【咲視点】

「……(周りが騒がしいな)」

咲はため息をつき、眼を細め周りを見てみる。
何やら騒がしいが遠いせいでよく聞こえない。

「……(よく見えない、眼悪くなっちゃった)」

眼を細めるも風景と人がぼやけ見えにくい。
幼い頃から夜遅くまでよく本を読んでいたのが原因だろう。
ツケが全部ここできたらしい。
悪くなってからでは遅いが今更後悔をした。

「眼鏡欲しいかな」

手を顔の前に持っていき、振ってみる。
結構悪くなってるらしい、今まで騙し騙しで来たがこれ以上は支障がでる。
眼鏡を買わないとなと思いつつ、辺りを見渡すも近くに部長達は居ないらしい。

「……(どうしよう、1人で帰れるかな)」

ただでさえ最近眼が悪くなったせいで道を間違えやすいのだ。
歩けば絶対に迷子になるだろうなと咲は思った。
何より眼が見えない状態で歩くのが怖かった。

「…京ちゃん」

恐怖と不安のせいで涙が出てくる。
いつも助けてくれる彼の名前をついつい呼んでしまう。
それが功を奏したのだろうか、声が彼に届いた。

「咲!ここに居たのか」

「京ちゃん?」

後ろから聞きなれた声が聞こえ先は振り向いた。
振りむき近づいて来る人物を確認する。
ぼやけているせいで睨むような形になってしまった。

「咲…?」

「…ごめん、京ちゃんだよね?」

近づいても目を細めるばかりの咲に声をかける。
咲はそれに不安がるように体を震わせた。
それに対して京太郎は少しの間、顔を苦しそうに顔を歪ませる。


「京ちゃん?」

「…」

だがすぐに優しい顔つきになると咲の顔に両手を伸ばし頬を優しく触る。
手が冷たく触れた瞬間体をビクンと震わせる。
そして…

「近いよ、京ちゃん」

「これ位なら俺の顔見えるか?」

両手で頬を包み顔を近づけおでこをコツンと合わせた。
咲の目の前にはぼやけた京太郎の顔はなく彼の顔がはっきりと眼に入る。
その顔は優しくもあり悲しそうでもあった。
咲の事を思ってのことだろう。

「部長達も待ってるし…行こうぜ」

「うん」

「ほら、眼が悪い状態じゃ危ないだろ」

暫くすると京太郎は顔を離すと此方に手を出してくる。
それを咲は受け取りぎゅっと握った。

ごめんね、京ちゃん
彼に悲しそうな顔をさせたという事が辛かった

でもね、京ちゃん私は大丈夫だよ
いつでも助けに来てくれる、あなたがいるから
いつでも手を握ってくれる、あなたがいるから

「京ちゃん」

「なんだ?」

「いつもありがとね」

「…気にすんな」

笑顔でお礼を言うと京太郎は視線がぼやけた咲でも解るぐらい顔を赤くさせた。
恥ずかしいのがそっぽを向き顔を前に向ける。
そんな京太郎に咲はくすりと笑い思った。

京ちゃん………大好きだよ!!

カンッ