ザァァァ

洋榎「ふんふっふ~ん♪ あっめあっめ降れ降れ~♪」

 スッ パチャッ

??「……」

洋榎「おわっ!? なんや!? ビックリしたぁ!」

絹恵「……」

洋榎「き、絹……?」

絹恵「……おねえちゃん」

洋榎「傘も差さないでどうしたんや? 忘れたんなら、一緒にほら!」オロオロ

絹恵「私ね、決めたんだ」

洋榎「何をや? 急に気持ち悪い口調になって……」

絹恵「愛するって気持ち、我慢するの辛いよね……ふふ、おかしいかな? 今頃気づくなんて」


洋榎「せやから! その気色悪い喋り方やめぇや!!」


絹恵「だからさ」

              \\ \   ヘ     ',      i
           ,ィ      ' ,ヘ   ヽ  ヘ      ム      |
        /         ヘ,   マ  ',
       /          ぃ   マ  ,    キ
.     /            斗‐  V
    , '          ,.。≦´  }   ∨ キ    ,     :
.   /, '       ,.。if升三≧==--- 」__}
  //    ,.。ifン´圭圭ニニ===≪≪三三:ヽ
     ,.。ifン´彡'"::i i::    キ   }iii〉 `,;○;;Y   ,
   ,.ィ'´rイ{     .::i i::.     i}   ,'//   };;;;;;;;;i    ,     i!
   ィ㌢ キ,      ¨     4'   〃'   i!;○;;i!
  ,㌢   ’- 、      ノ  /    ム;;;;;;7
  ,㌻      ノュ,,_,, イ           ム;;;;;7    i      i!
  i{       `  ̄ ´          ム;;;;7            i!
  ミュ                      ム;;;7     ii      i|
  ヾミュ、                   ,.。斗;;;;;:/
   ` 、ミュs、  _ _,,  -‐=ニ壬三三彡{        ii      i|
     ` 、三三三三三≫-- ''"´  ハ i!
                        ハ i               |

絹恵「ごめんね。彼、奪わせて貰うから」












 第十七章【略奪愛! 何を諦める必要があるんや!?】


 ザァァァァ 


洋榎「彼……? 彼って誰のことや?」

絹恵「決まってるでしょ? 須賀京太郎君のこと」

洋榎「京ちゃん!? な、なんで絹が京ちゃんのことを……?」

絹恵「おかしい? 私が彼と知り合いだとしたら」

洋榎「せ、せやかて! 京ちゃんは今まで一度もそない……」

絹恵「それはね。お姉ちゃんのことが好きじゃないからだよ」

洋榎「っ!! いつまでその気持ち悪い東京弁使うんや!!」

絹恵「ほら、お姉ちゃんは分かってない。須賀君は、関西弁が嫌いなのに」

洋榎「あ、あんな冗談間に受けとるんか?」ゾクッ

絹恵「冗談? あははっ……そうかなぁ?」

洋榎「絹……」

絹恵「そうだ。まずはお姉ちゃんに教えてあげないとね」

洋榎「教える? 何をや?」

絹恵「私と須賀君が――いつ、出会ったのか」

洋榎「!?」

絹恵「そう、アレは――」








 二年前 長野



雅枝「ほな、私は県予選の実況に行ってくるから」

洋榎「長野もんかー。この中の誰かが全国に来る……!」ワクワク

絹恵「……」ポーンポーン

雅枝「絹、長野まで来てボール遊びかいな」

絹恵「こっちの方がええもん」

洋榎「絹は変わってるなぁ。麻雀の方がおもろいでー」

 お姉ちゃんはええやろうけど
 私は、お姉ちゃんみたいに強くないから

雅枝「絹は付いてきぃひんの?」

絹恵「そこらへんプラプラしとる」

洋榎「うちは行くで! 長野の偵察や!」

雅枝「はいはい。じゃあ、絹! 一人であんま遠くにいかんようにね?」

絹恵「はーい」

 二人共行ってもうた
 あーあ、こんなことなら付いてこなければよかったやん

絹恵「……」ポーンポーン

 いつまでもボール蹴っていても仕方ないし
 どこか気晴らしにでも行こう




 ワーワーワー

絹恵「みぃんな麻雀ばっか」ポーンポーン

 つまらんなぁ
 なんかスポーツの大会でもやってへんかな?

 キャー! ガンバッテー!

絹恵「ん?」

 なんや、アレ?
 体育館みたいなとこで何かやってるんか?

絹恵「バスケ? それともバレー?」

 どっちでもいい
 今の退屈を打ち消せる、スポーツがあるなら

絹恵「入場料とかなさそうやし、入ってみよう」

 スタスタ ガヤガヤ

絹恵「人が多いなー」キョロキョロ

 試合をやってるのは、ここ……かな

絹恵「明るくなって――」

???「うぉぉおぉっ!!!」シュバッ

絹恵「へっ!?」

     ./ /   ./  ./ /   ./   ./     __    \              /,/
   ././   ./  ./ /   ./   ./       !   `'ヘ    \           ././
  ,/./   ./  ././  ./   ./         l  r‐-、゙'ヘ .\  \         /./
/./   ./  ./ /   ./   ./           ヽ ヽ  .\, . \\      /,/
/   /  ././  ./   /             ヽ .ヽ   \、 \\  ././
   ./  ././  ./   ./                ヽ..ヽ    .\ \ /,/\
 ,/  / /  /   ./                   ヽ.\    ヽ、 \\  \
'"  / /  ./   /                      \\  /,`'、 .\\  \
 /./  ./   ./                        `‐ ./,/  .\ .ヽ,
"./  ./   ./                             // 、   .\ .\                /
'"  ./   /                             /./  .\ \   \  ヽ ヽ          ./ /
  ,/   /              /´゙''‐、,            /./     \.`'‐..、 ゝ  .ヽ  ヽ     / /
/   /                | .v_. \ \   /,/         \       |  ノ    /./
   /                    l l  `'-、\\ /./            `'ー..,,__,ノ    ./ /   ./
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                        ,//.- \  ヽ ヽ               / /   /    ./.,
                         ,.//   .`'-、"'''′ .!               ./ /    ./    ././
                      ,, /./       `''―‐"           / ./   /    /./
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             丿  .,,,,__广゙'                 / ,/   /    ././   ./  /    /
         | . //                         / /    ./    ././   ./  /    //
         ||//                         ./ ,/   /    ././   ./  /    // ,
        ||  ==―                   / ./   /    /./   /  ,/   .// ./
       |_==―                   / ,/   /    ././   ./  /    // ./
???「ハァッ!!!」バシュゥゥン!


            / /               ヘ   ヘ
              /         >'"⌒` 、      ,
          /       > ´       \        ヘ
         ./      /- 、           ,     ',   ,
               /    `     ,.ィ '"⌒ヽ       ,
             _∠_,,。zzュ、            V      i
        .7   イ/彳 イ沁ヾヽ       __   ,       | はへ?
        7  {;;;;{ {{  ん::::::}  〉`ー- 斗匕てニミx、キ   |   ,
           7ゞ.、` 乂ュ,ノ イ ´⌒ヾヘ ,仍::沁 ヾヽ   i!
          ,' イ ` ー - "     ヘ:、 V::::::::ノ  }::}x    ,
      ム   .ハ. { ////    ’     `ミュ゙<,__,ノノォ    7
      ム   ,'  ゙i            ////` ''' ´ .イ   7!
         ,'  .∧                   / } / / !
         /  ハ ヘ      _          / ,' / / !
    /   /  .ハ  \    ゝ _ `ァ       ノ-イ./ /  i
   ノ   , '   /.      \           イ   ./ /!  i|
 /  /   ./      / ` -   < /´ /  /   / i  i
´       /      イ/        :/  ./       /     |




 な、なななんや今のボール!?
 バビューンってなんて、ガーってなって!

 ど、どんなスポーツなん!?

絹恵「……今、シュートしたのは……あの、金髪の子!?」


???「ととっ!!」ガクッ

チームメイトA「危ないぞ須賀!」

チームメイトB「いくら天才のお前でも、あの技はなぁ。決まったからいいけどよ」ハハハ

京太郎「す、すみません」テレテレ

チームメイトC「やるじゃねぇか須賀!」

宮崎大輔「やったな、京太郎!」ガッ

 ワーワー


絹恵「須賀、京太郎君……か」


選手R「ふぅん……やるじゃん」

選手T「油断せずに行こう」

選手S「たるんどる!!」

選手Y「負けることは許されない――それが王者の掟」

選手A「あぁん? 俺様の美技に酔いな」

絹恵「(あれは……ハンドボール?)」


チームメイトA「須賀! シュートだ!!」

京太郎「そのボール――増えるよ」バビュッ


      `"'― ..,,_      `'ー 、,   `'-、   '!、 .|    ./    /       ._,, ‐''"゛     _,,,,.. -ー''''"´
               `゙゙'''ー ..,,_.  ..`''ー..,、 ゙''-、  ゙‐ .!   /  ,/゛   ._,, ー''"゛ . _,,,.. -ー'''''"゙´
                   `゙゙'''ー ..,,゙へ.        ‘  . ‐二.. -ー''''"゙´

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄                 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                        _,, ー                   ´゙"''― ..,,,_           _.. --、
                _,,..-‐'''"  _...                    -..、    `゙゙''''― ..,, ,..-'"    ,!
              _,,.. -''''"゛   ._..-'"゛.、 .,-  ‐==ニニ二二二ニニ==‐  `''- 、、    .,/゛     ./._、
     _,.. -‐''"゛   _,,,,,,_ .-'"゛ ._/./ /         . l ヽ  \.\,     `''ー. /        ./   . ´゙"'
.,, ー'''"          ;/   `''ー、,,.'" /  /  >   /   . . l .ヽ'、  \.゙''-、   ./           /
            ,..- │       ゙゙'-、 '" ./    /  .、 .|   l  .ヽヽ   \. ゙'' /            /、
      _..-'"゛   .l、        . `'-、″   .l゙  |  .!   .l  ヽ\   . /            /  `''ー 、、
   ._..-'"゛     .,. ..l,           `-、  .l゙   |  .}   .l,   ヽ.ヽ ,./             /          `''‐
..-'"゛       /    l,                \    |  l    .l   ゙ /          /、
       ,/゛  .,/  ヽ                `'-、,!  |    l  /         /   `'-、
     . /    /     .ヽ                 `'-,  !    . l /        /   .\   .\、
   _/゛   ,/     ../ .\               \."     |     ,..-''´      `-、   \
. /    . /       ./    ヽ,               \    `'―-‐'"゛ '< .\       \    . \
    /       ./     ./ \                   \    l.     ..ヽ ヽ          \    `'-、
  . /        /     ./    \                  \  ..l      ヽ .ヽ        `'、、
.,/          /     /      \                  ヽ,  .l      ヽ .ヽ         \
        /      /           \                   ヽ. ゙L      ヽ  \            \.
       /       ./          ! .\                  ヽ l       .ヽ.  ヽ
      ,./       ./           ,!   .\,                 ゙' !        ヽ  .ヽ
     /        /           l      \              ヽ           ヽ  ヽ
   . /        ./            ,!        ,゙'-、           ..l           ヽ  ヽ,
  /        /                !        |  .`''-、          !            ヽ.  ヽ,
./           /             l         |     .`''- ..,_     .../ .l         ヽ  .ヽ
゛           /             l         !      l   `¨¨¨¨´  l,            ヽ   ヽ
選手A「なん、だと!?」

チームメイトC「行けぇぇ!」

京太郎「これで、決めるっ!!」

選手Y「させない!」

京太郎「you still have lots more to work on!」カッ

                   ______________________
          _,,.. -ー''''"゙´ ,_..................-.-――――――――――――――¬ーxi..,,、 .>
        `゙゙゙''''''''¬―-- ..二,゙¬- ..,,、                      ,./ . /
                    `゙゙'''ー`-ニ-..,,_                   / ./
                          `'''-ミ\、              / /
            ニニニニニニニニニニニ二二二二二゙_\         / /
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              /. / ゛        . _,,,.. -ー''''''゙゙゙´    __,,,,.... --ー¬''''"゙ ̄ ̄
                / /゛    _,,,.. -ー''''"´ . __,,,.... --ー¬''" ̄´
             ,//_,,,.. -‐'''"´,,,,.. --ー'''"゙´
         ,/  .゙_.. -ー'''"´
          rシ‐''''"´

絹恵「ボールが曲がったぁっ!?」


選手S「止まらんかぁっ!!!!」バッ

京太郎「入れぇぇぇぇっ!!!」

..ヽ    .i、   ."|  .!  l゙.! 、」  ,!.l.,│ [' .ヽ/    lリ、   .! '',, ..,,、 ,!  l   |l'''ー ,,,_  ヽ .l゙     `゙"'
../ i゙''-、 .|.!.l     .l. !│ !l 、│.l .,! .|_  `''ー、、 ! l`'、  ! リi,  `"!  l   | l    n`゙''.ヽ( ,,_     ./
、 ..l,  .] ! .l.     l. ! .l .! l .、l .! |  l`' .|.l .ll、 : | l,,,.ヽ. |  ! .l.  ,!  .l`" l l,,,  ,!.!     .`゙''~ ,!
 l" ゝ ! .| .l.     l} .! l! !l l.!  !.!  .l .!│| l .,! .l `'''㍉, |  l.  |   .} l  l ´ .,! |..,,、          !
、 `';」 ̄l¬--、__      'l′ ` .″ !!   .!_l .l.l l .!  l    ,!  l !   l .|  l  l゙ .|  .`゙''ー.i,,,、   ! /
..゙/゛.l  ヽ   ..l 、          |!   l!  ll  .! .l  .l゙゙'ili..、|   .l !   .|.!   !  .l .!    !.! `゙'' ! /
 |. .ヽ  ヽ   l,.!.ヽ                 !  .! !   | l゙.l .│   l|       │ ,! |    l !   .!.l゙
   ̄l \  . `''  l!、 ゙)、                    l,!   .l! l .,!            !- |  !   ! .|   .! _
\  .ヽ .`イ,,,,、,,,..ノ.!  | .ヽ                  リ   ゙  | |            ! !  !-、, .l゙  !   .´
 ,!   ヽ l´  .!  "!  |  .ヽ  n                     |,!               !亅 |  l   .|
、,l    .ヽ.l_  l  ,!  l   7V !   l`''-、           ゛            l ! | l   .|`'ー、,、
      ヽ `" l../iミ  \/ .l゙ !.l  .!   .l                        │ .| /    .|   `'''ッ
.'t¨ ̄>  .ヽ  . ! l \  .l'┘ l゙ !  .\, .l                           !./     !  、 /!
 l ヽ  `''ー、ヽ !  l  ゙'-!/ .ヽ,  l ./ー-、`' ,!                          |/       ! xil|  !.|
 .ヽ ヽ    .`''-、 ..l,,_ .|、  .\."lo、 .ヽ                           ″     .| .,リ.| l .|
  .゙{x .ヽ、    .ヽi'"  ゙゙''|.    ヽ.!.l.`'-,ヽ   .|.l                               |iチ.! ,! !
l,  . l\. `'ッ、.   ゙.l___ . l´.゙'''~..,_ ...l ヽ  ゙'-、 │.'l、           /゙ヽ                 ″ l l  !
..l   l `-,,.! `'-、  .ヽ `{ \   `".! .ヽ   \ l  l,          l  ヽ                    |/  !./
 l.  .l.  `''-、、 `'-、ヽ .`-;;ーヽ,,.  .l |ヽ   .|  ./、 .〟         !    ヽ             ,l′ l/ .1
 ..l   .l     `''-、、゛. l   `''i 、,゙゙'‐、|. | ヽ  l゙  ! l .l l、     .ヽ   /                 ″.i゙
選手A「なるほどSATURDAYじゃねぇの」ヒュッ


 ドゴォォォォン!


京太郎「はぁ、はぁ……決まった、か?」

チームメイトA「いや、まさか!?」

 ギャルルルルルル シュゥゥゥ

チームメイトB「あ、アイツ!?」

選手R「残念だったね」シュゥゥゥゥ


京太郎「そ、そんな……」ガクッ


選手R「まだまだだね」

京太郎「片手で受け止められちゃ仕方ねぇよ。俺の負けだ」スッ

選手R「ま、あんたも頑張ったけどね」スッ

 ギュッ

 ワァァァア!! パチパチパチパチ!!! 
 スゴイゾー!  ガンバッタナー!

京太郎「ああ、くそ。決勝に行けなかったなぁ」

チームメイトB「また次があるさ。さぁ、帰ろう」

京太郎「はいっ!!」


絹恵「……か、かっこいぃ!!」ドキドキ

 あないなスポーツ見たことなかった!
 サッカーとも違う、迫力満点のスポーツ!

 こないなものが、世の中にはあったんやな

絹恵「須賀、京太郎君か……」



        ./        --- 、         '.,
       ,'   ./  ./     \\  \      .',
       .l   /  /         ヽ.\  ヽ    !
       .!   ,: ./‐‐-.、       ...-‐!l‐\ ',    l
       l   .! ./    `       ´  リ   ', .',    .l
      ノ,!  !/,.-==ミ.、   ,ィ ===ミ、! l   l
      ,'/l  .,:'::f/{:::::::::::}ヽー ''./イ{:::::::::::}ヽ:Y   l
     .,'/ .l 八:{ヾ乂: ゚ ノ,ノ/⌒ヽヽ 乂: ゚: ノ .ノ:/   l
     ('  .l   ト.-=一 ''´  、 `ー == イ,'    l
       l   ト-,  '''           '''' /  ,'  .!
       l l  ハ      -‐ -     ,/  .,'   !
       l l    i>...        ,.ィ/   /!  .l
       l l   .j | ! ≧z...  ....ィ≦_|/ ,: / !  .l
   /   j j   .,' j l/`{_f´ ̄ ̄ /.,:' / l  .l
  {(   ./ ノ  /_,'/ .,.ィ:!_,.ィ!   /./ ./丶l、 .!     ト、
\ ヽ`ー':/   .// ./ 〉_::::ハ  /./  l / `ー- .、 ! !
、 `ー=イ   ,イ_,,..イ  /:::::::} .\{/!l  .V         V ノ
絹恵「ちょっと、追いかけてみよ」タタッ






チームメイトB「全員バスに乗ったかー?」

宮崎大輔「なぁ、京太郎。俺と組まないか?」

京太郎「へ? なんだよ急に?」

宮崎大輔「俺と一緒にハンドをメジャーにするんだ」

京太郎「えー? マジかー」

宮崎大輔「握れるか? 俺の手を!」

京太郎「汗臭いからパス」

宮崎大輔「」

チームメイトA「何やってんだお前ら! 早くバスに乗れ!!」

 ウェーイ

京太郎「はーいっと」

 タタタッ

京太郎「ん?」


絹恵「あ、あのぉー!!」


京太郎「なんだあのすげぇ美人!?」ガバッ

宮崎大輔「……早く乗るんだ京太郎!」グイグイ

京太郎「あ、おい待てって!!? ああぁ俺の美女ぉぉ!」

 バタン

 ブロロロロロロッ

絹恵「あー……」ガクッ

 あともうちょっとやったのに
 あーあ、もう会えへんのかなぁ

絹恵「今日の大会が終わったら、私は大阪に帰らなあかんし」

 長野に来る機会はもう訪れないかもしれない
 そんなの……嫌や

絹恵「もしかして……、来年の大会にも出るんかな……?」

 そうや
 その時にもう一度声をかければええんや!

絹恵「須賀京太郎君! 来年も、大会見に来るから!!」

 そして、電話番号とメールアドレスを交換してもらって
 ふふ、楽しみやなぁ……







洋榎「おもろい試合やったなぁー」ホクホク

雅枝「才能溢れる土地やな」

 テクテク

絹恵「……」ホクホク

雅枝「ん? どこ行っとったん絹?」

絹恵「んー、内緒や」クスッ

洋榎「あーん? なんや企んどる顔やなぁ」グリグリ

絹恵「そ、そないなことあらへんって……//」

洋榎「アウト」

雅枝「アウトやな」

絹恵「え、ええっ!?」

洋榎「正直に吐かんかーいっ!!」ガシッ

雅枝「今日は取り調べやでー!」ガシッ

絹恵「わぁーっ!!」



 須賀君
 私――ずっと







 ――数日後

絹恵「えっと、長野……ハンドボール」カタカタ

 ブゥゥーン

絹恵「出た! ふぅん、須賀君は中学二年生なんや」

 君のことを


 ――二ヶ月後

 カタカタカタ

絹恵「あちゃー。やっぱり全国行ってないと選抜には選ばれへんかぁー」ガクッ


 大阪から


 ――半年後


絹恵「今日から高校一年生か……ふふ、須賀君は三年生。キャプテンになれたんかなぁ?」


 追いかけてるから








洋榎「絹ー! 入学おめでとさんさんころりー」

絹恵「今更なんやお姉ちゃん」クスクス

洋榎「まぁまぁ、これからは同じ学校……チームメイトとして頑張ろなぁー」

絹恵「うん」

 あの日から、半年が経って
 私はサッカーを辞めることにした

 理由の一つは、お姉ちゃんに憧れたこと

 お姉ちゃんのように強い雀士になりたくなったから

洋榎「おかんをビックリさせるくらい、強くなるでー!」

絹恵「そう、やなぁ」

 でも、もう一つの理由は誰にも言えない
 だって私はもう――果敢にボールに食らいつく選手ではなく


絹恵「(須賀君に、野蛮な女や思われたくないし)」モジッ

 恋する、乙女になってしまったのだから









 ――一年後


 長野  ハンドボール県大会 決勝戦


 ワーワーワーワー


絹恵「やっと……ここまで来た」ギュッ

 あの日から一年
 私は、またこの場所に来ることが出来た

 今回はおかんの仕事は無かったけど、お年玉やお小遣いを必死に貯めてここまでの旅費を貯めた
 お陰で、須賀君が決勝戦で優勝するこの日に

 私は、長野にいられるんや


絹恵「須賀君……」


 今は試合前の軽い運動中やろうなぁ
 会いたいけど、我慢や

 試合が終わるまで、気が散るようなことをしちゃ……


 ガチャッ


京太郎「飲み物買ってくるぜー」

 ウィーッス センパイハヤクモドッテクダサイヨー

絹恵「ふぁっ!?」カァァァ


 い、いいいい今すれ違ったのって?!

京太郎「(なぁんか可愛い人いたなー……ん? どこかで見覚えが)」テクテク

絹恵「はわわわっ!?」カァァァ

京太郎「ふんふ~ふん♪」

 や、やっぱり須賀君や!
 後を、尾けなきゃ!

絹恵「すぅーはぁー! すぅーはぁー!」ドキドキ

 タタッ

京太郎「んー、あの自販機はイマイチだなぁ」キョロキョロ

絹恵「(な、なんて話しかけよう)」

 ずっとファンでした?
 一目見た時から好きでした?

 アホ、そないなこと急に言えへんって!

絹恵「(ちゃう! 何のためにここまで来たんや!!)」ギュッ

 やるしかない
 ここまで来たら、ちゃんと告白を――!!

絹恵「あのっ……」

 ドンッ

絹恵「きゃっ!?」

男K「あっ、いってぇ……何してくれんの君ぃ?」

男B「ひょー、激マブじゃーん」

絹恵「あ、え?」

男S「長野っぽくないねぇ君、どこの子?」

絹恵「わ、私はその……もう、行くんで」

男K「おっと、そうはいかねぇなぁ」ガシッ

絹恵「!?」

男K「治療費代わりに、君にいいことしてもらわねぇとなぁ」ヒヒヒ

男B「おいやっちまおうぜお前!」

男S「やっちまうか?」

男B「やっちゃいましょうよ」

男K「その為の右手? あとそのための拳?」

絹恵「い、いやぁぁっ!!」 

 シャカシャカシャカ

男K「あん?」

京太郎「ほれ、ジュース」

男K「へっ?」

 カシュッ

 ブシュゥゥゥゥゥッ

男K「ぐぁぁっ!?」ビシャビシャ

男B「!? なんだてめぇ!!」

男S「何コーラかけてくれてんだごらぁ!!」

京太郎「は? これはコーラじゃなくて」

       ,/  /     |  ハ       |  | i 、 ヽ  \     \_
       i  /     |  | |       |  | |、 i  ゙、 、 \_     _>
       .|  i   | i  |  | |       |  ハ ハ _i!_ i   \ ヽ` ̄ ̄
       .|  |   |+--|、_|! |   | i! ,/.ィ'|"i´ ハ  | i  ヾ 、 ヽ
       .|  |   |.|ヽ |、_|王!ー  |./i .;"´/=、!/ | ! |   \ 、i
       !. r|   i.|、!,,ィ'":::._iミi!  |/ /彳:::: r:!ヽ,| ,イ | 、_   \
       | |^!.  N 《 _、o;;;;i_ 丶、/ / ┴゜‐'"´ !イ | λ i` ー--ヽ
.        ! | i、i、 ゙、  ` ̄ ̄   メ(        /^|イ `、|
       .ノi \ヾi:.、、         i!      i ノリ   `
        .|  ヽ__i                 |イ|/
        .ヽ'≡ミ .i    ____....,     |/
      ,ィ´    ム.\   `ー-- ―'´  /、!  ―-イ/> 、
      {        }、 \     ̄´  /!/ /      V///>、
     //|       |>、 、 \      / ./.|y       }//////>、
    ',/{        V/≧=: .`ー---'′ /|V        .{////////}
     /ム        V////≧      .V        !///////:/
て////ヽム        V///////ム   ../       /////////、
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//////////:ム        V/////ィ     、_ .メ//////:V////ィ´ ̄  Y
/////////////>、         V//イ′       /////////////     :}
//////////////j        ≧=′      メ//////////:/       |
//////////////ム          、__ ///////////イ        >:′
//////////////フヽ、=          ̄  /////////イ        /
///////イ´ ̄ ̄                 ミ二二二´        >'
//////{                   ィ              >′
/////ィ        l}        ,イ              >´
///ィ         /                    > ´
//{         :/                   >´
//V        /                 >´
//ム      彡                彡 ´
///≧=-
///////V
////////
/////,ィ            /
京太郎「ドクターペッパーだ!!」デーン

絹恵「あ、えっ……? 須賀、君?」キョトン

京太郎「そこの美人さん! 今のうちに逃げて!」

絹恵「え、え?」

男K「てめぇ、ざけんなごらぁ!」

男B「おい、こいつってまさか決勝に出てる奴じゃ?」


京太郎「ぎくぅ!?」


男K「けっ、おもしれぇ。ならよぉー、分かってんのか?」

男S「俺達に殴り返したら、お前らのチームは失格だよなぁ」


絹恵「っ!」ゾクッ


京太郎「……えっと。ここいらでお開きってわけには?」

男KBS「「「行くかボケェ!!」」」ダダダッ


       /        /へ   、         ヽ  ヘ
      ./      //    ` 、 \` 、      ヽ  ヘ
      ,      ./7 /        、\ \         ,
           ./ ソ          ヾ 、 \        ,
      {     ,  {.i           ヾ、  ヽ      |
      |       ii             ,〆  V   ',
          ,'   i!           ,ィ'  _,。ィ V   , |
      ,   L,,_  `         / ,,。if升‐≪''ミォ     |
       キ   {  ¨__‐- 、      ,。イ   ,ィ'ヽ  i} i;;i
         」>===ミx=ュ、_,,イ /  弋’ノ 〝 j;;}    |
       ', f;;;{ 《   ,⌒ヽ ヽ ,.-‐、、     _,,。彡'"}
       , ',;;',ヘ`   .乂’ノ 〃   ` ー= "     i    i|
        マ ヾ,、ヘ,__,, イ   ,           i!   i  i
        マ ` ハ ̄ ̄               /i!   .!  !
         ,   ハ                 / 7   !  !
         }    入         -      ./ ,      ',
               >     ‘ー ’  < |  {       ,       }
.ィ            }    |   >i - ´   .i 〉 i    ',  ヘ      ノ.}
{i    {    ハ    i     :|  /7 |     /ヘi!     ,   へ _/ .ノ
{ ',    iヽ __,ノ    ,     i  / ヘ i    /   ',             /
  ヽ _ヽ イ     ,     ノ ./    〉、  ,ハ    マ    ヘ       /}
',           /    //   /  ーォ  V   マ     ヽ     /
.ヽ          / > '" 7    /    i!  V   .マ      ー- '
絹恵「す、須賀君!?」

男K「俺達三人に勝てるわけないだろ!!」バキッ

京太郎「バカ野郎! 俺は勝つぞお前!!」

男B「うぉらぁぁ!」ドゴッ

京太郎「ぐぁっ!?」

絹恵「須賀君!! やめて、やめてぇな!!」

男K「おらおらおらおら!!」ドガバキ

京太郎「」ボコボコ

絹恵「だ、誰か!! 誰か来て!!!!」


 ガヤガヤ オッス、ダイジョウブカ?


男K「ちっ、ならこれで勘弁してやるよ!!」ガンッ

 バキッ

京太郎の右腕「」バキャーン

京太郎「ぐぁあああああああああああっ!?」

絹恵「ひぅっ!?」ブルブルブル

京太郎「が、ぁっ……」ジンジンジン

男K「やべぇよやべぇよ……右腕があらぬ方向に行ってるぞ」

男B「逃げようぜ」

男S「ああ」

 スタコラサッサー

絹恵「あ、ぁっ……す、須賀君?」

京太郎「」

絹恵「わ、私の、私の……せいで」


 タタタタッ!

チームメイトF「先輩っ! まずいですよ!!」

宮崎大輔「京太郎!! 俺の京太郎ッッ!!」


 ピーポーピーポー


京太郎「うぅっ、くっぁ……」

救急隊員「シアイハムリネー。ヤスマセルヨロシー」

チームメイトT「そんな!!」

救急隊員「オソラクダケド、ニドトハンドボールムリネー。ワタシイシャジャナイケドワカルヨー」

絹恵「え……?」

 それからのことは、よく覚えてへん
 痛みで気を失った須賀君は、到着した救急車で連れていかれて

 私はその様子をじっと、見つめていることしか出来ひんかった

 それがあまりにも短い時間のことやったから
 心のどこかではまだ、私はこれが夢やないんかと思い込もうと必死だった

 でも――

チームメイトV「もう終わりだぁ……おしまいだぁ!」

チームメイトP「何を寝言言ってる!? ふてくされる暇があったら戦え!!」

チームメイトV「無理だ、京太郎さん抜きで勝てるわけが無いよ」

宮崎大輔「京太郎おぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 須賀君の仲間の悲痛の叫びが、私の意識を捕らえて離さなかった














 翌日 病院


絹恵「……」

 一晩もの間
 私は抜け殻同然やった

 一緒に来ていたお姉ちゃんが、ホテルで私を見つけるなり抱きしめてくれて
 私はその胸の中でずっと泣いていた

絹恵「謝らなきゃ……謝らなきゃ、謝らなきゃ」ブツブツ

 あの後、決勝戦は須賀君不在のチームが惨敗してもうたらしい
 私が須賀君を追いかけなければ……

 あんな場所に行かなければ

 彼は今頃、優勝しておったかもしれないのに

絹恵「……」フラフラ

 病院に搬送された須賀君を追って、私は今ここにいる

 事情聴取の刑事さんが、私に病院を教えてくれたから
 来るのは簡単やった

 でも

須賀母「嘘ですよね! 先生!!」

絹恵「……?」

須賀父「息子はハンドボールの才能があるんです!! そこをどうにか!!」

医者AMIBA「この天才の俺様に無理なんだ! 奴の腕はもう使い物にならん!」

須賀母「そんなぁ……嘘よ!!」

須賀父「京太郎ぉ……」

医者AMIBA「まぁ、日常生活くらいなら大丈夫だろうけどな」フフン

京太郎「……」

須賀母「京太郎……かわいそうに」ポロポロ

京太郎「……あの、ちょっといいですか?」

医者AMIBA「あん?」

京太郎「俺と一緒にいた女の子って、無事ですか?」



絹恵「!?」ビクッ






須賀母「女の子って!! それがどうしたのよ!」

須賀父「今はお前の腕の話を!」

京太郎「いやだって、所詮ハンドが出来ないだけだろ?」

須賀母「えっ?」

京太郎「これくらい軽いって。それよりさ、可愛い女の子をちゃんと守れたかどうかの方が重要なんだよ!」

須賀父「京太郎、お前……」

                     ____
               ,. ´ __    `¨¨ヽ
            ,   ̄`  /  ヽ       `ヽ
           /  _     ,:   ∨   、    :.
          / /,´      /    |    ヽ     .
       / //'  ' /  ' /   l| | :  :  ∨   :
       l// / , / ' l| | |     | | |  |   |   |
     _/ ィ / { l |__|_{ |∧   }/ ' / l  |   ∧
      ̄  {〃  Ⅵィ斧从 } /-}/-/、 , /-、 ∧}
          / ,  从 Vり ∨イ ,イ斧ミ、}/ /⌒ } | '
           / イ从 l ム        Vり ム'  ノ/}'
         ´    \∧  '        ,r ' /
               、  v   ァ    / 从/
                     \ `こ     イ  _|、
                  ` r  ´   //∧

京太郎「腕の一本くらい、安いもんさ」ニッ


絹恵「……っ」ポロポロ


 須賀君……なんで?
 どうしてこないに、優しいの?


須賀母「無事らしいわよ」

京太郎「よかったぁ。チラッとしか見てないけどすっげー可愛かったからさー」

須賀父「全く、お前って奴は」

医者AMIBA「いい木偶になりそうだ」フフフ



絹恵「わた、私……ちゃんと言わなきゃ!」

 例え一生かかっても、私は須賀君に償わなきゃあかん!
 そう、この人生を全て――須賀君に!

 カツーン

絹恵「?」


 カツーン カツーン


        /. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . \
.       / . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .ヘ
.         / .::: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ::: : i
       / .::::: .:/ . /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :\ .::::::: i
.     /  :::::/ .:::::/: : .::::..::::::::: : : :::::::::::::::::. :. : : . : ヽ:::::::. i
     ′  ./ .:::::/ .::::::/::::::::::: : :::::::::::::::::::::::::::::. : ::::. ハ:::::: i
     ′:. / ::::/ :::::::/:::::::::/ : ::::::::::::::::::::::::::::::::::, :::::::: i::::: |
.    /:::::::: ′.:::/:::::::::/:::::::::/:从:::::::::::::::::::::::::::::::::::::. . ...i:::::.i
   /::::::::::′:::::′  .′:::/:i:::i::i::::::::::::::::::::::::::    ...::::::::|::: :|
.  /::::::::::::i::i::::::i:::::::::.i  从:: i::i  ::::  .::::::::::::::::::::::::::i:::::i::::::i
.  /:::::::/.i::i::::::i::::::::::i:::::::i::::i:::i:::i::::::::i:::::::::::::::::::::::::::i::::::i:::::i::::::i
 /:::/  |::i:::::i:::::::::i:i::::::i:i::i:::i::::i::::::::l:::::::::::::::::::::::::::l:::::i::::::l:::::i
.//    ヾi:::::i:::::::i:i:i:::::i:i:::i::|:::::i::::::::i'::::::i::::::::::::::::::′i:::::/:::::i
.´     少:::::::',:::::l:i::i:::::i:゙、ト:|::::ヘ:::::::i:'::::|:゙::::::::::::/i::/i::/::::::::i\
    /  |::::::::::、:ハ ヾ:i  、.i   ヘ::::i::',::i ゙、:::::/ iノ. i/::::i:::::i  \
  /   |::::::::::ハ ヾ ゞ.    ,丶i ゙:j  ヘ/ / 厶::::ハ:::i    丶
 ∧ヾ   |:::::::/    ヽ.、   ._ ヾ.,    イ   /::/i::::′      ゝ_
../ ∧ヽ.  |::::/.      i > _  ̄ . r  ./.  // i:/         /.:/i_
.i  ∧ヽ  |:/       丶    ̄    /  /  レ         /.:// ヽ

照「…………」

絹恵「(だ、誰やこの女……? 顔が見えへんけど)」

照「……もしかして、アナタ?」

絹恵「えっ?」ビクッ

照「京ちゃんが守った人って……アナタなんでしょう?」

絹恵「京ちゃん……? あっ」ドクン

 須賀京太郎
 つまり、京ちゃんって

絹恵「そ、そうです、けど」

照「そう。よかったね、無事で」

絹恵「……はい」

照「それで? そこで何をしてるの?」

絹恵「えっ?」

照「助けて貰ったんでしょ? いいよね……私は、助けて貰えなかったのに」

絹恵「は?」

 何を言うとるんや、この女――

照「ふふふふ、お父さんとお母さんが別居になって……私は東京に行くことになった」

絹恵「あの」

照「でもね、いいんだ。京ちゃんが無事なら、幸せなら、私はそれがすごく嬉しいの」

絹恵「(変質者か、こいつ?)」

照「だから、東京に行っても――昨日は大事な日だから応援に行った。京ちゃん、いつも以上に輝いていたなぁ」

絹恵「っ」ズキッ

照「ねぇ? もう一度だけ聞くよ?」

         /.::/.: :,'.: :: ;:;イ:: :: ::i:: :: :: :: :: :: :: ::ヽ
.        /.::/.: :: i:: :: ::i/i:: :: ::i!iハ:: :: ::i:: :: :: :: ::::.
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/  .::  /イ:: :/.::;; -゙ ニ  ヘ } ヽ   .: :: :::}   ヽ;;_ノ.::
  .::  { !ィ 二         ヘ   ヽ  .: :: :;;}      ニー._
  .::   / ヽ ヤ:.         ヘー-、  .: ::':: :}     〃/ ヽ
     /   ヽヤ:.         ヘ _ - ‐ 、::}     〃/  .ハ
.    /    ィ  ヽヤ::.        ヘ    :: }     〃/     ヽ

照「いつまで、悲劇のヒロインぶって――ここに立ってるつもり?」

絹恵「っ!?」ズキン

照「顔を出してどうするの?」

絹恵「私は」

照「アナタに守ってもらいました。お礼をさせてください? 一生かけて償います?」

絹恵「別に」

照「それってさ」

絹恵「何も――」

照「純粋な気持ちだけじゃないと――」

絹恵「期待なんて――」


照「下心って、言うんだよ?」


絹恵「違うっ!!!」

照「……何が違うの? アレはただの事故でしょ? アナタが京ちゃんに何かをする必要なんて無い」

絹恵「私は、このままじゃ悪いと――」

照「言ったでしょ? 京ちゃんは守れてよかったって。腕は気にしてないって」

絹恵「だからって!!」

照「本当に京ちゃんのことを想うなら」


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.      . : : /: : :::ヽ/ヽ代J}ヽN::::::!) /::.:.:.::.:.: : : : : : : : ヽ   とっとと――失せて
     /: ; イ: ハ: : ::::\__ `'   V:! 「:::::!:::::!::::::ヽ: ヽ: : }ヽ}
      // |/ .V: ::::::〉 `      リ .|::::/!::::ハ:::::} ハ } \! ヽ
.    /   |  V: :::ト、  ,_ァ   / ´ ̄¨|::√}::::厂 }!、 j
           V::/ `i:r- 、 j  .::. !/`、|:/    >、
.              V   j!  }::「!  :::l /  /\       `>、
                 j:ハ l ::::l     ::ヽ     ::...  ≧x
                   /y ::::!      ::::::〉、    :::>:::7/
                      /=l  :::    ,_...::::::/::::} /´ V:::/
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                _ ,小   `ー―.v´  >'"¨∨/
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.          /: : : : ;イ: ::::/ く `    ::::::::::,      ,
         l: : ::/ |: :::/   }`      ::::::::}       !
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絹恵「っ!?」

照「ミーハー気取りのファン被れが、京ちゃんに近づかないで」スタスタ

 ガラッ


京太郎「照さん!」

須賀母「照ちゃん! よく東京から」

須賀父「すまないね」

照「いえ。咲はもうきましたか?」

須賀母「昨晩来たわよ。もう、ずっと泣いちゃって」

照「そうですか……京ちゃん、痛かったよね?」ギュッ

京太郎「い、いいいいや! 照さんが来てくれたお陰で! 俺はもう元気っす!!」ドキドキ

絹恵「……」フラフラ

 その女に言われた言葉が、頭からずっと離れなかった

 悲劇のヒロイン?

 下心?

 ミーハー?

 違う!!!

 私は、私は純粋に須賀君の力になりたくて来たんや!

絹恵「なのに、なんでや?」

 あの女が須賀君と話している姿が

京太郎「照さんに会えるなんて、怪我してみるもんだなぁ!」アハハ

照「もう、心配させないで」ギュッ


 ズキン  ズキン


 不愉快だ
 須賀君は喜んでるのに、私以外の女と話しているのが嫌や

 なんで?

 どうしてその場所は私のモノじゃないん?


絹恵「なんで――」


 ドクン

                 ``         , ィ'"
 |      i|             ``     ′
        i!                           _  -ー―
    ,.。s==ニニニ==s。、             _,.。s=ニ -―   ̄ ̄
 |  {::::::f´ ̄ ≫三ミxs。、 `ミュ、        ,.ィ',´イ´
    ∨。',=,イ/  イ圭芯`ミュ、 `ミュ、___//
    V。A {ヘ  ん三三ハ ``  }:::::::::::::::〈
 |!:   V::A ! ヽ V辷ひニり     //´ ̄`ヾヘ
     V::A ',    ゞ- ‐='"   //       ヾヘ
      ヾ:へ{_ _  -- 彡イ       へミュzzzzs。--  --
 |!    | | iー―     ̄                   ̄   ̄
      i| i. }             ,
      :| ', i
 |     ',  ゝ,
       ',  {
 |        ハ
          \         _ _
ノ      |!    i!\            `

絹恵「あぁ、そう――やったんか」

 うち、須賀君のことが好きやったんや
 選手としてだけやない

 男として

 付き合いたい異性として

絹恵「あ、あははっ、せやったら……あの女の言うとおりや」フラフラ

 私はあわよくば――この事故を利用して須賀君に歩み寄ろうとした
 彼女にでも、なるつもりだったんやろうなぁ

 ホンマに誰に似たんやろうか

 浩子あたりが聞けば、喜びそうな話やけど――


絹恵「わ、わたし、ゲスなヒック、おん、な、やったんかぁ……グスッ」ポロポロ


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最終更新:2015年07月25日 21:32