医者「幸い、CTを見る限り脳に大きなダメージは有りません。
脊髄の損傷も見られないので特に後遺症も残らないと思ったんだけどね……」

京太郎「……」

医者「まさか、失語症とは……
でも、さっき言ったように脳にはダメージが見られないんだよ。
恐らくは精神的なモノだろうね。
事故のショックで上手く声帯を使えない状態だけど、いずれ時間が解決してくれると思います」

京太郎「……!」

医者「一生このまま喋れない事は無いかって?
んー……そうだね、その可能性も無きにしも非ずってところかな」

京太郎「っ……」


咲「ゴメンね、京ちゃん……
私がドジなせいで京ちゃんがこんな目に……」

京太郎「」フルフル

咲「でも、私が本を読むことに夢中で赤信号の横断歩道に飛び出さなければこんな事には…………!」

京太郎「…………」ナデナデ

咲「ちょっ!京ちゃん?!」

京太郎「」ナデナデ

咲「もう…………」

京太郎「……」ピコピコ

咲「京ちゃんおはよう!
あれ、何してるの?」

京太郎「」コレコレ

咲「携帯の麻雀ゲーム?
京ちゃん、麻雀するの?」

京太郎「……」カチカチ

咲「あ、メモ帳機能?
何々……トランプや将棋のアプリが飽きたから始めてみた?」

京太郎「」コクン

咲「ふーん……」

京太郎「!」パタン

咲「あれ、何で途中で辞めちゃったの?
え、私が嫌そうな顔をしてたからって?」

京太郎「」コクン

咲「そんな……あのね京ちゃん、私が麻雀が嫌いなのは個人的な事だから別に京ちゃんがやりたいなら……」

京太郎「」カチカチ

咲「理由?あー……その、くだらない話なんだけどね」



咲「京ちゃん弱いね……」

京太郎「」プシュー...

咲「ゲーム越しだと牌が見えないからちょっと不安だったんだけどね。
京ちゃん、まさかそれ以上に出来ないとは思わなかったよ……」

京太郎「……」ムー...

咲「あはは、大丈夫だよ私がちゃんと教えてあげるから」

京太郎「」オジギー

咲「うふふ、任せて!」

咲「でも、実際に本物なの麻雀をやるってなると……」

京太郎「?」

咲「ほら、麻雀ってカンとかロンとか点数申告を言わなきゃいけないから……
人によっては鳴きを待たないでドンドン進めちゃう人もいるし」

京太郎「…………」



咲「え、ちょっとだけ声が出るようになったの?」

京太郎「」コクン

咲「ちょ、ちょっと喋って見てよ!」

京太郎「う、あ……っ」

咲「……」ドキドキ

京太郎「あっ……ぐぅうう……」

咲「京ちゃん……?
ちょっと、そんなに苦しいなら無理しないで!」

京太郎「すぁ……ぃ」

咲「え……?」

京太郎「さ……き……」

咲「京ちゃん…………!」



咲「え、麻雀部?」

京太郎「」コクン

咲「でも、どうして麻雀部なの?」

京太郎「」カチカチ

咲「リハビリ?
そっか、チーとかの言葉喋れるようになってきたしね」

京太郎「?」ユビサシ

咲「私もって?私は……その……」

京太郎「…………」

京太郎「…………」

優希「それロンだじぇ!」

京太郎「!?」

優希「裏も乗って……7700!
よーし、このまま親で稼ぐぞー!」

京太郎「……」クソー

和「ツモ、2000オールです」

京太郎「!」

優希「ありゃ!」

まこ「んー、流石はインターミドルチャンプじゃの」

京太郎「……ぉん」

優希「ん、なんか言ったかー?」

京太郎「んぉん……る、るぉん」

優希「それ、ロンって言ってるつもり?」

京太郎「……」コクン

優希「あはははは!無口な上に滑舌が悪いにも程があるじぇ!!」

和「ちょっと、優希!」

まこ「わりゃ、それはいかんじゃろ……」

京太郎「…………」フルフル

優希「そう言えばさっきチーも、うぃーって言ってたしな!
お前酔っ払いかよって!」

咲「あの、すみません……」

まこ「お?誰じゃ、おんし?」

咲「京ちゃん、ちょっとそこ変わって……」ゴゴゴゴ

京太郎「!?」ビクン!

優希「んー?どなたさん?」

咲「馬鹿にしたね……」

和「え……?」

咲「京ちゃんを、馬鹿にするなっ!!」ゴッ!

優希「じぇじぇっ!?」

咲「まさか、清澄が全国で優勝しちゃうなんて思いもしなかったよ」

京太郎「……」フルフル

咲「え、咲なら当然って……もう!何言ってるの京ちゃん!」

咲「…………私がまた麻雀を始めたきっかけ、お姉ちゃんと仲直りしたいからって言ったじゃん?」

京太郎「?」コクン

咲「でもね、その理由……半分嘘なんだ」

京太郎「……?」クビカシゲ

咲「勿論お姉ちゃんと仲直りしたかったのは本当。
だけど、それよりもね……あの日、京ちゃんが馬鹿にされてるのが許されなかったのと……
京ちゃんと、麻雀がやりたかったからなんだ」

京太郎「!」

咲「京ちゃんが一生懸命に麻雀の練習をしてる姿を見て、あ……麻雀ってこんな楽しい物だったんだっけって思いだして……」

咲「ううん……そんな事よりも……私、京ちゃんと一緒にいられる時間が欲しかったんだ」

咲「あはは……自分勝手過ぎるよね……
京ちゃんは優しいから否定してくれるけど、やっぱりあの事故は私のせい。
私のせいで京ちゃんは声を喪っちゃった。
それなのに……その元凶の私が京ちゃんと一緒にいたいって理由でまた牌を握ったんだ……」

咲「ズルいよね、不純だよね私……
本当なら、私は京ちゃんのそばにいちゃ駄目な子だった。
本当なら、私はそんな理由で麻雀をしちゃいけない。
どっちも不誠実で……私は……私はっ!」

京太郎「……!」ギュッ!

咲「京……ちゃん?」

京太郎「そ、な……こ、ない!」

咲「えっ!?」

京太郎「お、れ……な、らび……た、から、部……はい、た」

咲「並びたい……?」

京太郎「かこ、よく……て、たの、そで……
咲、と……そな……ま、じゃ、した……くて」

咲「…………」

京太郎「み、な……こ、なっから……馬鹿、に……て
咲、だけ……ちが、た」

咲「そんな……違う、私は!私のせいで!」

京太郎「う、れし……かた
だ、から……お、れ……」

咲「京ちゃん……」

京太郎「も、す……こし……ま、て……
はな、せ……よに、な……から
ぜたい、だ……か、ら……」

咲「…………うん」




ポンッ……