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京太郎「俺小説家を目指してみようと思う」

咲「何でまたそんなことを」

京太郎「いやぁ、今までも趣味で書いてたんだけど」

京太郎「試しにネット上にアップしてみたら大反響でな」

京太郎「それで小説家にって思ってな」

咲「そうなんだ」

咲「それで私に頼みたいことってなに?」

京太郎「俺の書いた小説を読んで感想を聞かせてほしい」

京太郎「ラノベの公募用に一本書いてみたんだけど自信が無くてさ」

咲「なるほどね」

京太郎「他のみんなに見せるのはまだ恥ずかしいし」

咲「(なんだろう。まるでお姉ちゃんと打ってる時みたいな不安が……)」

京太郎「ほい。これだ」ドサッ

咲「え?なにこれ」

京太郎「何ってさっき言った俺の書いた小説だよ」

咲「(この月刊少年ガンガンみたいな紙の束が!?)」

京太郎「もしかしてフロッピーとかUSBで渡した方が良かったか?」

京太郎「手書きじゃなくてパソコンのwordで印刷したやつだから汚くて読めないとかはないと思う」

京太郎「あとこれも」ドサドサッ

咲「へ?」

京太郎「小説を読むにあたって必要な設定集だ」

咲「(本編の二倍の厚さがある)」

咲「こ、これを読めと」

京太郎「ああ」

咲「(しばらく徹夜かな)」


~~一週間後~~

咲「……京ちゃん。一応全部読んだよ」

京太郎「おおそうか!!」

京太郎「で、どうだった?」

咲「えっとそうだね。何から言おっかな」

咲「とりあえず言えるのは」

咲「何から何まで『全部駄目』ってことかな」

京太郎「え?」

咲「まず最初に指摘するのは文字数」

京太郎「え、少なかった?」

咲「逆だよ!!多すぎるよ!!この厚さはもはや凶器だよ!!」

咲「どこの出版に送るのかは知らないけどレギュレーションを守らないと、読まれずに落選だよ」

京太郎「何文字くらいなら良かったんだ?」

咲「う~ん。例えばMF文庫Jだと『1ページ40文字×34行の書式で80~150枚』って決まってるよ」

咲「ライトノベルはどこの出版社でも基本的にこのくらいの分量かな」

咲「そして設定集なんか問題外」

咲「長期連載作品ならともかく、続編が出るかも判らない公募作品にそんなもの作る暇があればもう一本書きなよ」

咲「そもそも設定集が必要になるってことは、本編内で設定を自然に出す力量がないか」

咲「その設定が物語の展開に不必要な死に設定かのどちらかだよ」

咲「京ちゃんのは典型的な後者タイプ」

咲「名前すらも出てこないモブキャラの家族構成とかどーーっっっでもいい!!」

咲「他にも言いたいことは山ほどあるよ」

咲「大して力量も無いのに一人称で書くなとか」

咲「何度も何度も視点変更するなとか」

咲「主人公の名前が『キョウ』って……とか」

咲「でも一番言いたいのはね」

咲「何で台詞の前に名前が入ってるの?」

京太郎「俺がネット投稿してる小説サイトではみんなそれだぜ?」

京太郎「それに掲示板とかでもみんな台詞の前に名前付けてるし」

咲「ひょっとしてそれはギャグで言ってるのかな?」

京太郎「?」

咲「いい、京ちゃん。台詞の前に名前を付けるのは俗に『台本形式』って呼ばれてるの」

咲「はっきり言って台本形式は小説ではありません」

京太郎「な、なんだってーー!!!!」

咲「……続けても?」

京太郎「あ、どうぞ」

咲「台本形式っていうのはね、文字通り『台本』で使われる手法なの」

咲「舞台とかドラマとかアニメとかetcとにかくそういうので使われるやつ」



(キャラ名)「(台詞)」

俳優・キャラクターの動作

(キャラ名)「(台詞)」



咲「みたいにね」

京太郎「ふんふむ」

京太郎「じゃあ今まで書いてきた台本形式のやつは小説扱いされないのか」

咲「うん。そうだよ」

咲「でもね、より詳しく言うと掲示板での台本形式は正確には台本形式じゃないんだよ」

咲「これを台本形式って表現するのは失礼にあたるね」

京太郎「台本形式だけど台本形式じゃない???」

京太郎「どういうことだ?」

咲「ネット掲示板で使われる台本形式は正確には『小窓形式』って言った方が正しいの」

京太郎「小窓形式?」

咲「京ちゃんはシミュレーションゲームとかする?」

京太郎「ん、まぁそれなりには」

京太郎「(女性の裸が出てくる奴だけど)」

咲「なら分かりやすいと思う。シミュレーションゲームなんかだと」

咲「画面の上部分にキャラクターの立ち絵。下部分に枠線で囲まれたウィンドウが表示されてて」

咲「キャラクターが台詞を喋るとウィンドウ内に台詞とキャラ名が出るでしょ」

京太郎「ああ。ほとんどそういうタイプだな」

咲「こういう手法がさっき言った『小窓形式』なの」

咲「画面下部分の小さな窓(ウィンドウ)に台詞とキャラ名がでるから小窓形式」

咲「だから掲示板で使われてる手法は正確には小窓形式って呼ぶのが正しいの」

咲「ともかく、小説を書く時は台本形式はNG」

京太郎「分かった」

咲「それじゃあ次の指摘をするね」

京太郎「よろしくお願いします。先生」

咲「うむ」

咲「京ちゃんの小説を読んだところ、やけに『メタ発言』が多いなって感じたの」

京太郎「メタ発言?」

咲「メタっていうのは『高次の~』って意味のギリシャ語か何かだったかな?」

咲「メタ発言っていうのは本来なら作中のキャラクターが知覚することの出来ない事象を話すことをいうの」

京太郎「……さっぱり意味が分からない」

咲「例えば京ちゃんは相手に背中を向けてる時、その人がどんな表情をしてるか分かる?」

京太郎「普通は無理だろ」

咲「メタ発言っていうのは相手に背中を向けてるのに一人称で相手の表情について主人公が語ったりすることだよ」

京太郎「分かったような分からないような」

咲「よくある例だと」


この時の私はまだ知らなかった。この別れが彼女との最後の別れになるということを……。


咲「ってな風に未来予知しちゃう」

京太郎「こういうのはよく見掛けるな」

咲「ちなみにメタ発言には大きく分けて二種類があって、今私が言ったのは作風や表現によるけど使ってもOKなメタ発言ね」

咲「京ちゃんのメタ発言は使っちゃ駄目なやつね」

京太郎「使ってもいいメタ発言と駄目なメタ発言か」

咲「使って駄目なのは例えば」


「お前は確かに殺したはず!!何故生きている!!」

「読者投票で一位を取ったからだ!!」


咲「とか」


「うぅ……最近こんな展開ばっかだ。作者の俺の扱いが酷い」

咲「みたいな」

京太郎「でも俺が読んだラノベや漫画ではそんな展開もたまにあったぞ」

咲「こういうメタ発言もコメディではある程度許容されてるんだよ」

京太郎「『アニメ化前に連載を終了させる』とかは?」

咲「ああいうのは作風だから例外ね」

咲「そういう作風が受け付けないって読者も実際いるわけだし」

咲「後書きとかで作者とキャラクターが座談会したりするのも受け付けないって人もいるけど」

咲「ともかく京ちゃんはまだワナビ未満だから作中でのメタ発言は控えようって段階ね」

咲「あと気になったのは擬音」

京太郎「擬音って『ドカーン』とか『ザシュッ』とかだろ」

咲「うん。それのこと」

咲「京ちゃんはさっきいった小窓形式を使ってるから、それも合わさって酷いことになってるよ」

咲「戦闘シーンなんか」



照「死にたい奴からかかってこい!!」ギュルギュル



咲「みたいのばっかりだよ」

咲「擬音の扱いは色々だから、今回は大雑把に四つのタイプに分類して説明するね」

京太郎「頼む」

咲「まずはAタイプ」


照「死にたい奴からかかってこい!!」ギュルギュル


咲「みたいな小窓形式を使ってかっこの最後に擬音を持ってくるタイプ」

咲「掲示板では小窓形式と合わさってこれが主流だね」

咲「次はBタイプ」



「死にたい奴からかかってこい!!」

ギュルギュル



咲「みたいに、擬音を台詞や地の文と別枠で持ってくるタイプ」

咲「これは絵本からケータイ小説・ラノベ等広く使われている手法」

咲「でもちょっと幼稚に見られがちな表現かな。こういう表現を嫌う人もいるよ」

咲「次はCタイプ」



「死にたい奴からかかってこい!!」

そう言うと照はギュルギュルと音を立てて回転させ始めた。



咲「地の文に擬音を組み込むタイプ」

咲「これは現在は勿論、昔から使われてきた手法だよ」

咲「あらゆるジャンルで使われているから、初心者のうちはまずこれを使ってみるのが一番いいかな」

咲「最後はDタイプ」



「死にたい奴からかかってこい!!」

そう言うなり照は右腕を回転させ始める。錆びた掘削機を強引に起動させたような、耳をつんざく厭らしい音が辺りに響き渡る。



咲「みたいに擬音そのものを使用しないタイプ」

咲「これはかなり作者のセンスが問われるから、上級者向け」

咲「さらに言うと最近ではDタイプはあまり使われなくなってきてるの」

咲「京ちゃんに聞くけど錆びた掘削機を動かしたらどんな音がする?」

京太郎「え、う~ん……ガリガリかな」

咲「他にも人によっては『ギャリギャリ』かもしれないし『ガラガラ』かもしれないし『グワラォングワラォン』かもしれないし」

咲「こんな風に受け取り手によって想像するものが変わるの」

咲「最近ではそれがあまり好まれない風潮にあるの

咲「本来なら、その受け取り方の違いこそが文学の面白さの一つではあるんだけどね」

咲「あくまでも一過性の流行とかそういうレベルのもので出版社や編集者や作者によって考え方は違うし」

咲「何年かしたらBタイプが流行したりするかもしれないね」

京太郎「そうか。小説ってのは奥が深いな」

咲「言っておくけど、今までの話を全て呑み込んでやっと京ちゃんは小説家志望のラインにたった段階だからね」

京太郎「え」

咲「とりあえずネットで『ラノベ』『書き方』とか検索すればたくさん出るから細かい書式については私からは何も言わないよ」

咲「その辺りは数学の公式みたいなものでただ覚えるしかないから」

咲「出版社によっては三点リーダとか『!』『?』等の後の空白とか、そういうのが出来てないと無条件で落選なんてとこもあるからね」

咲「さあお待ちかね!!ストーリーについてだよ!!」

京太郎「急にテンション上がったな」

咲「テンション上げないと無理なくらい酷い内容だからね!!」

京太郎「」

咲「まず物語は異世界ファンタジーもの」

咲「麻雀要素はからっきしだね」

咲「主人公は普通の高校生」

咲「ある時、剣と魔法のファンタジーな異世界に行く」

咲「何故か身体能力や魔力とかが物凄く高い主人公は代々家系に伝わる古武術を使って、盗賊に襲われているお姫様を助ける」

咲「なんやかんやあって国を狙う悪者をやっつける」

咲「元の世界には戻れないけど、この世界で生きていくぜ!!END」

京太郎「いいストーリーだろ」

咲「……もうね、なんかあれだよ」

咲「学校に乗り込んできたテロリストを格好良く撃退する妄想をひたすら聞かされた気分だよ」