「そういえばなんで俺の名前を知ってたんだ?」

書きながら思った。シロは全国中継されたが俺はあの時はただの高校生だ…シロが俺の事を知ってる訳がない。

「たまたま雑誌に載ってた」

少しだけ焦ってるように聞こえる…雑誌か、まあ咲達の記事の隅の方に書いてたのかもしれないな。

「そうか…まああの時の清澄は有名だったからな」

優勝して凱旋した時の事は今でも思い出す。
あの時に俺は自覚した。

俺と咲達では住む世界が違ったんだと

「ごめん…京太郎」

「シロが謝る事は無いだろ」

気を取り直して次は……何を書こうか?シロとの事を書くならもう次は大学になってしまう。

「バレンタインがいい」

「バレンタインって何時のバレンタインだ?」

後ろを向くと布団を装備して座っていた。

「……初めての時がいい」

顔を少し赤くして下をむく。可愛い、結婚しよ…いや明日には結婚するのか。

「なら俺が一年の時のだな…でもあの時はダラダラしてただけだぞ」

「それがいい」

シロが珍しく語尾を強める…まあ書いてみるのもいいか。昔を思い出す事は大切だからな。

「……まあ書くか」

そういえばあの日からだよな。咲と連絡があまり連絡をとらなくなったのは…

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「これあげる」

コンビニに買い物をしに行こうと玄関を開けると小瀬川さんが俺に装飾された箱を差し出していた。

「なんですか、これ?」

箱の中身が何かが解らずに反射的に聞いてしまう。世間ではバレンタインと浮かれているが…まさかな

「チョコレート」

「チョコレート…チョコレート!まじですか!」

小瀬川さんの言葉に思わず声を大きくしてしまう。

「うん、本命だから」

「えっ?」

今なんかとんでもない事を言われた気がする。

「寒いから中入るよ」

俺をすり抜けて慣れた足取りで小瀬川さんが家にあがる。きのせいだったのか?

「炬燵ついてますから待っててください。俺は少しコンビニで買い物してきます」

「わかった…気をつけてね」

ふらふらと居間に歩いてる姿を見て思う…たった一ヶ月でどうしてこうなった?

「あっ、携帯を炬燵の上に置きっぱなしだ……まあ、小瀬川さんも俺の携帯なんて興味ないだろうからいいか」

マンションをでてポケットに携帯が無い事に気がつく。ロックをしていないが小瀬川さんが俺の携帯を見る理由も無いから問題は無いだろ。あの人ならめんどいの一言で終わらしそうだし…

「…とりあえず急ぐか」
待たせるのも悪いので俺は自然に歩調がはやくなった。


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「ただいまー」

コンビニで目当ての飲み物等を買って帰り、炬燵のある居間に入ると予想していた光景がそこにあった

「……zzz」

爆睡。見事に炬燵にすっぽりと入った状態で顔だけだして小瀬川さんが寝ていた。炬燵の布団が小瀬川さん側に寄せられてる所を見るとゆっくりと炬燵の魔力にやられたみたいだ。

「…あれ、俺の携帯何処だ?」

炬燵の上に置いていた筈の携帯が無い。座っていた位置は小瀬川さんが今寝ている所だからおかしいな。

携帯を探すために炬燵の上に買物袋を置き辺りを見回す。

「あった」

よく見たら死角側の方に落ちていた。初期画面を見るが弄られた形跡は無い…当たり前か。

それにしても無防備だ。

安らかな寝息をたててる小瀬川さんの方を向いて思う。

この出会って一ヶ月…いや夏のあの事をカウントするなら6ヶ月か。
結構長い付き合いに聞こえるが実質、一ヶ月くらいしか顔をあわせていない。そんな男の部屋で爆睡していてこの人は大丈夫なのだろうか?

そんな事を思いながら寝ている小瀬川さんを俺は見ていた。

「…冷静に考えたら俺がおかしいのか」

小瀬川さんは俺を友人としてみているからこうやって安心して爆睡できている。俺は小瀬川さんを女として見ているから襲われるとか考える…下衆だな。女は頭で、男は下半身で考えている言うのは良くいったものだ。

小瀬川さんがいつ起きてもいいようにお茶の準備とかをしておこう。俺は慣れた足取りでリビングに向かいお茶を淹れる。五人分淹れる癖を最近ようやく克服した。ただ俺は今のお茶と部活とのお茶は天と地ほどの差があると感じていた。

俺はもしかしたら……まさかな。だいたい向こうはそんなつもりはないだろうし、考えるだけ無駄だ。

「どうしてこう惚れそうになる相手は高嶺の花なんだろう」

ぶつくさと文句を良いながら慣れた手付きでお茶の準備をした。