第六章 ストーカー部長  変態ラブレター!


 須賀京太郎
 我が麻雀部において唯一の男子部員

 成績は普通、麻雀は初心者
 顔はかっこよくて高身長、運動神経は抜群

 気が利いて、コミュ力も高い

 そんな、彼に……

               . . -――..、--- .、
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久「私、恋しちゃった」トクン


 これは、初恋をこじらせてしまった哀れな少女の話
 そこ! 笑ったりしたら、許さないんだから




 高校三年の暑い夏だった
 県予選を突破し、全国を控えた時期

 私は授業が終わると部室までダッシュしてミッションに取り掛かった

 まだまこ達も須賀君も帰ってこない
 私はカバンから用意してきた手紙を取り出す

久「須賀君……」ガサゴソ

 前日に私はラブレターを書いたわ
 このラブレターがリアルに気持ち悪い物だったらしいんだけど

 今日はそれをカミングアウトしようと思うの




 私は二つ折りにした青い便箋の中には真っ赤な文字でこう書いたわ



『こんにちは

 初めまして
 私はこの学校に古くから住んでいる幽霊なの

 ずっと君を見ていました
 君はすごく格好いいわね 

 これからもずっと見ているわ

                 放課後のロッカーより』



 そして、手紙は須賀君のロッカーの中に入れて
 ジョーカーのトランプを扉に貼り付けたの




 そしてトイレに行き、何食わぬ顔で教室に帰ってくる部員達と合流
 彼の反応を待ったわ

 きっと彼は手紙を見つけたらすぐ机の中にしまい、あとでこっそりトイレで読むにちがいない
 そう思っていた時期が私にもありました(棒)


 須賀君と咲のクラスは授業が遅れているようで、少し遅れて来るらしい
 私はまことパンツの話(勝負下着について)をしながらそれを待った

咲「遅れてすみませーん」

 まず咲が部室にやってきた
 私はニヤニヤとしながら、須賀君が来るのを待ち侘びたわ

 そして彼が入ってきた

久「(さあ気づきなさい!そして赤面して非日常に巻き込まれたヒロインのような顔をするのよ!!)」ワクワク

 そう思っていた
 しかし先に手紙に気づいたのは咲だった

咲「あれ?何か貼ってあるよ?」

優希「「なにこれwwwトランプ張ってあるじょ?wwしかもToHeart2のトランプwww」

 すぐに優希が食いついて騒ぎ出す

京太郎「なんだ? これ」ガチャッ

 ロッカーを空けて、須賀君が手紙を取り出す
 そして中身を見て、首を傾げる

 すると、それを優希がひったくって大声て読み始める

優希「こんにちはwwwww初めまして。私はこの学校に古くから住んでいる幽霊ですwwwww」

咲「え?」プッ

優希「ずっと君を見ていましたwwくはwwwwwww君はすごくかっこいいわね・・っぷww」

和「ゆーき、いけませんよ」

優希「これからもずっと見ているわ……だってwwwwww放課後のロッカー!」

和「くすっ」プルプル

まこ「……」プルプル

 私はなぜ、みんなが笑っているのかよくわからなかった


 だって放課後のロッカーって書いてるのよ
 あきらかに不思議じゃない?

 このクラスのものじゃない誰かが書いた手紙
 それも幽霊よ?

久「(どうして笑うのかしら??)」

 だけど私は信じた
 私の好きなあの子はきっと赤面してる
 なぜなら内容はどうあれこれはそう……ラブレターだから


久「(しかも不思議がいっぱいの!!)」

 私は期待しつつ須賀君の方を見た

咲「京ちゃん的にはどうなのこれ?」

京太郎「うーん、まぁ。ちょっと、よく分からないかな……」


 私はショックだった
 だってロッカーよ? カッコいいじゃない

 それにToHeart2なの、たまねぇはたまんないと思ってる
 私は私を信じてる


 だけど彼がそれを分からないと言ったのは事実ね

 そして部員達は犯人の予想を始めたのだった

優希「ねぇねぇ! このクラスで一番早く教室に帰ってきたのだれだっけwww」

まこ「あー……、和じゃったか?」

 和とは胸の大きい美少女だった

優希「ええ? ねぇねぇのどちゃんだってよ? なら良かったじぇwww」ツンツン

京太郎「!」ピクッ

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久「(え?どういうこと?)」




 和なら良かったってことは何?
 和のことが好きなの? 

 ねぇ


 それは分からないけど、和本人が

和「私が一番でしたけど、皆さんも一緒だったからアリバイがあります」

 と言った瞬間

京太郎「そ、そっか……」

 彼は少しガッカリしていた


久「……」ブルブル

 そして、今日の「そのとき」はここでやってきたわ
 その時、歴史は動いた

優希「ねぇねぇ、そういえば部長、私達と合流する前に部室の方からダッシュしてこなかった?」

久「え……?」ドキッ

 二秒ほど固まった

久「な、何言ってるのよ。き、気のせいじゃない?」

和「……」

優希「怪しいじぇ」ジィー

京太郎「おいやめろよ。部長がこんなことするわけないだろ」

久「え」

京太郎「普段の言動を見ろよ。俺のことが好きなわけ無いだろ」

優希「それもそうか」

咲「だよね」アハハ

久「……」プルプル


 そりゃあ確かに私は須賀君をこき使うわよ
 でもそれは、私なりの彼への愛情の裏返しだし

 そんな私の気持ちにも、彼は気付いてるとばかり……

久「(まして、前世では私達は幼馴染み。魂は今も繋がっている)」

 という設定だった
 少なくとも、私の方はそれを信じ込んでいた

まこ「それくらいにせぇ。大会も近いんじゃ」

京太郎「そうですね」

優希「うぅー残念だじぇ」

久「……!」ピコーン

 ここで私はいいことを考えたわ
 ここまできたら仕方がない、全ての罪を優希に着せてしまおうというもの

 元々優希は須賀君に聖雀士なるストーカー行為を行っていたし
 今更一つくらいこういう行動が明るみに出ても大丈夫よね

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         ,厶イ\:.:',:.:|  ー}ーミ:、
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      /-‐- 、 `ー-} \ ノ}、 ∨ | }
        |    \f´\ ∨} \∨ ハ

久「(ごめんね、優希)」ニヤリ


 次の日、私は朝誰よりも早く登校し花壇からパンジーの花を抜いて彼の机に置いた


 「タコス=ロッカー」という置手紙とともに



 さすがに部員全員が引いていた

 そして須賀君は衝撃の事実に泣いていた
 優希も泣いていた

 治療が成功の兆しを見せていただけに、須賀君のショックは相当大きかったのね
 優希は否定していたけど、前科があるだけに信憑性は薄かった

優希「信じて! 私、もうあんなことしてないじぇ!」

京太郎「でも、あの紅月カレンとかいう」

和「」ドキィーン

優希「本当に私じゃないんだじょ!」

京太郎「そっか。じゃあ信じるよ」ナデナデ

優希「きょうたろぉ……」グスッ

咲「いいなー」ボソッ

和「……ゼロ」

久「(このままじゃいけないわね」

 その放課後、私は一つの作戦に出たわ

 当初の目的が失われている
 このままでは聖雀士の事件として終わってしまうもの

                         _,,, ......_
                       , ::'"゛:::::::::::::::::`ヽ、
                        /,.::::::::;/|从;;::::::::::::゙'、
                    //,.::;〃   ゙__v::::::::::::゙i
.                    〃::;/;/-'  `~.,ニ=、∨:i:::::::|
                     /イ/〈 ,イ~i   ' !。_jノ |/::::::::|
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                     |::l::::i '''  _  ι/:::::::| ::リ
                    ヾ::::ゝ.,_-、    (:::::::::i:y'
                     \;::rニ;``i- ' ゙リ:::i::〈、
                       ノ:;ki'  Α  ./:;::;トー、ヽ
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 キモイのはいい
 でもあれが優希の仕業と思われるのは……特に彼に思われたままなのはイヤね


 私の自己顕示欲が火を噴いたわ


 放課後、学校には吹奏楽部のラッパ音が響いている

久「うーん。ユーフォニウムの音色が私の心を潤してくれるわ」

 そんな独り言をつぶやきながら、今度は彼の机の上ではなく中に手紙を入れる。
 内容は以下のとおり



『こんにちは。いや、こんばんはかしらね? ボーイ

 昨日はアナタが皆に手紙を見せびらかすから、優希にはスケープゴートになってもらったわ
 あんな幼児体型のタコスは本当の私じゃない
 私はもっと美しい人間よ……

 ちなみにタコスと書いたのは、私がイギリス人の幽霊だからで、漢字が苦手だからよ
 「薔薇」は書けるけどね

 ふふ、面白いでしょう?

 とにかく、この手紙は秘密にすることよ
 アナタと私の秘密――いいわね?

 おりこうさんだよボーイ、歌を贈るわ


     狭いところがおちつくのってなんだろうねあれ
          この胸を締め付ける鼓動と、おさげの結びは
                  私に前世の自殺の記憶を蘇らせる


                            放課後のロッカー』







 次の日、なぜか全校生徒を揃えた会議が開かれた


 そしてこの手紙は須賀君の担任によってプリントアウトされ、全校生徒の知るところとなった
 もちろん表に張ったトランプ、二枚目のジョーカーも一緒にプリントされた


担任「えー……誰とはいわないが、先生のところに相談をしにきた男子がいる」

 ざわ……

担任「名前書いてないから手紙はプリントアウトさせてもらった」

 ざわ……
     ざわ……

「きめぇwwwww」

「うわぁ……」

担任「この男子は近頃、ずっとストーカー被害にあっている」

「カワイソス」

「ひでぇことしやがる」

担任「本人は事を大きくしたくないらしいが、それは私が許さない」

 ダンッ

担任「この放課後のロッカーとやらは、須賀が優しいことに付け込んでいるクズだ!」

優希「」

和「」

京太郎「(おいおいおいおいおい!!)」

担任「先生は筆跡でだいたい見当はついている。やった人は後で先生のところにきなさい!」

久「……ふん」

 誤算ね先生
 私は普段から筆跡を隠す練習をしていたのよ

 私の普段の字は偽者なの

    /: : : : : : : : : : : : : : : :\
   /: /: : : /: : : : : : : : : : : : :ヽ
  .,': /: : /: : : : : : : : : : : : : : : : :',
  l: /: :/: : : : : : イ :/l:: :ト、: : : : :.l
  |:/: /: : : : :/ {;{  j: ノ} ヽ,: : :l: l
  |': /: : : /    -‐'   .|i  | :|
  |:;' : :,'←-.、     ., .''"´`ト; : }:l:|
  i!:i: :/v‐ァ=ミ   ´,ィチテァ、 ll : |:l:|
  l: l i{'、、弋ツ    "弋ツノ l:l: l:/     , ‐‐、
.   |!´;lミ',      ,       j :|:./     ヽ___ノt '" ''-、
    ヽ:丶       ,   /:':/         }´ ``ー-、 `.、
     `:; :`、 `ー=='  イ===i       /      '  }、
      x='ィ' 、 ー " {: : ヽ:ヽ--‐‐‐‐-ノ   }‐‐‐/ / }
    ,,ノ(::ト、: : :`:、、   |l、: : :ヽヽ::::::::::/´  _ ノ'、  ` 7 l\
 ,...-":::::::::`、ー`、、: : :\,"´i ト、: : :ヾヽ::/ノ/´/ -‐ ヽ / /   \
;;::::::::::::::::::::::::::T‐-=ヽ: : :.i_l:l:}:/ヽ: :ヽ}`ー'// / l /´ヽ`-'   /人
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久「(バレる筈が無いわ)」どやっ


 当初は筆跡隠して、秘密の手紙を続け、そして段々筆跡を崩していき

京太郎「もしかして部長なのかも……ミステリーで素敵」

 と思わせる作戦だったんだけど、意外なところで役に立ったわね
 しかし、先生の言った「筆跡で見当がついている」というのは脅しだったのかしら?

 当然私は先生のもとへなどいかなかったわ

 これで私の作戦は続行できる
 学校中にロッカーが知れ渡ったのは誤算だったけど……私はそう思っていた

 しかし、なぜかその放課後から彼は和と下校するようになっていた

久「和、なんで最近須賀君と下校を?」

和「ええ、先生に頼まれたんです。帰る方向が一緒だから、なるべく一緒にと」

久「なんでそんなことに!?」

和「例の放課後のロッカー? 気持ち悪い名前ですが、まだ犯人わからないそうです。いやなストーカーですね」


久「あ?」


 後で分かったことだけど、彼が一緒に帰るなら誰が一番か? と聞かれて
 和! と即答したらしい

 学生議会長の私が和と喧嘩できるはずもなく
 私は一触即発の事態だけは免れた

 だけど、どうやら結果的に私はキューピッドになってしまったようね

 二人は付き合ってるんじゃないかとか、そんな噂まで流れたの

和「そ、そんにゃこと……//」モジモジ

京太郎「……//」

久「……」グギギギ

咲「……」グギギギ

優希「……」ゴギガガガギゴ

 私に残された道はただ一つ
 事件は終局へと向かっていく……


 私は家に帰って布団をかぶり、声を殺して泣いた
 いや、声は出したかしら……いや、こらえたかも

 とにかく泣いた。そして机の引き出しを開けたの

 私の秘密ゾーンである。中には盗撮した写真、須賀君の体操服の切れ端、そしてトランプが入っていた
 しかし二枚のジョーカーはもう使い果たしているわ


 ふと、私の手には一枚のカードが握られていた


久「……やるわ」グッ


 次の日、私は放課後が来るのを待った
 そう教室に誰もいなくなるのを

 午後七時半過ぎ
 私は学校掲示板に、一枚の大きな模造紙を貼り付けた

 模造紙には、真っ赤な文字でこう書かれていたわ




『やあボーイ。いや、皆さん

 私はアナタに裏切られて有名人だったわね
 前世と同じ裏切りと過ちが繰り返されるようだわ

 私は結局、この世界からは拒絶されているのよ
 愛する人からも、前世からの因縁も

 アナタは私を忘れて新しい恋をするようだけど、待って欲しいの!

 君はいつか必ず思い出すわ。私はそれまで待ってる

 今回ばかりは私は君のキューピッドとなってしまったようだけど
 だけど10年後か、約束された13年後……そう13階段の13年後!
 私はアナタを迎えに行くわ

 私はもうすぐ卒業するけど、お元気で
 私はいつまでもアナタを見守っているからね??
 原村和……彼を泣かせたら許さない
 アナタはハートのエースなのよ(ここにハートのエースを貼る)

 そして……私は……
       繰り返される過ちに
           人は誰も気づかない
               こんなにも……愛していたのに……
                    放課後のロッカーになりきれなかった

                                   12(クイーン)より』


久「完璧だわ」フゥー



 もちろん次の日は学校中で大騒ぎになったわ
 他の学校からも見にくる人が多数いたんだけど……

 学校側は一日中片付けることは無かった


桃子「凄いっすね! 変態っすよ!」

ゆみ「あ、ああ。これは酷いな」

華菜「趣味悪いし」

美穂子「そ、そうね……これは、ちょっと」

透華「悪質極まりますわね!!!」

純「可哀想だから、もうやめてやれよ」


久「……」


京太郎「どうして、事態がこんなに大きく……」ウルウル

咲「京ちゃん、大丈夫?」

京太郎「あ、ああ。ごめん」ゴシゴシ

 そして月日は流れた
 全国大会を控えて、練習に励む私達

 すると、校長先生からの提案で
 麻雀部員達がお互いへ一枚ずつ、大会後の自分達へ手紙を書くという催しが行われることになった


 大会を終えて長野に戻ってきた後、全校生徒の前で手紙を開くというイベントらしい

久「ふーん」カキカキ

京太郎「どうしよっかな」

優希「えへへっ」

和「難しいですね」

咲「絶対優勝しようね!」

まこ「ああ、もちろんじゃ」

 私は当然、須賀君への手紙にこう書いた


「約束は守るわ。私はアナタを迎えに行く。今度はロッカーじゃない、一人の女として」


 そして私達は全国大会での激闘を終えた
 そんな手紙があるなんてことはすっかり忘れていた

 遂にやってきたそのイベント当日
 校庭に全校生徒、保護者、他校の麻雀部員などが集まって私達を祝福してくれていた

 私は全国での優勝が嬉しくて、すっかりこのイベントに舞い上がっていたわ

 そして、校長先生の話が終わり
 遂に――

校長「では次に。全国大会前に書いた、自分達への手紙を読んでもらいましょう」

久「え」

 会場が歓声に包まれる
 私は脂汗を流しながら、どうにかしてこの場を逃げ出す算段を考えようとしていた

久「(でも待って。私の番になった時に、適当に誤魔化せばいいんじゃ?)」

 そうよ
 須賀君のパートだけ、その場で思いついたことを言えば……

校長「なお、読むのは送られた側の人にお願いしますので」

久「」

優希「じゃあ先鋒の私からだじぇ!」

 そして優希が壇上に上がり、順に私達からの手紙を読んでいく

優希「えへへ、みんなありがとうだじょ!」

まこ「次はわしじゃのぅ」

 この調子で行くと須賀君の出番は最後になるのかしら?
 いや、待って

 そもそも出場はしていないわけだし、もしかすると須賀君の分は渡すだけかも?

久「(そうよ落ち着きなさい久。何も問題は無いわ)」スーハー

まこ「なんだか照れるのぅ」

久「つ、次は私ね」

 私は校長先生から手渡された手紙を開く
 内容はこんな感じだった

優希
『私は部長のことが大好きだじぇ!
 はっはっはっ! いきなりで驚いた?
 知らなかったかもしれないけど……私はずっと部長のことが
 っと、これじゃ誤解されちゃうじょ!
 てへへ、おふざけはこれくらいにして……えっと、えっと
 んー、難しいことは言えないけど
 だーいすきだじぇ! 部長! これからもよろしく!!』

 私の瞳には涙が溢れそうだった

 ごめんなさい、優希
 私はアナタを嵌めようとしたのに……

優希「……」


まこ
『部長はよく頑張ったけぇ
 (中略)
 これからはわしが部活を引っ張ってくからのぅ』



『部長にはとてもお世話になりました
 (中略)
 部長の名に恥じないよう、精進します』


咲『部長、お疲れ様でした!
 (中略)
  えへへ、これからも頑張ります』


久「みんな……ありがとう」

 声が震える
 こんなに素敵な仲間を持てたことが誇らしいわ

 そして、最後は須賀君からの手紙だった


京太郎
『短い間でしたけど、お疲れ様でした部長。
 俺を麻雀部に誘ってくれて、これまで色々と教わって……
 時々、無茶を言われて困らされたこともありましたけど
 俺、この部に入ってよかったって胸を張って言えます

 俺が心折れそうになっても、辛くてくじけそうな時でも
 部長が、みんながいたから乗り越えられました

 麻雀を楽しむ心が、俺を支えてくれました

 だから、俺にとって部長は恩人です
 これからも、ずっとずっと

 俺にとって部長は、大切な人ですから!!!』


久「う、うぉあぁっ……おぉぉっ」

 ぶっちゃけ吐きそうだった
 罪悪感ヤバイわこれ

 ていうかもう、須賀君大好き
 愛してるわホント

 嗚咽混じりに壇を降りて、私は和と変わる
 正直、須賀君の手紙が嬉しすぎて何も考えられなかった

 涙でぐしゃぐしゃに顔を泣き腫らして
 ずっと隅で須賀君の手紙を読み返していた

 どれくらいそうしていたのかしら

 ふと気が付くと
 私の横にいた須賀君の姿が無い

 あれ?
 そう思って視線を上げると……

京太郎「以上が染谷先輩からでした」

まこ「我ながら恥ずかしいことを書いたのぅ」テレテレ

和「素敵でしたよ」

咲「うん。流石ですね染谷先輩!」



久「あっ」


 次は私の手紙が須賀君に読まれる番
 このままじゃいけない

 私の体は自然と動いていた

 だけど

優希「行かせないじぇ」ガシッ

久「!?」

 須賀君を止めようとした私を、優希が引き止める 
 なんなのよこの忙しい時に!!!

優希「……部長、私の手紙。ちゃんと読んだ?」

久「よ、読んだわよ。聞いていたでしょ?」

優希「……本当に?」

久「え?」

 優希の瞳が暗く濁っている
 これは……まさか

久「!!」

 私は慌ててもう一度、手紙の文面を見る
 優希からの手紙の内容は――




優希
『私は部長のことが大好きだじぇ!
 はっはっはっ! いきなりで驚いた?
 知らなかったかもしれないけど……私はずっと部長のことが
 っと、これじゃ誤解されちゃうじょ!
 てへへ、おふざけはこれくらいにして……えっと、えっと
 んー、難しいことは言えないけど
 だーいすきだじぇ! 部長! これからもよろしく!!』

久「?」

 何かおかしいところでも……いや、まさか


優希
『私
 は
 知
 っ
 て
 ん
 だ


久「私は……知ってんだ?」ドクン

優希「……言い逃れは出来ないじょ。放課後のロッカー」ボソッ

久「!!」

 私はこの時、全て彼女の手のひらの上だったのだと悟った
 もう、取り返しはつかない

 私は――

 私の書いた手紙はもう


京太郎「じゃあ、部長からの手紙をよみまーす!!」

久「い、いやぁぁぁっ!!」




京太郎「!!」

 須賀君が手紙を開いて硬直する
 あぁ、ダメ……読まないで

 読んでしまったら私はもう、この学校で……街で生きていけない

久「っ、くっ……」ポロポロ

 情けなくて涙が出る
 悔しくて声も出ない

 ごめんなさい

 須賀君、本当にごめんなさい

    __,.ィ ̄ ̄`ヽ/ヽ__
      > ´ ̄  /   `   `、  、
、 -  ´    /   '     } ヽ ヽ\  \
 `  ̄ >'  /   ,: |    ∧/! |   } ヽ  ヽ
   /,ィ  / ' / /|   _/,.ム斗}-/  ハ   :.
  {/.'   ,| ,.|-}/-{ | / ,ィチ斧ミ }/ }  |    .
  /  イ/{ : ! ィ斧从}/   Vzソ ノ /イ ,:
<__  ´// 从{ Vソ /         / イ- 、  |
     {'{  { ,    '           /' ⌒ }  |
      从Ⅵ              /.: ノ  |
       叭   v_ ̄ヽ      ,rー'   从
         、           イj   / /
            :.          < |'  /}/
            、__   ´    } イ从/
               |        |/
              「 ̄|     「 ̄ ̄ ̄ ̄}
              |//l|     |//////// 、
        ,. <// ∧      |//////////> 、
京太郎「……」グッ

久「?」

京太郎「須賀君へ。麻雀弱すぎ! もっと頑張りなさい!!」

 ドッ ワハハハ
 ガンバレヨスガー! ナサケナイゾー

久「え?」

優希「!?!」

京太郎「でも、部活の為に頑張ってくれてありがとうね」

久「??????」

京太郎「これからも、精進してください。竹井久より……ありがとうございます! 部長!」ニッ

久「あ、え、うん……」

 意味が分からなかった
 なぜ?

 誰かが手紙を書き換えた?

 でも、あの便箋は確かに……


京太郎「……」


京太郎「じゃあ次は和のをー」

 ヒューヒュー! イチャツクナヨー!

京太郎「だから違いますって!!」

 ワハハハ

久「須賀、君……」

 その時、私は見た
 須賀君が後ろでに隠した私の手紙を――こっそりと破くのを

 やっぱりあれは、放課後のロッカーからの手紙

 須賀君は――見ないフリをしてくれたのね

久「ありが、とぅ……あり、ありが」ボロボロ

優希「京太郎……お前って奴は」キュンッ


京太郎「っておい咲!! なんだこの内容は!!」

咲「あははっ! 自業自得だよー!」クスクス

 イイゾー ヨメサーン

咲「嫁さん違いますから!」


久「……」モジモジ

 こうして、放課後のロッカーは成仏した
 今この場に残ったのは、ただの

                      -‐……‐-ミ
                .  ´          `ヽ
                 . '               ヽ
               /            . . . . . . . . :.
            /          . . : : : : : : : : : : : :.
            /イ ,'      . : | . : : : : : .ヽ : : : : : : : :.
         //  ! /    . : /|.:. .:.:ト、ト、: : :| : : : : : : : :.
          //  |//  . : .:/  |ハ: : |   \ト、 : : : : .: .:|
          〃   ′  . : :/    乂{ _,,-‐ ¨ ヽ.: .:|.: .:.|
          {{   i :|  . : :/ー--    ′イニミ、 :i: : |Y: :|
          {!   | :|  . :/ _ ニミ    ィf乏心 〉!: :.|ノ. .′
           `ー- ヽ|  : :i 〃乏ハヾ    乂zク ′ノ.: .:,'
                ヽ.:.:.:|ハ乂zク      /:/:/:/ :イ: : :/―_ァ 、
.                 人.:{ヽV:/:/:   ′   (イ. ! :ノニニ/`ヽi
               _ヽ_:込、   ~~´  .ィ)j=={ニニ7
             __∧ニ厂「`≧=-  <ニニ/. : :{ニニ/      マニニヽ
            . ´ =ァ :`¨¨´. :ノニニニ|-‐‐-「ニニi : : 人_/        マニニ〉
         〃  / : : :/:/ニニニニ{    !ニニニ| |: : :{>、)    ___マア
         {{  { : /: :ハ:i:iマニニニハ  |ニニニj人: : :ヽ   ノ     〈
            \ 人{: : : {  マi:i:`マニハ ムニア´i:i:i:>、: :} /   ___
         /  `ー-、) ヽマi:i:i:`マャjア´i:i:i:i:i:/Уjノ   , イ_ ノ  }
.           { ̄`ヽ、 `ヽ._|  `ー-[二]-‐‐一'' / _,/  !  __ノ
            \   `Tヽ、_|     /i:i:i:|    〈イ     レ'´
久「(好きよ、須賀君)」ドキドキドキ

 恋する、一人の女だった


 第六章 ストーカー部長  変態ラブレター!


 カンッ