学校であった須賀い話


次はうちが話す番かー

あのな、これ本当は話したくなかったんやけど…
でも、胸の中にずっと隠しておけるようなもんでもなくってな…
折角の機会やから誰かに話してすっきりしたいんよ

……うちの親友にTって子がおんの

Tは病弱で、誰かがそばについてへんといつ倒れるかわからない子でな
大抵はうちがつきっきりになってるんやけど、ある時から一人になりたがるようになったんや
いや、正確に言うと一人になりたがる時間を作るようになった、ってとこかな

で、そのある時っていうんがな、なんとなく想像つくと思うんやけど…そう、あの子
京太郎くんと会ってからや


まさかTがあそこまで入れ込むとは思わなかったな~
そういうの興味なさそうやったもん


…話は戻るけど、一人になりたがる時間ってのは週に一度、いつも決まって放課後の部活が始まる前
でもそんな長くないねん
20分ほどしたら用が済むらしくてな、部活に顔を出すのが少し遅れるだけやから別に誰も気にしてへんかった

うちもホンマは傍についておきたいんやけど、Tのプライベートに関わることやろうし、ぐっと堪えてな…


その一人になる時間を作ってからTが京太郎君の話ばかりするようになった


「なあ京太郎ってハンドボール得意なんやって」

「カラオケで一番最初に唄うのドラ○ンボールらしいで、可愛いな~♪」

「ホー○アローン観ると絶対泣くからテレビでやってても家族とは観ないようにしてるんやって!」



そんなことばかり喋るから、てっきり頻繁に京太郎君と連絡取り合ってて、

部活前に一人になりたがるのも京太郎君と話したいからやったんかって思ってな

「なんや、京太郎君と色々うまくやってるやんか~」ってからかった

そしたら「え、ああ…まあ」と歯切れ悪い返事されてな

少し妙やな、と思った

いつものTなら「そうやろそうやろ!」って、ノリ気になってくるはずやからな

まあ、その話はそこで終わりやったんやけど…

こんな事もぼそりと言ったりもした


「京太郎を狙ってるのが…あちこちにおる……」


え?どうしたん?

狙ってるってどういう事?

京太郎君がそんな事言うてたん?


唐突にTが変な事言うから、うちもちょいパニくってな

質問を次々に投げかけた

でも、Tは何か心ここにあらずって感じで……

正直、不気味な雰囲気やった



そんな頃、こんな噂を聞いた


「授業が終わった後、Tが学校の隅にある公衆電話で誰かと話している」


…携帯電話があるのに公衆電話を使ってる?

てかな、そんな話聞くまで公衆電話があった事すら忘れてた

なんかそういうのって携帯の通話記録とか調べられたくない人がやる手らしいんやんか

でも、京太郎君と話すなら別に誰かに隠さんでもええやん

わざわざ皆忘れてるような公衆電話使うメリットって何?

密かに危ない人と連絡取り合ってるとか?

アホくさ


でも、Tに関わる事やから例え噂でも確かめておきたかった

そこでうちは決心して部活前にTがどこへ行ってるのか知るため、後をつける事にした

部活の仲間に言ったら、自分も自分もって押しかけてくるかもしれんかったから、みんなには適当な事を言って一人でな


………噂はほんまやった

Tは公衆電話へ向かっていった、そしてボックスの中に入ると……


急に電話が鳴り出して、当然のことのようにTが受話器を取った



なんや、今の…?

――無意識に体はゆっくりと前に出ていた


T……誰と話してるん?


ただ、それが知りたかった


でも



ぱきっ



ベタやけど、小枝みたいなの踏んでしまって結構な音が出たんや

それに気づいたTがこっちに振り向いた

限界まで目が大きくなって、正に驚愕といった表情やった




――バレてしまった!Tに嫌われたかも

ああもう、ええいままよ!



頭に血が上ったうちはそのまま近づいてボックスの戸を開けた

ほんまは別にTが誰と話してようがTの勝手なんやろうけど、
どうしても、どうしても確かめたかった

何かそんな気がしたんや


「なんで…ここにおるん……R華」


Tがそうぼそりと呟いた時やった


受話器から、ありえへん声がした




『え、R華…?ちょ、ちょっと何でそこにおんの?!』




全身が寒気だった



聞き間違いやって、今でも思いたい

けど、間違えようもない

いつも聞いてる声

大好きな声



Tが話していた電話の向こうの声は





”T”の声やった


………気づいたら、うちはTの手を引っ張ってそこを飛び出して行った

怖かった

とにかく怖かった

Tが得体の知れない世界に足を踏み入れていて、うちもついさっきまでそこにいたって考えると尚更

一刻も早くその世界からTと自分を引き離したくて、いつもなら考えるTの体力のペースなんかも頭になかった



Tが話していたのは…T?

どういうことなんや…!

どういうことなんや…!!



もうめちゃくちゃに混乱して、ただ走るしかなかった


……それがついこの前の出来事、その後のことはよう覚えてないんやけど部活を休んだのは確かや


……Tはあれから電話に出ることもないみたいで、

うちとも若干のしこりはあるけど険悪な仲にもならずに済んでる

それとなくあの電話のことを聞いたら、


「まあ、あれで最後の話やったし……うん、別に怒ってへんよ

 最大のチャンスが来るみたいやし」

結局、相手は何者だったのか言うてくれんかったけど、怒ってない、という言葉が聴けて心底安心できた


Tが話していた相手…

Tと声がよく似ていた誰か?

それともTに化けた何か?

でも、もしT本人やったとしたら?

例えば……別世界のTとか、未来のTとか


特に未来のTって考えると、Tのある特技のことも思ってしまって、つじつまが合いそうで怖いんや…

仮に未来のTやとすると、京太郎君の色んな情報をTに提供できていたのも納得できるし…


…あ、ごめん

こんな事があってから、そういう本とか映画とか見るようになってな

ほら、オーロラの日に死んだ親父と話せるようになるやつとか


…けど、Tが言ってた「最大のチャンス」ってなんやろ

最近、長野へ行く準備をしているみたいなんやけど、それと関係あるんやろか…

京太郎君の身に何も起こらないといいんやけど……



…あー、すっきりした!

長くなってごめんな

次は誰が話すん…?


カンッ