京太郎「背景に溶け込んでかなり立ったが潮時だ」

京太郎「このままこの立ち位置に居るだけじゃ世界から消されちまうな」

京太郎「いつの間にかいなくなってました、なんてシャレにならねぇし……なんとか目立たないと」

京太郎「目立つって言っても道徳に反するようなことは勿論しちゃダメだけどさ」

京太郎「とりあえず悪目立ちはしない程度に行動開始だ」

京太郎「そうだな、まずはてっとり早く募金活動でも始めるか」

京太郎「白い羽根募金にご協力くださーい!」

京太郎「百円あれば八人もの子供の命が救えるんです!募金は一円からでも結構です!」

京太郎(はぁ、みんな中々立ち止まってくれないなぁ……)

京太郎(確かにこんな大勢の中立ち止まって募金なんかしたら注目されるし)

京太郎(ひでー奴からは偽善者だって思われるかもしれないもんな)

?「………」チャリン

京太郎(おっ……)

京太郎「あっ、ありがとうございます!助かります!!」

透華「弱者を救おうとするその精神、非常に素晴らしいですわ」

透華「そんなあなたの頑張りを誰が見過ごせましょうか」

京太郎(あっ、この人確か龍門渕の凄い金持ちの人……!)

透華「ハギヨシ」

ハギヨシ「かしこまりました。透華お嬢様」サッ

京太郎「うわわっ!」

ハギヨシ「どうもこんにちは。お久しぶりですね須賀くん」

京太郎「は、はい!お久しぶりです!」

京太郎(どっから現れるんだこの人は)

ハギヨシ「このトランクケースをお受け取りになってください」スッ

京太郎「?」

ハギヨシ「中身はこのようになっております」カパッ

京太郎「んげっ!?」

透華「ざっと三億ありますわ。これだけあれば助かる子も多いのでは?」

京太郎「そりゃあそうでしょうけど……こんな大金いいんですか?」

透華「別にあなたにあげるわけではありませんわよ?」

透華「さぁ、それを持って早く行きなさい。まさかそれをずっと持ったまま募金活動するわけじゃないでしょう?」

京太郎「まぁ、それは。かなり重いですから一度置いてきた方がいいですね」ズシッ

透華「ふふ……確かに渡しましたわよ?」

透華「じゃあ私はこれにて失礼させていただきますわね」

京太郎「あ、あの!」

透華「……?まだなにか?」

京太郎「ありがとうございましたっ!!」

透華「だから、あなたにあげたわけではなくてよ?」

京太郎「それでも、龍門渕さんのおかげで大勢の命が助かります!」

京太郎「本当にありがとうございました!」

透華「…………」

透華「ええ、どう致しましてですわ」クスッ



透華「彼、名前は何と言いました?」

ハギヨシ「須賀京太郎さん、と申します」

透華「聞いたことありませんわね……けれど」

透華「他人の、しかも名前も顔も知らない人の為にあそこまで一生懸命になれる人を私は知りませんわ」

ハギヨシ「はい。私も存じ上げません」

透華「須賀京太郎……覚えておきますわ、その名前」

京太郎「龍門渕さんから頂いたお金はちゃんと届いたみたいだ」

京太郎「おかげでお礼の手紙一杯貰ったよ。これは龍門渕さんにもいつか渡さなきゃな」

京太郎「さて、募金活動も終わったところで次は何をしようかな」

京太郎「人助けでもすっかなー」

京太郎「お礼の手紙読んでたら、なんだかまた人の為に動きたくなってきたよ」

京太郎「とは言っても、困ってそうな人なんてそう簡単に見つかるかな」キョロキョロ

京太郎「……おっ?あの人とか困ってそうな気がするぞ」

京太郎「あのー」

洋榎「……?」クルッ

洋榎「なんや自分?ナンパならお断わりやで?」

京太郎(ここら辺じゃ見かけない顔だな…迷子か?)

京太郎「先ほどからここらを右往左往しれますけど、何か困りごとでもありましたか?」

洋榎「おーっ!!」

京太郎「!?」ビクッ

洋榎「やるやないか兄ちゃん!見ただけでうちが困っとるって分かったんかいな?」

京太郎「はぁ、見てたらなんとなく」

洋榎「そのな?実はな……」

洋榎「実はな……うちさっきからストーカーにあってんねん」ボソッ

京太郎「ス、ストーカー?」

洋榎「アホ!声がデカい!」バシッ

京太郎「いてっ!」

洋榎「もうちょい声のボリューム落としてーな!」ボソボソ

京太郎「は、はいすいません。それで……ひょっとして今もいたりしますか?」

洋榎「せや。さっきからずっとうちの後をつけてきとる」

洋榎「今もあんたの後ろ側におるで」

京太郎「…」ゾクッ

洋榎「何とか撒いてやろう思うとるんやけどな。中々上手くいかへん」

洋榎「どうしたもんか……しんどいなぁ」

京太郎「とりあえず俺と一緒に逃げましょう」

洋榎「へ?」

京太郎「行きますよ!」グイッ

洋榎「おわっ!」

洋榎「ちょっ、急にどないしたんや自分!?」

京太郎(後ろにそんな物騒な奴がいる状況でのんびりしてられっかってんだ!)

京太郎「飛ばしますよ!」

洋榎「はぁ、はぁ……ま、ま、待ち!早すぎ!早すぎやであんた!!」

京太郎「ああ、もう!」

京太郎「ああ、もう!」ガシッ

洋榎「へ?へ?」

京太郎「ぬん!」グイッ

洋榎「っ!?」

洋榎(これ、まさかアレか?世間で言うお姫様抱っこっちゅー……)

洋榎「ってなにしてんねん自分!?しばくぞコラ!」ジタバタ

京太郎「痛っ!危ないんで暴れないでくださいよ!」

洋榎「こんな格好誰かに見られたら恥ずかしくて生きていけへんわ!!」

京太郎「あなたが走るのが遅いからでしょう!?」

洋榎「ほな、背中におぶってもええんちゃうか?」

京太郎「……それは、その色々とまずいものが」ゴニョゴニョ

洋榎「は?」

京太郎「とりあえず飛ばしますからね?しっかり捕まっててくださいよ!」ゴッ

洋榎「堪忍してや!これでもぎょーさんスピード出ぅ」ガリッ

洋榎(し、舌噛んだ……)エグッ

京太郎「……まだいますか?」

洋榎「……」キョロキョロ

洋榎「いいや、おらんな。完全に撒いたみたいや」

京太郎「よかった……」ホッ

洋榎「なんで自分が安心しとんや?」

京太郎「いや、本当に無事でよかったなって」

洋榎「なっ!」カァァ

洋榎(そ、それはうちが無事でよかったって意味でええんよな……?)

洋榎(なんやコイツ、意外と気配りできるやん)モジモジ

京太郎(ストーカーに追われるとか初めてだからな。本当に無事でよかった)

京太郎(愛宕さんはあんだけベラベラ喋ってたんだし平気だよな多分)

洋榎「な、なぁ自分……やない、兄ちゃんの名前教えてくれへんか?」

京太郎「俺の名前ですか?俺は」

京太郎「須賀京太郎って言います」

洋榎「須賀……京太郎?どっかで……」

洋榎「……」

洋榎「……あーっ!思い出したわ!」

京太郎「!?」ビクッ

洋榎「どっかで見た事あると思ったんや自分!前テレビ出とったやろ?」

京太郎「ちょっと前ぐらいですかね?はい、確かに募金活動の功績が認められて出ました」

洋榎「おおお、ホンモノや……」

洋榎「うちな、あれ見てコイツめっちゃええ人やんて思っとったんやけど」

洋榎「それ間違ってなかったわ!やっぱめっちゃええ人やん、京太郎!」

京太郎「あはは……どうも、ええと……」

洋榎「愛宕洋榎や」

京太郎「愛宕さん」

洋榎「洋榎でええわ。うちも京太郎って呼び捨てやしな」

京太郎「えーと……分かりました。じゃ、洋榎さんで」

洋榎「そ、それでな京太郎……いま自分」prrrrrrr

京太郎「あ、携帯鳴ってますよ」

洋榎「チッ、やかましいな」prrrrrr

洋榎「誰やこんな時に」ピッ

洋榎「もしも……」

絹恵『お姉ちゃん!!』

洋榎「うぁっ!き、絹!?」

絹恵『どこで油売っとるん!?もうみんなカンカンやで!』

洋榎「そ、そのな?話せば長くなるんやこれが」ヘコヘコ

絹恵『ええからはよ戻ってき!!』

洋榎「はい」

ピッ

京太郎「……あの」

洋榎「ほんっと堪忍な京太郎!うち時間が無くなってもうた!」

京太郎「え?」

洋榎「また近いうちに会おうな!絶対の絶対の絶対やで!?」ジリッ

京太郎「は、はい」

洋榎「絶対に会うでーーー!」ダッダッ



京太郎「………」

京太郎「すごいなあの人。まるで嵐のような人だった」


カァー カァー

京太郎「流石に人一人持って走るのはしんどかったな」コキッコキッ

京太郎「カラスも鳴いてるし、もうそろそろ夕暮れか……」

京太郎「日が完全に落ちる前に何かしとこう」


京太郎「ボランティア活動でもするか」

京太郎「いい汗かいて今日はゆっくり寝よう」

京太郎「ボランティーアって言っても色々あるなー……」ガサッ

京太郎「これだけあると逆に悩むぞ。さて、どれにしよっかな」

京太郎「公共エリアのゴミ拾いか」

京太郎「これならそんなに時間かからないし、それなりに身体動かせそうだな」

京太郎「そうと決まればさっそく電話だ」


―――――
――――


担当者「今から一時間、皆さんに公共エリアのゴミ拾いをお願いいたします」

担当者「終わり次第皆さんに冷たいジュースを配布させていただきます。がんばってくださいね」

京太郎「よーし、やるか!!」ギュッ

京太郎「軍手よし!ゴミ袋よし!トングよし!」

京太郎「どんどん拾うぞ」ポイポイポイッ

京太郎「この調子でここのゴミ全部ゼロに………ん?」

?「………」

京太郎(あのベンチに誰か座ってる人……ゴミ拾いの邪魔になるな)

京太郎(ちょっとの間だけどいてもらおう)

京太郎「あの、すいませーん」

京太郎「あのー、すいませーん!」タッ

京太郎「ここら一体今から清掃活動があるので、ちょっとの間……」

小蒔「Zzz……Zzz」スピー

京太郎「……」

京太郎「……?」

京太郎(えらいナイスバディな巫女さんがベンチで無防備に寝ている)

京太郎(自分でも何を言っているのか知らんが俺は見たままをを言っただけだ)

京太郎(……まぁ、寝ているのに起こすの気が引けるけど邪魔になるし)

京太郎「あ、あの!すいません!」ユサユサ

小蒔「Zzz…」グー

京太郎「ちっとも起きやしねぇな……」

京太郎「ここで寝られるとすげぇ困るんだけどなぁ」

京太郎「えい」ゲシッ

小蒔「Zzz…」フラッ

小蒔「…うっ!!」ドサッ!

京太郎「ごめんな。こうでもしなきゃ起きそうになかったからさ」

京太郎「俺は今だけ最大多数の幸福の為に少数を切り捨てるよ」

小蒔「………」

京太郎(怒るかな?)

小蒔「……あれ?ここは?」ボー

京太郎(怒らない?……まさか蹴ったことバレてないのか?)

小蒔「あの、すいません。ここは一体どこでしょう?」

京太郎「ここは公共エリアのベンチですよ」

小蒔「公共エリア?やだ、私……どうしてこんな所で寝ちゃってたんでしょう」

京太郎「さ、さぁ?俺に言われても」

小蒔「ご迷惑をおかけしましたね。すぐにどきま……」フラッ

小蒔(あっ……寝起きだから足元が……)

京太郎「おっと、危ない」ガシッ

小蒔「っ!?」

京太郎「寝起きなんですから無理して歩こうとしちゃダメですよ」

小蒔「ご、ごめんなさい……!私またご迷惑を…!」

京太郎「いいんですよ。もう、どうせなら完全に眼が覚めてから行ってくださいね」

小蒔「え?でもここに居たらお邪魔になるのでは」

京太郎「無理して倒れられる方がお邪魔ですよ」

小蒔「あう……」

京太郎「俺、ゴミ拾い終わったらまた戻ってくるんで。それまでに目が覚めたんなら戻ってくださいね」

小蒔「……はい、そうします」


―――――――
――――――


京太郎「ふー!いい汗かいたかいた」

京太郎「あの巫女さんはまだいるのかな?」

小蒔「あ……!」

京太郎「ま、まだいたんですか?あれから一時間は経ちましたよ?」

小蒔「はい。流石にお世話になっておいてそのまま帰るのは……」

京太郎「そんな、俺なんにもしてないですって!」

京太郎(あっ、蹴ったっけそう言えば)

小蒔「何か御礼がしたいのですが……今夜のご予定は何かありますか?」

京太郎いや、特に無いですけど」

小蒔「よかった……よろしければ、こちらで晩のご飯でも召し上がってほしいのですが」

京太郎(おおっ。美人巫女さんからのお誘いか)

京太郎(嬉しいけど、すげぇ汗かいてるし早く帰りたいんだよなぁ……)

京太郎(ここは)

京太郎「御礼なら君の身体でお願いします」

小蒔「……」

小蒔「へっ?」

京太郎「だから、君の身体で」

小蒔「……そ、それはどういう意味ですか?」

京太郎「どういう意味?本当に分からないんですか?」ジリッ

小蒔「……」ゴクッ

京太郎「…」スッ

小蒔「っ……!」グッ

京太郎「軍手」

小蒔「……」

小蒔「……へっ?」

京太郎「草とかで手を切ると危ないから絶対にしてくださいね」

小蒔「あの……ど、どうして軍手をする必要があるんですか?」

京太郎「え?そりゃ決まってるでしょ」

京太郎「今からゴミ拾いの延長戦ですよ」

小蒔「延長戦……?」

京太郎「ボランティアってただ参加したって言う肩書欲しさの為に来てる人も多いんですよね」

京太郎「だから、そんな人がいる中でゴミ拾いをやっても百パーセント綺麗にしたとは言えない」

京太郎「つまり誰も居なくなってからが勝負ですよ」

小蒔「は、はぁ……」

小蒔(ゴミ拾いにここまで情熱的な人初めて見た……)

京太郎「さ、行きますよ」

小蒔「あっ…はい!」

京太郎「空き缶とペットボトルはちゃんと分別しろよなー」

小蒔「……」

京太郎「おっ、こんなとこにアイスの棒なんか捨ててやがる」

京太郎「ったく最近のガキは……」

小蒔「ふふっ」

京太郎「何かおかしなことありました?」

小蒔「いいえ」ニコッ

京太郎「……?」

小蒔(公共エリアの皆さんの為にここまでできるなんて)

小蒔(尊敬するなぁ、こういう人)


―――――――
――――――


京太郎「はぁー!終わった終わった!」

小蒔「ふぅ……」

小蒔「ゴミ拾い、やってみると楽しいですね」

京太郎「お疲れ様でした。すいませんね、付き合わせてしまって」

小蒔「そんな、とんでもないですよ。私は御礼ができたんなら本望なの……で」ファ

京太郎「大丈夫ですか?」

小蒔「ご、ごめんなさい………大丈夫……で……す」

小蒔「だいじょ…………Zzzz」

京太郎「ええー…」

京太郎「ま、まぁ巫女さんは普段ゴミ拾いなんてしないだろうし……多少はな」

京太郎「……はぁ」

京太郎「これでまた振りだしか」

京太郎「ふん!」バシン

小蒔「痛っ!」

小蒔「……へ?」ジーン

小蒔「え?な、なに?」

京太郎「どこででも寝ちゃうような悪い子は、ケツペンペンだな」パンッパンッ!

小蒔「痛い!痛い痛いっ!!」

京太郎「無駄にデカいケツしやがって!」パンパン

小蒔「痛ぃっ!助けて霞ちゃんっ!霞ちゃん……っ!」

京太郎「泣いたって許してあげませんからね!」バンバン


―――――――
――――――


小蒔「うぇぇぇん……!霞ちゃん…霞ちゃーん!」ポロポロ

京太郎(まずいな、一時の気の迷いとは言えとんでもないことをしてしまった)

京太郎(こういう時は)

京太郎「すいませんでしたーー!!」バッ

小蒔「っ!?」ビクッ

京太郎「俺、どうかしてました……俺で償えることならなんでもします」

京太郎「ちょっとやそっとで許されることじゃないと思いますけど……」

京太郎「どうか何でもするんで許してください!!」

小蒔「……」ピクッ

小蒔「い、今……何でもするって言いましたよね?」

小蒔「じゃあ……」

小蒔「神威鎮々してください」

京太郎「………」

京太郎「えっ」

小蒔「だ、だから神威鎮々です!!何度も言わせないでください!」カァー

京太郎(何で赤くなってるんだ?)

京太郎(カムイチンチンで検索、と)ポチッ

京太郎(……ダメだ出てこない)

京太郎「あの」

小蒔「はい?」

京太郎「それ、どういう意味なんですか?」

小蒔「あっ……こちらの地方の方には通じないんですね」

小蒔「意味は……」


霞「意味は鹿児島で教えるわ」

京太郎「むぐっ!!」

霞「暴れないでね。大事な身体だから傷つけたくないのよ」

京太郎「んー!んー!」ジタバタ

小蒔「霞ちゃん…」

霞「ふふ。この方が小蒔ちゃんの選んだ新しい当主様なのね」

京太郎「っ」ゾク

京太郎(に、逃げなきゃ…!)

京太郎(俺は…俺はまだ……!)

京太郎(龍門渕さんにも手紙渡してないし、洋榎さんともまた会う約束をしたんだ!)

京太郎(こんなとこで誘拐なんかされてたまるかよ……っ!)

透華「おーっほっほっほっほ!」

霞「っ?」

京太郎「あ……!」

透華「そこまでですわ永水のお二方」

透華「その悪行、例え神や仏が見逃しても私は見逃しませんわよ!」

京太郎「り、龍門渕さん!どうして……」

透華「話は後で。ハギヨシ!」

ハギヨシ「失礼」トンッ

小蒔「あっ…」フラッ

ドサッ

ハギヨシ「あなたにも少し眠っていただきます」シュッ

霞「あら怖い」パシッ

ハギヨシ「むっ!」

霞「……果たしてそう上手くいくかしらねぇ」

霞「あらあら……流石に私だけじゃキツイかしらねぇ」

ハギヨシ「まだやりますか?」

霞「そうねぇ、じゃあ神様でも降ろして……いや」チラッ

京太郎「っ」ビクッ

霞「また日を改めて来ようかしら。ねぇ当主様?」

京太郎「ひっ!」

霞「ふふ、必ず迎えに来るから待っててね」

京太郎「………」ガクガク


京太郎「本当にありがとうございました!!」

透華「全く、私たちが通りかからなかったらどうなっていたと……」

京太郎「もう感謝してもしきれません」

透華「まぁいいですわ。あなたからのお礼は聞き飽きました」

透華「それであなた、これからどうしますの?」

京太郎「どうするって……?」

透華「永水はこれからもあなたを狙ってくるはず……つまりいつ誘拐されてもおかしくないってことですわ」

京太郎「………」

透華「そうなる前に……私の元で働いてはみませんか?」

京太郎「えっ?!」

透華「龍門渕なら永水からあなたを守ることができますわ」

京太郎「それって……俺に住み込みで龍門渕に来いと」

透華「ええ。ちゃんとお給料も出しますし衣食住も完備してあります」

透華「暇さえあればハギヨシから護身術を習っても構いません」

ハギヨシ「いつでも結構ですよ」

京太郎「………」

透華「まぁ、すぐに返事をしろとは言いませんけれど。なるべく早くお願いしますわね」

京太郎「いや……」

京太郎「俺、まだ龍門渕さんに仕えることはできません」

透華「なっ……!?どうして!」

京太郎「龍門渕さんに仕えてしまったら、他の人助けができなくなりますから……」

透華「……」

京太郎「せっかくのお誘い嬉しいんですけどね。この話はもうちょっと先送りってことでどうか」

透華「……お人好しですわね本当に。あなたがそう言うのでしたら強制はしませんわ」

京太郎「すいません」ペコリ

透華「けれど」

京太郎「?」

透華「いつでも龍門渕はあなたをお待ちしているということを、どうかお忘れなく」

京太郎「透華さん……」

透華「帰りますわよ、ハギヨシ」

ハギヨシ「はっ」

京太郎「龍門渕さん……ハギヨシさん、ありがとうございました!」

京太郎「俺、このご恩一生忘れません!」




京太郎「正直永水のあの人は怖い……けど」

京太郎「俺は一人じゃないんだ」

京太郎「何とかなるはずだ、きっと!」

京太郎「はぁ、昨日は疲れたな」コキコキ

京太郎「あの時もし龍門渕さんが通りかかってくれなかったらと思ったら……」

京太郎「………」

京太郎(や、やっぱどっかに売られてたりしたんだろうなぁ)ブルッ

京太郎(これからは気を引き締めて行動しないと)

京太郎「銭湯でも入りに行くか」

京太郎「デカイで温かい湯に浸かればちょっとは心も落ち着くだろうしな」


カポーン バビバノンノ

京太郎「あ゛あ゛ーー気持ちいいーー!」

京太郎「湯加減も最高で極楽極楽っと」

京太郎「人も居ないし静かでいいな」

キャッキャッ

京太郎「……ん?」

京太郎「あー、そうか。横は女湯だったな」

京太郎「………」

京太郎「………」

京太郎「……おっと!変な事想像しちゃダメだダメだ」

京太郎「さて、のぼせる前にあがろうか」ザバー


――――
―――


京太郎「いい湯だったな。これで朝から心も体も温もった」ポカポカ

京太郎「今日は何だかいい一日になりそうな気がしてきたぞ」

京太郎「うーん、溶けそうなほど天気がいい」

京太郎「こんだけ天気いいんだし登山でもしてみるかな」

京太郎「そうと決まれば早速軍手とゴミ袋の準備だ」


京太郎「よし、準備完了っと。そんじゃ登山開始しますかね」

京太郎「っと早くもペットボトルの空を発見」ポイッ

京太郎「おっ?ここにも地図の紙屑が」

――――――

京太郎「中腹ぐらいには着いたか」

京太郎「あ!非常食食うのはいいけどちゃんと持ち帰れよなー!」ポイッ

――――――

京太郎「頂上についたけど……もうゴミ袋じゃ収まり切れないな」ズシッ

京太郎「ったく、最近はマナーのなってんぇ登山者が多すぎんだろ」

京太郎「こんなんじゃ山の神様が悲しむっての」

?「そうなんだよねー」

京太郎「………」

京太郎「えっ?」クルッ

穏乃「私、あなたのその気持ちがすっごく分かりますよ!」

京太郎「えっ……え?」

京太郎(女の子…一人で?中学生ぐらいか?いや、そんなことより……この軽装)

穏乃「大好きな山が汚されるの見てたら本当にもうムカムカ100倍速で!」

穏乃「私が小学生の頃は全然綺麗だったのに、登山の許可が下りだしたらこれですよもう」

穏乃「ホント、ゴミ捨てる奴いたら一発ぶん殴ってやろうかと思いますよ!」ズイッ

京太郎「分かったから落ち着け落ち着け!」

京太郎「キミ一人なの?親御さんは?」

穏乃「え?一人ですよ?」

京太郎「………」

京太郎「一人でここまで登ってきたの?その格好で?」

穏乃「??」ポカーン

穏乃「そうですけど……何かおかしいですか?」

京太郎「いや、おかしくないよ」

京太郎「俺もキミぐらいの年齢の時には山に草刈りに行ってたしさ」

穏乃「ほえー…私以外にも高校生で山行ってた人なんているんだ」

京太郎「高校生?いや、中学の時の話だけど」

穏乃「へ?」

京太郎「え?」

穏乃「……あの、年はおいくつですか?」

京太郎「15」

穏乃「タメじゃん!」

京太郎「……」ジーッ

穏乃「?」チョコン

京太郎「ははは、いやいやウソだろ。優希より小さい高校生なんて見た事ねぇよ」

穏乃「ぐぬぬ、ホントだって!」ガサゴソ

穏乃「ほら、学生証!」

京太郎(……阿知賀女子学院1年○組…高鴨穏乃)

京太郎(確かに顔写真も一緒だ)チラッ

京太郎「すまんな」

穏乃「だから言ったじゃんか!」ムキー

京太郎「ご、ごめんって!飴ちゃんやるからそんなに怒るな」スッ

穏乃「え?飴くれるの!?やったー!」

穏乃「って、いらないよ!」パクッ

京太郎(しっかり食っておきながら何を)

穏乃「もー、せっかくいい人だと思ったのにさ……ン!?」コロコロ

穏乃「……げっ!これ塩飴じゃん」

京太郎(子どもっぽいところは体型と同じなのか。ちなみに塩飴は登山に必須だぞ)

京太郎(さてどうやってこの幽谷化身の如き怒りを鎮めようか)

京太郎「しょうがねぇなぁ……下付いたら何かおごってやるよ」

京太郎「だから機嫌なおしてくれないか?」

穏乃「ええっ?い、いや何もそこまでしなくてもいいけど」

穏乃「私だってそんなに怒ってるわけじゃないしさ」

京太郎「かなり怒ってたように見えたけどな」

京太郎「あんま高いのは奢れないけど、失礼した礼ことでどうだ?」

穏乃「んーーーーじゃあ……」ムムム

穏乃「どうしても奢ってくれる!って言うなら奢ってもらおうかなー」

京太郎「はいはい。それじゃとっとと下山するぞ」

穏乃「おー!……あ」

京太郎「なんだ?どうした?」

穏乃「どうせならさ、どっちが先に着くか競争しようよ」

京太郎「はい?」

穏乃「負けた方は勝った方の言う事を何か一つ聞くことね」

京太郎「待て待て。この山、俺登るのに三時間かかったんだが?」

穏乃「どっちが真に山を制する者か……勝負だ!!」ダッ

京太郎「人の話を聞け!!」

京太郎「ったく仕方ねーなぁ……!」

京太郎「男子が女の子に負けるワケにかいかねーぜ!」ダッ

霞「あらあら、本当にそうかしら?」グイッ

京太郎「っ!!」

京太郎(な、なんだ!?急に強い力に引っ張られて……)

霞「昨日ぶりね、当主様」

京太郎「あっ」

霞「こんな山頂、誰も来ないでしょう?」

霞「わざわざ運びやすいところを選んでくれて助かったわ」

京太郎「……う」

京太郎「うぁぁぁぁぁぁああぁぁぁああああ!!」



穏乃「お兄さんちゃんとついてきてるー!?」クルッ

穏乃「………あれ?いない」

穏乃「だらしないなー、もうへばったのかな」

穏乃「まいっか!下で待ってよーっと」ダッ



カン