須賀母「こちら、再婚相手の原村恵さん」

恵「よろしく」

京太郎「よろしくお願いします」

恵「ほら和、挨拶しなさい」

和「……初めまして、よろしくお願いします」

和(この人と、家族……?)

和(不良というのでしょうか?とにかく怖い……これから三日間この人と一緒なんて、私はどうすれば……っ)


和「……」


何だろう、睨まれてる?

いや気のせいだよな……多分。

学年は同じって聞いたけどどう接するのが正しいんだ?








ここは姉さん呼び、かな?

俺のが誕生日遅いだろうし向こうの方がしっかりしてそうだしな。

それじゃあ早速


京太郎「よろしくな、姉さん」

和「ひっ」


……あれー?俺なんかまずいことしたかな。

き、きっと緊張してるだけですぐ仲良くなれる!

と良いなぁ。


京太郎「とりあえず中に」

和「……はい」


和(どどどどうしましょう、男の人家に、しかも二人っきりで二泊なんてっ)

和(きっとこの不良にあんなことやこんなことをされてしまうんです、エロ同人みたいに!)

和(……いえ、いけません。気をしっかり持たなければ)

和(そう、強気な姿勢で居れば乗り切れるはずです)

和(不良なんかに絶対負けないんですから!)




京太郎「お茶とかは?」

和「いりません」

京太郎「お菓子とか余ってるんだけど、どうかな?」

和「結構です」

京太郎「さいですか……」



困った。

すっごい態度が冷たい。

どうしよう、泣きそう。


【午前】


どうすれば……そうだ!家事とかなら手伝ってくれるんじゃないか?

そしてそこから距離を縮めていく!

これだ!


京太郎「えっと、家事手伝ってもらってよろしいでしょうか?」

和(何故突然敬語……まあ家事くらいなら大丈夫でしょうか)

和「構いませんけど、何を?」

京太郎「お昼も近いから料理を」

和「わかりました」



和(早く終らせてしまいましょう)


姉さんの手際凄いなあ……っていうかやっぱり会話が無い。

どうしたもんかな。

……あ、何か探し始めた?


和(えっと、お砂糖は何処に)

京太郎「ほい」

和「へ?」

京太郎「砂糖」

和「あっ、ありがとうございます」

京太郎「おう」

和(えーと、次は醤油が)

京太郎「はいよ」

和「あ、また……」


和(それからも何度か欲しいと思ったものを丁度いいタイミングで渡されました)

和(おかげで一人で作る時よりもかなり早く出来ました)

和(それに何だか息もピッタリ合っていたような……)

和(って、こんなことで気を許す訳にはいきませんっ)


京太郎「姉さんのご飯、美味かったな!」

和「そうですね」

京太郎「……」

和「……」

京太郎「昼からどうする?」

和「私は特に何も」

京太郎「それじゃあ」




【午後】

京太郎「なあ、姉さんって中学の時部活とかやってたのか?」

和「麻雀を」

京太郎「へー!麻雀かあ、人気だよな。大会とか出たりしたの?」

和「ええ、まあ」

京太郎「結果は?」

和「えと……い、インターミドルで、その、優勝を……」

京太郎「へ?」

和「ですからインターミドルで優勝しました」

京太郎「それって中学で一番ってこと!?」

和「そうなると思います……」

京太郎「姉さんすげーんだな!」

和「私なんてまだまだで……」

京太郎「そんなに強いなら俺にも教えてくれよ!」

和「構いませんが」

京太郎「よっしゃ、約束なっ」


和(最初は会話に乗らないつもりでしたが勢いに流されてしまいました)

和(それに彼、凄く楽しそうでこちらまで楽しくなってくるような)

和(実は悪い人じゃ無いんじゃ……)



ちょっとは表情が柔らかくなったかな?

笑ったら凄く可愛いと思うんだよな、それに何より胸も大きい。

おっと、変なこと考えてる場合じゃねえ。

もう暗くなってきたし……。




【夜】

京太郎「晩御飯、用意したよ」

和「ありがとうございます」

京太郎「さ、食べてくれ」

和「……うん」


和(美味しい)

和(それに今日一日彼と過ごしてわかりました)

和(彼は悪い人なんかじゃ無い、と)

和(私は失礼な態度ばかりとってしまいました)

和(せめて、夕食の感想はしっかり言ってこれからはきちんと接しましょう)


京太郎「どうだ?」

和「美味しいです、京太郎くん」

京太郎「そっかそっか」

京太郎「それにしてもやっと笑ってくれたな」

和「笑って?」

京太郎「ああ、姉さんと会ってからずっと笑顔だけは見れてなかったからさ」

和「あ……」

京太郎「でも、予想通り姉さんの笑顔はすっげえ可愛いな!」

和「なっ、かわっ……!?」









京太郎「いやあ、食った食った」

和「ええ、美味しかったです」

京太郎「それじゃ俺はそろそろ寝るよ」

和「私も」

京太郎「姉さんは空き部屋に布団を用意したからそこで寝てくれ」

和「わかりました、ありがとうございます」

京太郎「どーいたしましてっ」



うん、最初はどうなるかと思ったけど姉さんも打ち解けてくれたみたいでよかったよかった。

それじゃそろそろ寝ようかな。明日も姉さんと一緒だし、もっと仲良くなれると良いな。







目覚まし時計に叩き起こされて体を起こす。

眠い。

けどあんまりだらしない姿を見せるのも。

いやでもやっぱり眠いし。

仕方がない、ここは。



【朝】


寝不足で呆けてても姉さんに悪いしな。

ここは寝よう、うん。



和「……くん、起きてください。京太郎くん」

京太郎「うん?」

和「おはようございます、朝ですよ」

京太郎「うーん、何故美少女が目の前に」

和「びしょっ、何言ってるんですかもうっ。寝惚けてないではやく起きなさいっ」

京太郎「って姉さん!?」

和「やっと起きましたか」

京太郎「は、はい」


寝起きにこの美少女の笑顔は反則だぜ。

しかも起こすことに必死なせいか顔が近いし大きな胸が俺の肩に。


和「それじゃあ私は朝食の準備をしていますから」

京太郎「ああ、すぐ行くよ」


最高の寝覚めだったな、うん。






京太郎「で、午前はどうする姉さん?」

和「京太郎くんにお任せしますよ」

京太郎「そうか、それじゃあ午前は」




【午前】

京太郎「折角の休みだしどこかへ遊びに行こうぜ」

和「いいですね」

京太郎「よっしゃ、それじゃあ決まりっ」

和「ところで何処に遊びに行くんですか?」

京太郎「どこって、そりゃあ……」

京太郎「遊園地に行こう!」

和「遊園地ですか、わかりました。それでは支度をしてきますね」

京太郎「おう」



京太郎「で、どれに乗る?」

和「そうですね、どれが良いでしょうか」

京太郎「絶叫系とかは?」

和「そう言ったアトラクションはあまり」

京太郎「じゃあそうだな、黄色い熊さんのアレとか?」

和「熊さんの……いいですね、それにしましょう」

京太郎「じゃあ並ぶか」



和「わぁ……見てください京太郎くん!プ○ーさんですよっ!」

京太郎「ああ、本当だな」

和「ああ、みんな可愛いです」

京太郎「姉さんこういうの好きなんだな」

和「はいっ」



京太郎「どうだった?」

和「すごく楽しかったです」

京太郎「そっか、姉さんが楽しそうで何よりだ」

和「是非また来ましょうねっ」

京太郎「そうだな」







和「さて、午後からはどうしますか?」

京太郎「うーん、そうだなぁ」

京太郎「よし決めた、午後は……」



【午後】

京太郎「午後は……」

和「午後は?」

京太郎「いや、今でいっか」

和「何がですか?」

京太郎「姉さん」

和「はい?」

京太郎「じゃーん!」

和「これ、遊園地の紙袋……?」

京太郎「俺から姉さんにプレゼント」

和「これはっ、プー○さんのぬいぐるみっ!?」

京太郎「さっき凄く欲しそうにしてたからさ」

和「でも、これ高かったんじゃ」

京太郎「姉さんの笑顔に比べたら安いもんってね」

和「よくそんな恥ずかしいセリフを……」

京太郎「そうかな?」

和「そうですよ」

和「でも、嬉しいです。大切にしますね」

京太郎「ああ、喜んでもらえりゃこっちもプレゼントした甲斐があったぜ」

和「ふふっ」

京太郎「ごきげんだな」

和「ええ、素敵なプレゼントを頂きましたから」

京太郎「そりゃあ良かった」

和「はい」




【夜】

和「あ、今夜の夕食は私に用意させてください」

京太郎「へ?俺がやるよ?」

和「いえ、作りたいんです。今日のプレゼントのお返しに」

京太郎「ん、じゃあ楽しみにしてるよ」

和「ええ、期待していてください」



和「出来ましたっ」

京太郎「おぉー、美味しそう」

和「さあ座ってください」

京太郎「おう、それじゃいただきます」

和「あっ、ちょっと待ってください」

京太郎「うん?」

和「あっ、あーん……」

京太郎「姉さん?一体何を」

和「は、早く口を開けてください。私も恥ずかしいんですからっ」

京太郎「いや恥ずかしいなら何で……」

和「料理だけではお返しには足りないかと思いまして、それに中学の友人が男の子はこうすれば喜ぶと……!」

京太郎「料理だけで十分うれしいからそれは気持ちだけってことで」

和「ダメですっ、それじゃあ私が納得できません」

京太郎「ええ……」

和「ほら、食べてください」

京太郎「わかったよ……あーん」

和「ど、どうでしょう?」

京太郎「うん、すっげえ美味しい!」

和「そうですか。それは、良かったです」

京太郎「ほら、姉さんも食べないと冷めちまうぞ?」

和「そうですね、それでは私もいただきます」









何故でしょうか。胸が苦しい。

この苦しさの原因はきっと……。

最初に会った時は怖い人だと思っていたのに今はこんな気持ちになるなんて、不思議ですね。

今夜は眠れそうにありませんね。

ああ、京太郎くん。あなたはすぐそこに居るんですよね。

まだ起きているでしょうか、それとも……。

いっそ彼の部屋に行ってこの思いを伝えてしまうというのも……。

でももう遅いですし明日の朝の方が良いでしょうか。

私は……



やっぱり我慢できません。もう彼の部屋に行きましょう。

眠っていたらその時は申し訳ありませんが起きてもらいましょう。

そう決意して京太郎くんの部屋の扉を開きます。

電気は点いておらず、寝息が聞こえてきます。


和「京太郎くん」


気持ちよさそうな寝顔。見ているだけで心が満たされるようです。

手を伸ばして頬に触れると彼の体温を感じます。

胸の鼓動が早くなって、今にも弾けてしまいそうです。

もうしばらく、このまま……。



ひんやりとした何かが肌に触れたような感触に俺は目を覚ました。

目を開けるとそこには綺麗なピンクの髪を下ろしフリフリの寝間着を着た大きな胸の少女が佇んでいた。

俺が起きたことを確認すると頬に触れていた手を引っ込めて少女は申し訳なさげに言葉を紡ぐ。


和「すみません、こんな時間に」

京太郎「いや……どうかしたか?」

和「はい、私胸が苦しくて眠れないんです」

京太郎「胸が?」

和「そうです、ほら」


そう言って姉さんは俺の手を掴むと自分の胸元で持って行き、左の胸に触れさせた。


京太郎「なっ、姉さん?」

和「わかりますか?胸がドキドキして、止まらないんです」


確かに姉さんの柔らかな胸を通して激しい心臓の鼓動が聞こえてくる。


和「こうなったのは、あなたのせいです」

京太郎「俺の?」

和「あなたが優しいから、私は恋してしまいました」

京太郎「恋って……」

和「好きです、京太郎くん」

京太郎「……」

和「京太郎くんはどう思いますか、私のこと……」

京太郎「俺は……いや、俺も好きだよ。姉さんのこと」


月明かりの中、そうして俺と姉さんは口付けを交わした。



ピンポイントで差し込んだ光が眩しい、どこかで鶏が鳴いている……ような気がする朝。

柔らかい。

それが起きて最初に感じたこと。

目を開けてみると昨夜そのまま俺の布団で寝た姉さんが俺に抱きついていた。

なんて、なんて幸せな状況なんだ……!

出来ることならこのまま再び眠りに落ちたい、けど母さん達が帰ってくるんだよな。

どうしようか……。



【朝】

ダメだ、この誘惑には勝てねえ。

二度寝しよう……。




体を強く揺さぶられて目を覚ます。

何事かと体を起こすと魂の抜けたような表情のお義父さんとニヤニヤしている母さんが居た。

驚いて横を見ると姉さんは顔を真っ赤にして俯いている。

もう一度向き直ると母さんが言った。


須賀母「ゆうべはおたのしみでしたね」

京太郎「誤解だあああああああああああ」








一緒に寝ただけでそういうことはしていないと一応の弁明を終えて朝食を取る。

どうにか生気を取り戻した恵さんと姉さんは一旦帰る支度を終え、あとは見送るだけだ。


和「京太郎くん」

京太郎「なんだ?」

和「これからもよろしくお願いしますねっ」


別れ際、姉さんはそう言うと俺の頬にキスをして去って行った。

姉さんと過ごす生活、凄く楽しみだな。

そんなことを思いながら背中を見送った。

そして後日引っ越した際、ふざけた母さんが俺と姉さんの寝室を同じ部屋にしやがったのはまた別のお話。


《原村和編 カンッ!》