京太郎「背景に溶け込んでかなり立ったが潮時だ」

京太郎「このままこの立ち位置に居るだけじゃ世界から消されちまうな」

京太郎「いつの間にかいなくなってました、なんてシャレにならねぇし……なんとか目立たないと」

京太郎「けどそうは言ってもなぁ、何からやれば……」

京太郎「奈良にでも行くか」

京太郎「ってことで奈良に行ってくるから」

咲「えっ……何言ってるの京ちゃん?」

京太郎「部長にはしばらく部活休むって言っといてくれよな」

京太郎「じゃ、後は任せた」

咲「意味わかんないよ!……ってああもういないし!」


―――――――
――――――


京太郎「おお、ここが奈良かー!」

京太郎「鹿ばっかと思ってたけど、空気美味しいし全然良いとこだ」キョロキョロ

京太郎「あ、せっかく来たんだしどうせならどっか名所でも回ってみてーな」

?「………」テクテク

京太郎「お、丁度いいところに。ちょっとそこの人に聞いてみるか……すいませーん」

宥「………?」ブルブル

京太郎「!?」ビクッ

京太郎(な、なんだこの人?眼鏡にマスクにニット帽……怪しすぎだろ)

京太郎(それに……)チラッ

宥「えーと、私ですか?」

京太郎(マフラーって……)

宥「あ、あのぅ!」

京太郎「あっ、はい!」

宥「どうかされたんですか?」

京太郎「えーと……」

京太郎(……やっべ、あまりの衝撃に何て言おうか忘れちまった)

京太郎(何て言おうとしたんだっけ?)

京太郎「なんか山から吊るされるやつをテレビで見てやってみたいと思って来たんですけどどこに行けばいいですか?」

宥「山から吊るされるやつ……あ、ひょっとして大峯修行体験のことかな?」

京太郎「大峯修行体験?」

宥「ええ。ここから見えるあの"吉野山"って山でやっている筈ですけど……事前予約とかはしてますか?」

京太郎「え?……予約?」

宥「はい、確か参加するには予約が必要だったと思います」

京太郎「はぁ?なんだよそれ、面白くねぇなー」

宥「……ごめんなさい、お力になれなくて」

京太郎「いえいえ。どうもありがとうございました」

宥「あ、でも……」

京太郎「?」

宥「えっと、一応私の二つの下の子に山登りが趣味の子がいるんですけど……」

宥「もしお時間さえよかったら、お話しだけでもどうでしょうか?」

京太郎「是非、お聞きしたいですね」

宥「分かりました。ふふ、きっと穏乃も喜びますね」

京太郎(穏乃ちゃん?)

宥「あの、少しここから歩きますけど大丈夫ですか?」

京太郎「はい、大丈夫ですよ」


宥「つきました、ここです」

京太郎(旅館……?)

宥「どうぞあがってください」

京太郎「は、はい」

京太郎「失礼しまーす」ガラッ

玄「あっ、おねーちゃんお帰……り…」

宥「ただいま、玄ちゃん」

京太郎「?」

玄「はわわわわわ!?お、おねーちゃんが彼氏連れてきた?!」

宥「も、もう!違うよ玄ちゃん」

玄「なるほどなるほど……これは大変なことになってきた」

宥「……す、すぐに呼んできますので、少し待っててもらってもいいでしょうか?」

京太郎「あ、はい……お構いなく」

玄「……」ジーッ

京太郎「……」チラッ

玄「!」サッ

玄「~~♪」ピューイ

玄「……」チラッ

京太郎(チラ見してんの丸分かりだっての)

京太郎(手持無沙汰だし、何か話しかけてみようかな……)

京太郎「あの」

玄「っ!」ビクッ

玄「は、はい?どうしましたか?」

京太郎「あなたを見て思ったことがあるんですよ」

玄「……思ったこと?」

京太郎「ふむふむ」ジッ

京太郎「結構なおもちをお持ちで……」ゴクッ

玄「はうっ!?」

京太郎(……!?何言ってんだ俺は――――?)

京太郎(出会って三秒の人にセクハラ発言って、印象最悪じゃねーか!)

京太郎「す、すいません!今のは忘れてください!」

玄「……」

玄「君が私の仲間になってくれるなら、許してあげるよ」

京太郎「……仲間?仲間って何の?」

玄「だって……その……君もおもち好きなんだよね?」

京太郎「"君"も?」ピクッ

京太郎「じゃあ、まさか貴女も!?」

玄「うん。そこにおもちがあったらもう口にせずにはいられないよね」

玄「大体大きなおもちなんてそれこそ"揉んでください"って言ってるようなものだよ!」

京太郎「はぁ……それは確かに」

玄「だよね?私は間違ってないよね?」

京太郎(いや、色々間違っている)

京太郎(……と、凡人は思うだろうけど)

京太郎「はい。何一つとして間違ってないです」

玄「そう言ってくれるのは嬉しいな。なんだか私、君となら大きなことをできそうな気がしてきたよ!」

京太郎「俺もですよ」

京太郎(なぜなら……)

穏乃「すいません、遅くなりましたー!宥さんが言ってたお兄さんってあなたの事でいいんでしょうか?」

玄「君にだったら、私のおもちコレクションみせてあげてもいいかな」

京太郎「おもちコレクション?」

玄「うん。コレ」スッ

京太郎「えーと……スナップ写真ですか?」

穏乃「あ、あのー!」

玄「ふっふっふ…ただのスナップ写真じゃないんだよ」

京太郎「?」ジッ

京太郎「……なっ!こ、これは!!」

玄「そう!これは私がインハイで撮ったおもちをお持ちな子のおもち写真集なのです!」

京太郎「でもこれって盗撮なんじゃ……」

玄「こっちは永水の巫女さんのおもち」スッ

京太郎(俺はこの人に会うために生まれてきたのかもしれない)

ツンツン

京太郎「え?」クルッ

穏乃「吉野山に登りたいお兄さんですかー!!?」

京太郎「」キーン

玄「あう!」キーン

穏乃「さっきからずっと呼んでるのに……玄さんも何やってるんですか」

京太郎(な、なんだこの小さい子!?つーか今ので何言ってるか全然分かんねぇ……)

京太郎(でもこの子……)ジー

京太郎(おもち無い上に……なんか優希に雰囲気ちょっと似てるな)

京太郎「俺と長野で一緒に暮らしませんか?」

穏乃「へっ?」

京太郎「何だか、あなたを無性に長野へ連れて帰りたくなりました」

穏乃「ちょ、ちょっとタンマ!いきなりそんなこと言われても……!」

京太郎(ま、そう思うのが普通だわな)

京太郎(でも俺は何としてもこの子を連れて帰りたい)

京太郎「なぁ」ガシッ

穏乃「ひゃい!」ビクッ

京太郎「どうしても駄目かな?」ボソッ

穏乃「ひうっ!」ビクン

京太郎(堕ちたな)

穏乃「…あっあっ……ああ」ヘナヘナ

穏乃「……ひゃ、ひゃい。ついていきまふ…!」

京太郎「へへっ、やったぜ」

玄「え?え?」

京太郎「あ、お邪魔しました。おもち談義楽しかったですよ」

京太郎「また機会があれば語り合いましょう」ヨイショ

玄「それはいいんだけどね……穏乃ちゃん担いでどこに行くの?」

京太郎「長野に連れて帰ります」

玄「ええっ!?ダ、ダメだよそんなの!」

玄「穏乃ちゃんは阿知賀の一員なんだよ!?そんなこと絶対ダメだよ!」

京太郎「本人が良いって言ってるからいいんじゃないですか?」

玄「あうっ……で、でもでも!」

玄「そんなの絶対ダメーーーー!!」

京太郎(うーん、このまま素直に帰してくれそうにないな……)

京太郎(何かいい案はないかな)

京太郎「じゃあ、あなたも長野に連れて帰ることにします」

玄「え、えとね?そう言う問題じゃないんだ」

玄「私たちは阿知賀の5人みんなで一緒に居ることが大事なんだよ!」

京太郎「はぁ……これ以上言っても無駄そうなんで、強硬手段に出ることにします」スッ

玄「っ!?」ビクッ

玄「ぼ、暴力はやめるのですキミ!」

京太郎「…」ガシッ

玄「ひっ……!」

京太郎「……お姉さん」

京太郎「どうしてもダメですか?」ジッ

玄「はう!?」

玄(え?!な、なにこの眼差し……吸い寄せられそう)

玄(ダメ、ダメ……!私も穏乃ちゃんみたいになっちゃう……!)

玄「離して!!」ドン!

京太郎「うおっと」

玄「はぁ……はぁ……!」

京太郎「はは、流石にそう簡単には堕ちてくれませんか」

玄「と、当然なのです!早く穏乃ちゃんを返して!!」

ガララッ

憧「ねぇ……そんな大きな声出してどうしたの玄?奥の部屋まで響いてたよ」

宥「何かあったの?」

玄「憧ちゃん!おねーちゃん!」

玄「だ、助かったぁ!早く穏乃ちゃんを一緒に取り返そうよ!」

憧「……シズ!?」

憧「ちょっとあんた何やってんのよ!シズを離しなさいよ!!」

京太郎(また面倒なのがきたな)

玄「憧ちゃん……!」

玄「これならなんとかなりそうだね!ねっ、おねーちゃん!」

宥「………」

玄「おねーちゃん?」

宥「ごめんね……玄ちゃん」

玄「えっ?」

宥「私、玄ちゃんや憧ちゃんよりも……京太郎さんの方が大事になっちゃったみたいなの」

玄「……何言ってるの?意味が分からないよおねーちゃん」

宥「本当にごめんね、玄ちゃん」

玄「あ、謝らないでよ……だっておねーちゃん何も悪いことしてないもん」

玄「だから今言ったことは嘘だよね?ねぇ?」ガクガク

京太郎(おもち師匠には気の毒だけど、ここに来る途中でその人はもう堕ちてたんだよな)

京太郎(それはいいとして、この子どうしようかな)

憧「はーなーしーなーさい!!」ギリギリ

憧「シズに触るなぁー!!」グイグイ

京太郎「なぁ、お嬢さん」

憧「何よ!?」

京太郎「一つだけ言わせてほしい」

憧「そんなことどうでもいいでしょ!いいから……!」

京太郎「好きになってもいいか?」

憧「」ピタッ

京太郎「好きだっ!!」ガバッ

憧「きゃ!?」

京太郎「好きだ!好きだ!大好きだ!!」

憧「はぁ!?ちょ、ちょっと!いきなり何なのよ!?」

京太郎「あーもうやばいって!すっげー好きなんだけど!」

憧「くぁwせdrftgyふじこlp」ボンッ

京太郎「何もかもが俺好みだ!もう離せねーからな!」

憧「……」

憧「……は、はい」

憧「こんな私ですけど……末永くよろしくお願いします」

玄「憧ちゃん!?」

憧「その、だって……こんなストレートに好きって言われたの…初めてだし」

玄「そんなぁ!」グスッ

玄「うう……こんなのないよ!酷過ぎるよみんな!」

玄「阿知賀麻雀部はどうするの!?また和ちゃんと遊ぶって約束は?!」

憧「長野に行けばいつも一緒に遊べるじゃん」

宥「うん。毎日和ちゃんとも麻雀ができるよ玄ちゃん」

玄「そういう問題じゃないよ!!」

玄「お願いみんな、正気に戻って!」

京太郎(この子だけ中々折れないな……こうなったら)

京太郎「もう長野に帰るか!」

玄「……えっ」

京太郎「それじゃ、行こうぜみんな」

宥「はい」

宥「あ、玄ちゃん。風邪ひかないようにちゃんとお炬燵切って寝ないと駄目よ?」

憧「また近いうちこっち戻ってくるからさ、心配ないって」

憧「ねーシズ?」

穏乃「……うーん」ムニャムニヤ

京太郎(何か静かだと思ってたら寝てたのか)


玄「……待って…待ってよ」

玄「おねーちゃん……穏乃ちゃん……憧ちゃん」

玄「おいていかないで……!もうあの教室で一人にしないでよぉ……!」

玄「一人はやだよぉぉぉぉぉぉぉ!!」


――――――
―――――


晴絵「そういや、灼と玄って同じクラスだっけ?」

灼「うん。そうだけど何で?」

晴絵「あんた達さ……同じクラスの割に麻雀部に入るまであんまり話したことなかったでしょ?」

灼「それは……」

晴絵「ま、私の言いたいことはそんなことじゃない。とりあえず同じ二年同士、来年は最上級生だ」

晴絵「今の内に玄ともっと仲良くなっておいたほうがいいかもねってこと」

灼「仲悪いわけじゃないけど……そうだね。私、玄は結構好きだから」


―――――――
――――――


咲(京ちゃんが学校サボりだして結構経ったなぁ)

咲(もう部長も優希ちゃんもカンカンだよ……京ちゃん今日こそ部活に来させなくっちゃ)

咲「京ちゃーん」ピンポーン

ガチャ

京太郎「はーい……って咲か。どうしたこんな朝っぱらから」

咲「どうしたって、迎えに来たんだよ。京ちゃんが学校サボらないように」

京太郎「お前は幼馴染か」

咲「幼馴染だよ!?」

穏乃「京太郎ー!おっはよー!」バッ

京太郎「うわっ!」

咲「へっ?」

京太郎「……おい穏乃!!いつも言ってるだろ、毎朝抱き付いてくるのやめろって」

穏乃「えーだってこうしないと今日のエネルギー補給できないじゃん」スリスリ

京太郎「ったく。で、それで何の話だったっけ?」

咲「……えーと、とりあえず聞きたいんだけどね?何で高鴨さんが」

憧「ちょっとシズ!京太郎も!早くしないと遅れ………ってお客さんか」

憧「失礼しましたー」ソソクサ

咲「!?」

宥「みんなー、朝ごはんできたよ。あったかーいうちに……」

咲「!!?」

宥「あっ……えーと、清澄の大将さんでしたよね?」

咲「こ、こんにちは」

宥「丁度よかった。今できたところなのでご一緒に朝ごはん食べていきませんか?」

京太郎「そうだよ咲、宥さんの飯めっちゃ上手いんだぜ?」

咲「いや……遠慮しておきます」

宥「そう?残念……また機会があったらいらしてくださいね」

咲「……じゃあね、京ちゃん。私先に行くね」

京太郎「え?あ、おう……ごめんな咲」

咲「いいよ別に。また今度ね」ニコッ

咲「じゃさよなら、京ちゃん!」

京太郎「おう、また今度な!」



咲(当然奈良に行って帰ってきたと思ったら……何アレ)

咲(今後、あんまり京ちゃんとは関わらないようにしとこ)




End