誓子「ふっふふ~ん、ふっふふ~ん……」たっ たっ たっ


誓子「おっとっ……と」すた

誓子(鼻歌歌いながらステップ踏むなんて、私らしくなかったかな)かぁ

誓子(京太郎くんに見られていたら、恥ずかしさで死んじゃってたかもね)


誓子「京太郎くん……」ぎゅ…


誓子(昨日、私は京太郎くんに告白した)

誓子(誰もいない放課後の部室で、そんなつもりはなかったけど勢い余って……)

誓子(正直、終わった……と思ったけど、どういう天の巡り合わせか、京太郎くんは『OK』の返事をしてくれた)

誓子(これからもっと誓子さんのことを知って、好きになっていきたい……そう、言ってくれた)

誓子(嬉しすぎて、一日経った今でもふわふわしちゃってるよ……)ふふ

誓子(あはは、思わず笑い声が零れちゃった。誰にも見られてないよね?)きょろきょろ


誓子(それにしても、京太郎くん遅いなぁ……)ふー


誓子(一緒に帰ろうとしてたのに、京太郎くんが『わるい! 部室に忘れ物した! ちょっと待っててくれ』なんていうから)

誓子(こうして校門で待ってるわけだけど……それにしたってもう、何分経った?)

誓子「やっぱり遅い、よね……」


誓子「様子、見にいってみようかな」ざっ…


――


すたすた

誓子「あれ? 部室のドア、少しあいてる……」ぴく



「行くな!!」



誓子「!!!」

誓子(な、なになに? どういう事?)

誓子(爽の声……? まだ部室いたんだ……)

誓子(それより一体、中で何が……)そろ~っ


京太郎「ど、どうしたんですか? 急に大声出して……」

爽「……」

京太郎「行くな、って言われても……もう忘れ物見つけましたし」

京太郎「はやく行かないと、誓子さんに怒られちゃうんですけど。怒ったら怖いの、爽さんだって知ってますよね」にや

爽「そうだな」ざりっ ざりっ

京太郎「って、どうしてそんな近付いてくるんですか? ちょ……っ」

 どん

京太郎「っ……!」


誓子(えっ……!? 壁ドンした!? 爽が京太郎くんに……!?)


爽「どうしたよ京太郎? 動きが鈍いぞ」

爽「……逃げないのか?」

京太郎「そ、そう言われたって、急に反応できないですよ……」

京太郎「なんのつもりですか? 爽さん」

爽「なんのつもりか、だって? はは……」

爽「この状況で、そんなこと訊くのか? 本当に?」

爽「仕方ないなぁ京太郎は。わかんないなら、教えてやろう」

くいっ



誓子「……!!!!」ぞく…



誓子(う、うそ……)どくんどくん

誓子(どうして……)どくんどくんどくん


京太郎「~~っ! ぷはぁっ!」

どんっ

爽「おっとぉ……そう強く押すなよ京太郎。優しく扱ってくれよなー」

京太郎「どうして……」ごしごし

爽「……なんだよ、そんなに口拭わなくたっていいじゃんか。傷付くなぁ」

爽「そんなに……私と"する"のは嫌だったかな」

京太郎「……嫌だとか、そういう問題じゃないですよ」

京太郎「俺、彼女いるんで。爽さんは、知らないかもしれないですけど……」

京太郎「俺、昨日から誓子さんと付き合うことになったんです!」

京太郎「だから――…」


爽「知ってる」


京太郎「え……!!?」



爽「好きだ、京太郎」



京太郎「え、あ……」

爽「勝手なことしてゴメン……」

爽「京太郎とチカが付き合うことになった? 知ってるよ、そんなこと」

爽「でも今朝……チカの口からそのことを聞かされた時、気付いたんだ」


爽「京太郎を、誰にも渡したくないっていう自分の気持ちに」


爽「遅かったなんて、認めたくない。私だって、京太郎に好きだって伝えたかった。だから――…」

爽「いや、言い訳だね。勝手なことして、ゴメン……」

京太郎「爽、さん……」


爽「返事はいい。本当にゴメン。もう、私行くよ」だだっ




がらっ!


爽・誓子「!!!!」ばったり


爽「……チカ」ぞく

誓子「爽……」ゆら


爽「見てた、か?」

誓子「……何をかな? 爽」

爽「見てた、よな……普通に考えりゃ、見てたよな……そんなに目を充血させて――…」

誓子「だから、何を見てたって? 言ってごらん、爽」

爽「あ、ああいや、その……思い出が欲しかっただけなんだ! 決してチカが思ってるようなことは――…」



誓子「信じられるかぁ!! バカ!!!!」

 ぱぁん!!



爽「……っ!」びりびり

誓子「まさか爽が、そんなことする子だと、思わなかった……」ぐす…

爽「ご、ごめ……」




だだだっ


京太郎「どうした! 何があっ――…」ざっ

京太郎「――…!!」


誓子「……京太郎くん」ぐす

京太郎「誓子、さん……」


爽「……」

京太郎「爽さん……」

誓子「何も言わなくていいよ、京太郎くん」つー

誓子「事情は、わかってる」ごしごし

誓子「さ、忘れ物は見つかったんでしょ? 一緒に帰ろ?」

京太郎「あ、ああ……」ちら

爽「京太郎……」じ…

誓子「……ああ、一つ、言い忘れてたことがあったっけ」


ぐいっ!

爽「うっ!!」


京太郎「お、おい、誓子さん! そんな引っ張ったら――…」

誓子「いい? 爽」ぎろ


爽「……」

誓子「今後一切、京太郎くんに話しかけないで」

誓子「それと、私にもね」

誓子「良かったわね、最後に"思い出"ができて。欲しかったんでしょ?」

爽「……絶交ってことか? チカ……」

誓子「な、なに、その目……謝ったって許してあげないんだから……」


誓子「もう行こう! 京太郎くん!」だっ


――


爽「……許せないな、チカ」ぼそ…

爽「あの場を無理やり取り仕切って、京太郎にも、私にも何も言わすタイミング作らせずに……」

爽「私だけわるものにして満足か? チカ……」

爽「でも、わかってるぞ、チカ。何年の付き合いになると思ってる」

爽「チカがああいう振る舞いをする時、いつも本当は怖がってるってことを」

爽「怖いんだろ? 京太郎の気が私に移らないか……なあ、チカ」

爽「それなら安心するといい……」ゆらっ…

爽「すぐに、思い知らせてやるさ」ぎら


爽「誰が本当に京太郎の彼女であるべきかを、な」


カンッ