740 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/15(火) 02:20:28.14 ID:kRHMwVoko [24/27]



母さん。

俺、駄目みたいです。

父さん。

アンタのコレクション返せないのが心残りです。

カピ。

お前ならきっと俺がいなくても平気だろう。

咲。

もしかすると出会うかも知れなかったけど、もうその機会は無さそうだ。

俺はこの後の極刑を考える。

やばい。

小蒔さんが隠せるとは思えない。

これを見たという事実。

それは何れ、何かしらの形でバレる。

絶対にバレるはずだ。


霞『あらあらあらあら』

初美『ぎるてぃ、ですよー』

巴『最低です…』

春『さらば』


あれ、ありえそうだよ?

心の中で涙を流す。

さぁ、一思いにやってくれ。

もはやその領域である。

しかし。

何故か。

妙な空白が、そこにはあった。


小蒔「………」フニョフニョ

京太郎「………何してるんです?」

小蒔「勝ちました!」


何に?

そうは問わない。

さっきまで写真の巫女と自分の胸を比較してたのは俺も見えてる。

ただ、勝ちました。

その発言だけが意味不明なのだけど。

はて、何でだろうか?




827 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/15(火) 22:09:05.51 ID:7+z1SiV1o [4/19]
【8月18日:朝】第二回戦試合当日



小蒔「おはようございます、京太郎君!」

京太郎「おはようございます、小蒔さん」


それぞれが手に朝食の載ったおぼんを手に、俺は小蒔さんと言葉を交わす。

今日は試合の日。

2回戦。

清澄、宮守、姫松。

その三校と永水が対戦する日だ。

すでに巫女服を身に纏い、いかにも臨戦態勢。

そういった風体の小蒔さんと向かいあうように俺は席に座る。

揃って、いただきます。

先ずは味噌汁を一口。

うん、良い出汁している。

最初は言葉無く、それぞれが食事を勧める。

半分ほど、皿の上の料理が無くなった頃だろうか?

俺はゆっくりと、話を切り出していた。


京太郎「今日、試合ですね」

小蒔「あ、はい。私の初戦です」

京太郎「応援しか出来ませんけど、その応援は精一杯やりますよ」


にこりと微笑む。

うん。

俺は応援くらいしか出来ない。

それ以外に力になれるだろうか、とも考えてみる。

……いや、無理だな。

せいぜい、滝見さんの黒糖とか、小間使いがいいとこだ。

むしろ何もしない方がいいんじゃね?俺。

気を散らせるなんてのはしたくないし。


――――おんぶ。

――――すばらです!


………。

何かが、聞こえた。

俺は首を捻る。

なんというか。

懐かしい、声が聞こえたような気がした。




930 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/15(火) 22:47:10.65 ID:7+z1SiV1o [13/19]



その声の人たちは。

きっと、気にもしない。

片方は気だるげ。

もう片方は覚悟している。

それは俺程度で乱される集中力じゃない。

その人を構成する部品のようなものだ。

俺は小蒔さんを見る。

この人には、それがあるのかは不明だ。

麻雀の時だけは、この人は人じゃなくなる。

だからそれは小蒔さんの個じゃない。

彼女に降りてくる、“ソレ”のもの。

だから俺は思う。

小蒔さんが、不安定に見えるから。

大丈夫なのか。

俺の相手をしてペースを乱されないのか。

自分の打ち方を出来るのか。

そう、思うのだ。


京太郎「……小蒔さん」

小蒔「はい?」

京太郎「………」


言葉を考える。

この人に、どんな言葉がいいのか。

悩んで、悩んで。

よし、と呟いて。

俺は小蒔さんを、見た。


京太郎「今日の試合、見てますから」

小蒔「はい、そうでしょうけど……」

京太郎「ですから、小蒔さん」


貴方の全力。

俺に見せ付けてください。

貴女の、確固たる意思を。



  • 姫様の病み度が2上昇しました

938 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/15(火) 22:51:52.04 ID:7+z1SiV1o [15/19]
【8月18日:昼】第二回戦試合当日


小蒔「―――」プシュー

京太郎「oh God……」


……朝の、アレ。

それから試合が始まり、今は中堅戦が始まったばかり。

俺は今も頭からポンコツ音を鳴らす小蒔さんを見る。

先鋒。

それは宮守に喰われた、という感じだった。

+700点。

マイナスよりはマシ。

そういった感じではあるが、あれだ。

なんというか、張り切ってただけあって、うん。

すっごく声がかけずらい。

途中まで自分のうち筋でやってるのは、俺でも分かった。

最後の最後で、降ろしてきた。

それも分かった。

ただ、その。

なんというか。


京太郎(めっちゃ落ち込んでる……よな?)


やっぱり、落ち込んでる。

なんとなくだが、それが分かるような気がした。

ちらり。

俺に小蒔さんの視線が向けられる。

だが次の瞬間には、顔を俯けてしまった。


小蒔「……ちょっと、お手洗いに行ってきます……」

霞「……大丈夫、小蒔ちゃん?」

小蒔「大丈夫、です………」


ふらふら、ふらふら。

そんな足取りで行ってしまう。

そこで、俺に向けられる視線視線&視線。

ゆっくりと振り向けば、石戸さん、狩宿さん、薄墨さんの笑顔があった。

………うわぁい!

巫女さんの笑顔だぁ!!


京太郎「俺もトイレ行ってきます!!!」


殺されてまう!!

助けて姫様!!




9 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/15(火) 23:25:15.13 ID:7+z1SiV1o [1/3]



ふらふら、ふらふら。

そんな覚束ない足取りで咲を行く後ろ姿を捉えた。

小蒔さん。

俺が声をかけようと口を開く。

そのまま吸い込んだ息を吐き出せば、声となって出ただろう。

でも、声はかけられなかった。

何故か。

それは、本当にトイレに入ってしまったから。


京太郎(………あれ、この状況はやばくね?)


女子トイレの前に居る男子。

いかん、アウトだ。

むしろアウトじゃなくても利用者の視線を受けただけで死んでしまいそうだ。

ええ、そうですよね。

女子大会ですもんね。

野郎が何の用だ、ってもんですよね。

俺はそそくさと離れようと足を反対に向ける。

ただ。

小さく。

聞こえた。

鼻を啜る音。

小さく、嗚咽を漏らす声が。


京太郎「――――」


泣いている、のか?

俺は足を止める。

耳を澄ますまでもない。

あの人は。

泣いていた。

俺は、動けない。

そこまで、思いつめていたのか。

そんな、自失。

それに襲われていて。

動けなかった。




19 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/15(火) 23:36:34.80 ID:7+z1SiV1o [2/3]



小蒔「戻、らなきゃ……」グスッ


ふらり。

そんな呟きと共に小蒔さんが出てくる。

俺は、そこに居た。

びくりと、小蒔さんが震える。

その表情にあるのは、恐れ。

まるで子供が親に置いていかれた時のような、不安による恐れ。

恐怖と警戒心とがごちゃ混ぜになった、怯えた猫のような姿だと俺は思った。


小蒔「あ、あぁ……」カタカタ

京太郎「小蒔さん……」

小蒔「い、いや……嫌ぁぁぁぁあああああああ!!」

京太郎「小蒔さん!?」


不意に。

そんな絶叫が、響いた。

聞く者を一瞬で不安にさせる。

そんな恐怖の篭った、叫び声だ。

身を腕で抱きしめる小蒔さん。

ガタガタと。

まるで冬山に薄着で放置されたような震えの仕方で怯えていた。

俺はどうするべきか分からず、固まるしか出来ない。

嫌ぁ、嫌ぁ!!と。

次の瞬間には。

俺に縋り付く、小蒔さんの姿。

俺の思考が、停止した。


小蒔「ごめ、んなさい……」

小蒔「ごめん、なさい……―――」

小蒔「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい―――」

小蒔「ちゃんとできなくて、ごめんなさい。なんでもするから、だから―――」

京太郎「え、へ、は?」


ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい

ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい

ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい

ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい

ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい

ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい




36 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/15(火) 23:48:43.66 ID:7+z1SiV1o [3/3]


壊れたオルゴールのように。

何度も小蒔さんは謝罪を繰り返す。

逆に俺が冷静を取り戻すほどに。

小蒔さんのその姿は、凄惨に満ちていた。


京太郎「小蒔、さん……」

小蒔「ひっ!」ビクッ


俺が声をかけるだけ。

それだけで、深く恐怖に沈んだ瞳から涙が零れる。


小蒔「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!京太郎様に、ちゃんと結果を見せるって―――!」

京太郎「小蒔さん!!」

小蒔「――――ッ!!!」


俺が肩を抱き、声を上げる。

声が、止まる。

涙も止まる。

がくり。

力が、急激に抜けた。

慌てて俺が小蒔さんを支える。

抱き上げた、その瞬間。

小さく。

かすれた声が、俺の耳だけに届いた。


小蒔「ごめ、んね――――京、ちゃん……」

京太郎「え?」


今、なんて?

俺はそれを問いかけようとして、それが出来ないことを知る。

小さく、泣きつかれた子供が眠ってしまうように。

寝息を立てて、小蒔さんは寝てしまっていた。


京太郎「………ああくそ、何なんだよ畜生…」


がしがしと、俺は頭をかく。

とりあえず落ち着いてくれたのだ、それでいいだろう。

しかし、今の問題は……。


警備員1「君、ちょっと来てくれるかな?」ニコッ

警備員2「大丈夫、抵抗しなければ何もしない」


…………ああっ、不幸だ。




52 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 00:02:47.65 ID:j19jZCw/o [1/29]



こってりと、警備本部で事情聴取を受けた俺は、目覚めた小蒔さんの鶴の一声で解放されることになった。

あのままだと、『少年A、全国大会出場選手に暴行か!?』という記事が作られかねなかった。

そう思うと非常に震える思いである。

しかし。

俺はちらりと、小蒔さんを見る。

何処か、さっきまでの雰囲気は無い。

落ち着いてる。

そんな感じだろうか。

理由を考えてみる。

だが、俺はそもそも女心なぞ分かりはしないのだ。

となると、あれだ。

こういう時は黙ってた方がいいだろう。

……さっきまでの様子。

それを思えば、賢明な判断だろう。


小蒔「あ、あの……京太郎君」

京太郎「何ですか、小蒔さん」

小蒔「その、ね。ごめん、なさい……」


ごめん。

謝られると、どきんとする。

またあの状態になるんじゃないか。

そんな疑いが浮かぶ。

だけど、それはそんなに鬼気せまるものじゃなくて。

何処か、困ったような声だ。


小蒔「先鋒で、あんまり稼げませんでした……」

京太郎「いいじゃないですか、それくらい」

小蒔「へぅ…」

京太郎「石戸さんも、薄墨さんも、狩宿さんも滝見さんも居ます。皆を信じて、待ちましょうよ」


それとも信じれませんか、みんなが。

俺はそう問いかけると、小蒔さんはすぐに否定した。

なら悩んでも、しかたない。

後は、信じるだけだ。

俺に出来ることは、それくらいなんだから。


京太郎「さ、戻りますよー」

小蒔「……はい!京太郎君!」



  • 変化ありませんでした。

54 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 00:03:45.39 ID:j19jZCw/o [2/29]
【8月18日:夜】



――――永水は、敗退した。

その事実が、俺たちに圧し掛かる。

惜しかった。

どの高校も予選通過できる。

それだけ可能性ある試合だった。

それは事実だ。

何処か和気藹々とした雰囲気。

負けたばかりの高校とは思えない。

そういう優しげな空気がそこにはあった。

それが今、ここにあるのはまだ小蒔さんや薄墨さんの個人戦がある。

それもあるし、何より。

皆の第一は、優勝でなく小蒔さんなのだ。

彼女に尽くす。

それが彼女たちの意義。

麻雀をする意味だ。

だけど、全てに対して真剣だったのは事実。

勝てなかった。

でも、良い試合だった。

それがあるからこそ、今こうしていれる。

俺は小さく息を吐く。

疲れというよりも、安堵だ。

今日は、色々とあった。

試合のことも、事情聴取されたことも。

それにあの豹変した小蒔さんのことも。

あれは、何だったか。

深く考えるべきじゃない。

俺はそう思いながら、また足を伸ばす。

その小蒔さん。

彼女は今、ここに居ない。

それも当然だろう。

俺は今、風呂場に居るのだから。





162 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 00:35:28.04 ID:j19jZCw/o [11/29]



京太郎「あ~」


溶ける。

こういうのを極楽というんだろう。

時刻は深夜近い時間帯。

もう女子たちは風呂を使い終わった後で、俺の入浴時間になっている時間帯だ。

乳白色の湯。

なんともほどよい温度。

肌も艶々になるってもんである。

……石戸さんのことを連想してませんよ?

こほん。

しかし、こう広いと泳げそうな気もする。

貸し切るとそうしてみたくもなるが、何か空しくなってくるだけな気もするけれど。

というか空しい。

さっさと、上がってしまおう。

俺は湯から出て、脱衣所へ行く。

体を適当に拭い、半タオルで頭をガシガシと拭く。

そのまま足は俺の部屋の方角へ。

鍵を出し、ドアへとかける。

ガチャン。

鍵を開き、中へ。

俺は敷かれている布団へとダイブ。

ベッドとは違い、下が硬い畳でもはっきりと分かるふわふわ感。

うーんこの高級布団。

実に最高である。

そうそう、ここなんか特に柔らか―――「ぁ、ん……」


や、夜話やわやわやわああああああああああああ!!!?!?




181 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 00:45:39.85 ID:j19jZCw/o [13/29]



跳躍。

直立。

点灯。

離脱。

一瞬でその動作を行った俺は部屋のドアまで引き下がる。

見れば、ぽっこりと膨らんだ俺の布団。

明らかに中に誰か居る。

それがはっきり分かる状態だ。

もぞり。

布団が動く。

ひょこっと。

掛け布団が少し退き、そこに居る人が見えた。


小蒔「京太郎、様……」

京太郎「こ、ここここまこままま……小蒔さん!?」


アンタ何してんの!?

俺が震える手で思わず指差す。

ぽやん、とした顔。

少し赤み掛かって、なんとも色めかしい。

……って、いやいやいや。

落ち着け俺よ。

クールになるのだ。

我が頭脳をフル活用し、活路を見出すのだ。

1、ここは俺の部屋じゃない。

答えはNO、俺の荷物が置かれ、俺の持つ鍵で開いたこの部屋が俺の部屋じゃないということはない。

2、小蒔さんが部屋を間違えた。

答えはNO、そもそも間違えても入れないだろJK。

ぬおおおおおおお!と俺が頭を抱える。

意味が分からない!

そんな叫びが俺の思考を圧迫する。

しかも何だ、京太郎様って。

俺って様つけられる人間じゃないことですのよ?

そう思っていると、目の前には小蒔さんの姿。

考えすぎていて接近を感知してなかったらしい。

手が、伸ばされる。

俺の、頬に。

え、いや、いやいやいやいやいや!!!





191 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 00:57:22.51 ID:j19jZCw/o [14/29]



京太郎「落ち着いて!落ち着いてください!!」

小蒔「大丈夫です、落ち着いてますよ?」


嘘だ!

そう言えたらなんと幸せなんだろうか。

にこりと。

そう微笑む小蒔さん。

待て待て、待ってほしい。

いきなり過ぎる展開でしょう。

俺がそう思い、叫びたくなるのをぐっと堪える。

よし、落ち着け。

冷静になったな、須賀京太郎。

とにかく今は、石戸さんを呼ぶべきだ。

そうすれば……。


小蒔「京太郎、様……」

京太郎「はいはい、お酒でも飲んだんですか?今石戸さん呼びますから――――」

小蒔「罰を、お与え下さい……」

京太郎「………WHY?」

小蒔「京太郎様に勝利を捧げられなかった、私に罰を与えてください………」


ふらふら。

近寄る、小蒔さん。

ぎゅっと。

抱きついてくる。

やめてくださいしんでしまいます。

いや、何で俺が罰っしなきゃいけないんだ?

俺が引きついた顔で、小蒔さんを見る。

聞くしかない。

そうそう、話せば分かってくれるもんだ。


京太郎「小蒔さん、罰とかそんなの、俺たちは友達じゃないですか」


罰なんてやれない。

というかやりたくもない。

俺がそう、柔らかく伝える。

小蒔さんは、少し俯いていた。

そうそう、落ち着けば分かってくれる人だ。




206 名前: ◆VB1fdkUTPA[!red_res] 投稿日:2013/01/16(水) 01:14:03.90 ID:j19jZCw/o [15/29]




京太郎様、子供は何人欲しいですか?

私は女の子が欲しいです。

きっと京太郎様に似て可愛い子になります。

男の子も、京太郎様に似てかっこいい子になるに決まってます。

名前も二人で考えて……いえ、京太郎様がお決めになるのでしたらそれに全て従いますよ?

小さくても、狭くてもいいです。

そんな家に住んで、家族で寄り添って生きていくんです。

素敵だと、思いませんか?

あ、ワンちゃんとかもどうでしょう!

子供たちを守ってくれて、最後はその命の終わりで生命の大切さを教えてくれる。

とても偉大で、可愛いパートナーです。

あ、京太郎様はわんちゃんはお嫌いですか?

なら、私が何でも京太郎様のお好きな動物の真似でもしますね。

京太郎様。

可愛がってくれますよね?

だって、京太郎様ですから。

当然ですよね!

あ、そうです。

京太郎様の好きな料理は何ですか?

京太郎様に食べさせて差し上げるものに妥協はしません。

でも、優しい京太郎様は不味くても「おいしい」って言ってくれますよね。

そんなの、私は納得できませんっ!

これからずっと料理を作りますから、京太郎様に喜んで貰うために。

ああっ。

そうでした。

京太郎様にはまだ言ってませんでした。

私は貴方様と結ばれるなら家も出て行けます。

愛し合う二人は引き裂けません。

それは、九神様でも。

……あ、京太郎様が婿入りしてくれるのなら、話は別ですよ?

きっと霞ちゃんも、お父様もお母様もおじい様もおばあ様も歓迎してくれます。

そうだ、そうしましょう。

そうすれば、皆と一緒で毎日楽しいですよ!

……あ。

でも、浮気は駄目ですよ?

霞ちゃんも、初美ちゃんも、春ちゃんも巴ちゃんも可愛いですから。

私、そうなったらショックです……。




234 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 01:23:42.08 ID:j19jZCw/o [16/29]



ノンストップ。

そんなマシンガントークが俺に突き刺さる。

意味が、分からない。

ぐるぐると。

全ての言葉が俺の脳内で回っている。

すりすりと。

俺の胸元に擦り寄る小蒔さん。

まるで猫のように甘えてくるその姿。

気づけば俺はその頭を撫でている。

えーと。

うーんと。

ええっと。


京太郎「―――うん、そうですね!」

小蒔「~~~♡」


なんか悩むのも億劫だ。

もういいじゃないか。

可愛いし。

可愛いし。

大事なことなので2回言いました。

悪くないどころか、ここまで愛されるなんて滅多に無いだろ。

うんうん。

悪くない悪くない。











京太郎「助けて石戸さぁぁぁぁぁん!!!!!」



  • 姫様がレベル4になりました

269 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 01:33:29.58 ID:j19jZCw/o [20/29]
【8月19日:朝】

   (⌒ 、    .. . ... :. .:.:.:.: .: .... ..:.:.:.:..       .:.:.:.. ..  .. .... .:.:.:...
 (     ヽ⌒ヽ 、            /   / .. .:.:.:..: .:.:.:.. ....:.:...
(             ) ... :. .:.:.:.: .: ..   ___┐     /     /ヽ
          `ヽ         /  |´            , へ
  , ⌒ヽ . .. :. .:.:.:.: .: .... .:.:.:. . |___/    / . ... ..   |   |  .. .... .. .:.:.:.
 (    '               /       ./       ヽノ
  ゝ     `ヽ          / .... .:.:.:.:.:... / .:.:.:..:.:. ..   | . ......  .. .
(⌒         ... .... . /... :. .:.:. ..     /         |
        .:.:.... .... /         /  .... .:.:.:. . ..  | ... :. .:.:.:.: .: ....
   .. .... .. .:.:.:..: /           / . .....:.:.:.:.:.:.:.. ...  |     . .. ...:.:.  チュン、チュンチュン
.. ..... .. ..:.:.:.. ..:.:.:.:.:.:... ......  .. .... ..                 i
         /       (⌒ 、   .. .... ..  .:.:.:..: .:.:...  , ⌒ヽ . :. .:.:...
  . .. .... .. .:.:.:..: .:.. ... (     ヽ⌒ヽ 、         (      Y⌒ ヽ
308 名前: ◆VB1fdkUTPA[!蒼_res] 投稿日:2013/01/16(水) 01:46:21.78 ID:j19jZCw/o [22/29]



朝になった。

俺は抱きついたまま眠る、小蒔さんを見る。

何も無かったぞ。

一応言っておくけどさ。

一晩、抱き枕状態。

実に天国で、地獄の時間だった。

俺は今、幸せそうに眠る小蒔さんを見る。

冷静になった、俺。

昨日のアレは、何だったのだろうか。

それをふと考える。

いや、分かってる。

小蒔さんの好意。

それは、分かってる。

でも、こうまでなるのか。

それが俺には分からないのだ。

出会って、4ヶ月ほど。

世の中にはスピード結婚というのもあるので、一概にはいえない。

ただ、それにしたっておかしいじゃないか?

俺は何でかと考える。

こうまで、好意を持たれる。

まるで、それが根底にあったような。


小蒔「……ふぁ?」

京太郎「あ、起きました?」


その時。

短い声と共に、小蒔さんが起きる。

ぽけっとした顔。

昨日のことは何か悪い夢。

そんな反応でもしてくれないかと俺は思う。

ただ、俺と目があったその瞬間。

ふにゃりと、小蒔さんは笑っていた。


小蒔「えへへ……」


………。

参ったなぁ……。




326 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 01:51:03.76 ID:j19jZCw/o [24/29]
【8月19日:昼】



永水総動員。

それが先ほどまで、起こっていた。

見れば、狩宿さん、滝見さん、薄墨さん、石戸さんが息も絶え絶えという風体で座り込んでいる。

その周囲には、御札、破魔矢、塩、十字架(!?)などなど。

古今東西問わずの祓いを扱う道具が揃っていた。

そうだ。

先ほどまで、小蒔さんへと総動員で浄化の儀式が行われていたのだ。

結果は、言うまでもないだろう。

何も憑いていないのだから、変わりようが無い。

俺は隣に座る小蒔さんを見る。

なんというか、普段どおりである。


小蒔「もう、霞ちゃんってばひどいですっ!」

霞「ご、ごめんなさいね小蒔ちゃん………駄目ね、何も憑いてないみたい」

初美「きょうたろー、何したですかー?」

京太郎「何もしてません」


吐けば楽になるですよー。

そんなこと言ってくるこの人。

そらそうですよね。

いきなり自分たちの姫様がこんな風になってたら誰だって驚きますよね。

でも俺だって驚いてるんです。


小蒔「京太郎様、お散歩に出かけましょう!」

京太郎「え、いやあの……」

霞「……気をつけてね、小蒔ちゃん」ハァ

小蒔「はい!分かりました!」

京太郎「石戸さーん!?」


OKサインを出す石戸さん。

ただし、片目をぱちりと閉じられる。

任せたわよ。

そういう意味を俺は感じとり、頷く。

きっと、何か考えてくれるんだろう。

俺はそれを信じるだけ。

今は、それしかない……!









霞「はぁ……」

初美「……いいんですかー?」

霞「いいんじゃないかしら?」

春「姫様、大胆」ポリポリ

巴「なんというか、まぁ……」


感想をそれぞれ漏らす。

恋に燃える。

まさしく、そんな表現がぴったりと来る。

それが今の小蒔の状態だろう。

霞はぼんやりと、外を見る。

ちょうど、庭に出て行く京太郎と小蒔の姿がそこにはある。

傍から見れば、カップルに十分見える。

そんな(一方通行気味な)雰囲気がある。

霞は小さく息を吐く。

なんとも、とんでもない成長の仕方をしたものだと。


霞「須賀君、後は君次第なのかもね……」


これしか言えない。

ある意味、これは現実逃避であった。



411 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 21:42:47.69 ID:BhheSlXYo [2/15]
【8月19日:夜】

夜となった。

明日は宮守高校のメンバーとの海水浴。

それに揃って出かけるらしい。

あの、白い人が居る高校だ。

俺はそれに幾らかの不安を覚えていた。

だが、そうも言えない。

それが今の状況だろう。

俺は、隣で丸まるように眠る小蒔さんを見る。

……正確には、対処に追われて何もできなかった。

そう言うべきなんだろうけど。


小蒔「ん………」

京太郎「……はぁ」


すぅすぅ。

そう静かに寝息を立てる小蒔さんの頭を撫でる。

見れば、俺の着ている浴衣はしっかりと握られ、離れそうにない。

こうなると、どうしようもないのが俺が培った経験で分かる。

そう思っていると、部屋の扉をノックする音。

早い到着。

それを待ってました。

そんな気分で、俺は迎えた。


霞「あらあら、お楽しみ中かしら?」

京太郎「冗談でもそんなこと言わないでくださいよ……」


あらあら、と口元に手をやって笑む石戸さん。

なんとものんきな雰囲気である。

そのまま、石戸さんは小蒔さんを挟んだ反対に腰を落ち着ける。

視線は小蒔さんに。

何処までも優しげな顔をしている。

なんというか、母親みたいに。

母性あふれる、と言うべきだろうか?


霞「何か考えたかしら?」

京太郎「滅相もありません、マム!」


怖い。




433 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 22:19:48.13 ID:BhheSlXYo [5/15]



霞「でも、小蒔ちゃんにも困ったわねぇ」


石戸さんがぼそりと。

何処か疲れたように呟く。

なんというか、お疲れ様です。

それくらいしか言葉が出ない。

そんな俺に向けられる視線。

……なんでだろう。

凄く責められてる。

そんな気がするのは。


霞「とりあえずだけど、須賀君。小蒔ちゃんのことは君に任せることになるわ」

京太郎「やっぱりですか……」

霞「私たち総掛かりで駄目なら、鹿児島に戻って本家の皆様にお力を借りなきゃ駄目よ」


まぁ、何も憑いてないから無意味なんでしょうけど。

またため息をつく、石戸さん。

思案顔をして、俺を見る。


霞「……須賀君、そのうち私たちに姫様と同じく旦那様って呼ばれる気は無い?」

京太郎「意味が分かりません」



  • 霞さんじゅうはっさいの従順度が1上昇しました


472 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 22:50:09.36 ID:BhheSlXYo [9/15]


【8月20日】


宮守高校。

岩手県代表の、初出場チーム。

俺は岩手に行ったことはない。

ただ。

何故か、俺には景色が見覚えあった。

雪残る大地。

見慣れた、でも初めて見る学校。

笑いあう、5人の仲間と先生。

ああ。

そこに、俺は居る。

それを、俺は知っていた。

シロさん。

自然と名前が出る、その人。

白い髪を持った、眠たげな瞳の人。

そうだ。

俺は。

俺は……。

あの人を、俺は……。


京太郎「俺は………」





479 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 23:01:09.62 ID:BhheSlXYo [10/15]



海。

それは何処か開放的な気分になる。

そういう場所だ。

俺は今、パラソルの下に居る。

日差しはそれなりに強い。

日焼け止めは、塗っておいたので問題ないだろうけど。

俺は少し、息を漏らす。

ああ。

なんというか、あれだ。

だるい。

実にそういう気分だろう。

俺は視線を、俺の周囲に向ける。

隣。

雑誌で顔を覆って寝転ぶ、シロさん。

俺のもう片方隣。

にこにこと、微笑む小蒔さん。

そして。


エイスリン「シロ!キョウタロ!コマキ!ジュース!」

京太郎「ありがとうございます、エイスリンさん」

小蒔「ありがとうございます」

シロ「置いておいて……」

エイスリン「アイスティーシカナカッタ!イイ?」


そして、エイスリンさん。

俺は小さく、息を吐く。

なんというか。

なんというか。


京太郎(空気、気のせいか重たいなぁ……)




506 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 23:18:19.65 ID:BhheSlXYo [13/15]



京太郎「シロさ……じゃなくて小瀬川さん、ジュース温くなっちゃいますよ」

シロ「シロでいいよ……ちょいタンマ、今起きるから…」


のそり。

そんな感じで起き上がる、シロさん。

エイスリンさんが「ハイ!」と手渡す。

それに、一瞬の空白。

見れば、「?」というような顔をするエイスリンさん。

シロさんは、じっと。

エイスリンさんを見ている。

しかし、それはもういいのだろう。

小さく礼を言うと、プルタブを開いていた。

喉が少し鳴る。

随分と喉が乾いていたようだ。


シロ「あー………」


ぽけっと。

小さく息を吐くシロさん。

何か溜め込んだ物を吐き出す。

そういう風にも見えた。

突然、シロさんが視線を俺に向ける。

そこにあるのは。

なんだろうか。

あるのは、少しの……。








シロさんが、ふと俺を見る。

考えが読めない。

そんな目だ。

いや、むしろ読めないからこそ。

その視線にあるものに気づけたのか。

シロさんは小さく欠伸。

眠たげに転がって、それから口を開いた。


シロ「ねえ、京太郎……ずっと昔にさ……何処かで、会わなかったっけ……?」


そんな気だるげな問いかけ。

ずっと昔。

そう、シロさんが聞く。

気づけば、小蒔さんも俺を見ていた。

空気は変わる。

何処か粘ついた、重たいコールタールのような。

そんな空気に。

視線を、隣に。

小蒔さんがそこには居る。

いや。

違う。

何かが、そこに居た。

シロさんと、目が合う。

シロさんに浮かぶのは、何だ。

俺に浮かんだ感情は、恐怖。

怖い。

恐ろしい。

この人は、小蒔さんなのか?

そんな疑問。

そして、また感じたのは、懐かしさ。

まるで、ずっと昔。

何時からか知っていたような。

そんな、懐かしさ。

シロさんが小さく、笑った。


シロ「……別に、盗らないよ」


だるいし。

そんな言葉。

ふっと、空気が変わった。



545 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/17(木) 00:01:10.20 ID:jwx27MTso [1/17]



京太郎「?」

エイスリン「??」


俺とエイスリンさん。

二人揃って頭上に疑問符を上げる。

だるい。

別に盗らない。

それだけで、空気は違う。

何処か静かな水面。

それを思わせるような感覚がある。

さっきまでが時化て荒れた海。

そう思えば、それくらいの落差はある。

シロさんが立ち上がる。

エイスリンさんに手を伸ばし、そのまま行く。

じゃあね。

そんな声。

それと共に、皆が遊ぶ方へと向かっていってしまった。


小蒔「むぅ……」

京太郎「………小蒔さん?」

小蒔「何でもありませんっ!」


何故か不機嫌な小蒔さん。

俺がそれに頭を捻ると、体を斜めに。

肩に頭を置いて、もたれかかる。

そういう形で、俺に寄りかかる。


京太郎「……あの?」

小蒔「京太郎様、このままにさせてください」

京太郎「……了解です」


静かな。

無言の時間が流れる。

なんというか。

うん。


京太郎(なんというか、流されてるなあ……俺)


まあ、今はいいだろう。

空がこんなにも青いのだから。

今は、悩む必要は、無い。


【―――――】