「……ってことやね、聞いとるー?」

「聞いてないなー」

京太郎は怜の話を聞き流す。
大分多めに出された課題に大忙しでそれどころではない。
そんな京太郎に怜はむすーと膨れ、えいえいと京太郎のお腹を叩いた。
常日頃から病弱だと宣言する怜なだけに非力で痛みがない。

「…」

「えいえい」

流石に痛くは無いが何度もされ続ければ面倒になってくる。
しょうがなく怜の相手をすることにした、勿論課題から逃げる為ではない。

「それでどうしたって?」

「竜華、明日大会出るんやって」

怜の言葉に京太郎は3日前から遊びに来ている竜華を思い出す。
彼女は自分や怜と違って大学へ行かずプロとしての道を歩む事を決めた人だ。
成績も上々でファンも多く中々の活躍だと聞いている。
竜華の話を話すという事は明日大会を見に行きたいと言う催促だろう。

「…」

「京君…わわ」

その話を聞いた京太郎は無言で勝手に人の膝の上で寝ていた怜を優しく引っ張り上げ抱きしめた。
ほのかに香る匂いが優しく京太郎の鼻孔をくすぐった。
腰に手を回しもう片手で怜の頭を抱える。
後頭部に回した手でこれまた割れ物を扱うかのように撫でる、病弱の癖に髪は綺麗で触るとシルクの様で良かった。

「ふみゅん……暖かいな~」

「怜の体温が低過ぎるんだよ」

抱きしめた怜の体温は微かにだが京太郎より低くい。
それがまた京太郎を不安にさせる要素のひとつなのだが、暫く抱きしめたままでいたいと思うが
やるべき事があるのでその誘惑を断ち切り自分のおでこを怜のおでこにくっ付ける。
あぁ……やっぱりだ、おでこをくっ付けた京太郎は確信した。

「いつから…?」

「朝からやね」

京太郎の問いかけに悪びれもせず怜は答えた。
やはりというべきか何時もより少しばかり怜は熱っぽかった。
それが少し腹ただしかった、勿論今まで気づけなかった自分へだ。
本来の怜なら大会の催促をせず、自分1人でも行くだろう。
だが今回は京太郎の同伴を求めた、1人では行けないかも知れないと思ったからだろう。


「ッ」

「…」

思わず手に力が入り体が震えた。
最近は高校の時より体調が良くなったとはいえ前に一度命に関わる事が起きている。
その話を思い出し人知れず京太郎は恐怖した…怜が居なくなってしまいそうで…怖い。

「大丈夫やから…私は大丈夫」

「…怜」

その想いを察した怜が京太郎の頬へと手を伸ばし優しく撫でた。
怜の行為で、はっと気づき怜の顔を見ると怜は優しげに微笑んでいる。
それがまた儚げな笑顔であって悲しい。

「取り合えず…安静にしてかな」

「んっ…ならこのままで」

「布団に行かなくていいのかよ」

「そこまで辛ない、むしろこれがええな」

「そっか」

それだけの会話をすると京太郎は怜を少し自分の方へと抱き寄せ軽く唇を重ねた。
本当に簡単な物で1~3秒ぐらいですぐに離す、無理をさせる気はない。

「……ふぁ~…何時も通りの激しい奴やないの?」

「いや…病人に無理させる気ねーよ」

「…いけず」

口を離すと目をトロンとさせ嬉しそうな顔をする怜と視線が合う。
だが、すぐに眉を潜め催促をしてくる、どうやら激しいのをご希望らしい。

「治ったら…な、明日竜華さんの応援に行くんだろ?無理はすんな」

「そやね…そやった」

明日の事を思い出したのか怜は目を瞑ると京太郎の胸板にすりすりと頬ずりをして
すぐに眠ってしまった、予想以上に辛かったのだろう。

「おやすみ、怜」

「ん~……おやすみ…京君」

眠りに就いた怜を優しく京太郎は見守るのだった。

カンッ