「よっしゃー!!!優勝やで優勝!やったで京太郎!!!」





控え室に明るく、大きな声が響き渡る






「おめでとうございます洋榎さん。」






彼女は愛宕洋榎、新進気鋭の女子プロ雀士だ






「なんや冷たいなぁ、そんだけかいな~」






彼女は新人トーナメントで優勝したばかり

表彰式から帰ってきたところだ






「いえいえ、とても嬉しいですよ。ずっとお傍にいた訳ですし、これ程の喜びはありません。」






俺、須賀京太郎は彼女のマネージャーとして働いている。

まだメディア、バラエティー等の仕事は少ないが、スケジュール管理や牌譜の記録、

それらの整理が仕事だ。

プライベートでもしばしば一緒に出かけたりする。







「ふ~む。そやなぁ・・・京太郎はよくやってくれてホントに助かったわ。」

「恭子も漫も由子も絹枝も応援してくれたけど、一番ねきにおったんは京太郎やからな。」

「あかんな思たこともぎょーさんあったけど」

「その度に京太郎が支えてくれたんやで?」







洋榎さんの言葉が心に染み渡る

言葉に出来ない喜びが俺を満たす

と、同時に







「ホンマおおきに。」







「そう、ですね。」






俺は・・・







「何や京太郎、えらい辛そうな顔しとるで?どうかしたんか?」







「いえ、ホント嬉しくて楽しいな、って思ったんです。」







嘘じゃない







「ならそんな顔することあらへんがな・・・」







けれど








「いえ、なんだか寂しくなっちゃって、

こうやって洋榎さんの傍でお世話するのも好きですし、

何より洋榎さんの麻雀を一番近いところで見れるじゃないですか

でもなんというか、ちょっと遠く感じちゃうこともあるんです。」







溢れる







「自分自身麻雀が大好きちょこちょこやってますけど

上手じゃないですし、ある意味プロって夢だったんですよね。

だからせめて近いところで

その頂を眺めることができたら良いな、って

それは達成出来たはず、なんですけど」







寂しさは止まらない








「今度はやっぱり、行ってみたいなって

人間欲が出るものですね、ちょっと無謀すぎると思える物でも欲しくなる。

一度諦めて、別だけど似たものを手に入れて・・・でもやっぱり諦めきれない。

でも届く訳無い・・・

洋榎さんは今俺の一番近くにいて一番遠くにいるんですかね・・・」







自分が嫌いになってしまいそうだ







「すみません・・・なんだか疲れてるみたいです・・・俺・・・こんなこと・・・」








「なんや、えらい寂しくなること言ってくれたなぁ」








「そんなん聞いたら泣いてまうやないか」








何で貴女が泣いてしまうのですか







「遠いとか言わんといてや・・・」

「京太郎はいっつも傍にいてくれた」

「一緒に優勝したんや!」







「っ・・・!」







そうだ

だからこそ近さと遠さの隙間は広がってしまった







「ウチは京太郎がおらへんかったら優勝できんかった!」







彼女が抱きついて来た







華奢な身体を抱きとめる







「京太郎と一緒やったから嬉しいんやで!!」








はっとした








俺も貴女と喜べるのが嬉しいくてたまらない







「どうしてそないな事言うんやぁ!!」







俺はどうしようもない馬鹿だった







「ごめんなさい洋榎さん!俺・・・!」







「京太郎のバカ!アホ!あかんたれぇ!!」

「やればええんや!やりたいこと!」

「ウチが教えたる!今度はウチがここまで京太郎を引っ張りあげたる!!」

「次そんなこと言うたら本気でいてこますで!!」






「はい・・・はい・・・!」











溢れた涙は

心の悲しみを洗い流すように止めどなく



































「で」










「女の子を泣かした京太郎には責任とってもらわなあかんな~」







責任・・・か







「なんにしよか~」








「決めた!!!」







「ウチの男になれ!結婚や結婚!!!」






                      • はい?








「何でそうなるんですか!?しかも男らしい!?」






いやあ驚いた。まさかそんなのが飛び出るとは・・・

冗談なのがとても残念。

ホントに・・・残念だなぁ






「ホントは何がいいんですか?洋榎さん。」






「冗談ちゃうで」














「何や、京太郎はウチの事好きやないんか・・・」

「好きでもない女の事抱きしめてピーピー泣いてたんかいな・・・」







いや、そんな事はない。ずっと・・・








「いや、そんな事は無いですけ」






「ウチは大好きやで?京太郎の事。愛しとるわ。」







「!」







顔が熱くなる・・・

よく平気で言えるなぁ・・・

俺がずっと言えなくて

情けないな、なんて思ってた事を・・・








「ホントに・・・長い付き合いですけど、洋榎さんが何を考えてるのか分かりませんよ。」







この人はいつも嬉しい方向に予想を裏切ってくれる







「何をするのもいきなりで、何しても楽しそうで・・・」






貴女が息抜きも必要や!なんて言ってドタキャンした芸能人麻雀大会ゲストの仕事、

あの後ホントに大変だったんですよ?

大阪じゃなかったら仕事なくなってましたよ洋榎さん






でも、貴女がその時連れて行ってくれた所全部がとても楽しかった

少年時代みたいに心が弾んだ

あんなドキドキは始めてだった

まるで学校をサボって遊園地に行くような

背徳感と希望と、妙な気恥ずかしさに溢れた時間は貴女としか過ごせないだろう

思えばその時からだった








「俺も、ホントに・・・好きですよ。大好きです。」







「おう!」






ガチャ






「なんや、祝いに来たらごっつうけったいな事になっとるな~」







「きょ、恭子!?」






「おーい聞いとった?2人が結婚するそうやー」






「おー!それはめでたいなぁ~」






「な、なんや漫まで!?」







「みーんなおるでー」







一気に騒がしくなったけれど

これが心地いい

きっとこれからもこんな感じで進んでいくんだろう








「うわー!!!は、恥ずいからやめーや!!!!!」







あ、恥ずかしかったんですかアレ。




























「夫婦で同じ卓とかごっつおもろそうやなぁ~!!」






「まだそこまで行けませんよ洋榎さん・・・」






「なんや!?ウチのコーチング舐めとるな!?」






「一年や!」






「一年でウチのトコまでこさせたる!!!」






「だから京太郎も走れ!」


















「おっと、勿論一緒にや!」