それは俺が中学を卒業した春休みのある晩のことだった。

女手一つで俺を育ててきてくれた母親は何の脈絡もなしに言った。


須賀母「私、再婚することにしたわ」

京太郎「え?」

須賀母「あと、向こうにも娘さんが居るらしいから仲良くしてあげてね」

京太郎「えっ、えええええ!?」


母曰く明日から新しい夫と二泊三日で旅行に行くらしい。

そしてその間新しく家族になるという女の子と一緒に暮らして仲良くなれ、とのこと。


ど う し て こ う な っ た












京太郎「で……その再婚相手が……」

須賀母「そう!この宮永界さん!」

京太郎「宮永って、まさか……」

須賀母「うん、あんたと同じクラスだった宮永咲ちゃんのお父さんよ」

京太郎「な、なんだってえええええ!?」

須賀母「あ、来たわよ」

界「やあ京太郎くん」

京太郎「お、おはようございます」

界「三日間、咲を頼むよ」

京太郎「は、はあ……」












宮永咲 好感度67


咲「お、おはよう京ちゃん」

京太郎「ああ、おはよう咲」


……気不味い!

まさか咲が俺の家族になるなんて……俺、これからどうなるんだ!?









咲「えっと、中入って良いかな?」

京太郎「お、おう!取り敢えず入れ入れ」


つーわけで咲を我が家に招き入れる。

これからコイツと家族になるなんてどうにも調子が狂うな。


咲「わ、私達これから兄妹になるんだよね……それとも姉弟かな?」

京太郎「ああ、そうだなどっちが兄か姉か、一応誕生日は俺のが遅いけど……」

咲「それじゃあ……私がお姉ちゃんだね!」

京太郎「なんか、やっぱ変な感じだな」

咲「ほらほら、お姉ちゃんって呼んでいいんだよ?」

京太郎「そうか、呼び方も変わる……のか?」

咲「まあ別にいままで通りでも良いけど」

京太郎「うーん、そうだな……」

京太郎「よし決めた!これからは咲のことは……







京太郎「やっぱ咲のままで!」

咲「うん、それが一番しっくり来るね」

京太郎「ああ」


関係が姉弟に変わっても、やっぱり今まで通りが一番だな。


咲「それで、これからどうする?」

京太郎「そうだな、まだ朝だし……」

京太郎「どっか出かけるか」

咲「いいね、どこいくの?」

京太郎「そうだな、それなら……」

京太郎「近くの公園でも行こう」

咲「わかったよ」

京太郎「それじゃ早速出かける準備だ」

京太郎「あー……」


ヤバい、何を話そう。


咲「うぅ……」


公園に来たは良いものの会話が始まらない。

やっぱり何かこう変な距離感が。

時計を確認するともう昼近くになっていた。


京太郎「……帰るか」

咲「うん」









家に帰って昼食を取る。

京太郎「午後はゲームでもして遊ぶか」

咲「ゲーム?」

京太郎「ああ、やり方わかるか?」

咲「わかんない」

京太郎「それじゃあ操作方法はだな……」


咲にゲームの操作方法を一通り教えてゲームスタート!


咲「わわっ、キノコ来てるよぉっ」

京太郎「それは取っても大丈夫な奴だ!」

咲「じゃあ、このキノコは!?」

京太郎「それは触ったら死ぬ!」

咲「なんか甲羅が跳んできたぁ!?」

京太郎「あ、すまんそれ俺が投げた」


咲とやったのは二人で協力プレイ出来るゲーム。

なんだかんだで咲も楽しむことが出来たらしい。

死ぬ度に「もう一回!」と言う咲に付き合っているといつの間にか夜になっていた。






京太郎「ん、暗くなってきたな」

咲「お風呂とご飯どっちにする?」

京太郎「うーん、そうだなぁ」

京太郎「風呂から、かな」

咲「京ちゃん先に入る?」

京太郎「俺は後で良いから咲が入ってこいよ」

咲「ありがと京ちゃん、それじゃお先にー」

京太郎「おう、ごゆっくりー」








咲「良いお湯だった~」

京太郎「お、上がったか」


そう言って振り返るとそこには、タオルを一枚身体に巻いただけの咲が居た。


京太郎「お前なんつー格好を」

咲「え……?ってやだ!いつもの癖でっ」


普段はお風呂あがりにタオル一枚なんすか咲さん。

ってそんなことを考えてる場合じゃない。

タオルから伸びるお湯で火照った健康的な手足から目を背ける。


京太郎「早く着替えてこいっ」

咲「う、うん!」


咲(京ちゃんに恥ずかしいところ見られちゃった……)

咲(でも、姉弟だしそんなに気にすることじゃない……のかな?)

咲「ふぁあ……んぅ」

京太郎「眠そうだな」

咲「ちょっとね……昨日は色々あって疲れたし」

京太郎「そんじゃ、そろそろ寝るか」

咲「うん、おやすみ京ちゃん」

京太郎「おやすみ咲」


挨拶を交わして二人別々の部屋に入る。

咲にはひとまず使われてなかった空き部屋を使ってもらうことにした。

それにしても大変な一日だったな。

……咲と二人きりで一つ屋根の下で寝るなんて、不思議な気分だ。


一日目が終了しました













咲が我が家に来てから2日目。

目覚ましがやかましく鳴っている。

正直、まだ眠い。出来ることならもっと寝ていたい。

ただ早起きは三文の得なんて言葉もあるしなぁ。

そんなことを考えながらぼんやりと目を開ける。

どうするかな……。

京太郎「いや、起きよう」


咲が来て初めての朝だしな、だらしない姿を見せるわけにはいかん。

さて、咲の奴を起こしに行くか。






咲「すぅ……」


ぐっすり眠ってますねこのお姉さんは。

さて、ここは弟として起こしてあげますかね。


咲「んぅ……私が、お姉ちゃん……えへへ……」


不覚にも可愛いと思ってしまった自分が居る。


京太郎「おーい、咲起きろー」

咲「ふぇ……?」

京太郎「お早うございますお姉さま」

咲「あ……おはよ……」

京太郎「朝飯準備しとくから降りてこいよー」

咲「ありがと……」










咲「ふぁあ……」

京太郎「まだお眠か?」

咲「むっ、馬鹿にして!私がお姉ちゃんなんだよっ!?」

京太郎「はいはい、お姉ちゃんお姉ちゃん」

咲「京ちゃん絶対馬鹿にしてるでしょ!?」

京太郎「してないしてない」

咲「してるもんっ!」








京太郎「よし、今日も出かけようぜ咲!」

咲「うん、いいよ!」


昨日のリベンジだ!今日は上手くやるぞ!



京太郎「今日は遊園地に行くぞ!」

咲「おー!」


俺たちがやってきたのは『長野ネズミーランド』

真実を知るとネズミに夢の国へと連れて行かれるとか長野と言いながら千葉にあるとかそういうことは無い。決して無い。

それじゃあ咲と二人で楽しむぞー!


京太郎「じゃあ、お化け屋敷に入るか」

咲「お化けっ!?」

京太郎「フフ……怖いか?」

咲「こ、怖くなんかないもんっ」

京太郎「そうか、それじゃあ行こう」

咲「京ちゃんこそ、怖かったらお姉ちゃんに頼っていいんだからねっ」

京太郎「はいはい」


そう言ってお化け屋敷に入り歩くこと数歩。

お化け(の仮装をした係の人)が突然姿を現す。


咲「お、おおおお化けええっ」


完全にビビりまくって俺の腕にがっしりと抱きついてくる咲。

それからお化け屋敷を出るまで咲は俺の腕を離さず、出た時には半泣きになっていた。


咲「うえぇ……京ちゃんぅ……」

京太郎「すまんすまん、俺が悪かったから、だから泣き止め、な?」


そうして号泣する姉の頭を撫でながら俺は遊園地を後にした。










京ちゃんは、私にとって仲の良い同級生だった。

けど……。


京太郎「ほら、いい加減泣き止んで一人で歩け」


一昨日の晩突然再婚の話を聞かされて、京ちゃんと姉弟になって。

最初は少し戸惑ったけど、今は思うの。

京ちゃんは、優しくてカッコいい頼れる弟だ……って。

だから私もしっかりしたお姉ちゃんになって、家族四人で仲良く暮らして行けたら良いな。

なーんて、京ちゃんが聞いたら笑うかな?










京太郎「やっと帰ってこれたぁ」

咲「そんなに遠くないでしょ?」

京太郎「ああ、どっかの大泣きした誰かさんを引きずって歩かなきゃな」

咲「大泣きなんてしてないっ」

京太郎「いーや、した!」











京太郎「さて、午前は遊んだことだし昼からは家事に精を出そう」

咲「家事ね、お姉ちゃんに任せない」

京太郎「すっげえ不安」

咲「うるさいなあもう!」

京太郎「どうどう、そんじゃ早速始めようか」

咲「何からやるの?」

京太郎「夕飯を作ろう」

咲「よし来た」

京太郎「危ないから咲は包丁は持っちゃ駄目だぞ?」

咲「京ちゃんっ!」

京太郎「悪い悪い、それで何食べたい?」

咲「そうだなあ、京ちゃんが食べたいもので良いよ?」

京太郎「いや俺も何でもいいし咲が決めろよ」

咲「それじゃあハンバーグにしよう」

京太郎「ほう、何故?」

咲「え?だって男の子ってハンバーグ好きでしょ?」

京太郎「否定はしない」

咲「できたっ!」

京太郎「お、どれどれ?」

咲「じゃーん」

京太郎「すげえ!うちの母親のハンバーグより美味そうだ」

咲「ふっふっふ、お姉ちゃんの腕前はどんなもんよ」

京太郎「まさか咲にこんなスキルが有ったとはなぁ」

咲「ひょっとして私馬鹿にされてるっ!?」








京太郎「もう夜かあ」

京太郎「晩飯も食い終わったし風呂に入るか」

咲「そうだね」

京太郎「今日はどっちが先に入る?」

咲「私はどっちでもいいけど」

京太郎「じゃあじゃんけんで勝った方が先ってことで」

咲「おっけー、それじゃあいくよっ」

「「じゃんけんっ」」

京太郎「……負けたか」

咲「えっと、それじゃあお先にー」

京太郎「ああ、風呂で寝るなよー?」

咲「そんなことしないよっ!」

咲「京ちゃーん!着替えとってー!!私の鞄の中に入ってるからー!!」


咲が風呂に入ってしばらくしてからそんな声が聞こえてきた。


京太郎「まったく……何やってんだ……」


仕方なく咲の着替えを取りに行ってやることにする。

しかし……。


京太郎「白、か……」


鞄を開けて最初に目に入ったのは純白のパンツ。

友人曰く「姉の下着なんか見ても興奮しねえ」とのことだが義姉の、それもつい最近まで同級生だった少女の下着だ、興奮しないわけがない。


京太郎「……って何考えてんだ俺は!」


何とか雑念を振り払って咲の元へ着替えを届ける。

意識しなくなる日なんて、来るのかねえ……。









京太郎「もう遅いしそろそろ寝るか」

咲「そ、そうだね」


何故かそわそわしてる咲。はて、トイレでも我慢してるんだろうか?

まあもう眠くなってきたしさっさと寝よう。


咲(どどどどど、どうしよう……京ちゃんもう寝ちゃうよ)

咲(でも一緒に寝よなんて言ったら何て言われるか……)

咲(姉弟っぽくて良いと思うんだけど、いざ言おうと思うと恥ずかしい……っ)

京太郎「ん?」


なんだろう、咲は なにかいいたそうなめでこちらをみている って感じだな。

うーむ



京太郎「咲、どうかしたか?」

咲「えっ……うー、その……」

京太郎「……?よく分かんねーけど何も無いならもう寝るぞ?」

咲「まっ、待って!」

京太郎「ん」

咲「その……一緒に寝ない?」

京太郎「ああ、いいぞー……って、はあ!?」

咲「ち、違うよ!?変な意味とかじゃなくてっ」

京太郎「じゃあ何なんだよ」

咲「いや……その、同じ布団で寝るとか姉弟っぽいかなー、なんて」

京太郎「俺たちもうすぐ高校生だぞ?」

咲「だめ、かな?」

京太郎「……仕方ねえな」

咲「じゃあ……」

京太郎「ああ、俺の部屋来い」

咲「うんっ!」

咲「なんか、いいね」

京太郎「そうかぁ?」


俺と咲は俺の布団で二人並んで寝ることにした。

まあ咲の奴も過剰に近づいてくる気配も無いし何より咲だ、間違いが起こることも無いだろう。


咲「……ちょっと、懐かしいかも」

京太郎「懐かしい?」

咲「うん、小さい頃はよくお姉ちゃんとこうやって寝てたの」

咲「お父さん達が離婚した時に別々になっちゃったんだけどねっ……って京ちゃん?」


少し寂しそうな表情で語り始めた咲を、俺はいつの間にか抱きしめていた。


京太郎「……俺は、一緒に居てやるからな」

咲「京ちゃん……」

京太郎「それに、心配で一人に出来ねえよ」

咲「もう、そうやって馬鹿にして」

京太郎「心配なもんはしょうがないだろ」

咲「うん……ねえ、京ちゃん」

京太郎「なんで?」

咲「姉弟って、暖かいね」

京太郎「ああ、そうだな」

咲「私、もう寝るねっ、おやすみ」

京太郎「おやすみ」


そうして俺は咲の頭を撫でながら咲が眠りに就いたのを確認するとゆっくり瞼を閉じた。







朝の日差しが眩しい。

ぼにんやり目を開けると隣には咲の寝顔があった。

眠い……。

どうするかな……


咲「……きて、朝だよ京ちゃん」


身体を揺すられ俺は目を覚ました。

そして視界に入ってくるのは可愛い義姉の笑顔だ。


咲「もう、やっと起きたっ」

咲「ちゃんと一人で起きなきゃ駄目だぞー?」


満面の笑みでほっぺたを引っ張ってくる咲、そんなに咲に起きれたのが嬉しかったか。

お姉ちゃんぶっちゃってまあ、ういやつめ、この。


咲「そろそろお父さん達帰ってくるよ?」


忘れてたけどもうそんな時間か。

咲との二人っきりの生活もこれで一先ず終了かあ。

そう思うと感慨深い。

この三日間色々有ったけど、割と楽しかったかな。

ちょっと危なっかしいしぽんこつ気味だけど、こんな可愛らしい義姉が出来て、俺は幸せだな。

なーんて、恥ずかしくて咲には言えねえな。


咲「ほら京ちゃん起きて起きて」

京太郎「あー、わかったわかった」


うん、こんな生活も悪くないかな。


《宮永咲編 カンッ!》