爽「あ、そこ、そこだ京太郎!! いけ!!!」

京太郎「とりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」



鳴り響く電子音。虚しく映る、【ゲームオーバー】の文字。



爽「……………」

京太郎「……………」

爽「おい」

京太郎「はい」

爽「…………下手すぎ」

京太郎「ごめんなさい―――――」




今、俺は獅子原先輩の家に来て、一緒にゲームをしている。

獅子原先輩は、アナログゲームを昔、麻雀そっちのけで散々やったらしい。

そんな先輩がデジタルゲームもやってみたいってことで

昔からよくテレビゲームをやっていた俺が、紹介することになったんだけど――――――


爽「デジタルゲームは得意だっていうから連れてきたのにさー」

京太郎「ホントすいません……」

爽「意味ないじゃん。京太郎連れてきた意味ないじゃん」

爽「私、デジタルゲーム初めてだったんだけど。すでに京太郎よりうまいじゃんか」

京太郎「いや、正直言わせてもらえば、先輩がうますぎるんすよ」

爽「あーもうやめやめ。張り合いがないったらないさ」

京太郎「練習しとくんで、勘弁してください」

爽「こんなんで京太郎に初めて任せていいのかなー ん?」

京太郎「………………」

爽「ちょっとトイレ行ってくる」

京太郎「いってらっしゃい」

爽「………来ないのかよ」

京太郎「どういうことだよ」

爽「ぐっと来いよ、トイレに誘ってるんだ」

京太郎「バカか。あ、すいませんバカって言っちゃった」

爽「あーじゃあ、部屋にいていいよ。それで暇になったら来て」

京太郎「来ないよ!」

爽「……っていうか、今から来い!!」

京太郎「なんなんだよもう………」


ちっとも嬉しくない連れトイレに誘われて

扉越し、ドアを背に体育座りを強要された。

もちろん、先輩は中にいる。


爽『京太郎-』

京太郎「どうしたんですか?」

爽『今どんな状況?』

京太郎「体育座りしてます」

爽『なるほど』

京太郎「?」

爽「『お前は、女の子がトイレしてる時に、扉に張り付いてる変態だ』

爽『「まだか――――先輩の放銃はまだか???」―――と』

京太郎「おじゃましましたー」

爽『嘘、ごめん!! 帰るな、待って、まだ放銃してない!!!』

京太郎「しなくていいよ、いやしてもいいけど……もう耳ふさいでます」

聞きたくもない音を遮断するために、俺は耳を塞いだ。

先輩の声が聞こえないと困るから、最低限の音は聞こえるようにしてある。

決して、聞きたいわけじゃないぞ。本当だぞ。



爽『なぁ、京太郎。話飛ぶけど……』

京太郎「どうしたんですか」

爽『…………もう、だいぶ長いじゃんか』

京太郎「先輩のトイレのことですか?」

爽『なんでそうなるのさ』

京太郎「いや、流れ的にそうかと……」

爽『………あたしらのこと』

京太郎「ああ……二年くらいでしたっけ」

爽『京太郎が……部活に入ってからじゃん』

京太郎「そうでしたね。そう言われると長いですね」

爽『………京太郎は、女に興味ない感じ?』

京太郎「それって矛盾してるじゃないですか」

京太郎「これでも先輩とお付き合いしてたつもりだったんですけど」

京太郎「もしかして、先輩男だったんですか?」

爽『まぁ、男らしいとはよく言われるなぁ』

京太郎「実は、男に生まれたけど、生後すぐに性転換手術をして、でも性格は男のままだったって小説ありますよね」

爽『そう言われると、なんかそんな気がしてきた』

京太郎「まぁ、男同士の付き合いだったら、それはそれで気楽ですよね」

爽『んー………なるほど』

爽『………京太郎的には、んなもんか』


それから、先輩は押し黙ってしまった。

特に機嫌が悪くなったわけでもないらしい。そもそもこの二年間で、先輩が怒ったところなんて、見たことがない。

少しして、やっと先輩は出てきた。


爽「……ただいま」

京太郎「おかえりなさい」

爽「…………」

爽「………ま、別にいいんだけどさ」

京太郎「え?」

爽「今のままでも楽しいしね」

爽「私も、誘い方とかよく分かんないんだ」

爽「京太郎がしたいなら、したらいいと思うけどさ」

京太郎「するって、あの――――」

爽「二年間、一度も乗ってこないしさ」

爽「チカに聞いたら、それはおかしいです、とか言うしさ」

京太郎「………」

爽「揺杏に聞いたら、それは不能ですね、とか言うしさ」

京太郎「いや、それは違います!!」

爽「あ、そうなんだ。もうめんどくさいや」

京太郎「え?」

爽「まどろっこしいんだよな。それに、お前だって、私が先輩だからって遠慮してるのもあるし」

爽「単刀直入に、が私らしいか。するなら、しようぜ。しないなら、もう……誘わないからさ」

爽「ほら、イエスならトイレ入れよ」

京太郎「え、ちょ、ちょっと―――――」

爽「私の身体――――抱かないの?」


いつものように、強気なように見せているのだろうけど

少し、震えてるのが分かる。よく見ると、手は震えてるし、瞳も軽く濡れてる。

豊満とは少し違うけれど、スレンダーで、男の目を惹く、くびれのある身体。

身体全体から、女性らしい恥じらいが甘く匂い立ち、普段とのギャップを感じさせる。

こう答えない男の方が、少ないんじゃないか。

京太郎「抱きます」

爽「んじゃ、気持ちよくしてやるから―――――初めてだけどさ」

爽「私の身体使えよ」

京太郎「………先輩、その」

爽「好きですとかいらないから。ムードとか今さらだから。けったくさいことはやめろよな」


本当に、先輩らしい。

もしかして、今までトイレに何回か誘ってたのって、そういうことだったのか。

俺としたくて、いろんな人に相談して、悩んで、それでもどう誘ったらいいのか分からなくて

いつも通りの自分で、直球勝負に出るって、決めたんだな。

そう考えると、急に愛しくなってきた――――

京太郎「せ、先輩!!」

爽「い、いっつ……お、おい、急にガッツくな!!」

京太郎「無理っす、ここまで露骨に誘われたら」

爽「ま、待て、やる前に、一個だけ、私はアナログ派だから。そこ頼むわ」

京太郎「どういう意味ですか。もう、我慢できないんですけど」

爽「………」

爽「デジタルと違って――機械的な、その、アレは……いや、あのな?」

爽「機械的な、セックスは避けたいじゃんか。多少痛いのは、いいからさ。でも痛すぎるのは、怖くって」

爽「だ、だから――――― 一応、気持ちだけでも、優しくしてよ」

京太郎「……努力します。あと、先輩は言わなくていいっていいましたけど」

京太郎「―――――――――好きです。」

爽「………」

爽「いらねえっつぅの…………バカ」

爽「こっちは一目見たときから、お前に惚れてるから」

爽「―――――――京太郎」





バタン