部活中







久「来週、ちょっと離れた場所にある公園の広場で夏祭りがあるの。だから、みんな来てね?」

まこ「来てねって…久は行かんのか?」

久「学生議会でお店出すことになっちゃって。だから客として来てねってこと」

優希「ふむふむ。タコス屋?」

久「残念ながら違うわ。先生方が中心になって、バザーをするのよ」

優希「ちぇ~」

京太郎「まぁまぁ。多分タコスの屋台自体はあるから落ち込むなって」

優希「何っ!? それはホントか?」

京太郎「多分。なぁ、咲?」

咲「林側の端っこだよね、毎年」

和「詳しいですね。毎年行ってるんですか?」

咲「ん、そうだね。あそこのお祭りは……小3の夏から毎年…かな?」

京太郎「懐かしいな。そこで迷子になってた咲に声をかけたのが、俺らが知り合った切っ掛けだったりするんだぜ? まぁ咲は今でも迷子になるけど」

まこ「ほう」

久「その頃からの仲なのね」





咲「あ、あの時は京ちゃんも迷子だったでしょ!?」

京太郎「俺は友達が迷子になったから待ち合わせ場所に行っただけだっての」

咲「ど、どうだかね? 今までのも、私じゃなくて京ちゃんが迷子になってる可能性だってあるわけで…」

京太郎「…毎年同じこと言ってるけど、今年みんなで行けば、その真相も明らかになるな。みんなとはぐれた方が迷子ってことで」

咲「うっ…」

久「え、何? その言い方だと…今までは二人きりで祭り行ってたの?」

京太郎「え? まぁ…はい。中学になってからは二人で行ってますね」

久「…デートだったりするの?」

京太郎「………あ~、違…いますよ? なぁ?」

咲「え? あ、うん……そう、だよね? 普通に祭りを楽しんでるだけだよね…?」

久「なぁんだ。残念」

咲「残念って……第一、付き合ってもいないのにデートなんてするわけないじゃないですか…」

まこ「まぁ二人で出掛ければデートっちゅうのも間違いではないと思うがの」

優希「ただ二人で歩くってだけだと、デートじゃない気がするじぇ」






和「そうですね。デートというのは、こう…手を繋いで歩いたり、一つのご飯を二人で分けて食べたり…そういうイチャイチャがないと」

京太郎「………………」

咲「………………」





優希「そうそう。他にも、彼氏さんが彼女のために景品を取ってあげたり、タコスを食べさせ合いっこさせたりしないとデートとは呼べないじぇ」

京太郎「…………」

咲「…………」





まこ「あとはまぁベタなところじゃが、浴衣姿を褒めたり、静かなところで二人きりになったりかのう? 経験ないから知らんが」

京太郎「…………」

咲「…………」





久「下駄の鼻緒が切れちゃって女の子をおんぶとか、流石に夢見すぎかしら? でも、そこまで行ったらもう間違いなくデートよね? よね?」

京太郎「………………」

咲「………………」















帰り道








京太郎「………………………」

咲「………………………」







和『手を繋いで歩いたり、一つのご飯を二人で分けて食べたり』

優希『彼女のために景品を取ってあげたり、タコスを食べさせ合いっこさせたり』

まこ『浴衣姿を褒めたり、静かなところで二人きりになったり』

久『下駄の鼻緒が切れちゃって女の子をおんぶとか』







京太郎「…………」

咲「…………」





  『また余所見しながら歩いて…そんなんだから迷子になるんだぞ?』

     『き、京ちゃんが歩くの早いだけでしょ!?』

 『…咲が遅いだけだっての………ほら、手だせ。手繋げば迷子にはならないだろ?』

         『しょうがないなぁ。京ちゃんが迷子にならないように、私が手を握っててあげるよ』

            『何言ってんだか…。ほら、手』








      『焼きそばの量が多すぎるよぉ…京ちゃんも食べる?』

 『マジで? いいの? ラッキー』

   『うん。そっち半分、よろしくね』

         『いただきま…って言いたいけど、箸がねぇよ』

     『手で食べれば?』

             『なんでだよ! さっき箸2本もらってただろ?』

            『あ、バレてた? はい、どーぞ』

       『最初からそうしろっての…では改めて、いただきまーす』





『…お、射的じゃん。景品は……お結構いいのが残ってるな』

       『あ、あのクマちゃん可愛い』

          『俺的にはその隣のゲームが欲しいかな。おっちゃん、これやらせて!』



 『…ゲームを狙ったのに、隣のクマに当たってしまった』

   『……いいなぁ~。可愛いなぁ~』

     『…やるよ。俺の趣味じゃないし』

 『ホント!? ありがとう、京ちゃん!』








『京ちゃんはいつもレモン味だねぇ。金髪だから?』

  『別にどうだっていいだろ? ……ちなみに、ブルーハワイってどんな味なんだ?』

     『どんな味って言われても…………………あ~ん』

  『!? ……あー……ん…………へぇ、こういう味なのか……』

        『はい、お返しにレモン頂戴?』

         『一口だけだぞ? ほい』

      『あー…んっ!』






       『お、今年は浴衣なんだな』

   『えっへへ。浴衣って初めてなんだ!』

 『買ってもらったのか?』

    『ううん? お姉ちゃんのお下がり。誠に遺憾ながら、サイズもピッタリだよ』

  『姉ちゃんなんていたんだな……つか、姉ちゃんもまな板なのか』

      『残念ながらね。…でも、お姉ちゃんはこう、シャキってしてるからこういうの似合うけど、私にはあんま似合わないよね…?』

    『…似合ってるかどうかは置いといて…まぁ、個人的には……まぁ、ありだとは思うぞ?』

     『……ホント? ……えへへ』






      『う~ん…やっぱ花火が見れるとこは人が多いねぇ。これじゃあよく見えないよ』

     『咲はちっちゃいもんな。肩車してやろうか?』

        『む? 京ちゃんだって小学生のころは私より小さかったくせに~』

     『何年前の話なんだか?』

           『はぁ…どっかいいとこないかなぁ。花火がよく見れて、静かなところ』

  『………いっそのこと、俺ん家くる? 二階からなら花火もよく見えると思うけど。こう、角度的に』

        『いいの? おじさんとおばさんは?』

     『父さんは仕事、母さんは祭りの手伝い。だから今日は静かだと思う』

        『…ふ、ふ~ん? …じゃあ、お言葉に甘えちゃおっかな?』











   『サンダルのヒモが切れちゃった……』

       『………仕方ねえな。……ほら、背中』

 『そ……それは悪いよ。……恥ずかしいし』

     『俺だって恥ずかしいよ。でも、ここでずっと座っとくわけにも行かないだろ? ほら、おんぶ』

『……ありがとう。それじゃあ、お邪魔します』




     『…周りの視線がキツいね』

    『だな。知らねえやつばっかだからいいけど、知り合いに見つかったら死ねるな』

       『……あ、あの人! よくみたら…ほら、京ちゃんのお友達の…よく私達のことからかってくる人!』

 『マジか!? …ほんとだ…あいつにだけはみつかったらマズい! 今でさえ恋人扱いしてくんのに、みつかったらさらに色々言ってくるに違いない!!』

          『か、隠れて京ちゃん!』









京太郎(全部しちゃってるじゃん)

咲(全部しちゃってるじゃん)









京太郎(…というか、今になってよくよく思い返してみれば…どうみてもデートだろこれ)


咲(なんというか……かなりイチャついてない? 中学のころの私達)


京太郎(このタイミングでこれ思い出したのはミスだなぁ。今までは普通に仲良くできてたけど、なんか変に意識しちまいそうだ…)


咲(でも、せっかく京ちゃんとデートの気分が味わえるイベントなんだから、行かないなんてありえないし…)










京太郎(……いっそのこと、普通に告白して、普通にデートしちまうか……? 咲のこと、普通に好きだし)


咲(もう高校生だし、告白しちゃってもいいかなぁ……? 京ちゃんのこと、普通に好きだし)









京太郎(………でも。もしそれで振られたら、残りの3年間が地獄だもんなぁ…)


咲(……やっぱり、告白はなしにしよう。まだ高校生活は長いんだし、そんなに急ぐのはよくないよね?)












京太郎「……………………」

咲「…………………」











でも、止まったままってのも………よくないよな。








京太郎「あ、あのさぁ!!」

咲「な、なに!?」




京太郎「あの……えっと…ほら、来週の夏祭り」

咲「う、うん……夏祭り」

京太郎「その…夏祭り。……今年も、二人で行かねぇ?」









咲「え…あの……」

京太郎「その……優希や和には悪いんだけど…やっぱ、祭りは咲と二人がいい」

咲「…………」

京太郎「…だ、からさ? ……その………えっと…」










京太郎「来週……デート……しよう…」









咲「………デーと…」

京太郎「……うん…。……デート……」

咲「………あの…」

京太郎「な、なんだ?」












咲「その……よろしくおねがいします……」

京太郎「…お、おう……こちらこそ……よろしくおねがいします」

















京太郎(まだ付き合ってもいないのにデートってのも、おかしな話かもしれないけど……)

咲(……とりあえず……一歩前進!)
















夏祭り








京太郎「よう、咲」

咲「あ、京ちゃん。……今日は京ちゃんも浴衣なんだね」

京太郎「ん。そういう咲も、去年とは違うやつだな」

咲「……ど、どう…かな? その……ね?」

京太郎「…うん。あの…似合うっつーか…まぁ、可愛いんじゃねえかな?」

咲「…ありがと。…その…京ちゃんも……かっこいいよ?」

京太郎「お、おう……」







京太郎(なんだこれ!? 去年まで、つか昨日までは普通に喋れてたのに…)

咲(これがデートだって意識するだけで、舌が全然回らない……)







京太郎「あ~……えと…ほら、手」

咲「え? ……あ、そうだね。迷子にならないように…」

京太郎「…まぁ、それもあるけどさ。…その……せっかくのデートなんだし……手、繋ごうぜ」

咲「あ………うん…」







京太郎「…………」

咲「…………」














京太郎(やばいやばいやばい。咲の手ってこんなに暖かかったっけ?)

咲(きょ、去年までどうしてたっけ!? もっと…もっと強く握ってたよね? ……手に力が入らない…)

京太郎(こんなのがあと8時間近く続くのか……会話続く気がしねぇ……)

咲(やばいよ……幸せだけど地獄だよ…)








祭りの後








京太郎「……最後の花火も終わったし…そろそろ帰るか」

咲「う、うん…。そうだね…」








咲(…さっきまではなんか気まずくて、早く帰りたいって思ってたのに)

京太郎(いざ帰るとなると、すっげぇ名残惜しい…)









京太郎「あ~…あれだ。家まで送ってく」

咲「え? ……いいの?」

京太郎「おう。また去年みたく、サンダルの紐が切れたら困るだろ?」

咲「あ、うん…そうだね。…それじゃあ、お願いします」

京太郎「ん」







京太郎(………そんな都合よく、ここで紐切れたりしないよなぁ)

咲(こう…指の付け根で引っ張る感じで、ちぎ…れないなぁ……)