怜「なぁ、京ちゃん……ウチ、生まれた意味あるんかなぁ……?」

京太郎「……」

テーブルを囲んでいた俺と怜さん……そんな時唐突に神妙な面持ちで彼女はそう聞いてきた。
それに対して俺はどう答えるべきか……悩んでとりあえず黙って聞いていた。

怜「素の麻雀は強くない、能力を使ったらボロボロやろ?……そのせいで沢山皆に迷惑をかけた」

京太郎「……」

儚げな瞳に、白く透き通った肌、細い身体……見るからに病弱で繊細な印象を与える容姿に、初めてインターハイで会った時はかなりドキリとさせられた。
触れたら壊してしまうんじゃないか……硝子細工の様に、慎重に気を使っていた千里山のメンバーも印象的だったなぁ。

怜「そして、今は京ちゃんに散々迷惑かけとる……そんな私に生きる意味はあるんか、それを聞きたいんや」

京太郎「……あのさ」

きっと怜さんなりに悩んで来たのだろう……気持ちは分かる、雑用しか能のない俺が清澄にいて良いのか?とか悩んだこともあるから。


だけども……。


京太郎「また同じような事言ってませんかねぇ?」(28)

怜「いや、仕方ないやん……何か悩みあったらいつでも言えって言ったの京ちゃんやん?」(30)

京太郎「いくらなんでも10年以上引きずるのはどうかと思うぞ?」

出会いから12年、結婚から10年は一緒にいる……しかしうちの怜(よめ)さんは、悩みを聞いたり言い出すと、大抵同じことしか話さない。
最早オウム返しか録音の連続再生の域だ。

怜「……不安なんや」 

京太郎「……不安?」

しかし、今回はどうやら毛色が違うらしく……今だに神妙な面持ちのままで、不安だともらしたのだ。
普段の生活では不安そうな気配を感じる事は無かったように思うのに、一体どう言うことなのか。
そう思考している俺の隣に、席を立ってやって来た怜さんは、俺に優しく抱きつく。

怜「幸せだから……不安なんやで?」

京太郎「……あっ……」

彼女にボソリと耳元で囁かれて、やっと俺は気づいた……何故毎回同じ様なことしか言わないのか、そして何故彼女が不安なのか。

怜「病弱なウチが……京ちゃんみたいなイケメンゲットして、産むのがかなり
難しいって言われた子供まで産めて……気がついたら順風満帆で三十路まで迎えてもうたんやで?」

京太郎「……」

怜「不安になってもうても、しゃないやん……?」

良く鈍いとか昔は言われたけど、こりゃマジだな……気づけなかった自分がどうにも情けない。
瞳を潤ませた怜さんを抱き締め返し、頭を撫でる。

京太郎「……俺のプロポーズ、覚えてるか?」

怜「……え?」

京太郎「『俺の人生をプレゼントします』って……そう言ったろ?」

怜「あ……」

怜さんが俺を抱き締める力が増した、多分色々堪える為なのかもしれない。
だが、俺は彼女の抱えた悩みを真に理解した俺は追撃の手を緩める気はない。

京太郎「だからさ、お前の人生は俺の人生といつも同じ場所に……お前の中にあるんだぞ?」

怜「う……」

京太郎「だから二人分……いや、今は三人分の人生を抱えてるだろ?」

今は自分の部屋で寝ているであろう、自分の子供の事を頭に重い浮かべる。
そしてゆっくり身体を離すと、向かい合った状態で震える怜さんにこう言った。

京太郎「だからさ、生まれた意味あるのかなんて……あるに決まってんだろうが、全く……」

怜「き、京ちゃん……私……私……」

ポンと彼女の頭に手を置くと、笑って見せる。
少しでも、不安が無くなるように。

京太郎「生まれてきてくれて、一緒にいてくれて……本当にありがとう!愛してるぞ!怜!」

怜「う、うあぁッ……ヒック、ぐぅ……ウチもやでぇ!京ちゃん!ウワァアアアン!!」

30は人生の折り返しとか言う人もいるけど……俺はそうは思わない、これからが本当に長いんだろうって思う……だからこそ俺は、彼女と共に在りつづける。

共に末永く生きていくために。


カンッ!