているので、そちらの方へ向かってください」

京太郎「は、はい」

京太郎(緊張するなー、上手くいけばいいけど)ドキドキ

ゴウカク~

京太郎「うっし!これで今日から俺もこのクラブの一員だ」

シアイノ アルヒハ クルンダゾ

京太郎「はい!よろしくお願いします!」


――――――


京太郎「よかったよかった、これで金出してくれた母さんに顔向けできる」

京太郎「咲たちにもこのこと……」

京太郎「………」

京太郎(ふと思ったけど、入団テストに合格したってことは俺サッカー部の方でもやっていけるんじゃないか?)

京太郎(いやいや、でも俺も咲たちと一緒に……麻雀部でインターハイに……)

京太郎(けど荷物持ちだけとして行くぐらいなら、他の手を選ぶのも……)

京太郎「部長」

久「ん?どうしたの須賀くん」

京太郎「俺フィッシング部に入るんで麻雀部やめます」

久「……えっ」

優希「じぇ!?」

和「あの、急にどうしたんですか須賀くん?」

京太郎「俺は麻雀よりも釣りに生きることを決めたんだよ」

咲「ちょ、ちょっと京ちゃん!私そんなの一言も……」

まこ「京太郎お前さん本気で言うとるんか?」

京太郎「本気です。もう決めましたんで曲げません」

久「……掛け持ちって形にはできないのかしら?」

京太郎「そんな中途半端な事できませんよ。極めるんなら一つの事に集中したいんです」

優希「コラー!そんな勝手なことはムグッ」

京太郎「いいですよね?部長」 ハーナーセー!!イヌー!!

久「………」ハァ

久「そこまで言うなら…分かったわ。退部届はこっちで書いておくから」 

京太郎「今までお世話になりました」

京太郎「ここがフィッシング部か……」

京太郎「ウチのフィッシング部は毎年地区大会初戦敗退の弱小校らしいけど」

京太郎「できることなら、俺が全国まで連れて行ってやりたいな」

京太郎(部員の人たちみんないい人だと尚更いいけど………よし!)

京太郎「すいませーん!入部希望者なんですけどー」ガラッ

智美「ワハハ、入部希望者が来たぞー」

やえ「嘘をつくな。こんな弱小部に誰が………ってホントじゃないか!」

誠子「き、君は!?」

京太郎「亦野さん!」

智美「なんだー?二人とも知り合いか?」

誠子「はい、一度だけですけど釣りをしたことがあって……」

智美「そうかー、でも嬉しいな。もう新入部員は見込めないと思ってたからなー」

京太郎(待てよ。この人もよく見たら鶴賀の……)

智美「ウチは毎度の如く地区大会一回戦敗けの弱小校だけど、今回は二回戦までは行きたいな」

やえ「ああ、今度こそお見せしよう!王者の釣り筋を!」

亦野「先輩たち今年で最後のインハイですもんね」

京太郎(最後のインターハイ……それじゃあこの2人は3年生なのか)

京太郎(なら、尚更全国まで勝たせてあげたいな)

京太郎「先輩、新入りが生意気言いますけど二回戦と言わずもっと先まで行きましょうよ」

智美「え?」

京太郎「俺には全国制覇。これしか見えてませんから」

智美「ワハハ、今日から地区大会だー」

やえ「ああ、楽しみ過ぎて眠れなかったぞ」

京太郎「凄い自信ですね。怖くないんですか?」

やえ「ま、まぁな!王者は常に余裕を持ってるものだ」

やえ(怖いに決まってるじゃない……)

智美「大丈夫だー……今回は誠子と京太郎がいるからな」

智美「悲願の一回戦突破、成し遂げるぞー!」

オオーッ!!





京太郎「あ、あぶねー……」

京太郎(……地区大会一回戦でこのレベルかよ、自信無くしそうだぜ)

誠子「凄いじゃないか京太郎!」

京太郎「へ?」

やえ「まさか…ホントにあ、あの龍門渕を倒したのか!?」

京太郎「えーと、今の相手ってそんなに凄いトコだったんですか?」

智美「今お前が倒した龍門渕は去年の長野代表で全国ベスト8だぞー」

京太郎「マジ!?」

やえ「こ、これは……ひょっとしたら今年は本当にイケるかもしれない」


京太郎(そうして俺達は破竹の勢いで決勝まで勝ち進んだ)


智美「ワハハー……まさかホントに全国へ連れて行ってくれるとはな」

やえ「ふ、ふん!感謝とか別にしないからな」

京太郎「そんな、みんなの実力のおかげですよ。それに……闘いはまだまだこれからだ」

誠子「ああ、そうだな」

やえ「……全国では"竿に愛された子"も出てくる。簡単には行かないぞ」

京太郎「関係ありませんよ」

京太郎「邪魔する奴は全員、ぶっ倒してやりましょう」ゴッ


『それでは第171回、全国高校釣り選手権を開催致します』


智美「ワハハー、一回戦突破だー」

やえ「全く持って余裕だったな。肩慣らしにもならない」

京太郎(出番なかった……)

誠子(こ、これが3年ブーストか……すごいな、あの小走先輩が無双するなんて)

やえ「お前ら!この調子で次もサクッと勝つぞ!」


京太郎(先輩達が覚醒し、そうして俺達は破竹の勢いで決勝まで勝ち進んだ)

京太郎(そしていよいよ決勝戦まで来た……)





―――――
――――


やえ「次の部長は誠子に任せるよ」

誠子「ええっ!?私ですか?」

智子「ワハハー、当然だろー。最年長なんだから」

誠子「でも、私より京太郎の方が……」

京太郎「いやいや。俺は部長とかそういう柄じゃないんで」ハハ

京太郎「ってか先輩たち卒業式の時間大丈夫なんですか?」

智美「そうだなー、そろそろ行かなきゃだな」

やえ「ああ」

やえ「春季大会で無様な真似したら承知しないかんな!」

智美「確かに渡したからな。しっかり頼むぞー」

京太郎 誠子「はい!」


京太郎「それじゃ、俺達も行きましょうか先輩」

誠子「………」

京太郎「先輩?」

誠子「京太郎、私さ……全国優勝したらずっと言おうと思ってたんだ」

京太郎「何をですか?」

誠子「京太郎……その」

誠子「一緒に世界を目指さないか?」

京太郎「……世界?」

誠子「ああ。お前となら、世界で通用するって私は確信してるんだ」

京太郎「買い被りですよ、俺はそんな器の人間じゃありません……けど」

京太郎「世界を相手に闘うっていうのはちょっとワクワクしますね」

誠子「なら……!」

京太郎「俺でよければ、お供しますよ」

誠子「……ありがとう。京太郎が隣に居るなら、私は何も怖くないよ」

京太郎「俺の方こそ、あの時誠子さんと会ってなかったら今の俺はいませんでした」

京太郎「ホントに感謝していますよ」

誠子「……お、おう」テレッ

誠子(何照れてんだ私……らしくないな)

京太郎「さて、と!じゃ早速世界相手に戦うためにひと釣り行きますか」

誠子「え?先輩たちの卒業式出席しないのか?」

京太郎「ほら、早くしないと。魚は待ってくれませんよー」

誠子「……」

誠子「ああ……そうだな!」