部活の休憩時間、ソファで休憩していると隣でくつろいでいる大星淡が話しかけてきた。

「ねぇ、すがっちー」

「どうした大星?」

「すがっちってさー、スミレとテルのことなんて呼んでたっけ?」

質問の意図がよく分からないがとりあえず答えていく。

「菫先輩、照さんだな」

「たかみーやセイコは?」

「尭深先輩、誠子先輩だが…」

「―――じゃあ私は?」

「大星」

「そう!それ!」

待ってましたと言わんとばかり大星淡が立ち上がる。

「なんで私だけ名字なの!?もう3年も一緒だよ!?高校一万年生だよ!?」

急に大声を出すものだからうるさい、あと一万年生ってなんだよ百年生はどうしたんだよと心の中でツッコミを入れる。

どうやら自分だけ名前で呼ばれないことが不服らしい。

「……すがっちは私のこと嫌い?」

そんなわけねえだろと否定し、いつもの癖で頭を撫でる。

「もう3年か……あっという間だな」

俺とアイツが部活で知り合ってから3年になろうとしている。

今ではかなり仲が良い方だが、最初は麻雀が弱いという理由で名前すらろくに覚えてもらえなかった。

ある時、照さんがお菓子が大好きなので趣味がてら作ったお菓子を照さんに食べて貰おうと思ったらアイツが食いついてきて…

『なにコレ!美味しそう!テルー私にも頂戴!』『金髪ー今度淡ちゃんにも作ってよ!』

『ちょー美味しい!』『えーっと誰だっけ……須賀ね』『これからもお菓子よろしく須賀!』

無事アイツの胃袋を掴むことに成功し、初めて名前を覚えてもらった。


2年生になるとアイツと同じクラスにもなり一緒にいる時間が増えていった。

当時俺は麻雀が伸び悩んでいてその事をアイツに相談したら『この大星淡ちゃんが教えてあげる!』と言い、俺に麻雀を教えてくれるようになった。

尭深先輩や誠子先輩も協力してくれて、結果インターハイ出場は逃したが去年の俺では考えられないほど良い成績を残せた。丁度その頃アイツが

『すがっちにしては頑張ったんじゃない?褒めてあげる』『えっ? すがっちって何だって? うーんと……淡ちゃんからのご褒美?』

とまぁいろいろあって現在の呼び名になった訳だ。

そして何故俺が今までずっと大星呼びのままなのかだが

「俺が大星呼びのままの理由はな……」

「理由は……?」ゴクリッ

「タイミングを逃しただけだ!」

「はぁ!?すがっちに嫌われてるのか心配してた私が馬鹿みたいじゃん!すがっちのバーカ!!」

大星淡さん見事にご立腹である。

「仕方ないだろ!昔のお前やたらと煽ってくるし、仲良くなったと思ったら今度はボディタッチ増えるし…」

「本当は意識しちまって恥ずかしかったんだよ!」

なんもかんも大星のおもちが悪い…すばらなおもちに成長したあのおもちが。

「あわ……」

「あわ?」

「ななななんでもないから!……と、とにかくすがっちが悪い!責任取って今ここで変えること!」

仕方ない、こうなったら腹くくってやる!

「分かった。―――あ、淡!」

「あわぁ……///」

「も、もう1回言って///」

「淡」

「す……すがっち~!!」

いきなり淡に抱き着かれマウントをとられる。

「あ、淡!?おも、おもちが……は、離れろ淡!」

「えへへすがっちー♪」スリスリ

まずいこれはマズイ。いい匂いがする……淡ちょーあわいい……じゃなくて、ここ部室だぞ!今奇跡的に他の部員いないけど!

「淡まずいって!こんなところ他の誰かに見られでもしたら―――」

「別に大丈夫だよすがっちー♪」スリスリ

全然大丈夫じゃないんですけど淡さん! コンコンコン、ガチャ

「失礼します。部長、そろそろ時間で―――あっ」

「「あっ」」

終わった……終わってしまった。

部室のソファで部長が副部長に馬乗りになってるシーンを後輩に見られるとかもうこれ詰んでるわ。

無駄かもしれんがなんとかして誤解を解かなければ―――

「ち、違うんだこれは!なぁ大星?」

頼む淡!話を合わせてくれ!

「あわ……あわわわわわあわーっ!!!///」

凄い勢いで俺から離れ、走り去ってしまった。

「「……」」

置いていかれた俺。呆然と立ち尽くしている後輩。

さてどうしようかこの状況……。

カンッ