505 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/14(月) 01:25:48.62 ID:09Lz0Stho [25/36]


【オープニング】



私たちの通学する学校。

それが共学になったのが、今年の春。

女の園に殿方……男の人が入ってくる。

それはもうとても騒ぎになってたのを今も覚えています。

ただ、恥ずかしながら私は何時もの癖でお昼寝。

目が覚めたのは、8時過ぎで、もう遅刻してしまう。

そんな時。

私は、出会いました。

曲がり角。

そこで思い切りぶつかりながら。


京太郎「痛!?…って、大丈夫ですか!?」

小蒔「は、はい。大丈夫――――!?」


差し出される手。

私がふと、視線を上げる。

男の人。

ただ。

それには何かが憑いていました。

重なり合うような、手のひら。

女性の、手。

貌の無い、女性。

声があるなら。

それは何を言っているのだろう。

何処までも狂った、感情。

生々しいまでの感情の、負の塊がそれでした。

ただただ、縋り付くような重い怨念。

それを憑かせる、男の人。


京太郎「ど、どうしました?」

小蒔「………だい、じょうぶなんですか?」

京太郎「はい?」


ただ。

憑かれている人は何処までも普通で。

何処までも、そんなことには無縁のはずなのに。

なんで、ここまで正気なんだろう。

私は気づけば、そう問いかけてそうでした。




547 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/14(月) 01:40:32.51 ID:09Lz0Stho [26/36]



小蒔「霞ちゃん!助けて下さい!!」

霞「あら、小蒔ちゃん。何処に行ってたのかしら?担任の先生が―――」

京太郎「あ、あの、ここ麻雀部ですか?何でここに俺を……?」

霞「………あら」


私が麻雀部―――皆の居るところに急いで彼を連れて行く。

中に居た霞ちゃん。

目が合うと、一瞬で察してくれたのか立ち上がる。

パンパン、と手を打ち鳴らす。

それで集まる、皆。

手馴れたように、塩や札などを用意している姿が見える。

置いてけぼりな男の子。

私は彼の手を握ると、しっかりと頷いた。


小蒔「もうこれで大丈夫です!」

京太郎「はい?」

小蒔「初美ちゃん!」

初美「はいですよー。このお札、しっかり握っておいてくださいねー」

京太郎「いやいやいや!?どういうことですこれ?!というか貴女服しっかり着てくださいよ!」

初美「巫女なので、それよりお札みた方がいいですよー」


初美ちゃんの言葉。

それに「え?」と男の子。

私もつられてみる。

何時の間にか、真っ黒。

悲鳴を上げて札を投げ捨てようとした彼の手を握って止めさせる。

その間に。

何時の間にか、祓うこと自体は終わってたみたいでした。


巴「すみません、強すぎて払い切れませんでした……」

春「危険」

霞「参ったわね……」


汗だく。

そんな様子で語る皆。

何も分からない。

そんな様子の男の子。

どうしたものか。

そんな空気が出来ていく中。

私は思いついたと言わんばかりに立ち上がりました。




566 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/14(月) 01:47:39.30 ID:09Lz0Stho [27/36]



小蒔「じゃあ、麻雀部に参加して貰いましょう!」

京太郎「え?」

小蒔「そうすれば、日中の様子で分かります!」


私の提案。

彼が、今回入ってくる新入生だから出来ること。

あら、と霞ちゃん。

おおよそ、この提案は間違いじゃないみたいで。

にこり。

そんな感じで微笑んでくれます。


霞「そうね、ある意味では丁度いいかしら」

春「放っておくと取り殺されるかも知れない」

巴「まぁ……ですね」

初美「姫様に拾われて幸運ですねー」

京太郎「へ?へ?へ?」


右往左往。

そんな男の子に私は手を差し出す。

ようこそ。

私はそう、明るく。

彼に声をかけた。


小蒔「ようこそ、永水麻雀部へ!」

京太郎「………え?」


あ、まだ混乱してるみたいです。




【オープニング終了】

573 名前: ◆VB1fdkUTPA[!蒼_res] 投稿日:2013/01/14(月) 01:52:57.67 ID:09Lz0Stho [28/36]



夢を見た。

優しい夢だ。

俺は高校で、麻雀部の部長。

後輩たちに惜しまれながら、卒業式を迎えた。

卒業式の、面々。

保護者、近親の席。

俺は小さく、手を振る。

そこに居る、5人。

4人の仲間たち。

そして、一人の、母親譲りらしい白い髪を持った、小さな子供。

手を伸ばしてくる、その子。

俺はゆっくりと、抱き上げた。

ダルい。

そんな、母親の呟きを耳に受けて。

俺は小さく、苦笑する。

ただ。

俺は見た。

ここに居ない、人。

今は遠い祖国へと帰ってしまっている人。

金色の、あの人。

ああ。

一度、話しておくべきだった。

俺は小さく、後悔していた。






また年月は過ぎる。

俺は家事をしながら、テレビの向こうで麻雀を打つ妻を見ている。

お母さん、強いね。

娘の声。

そうだな、という俺の声。

プロ雀士として、一児の母として。

なんとも頼りがいある我が家の大黒柱だ。

母の一挙一動にはしゃぐ娘。

そんな幸せの空気。

まるでそれが夢だと。

俺に教えるように。

インターホンが鳴り響いた。




576 名前: ◆VB1fdkUTPA[!red_res] 投稿日:2013/01/14(月) 01:54:14.29 ID:09Lz0Stho [29/36]










                      「ヒサシブリ、キョータロー!」







635 名前: ◆VB1fdkUTPA[!red_res] 投稿日:2013/01/14(月) 02:07:19.12 ID:09Lz0Stho [33/36]

「え?」

「おとうさん、だれー?」


金色の、あの人の髪。

それが、白色に変わっていた。

『白になったら、愛してくれる?』

そう、言って。

笑って、スタンガン。

ああ。

そして。

そして。











                   {7777>-‐…   ‐<777777}
                   |/∠ 、       ´ ̄`ヽヾ///|
                      У                 \'|
                  /                    ‘,
                    /        i    i|
                 ′   ′  ト、  八    i
                    |i     |  i | ∨ i }__   !      i        ソ ノ コ
                    |{   斗-,ハ { /ヽ{ハ `メ        |
                 八{   | 厶=ミ    \x=ミⅥ      }|        白 ノ コ ?
                      ヽ■■■■■■■■■■■  八
                     ■■■■■■■■■■■/   ‘,
                  ′ i ヘ '''   '     '''' 厶イ     |
                     i{ i  } 个   ` ´   イ i 八  i   八
                  八ト、ハ// //}≧r</}/}ノ/ハ)ノ}/
                        ′ ,//{ _レ'   ///^ヽ
                          |  Ⅵ//》《\  ///
                          |   ∨{_ノ}{ ヽノ ///      !
                         |   ∨/}}{{////,/     |
                        |   ∨}}{{////′     , __
                     ‘,   ∨,////i        ////ハ
                        ,     ∨///,!      /∧///,'}
653 名前: ◆VB1fdkUTPA[!red_res] 投稿日:2013/01/14(月) 02:12:54.79 ID:09Lz0Stho [34/36]







京太郎「うわああああああああああ!?」


俺は布団を跳ね飛ばす。

体が震えていた。

鮮明すぎる夢だ。

あの夢。

俺はそれがはっきりと思い出せる。

その事実に恐怖する。

しかし。

夢は夢だ。

時間が経てば、自然と。

自然と、俺は落ち着きを取り戻す。

震えも、止まった。

そして俺は、枕をどける。

そこにあるのは、真っ黒なお札。

またか。

またなのか。


京太郎「ここまで来るともう慣れすらあるぞ……」


何が俺に憑いてるんだろうな。

石戸さん曰く、執念深い生霊みたい、らしいけど。

もしくは前世とか。

そういうの。

……自分で言うのは、非常にアレなのだけど。

なんかオカルトだよなぁ、俺の周り……。




842 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/14(月) 19:46:16.77 ID:+ZW1OyrUo [20/24]
【8月14日:朝】


ぺちん。

軽い音が響き渡る。

それが何なのか。

俺がそれに気づくのは難しいことじゃなかった。

頬に感じる衝撃。

叩かれてる。

それはすぐに分かった。

しかも誰が叩いてるかまでもだ。

この小さい手。

該当するのは一人だけだ。


京太郎「………何してるんです?薄墨さん」

初美「ようやく起きましたねー」


お清めの時間ですよー。

そう俺に告げる痴j……じゃなくて薄墨さん。

体系的に小学校低学年にしか見えないこの人。

なんと18歳である。

俺の先輩だ。

実に違和感全開な姿だろう。

しかも妙に肌蹴ている服装が特徴的で、目のやり場は無い。

この人、一応全国放送で映るのに大丈夫なんだろうか?

そんな俺の心配をよそに、塩を握りこむ薄墨さん。

お清め。

そう言われてやっている行為がある。

葬式から帰った時にやる塩での清めと同じようなもので、それ自体は簡素なもの。

しかし、巫女さんたちにやられると何とも効果がありそう。

そう感じるのは何でだろうか?

衣装によるところもあるのかも知れない。


初美「はーい、もういいですよー」

京太郎「ありがとうございます、薄墨さん」

初美「いえいえ、お安い御用ですよー」



  • 初美の病み度が1上昇しました

869 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/14(月) 20:04:10.43 ID:+ZW1OyrUo [23/24]
【8月14日:昼】



組み合わせ抽選。

今行われているそれを俺は会場に見に来ていた。

永水高校。

数少ないシード権を持つ高校の一つ。

第一試合はシードで無く、2回戦からの参戦になっている。

しかし、だ。

俺はBブロックの対戦表を見る。

初出場の高校が二つも入っているのが気になる。

そう石戸さんは言っていた。

清澄、そして宮守。

重点的にそれを見てきて。

そう言われた俺は資料片手に周囲を見回していた。

しかし、人が多い。

いや、そりゃ抽選会ともなれば当然なんだろうけど。

俺はそう思いつつ、堪らず人ごみから逃げ出す。

ああ、疲れた。

俺は小さく息を吐く。

シャツを叩き、そして。

俺は、横に居る人に気づいた。


シロ「―――――」

京太郎「―――――」


その人は。

白色。

白。

シロ。

その眠たげな目と俺の目が、合う。


シロ「………ねぇ」


どくん、どくん、どくん。

その声を聞いた瞬間、俺の心臓の鼓動が跳ね上がる。

その人は。

眠たげに。

俺を見上げた。


シロ「………何処かで、会ってない……?」





969 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/14(月) 21:24:43.06 ID:oY6QcP2ko [5/7]



何処かで。

何処かで。

何処かで、だと?

そんなことあるもんか。

そんな。

そんな、こと……。



――――来て。



京太郎「………ぐっ!?」

シロ「……!」


こみ上げるものがあった。

ふらり。

俺は頭が急に冷える感覚を覚える。

ああ。

これは。

いやな感覚だ。

周りも俺に気づいたのか、ざわめきが聞こえる。

誰かが心配してくれてるのだろうか。

声がまた、聞こえた。



久「ちょっと君、大丈夫?顔色、凄く悪いわよ」

煌「ご自分の所属高校とか言えますか?」



ああ。

駄目だ。

この人たちも。

俺は。

俺、は……。

知って、る……。








シロ「…………きょう、たろう?」






975 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/14(月) 21:27:33.38 ID:oY6QcP2ko [6/7]



意識が。

暗転する。

暗い。

暗い。

水の中。

沈む。

沈む。

沈、む………。

し……。




31 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/14(月) 21:50:37.96 ID:oY6QcP2ko [1/24]



ああ。

明るい。

ここ、何処だ?

俺は白色の世界を見る。

ここは。

ここは……。


京太郎「医務、室……?」

シロ「……大丈夫?」

久「あら、早いお目覚めね」

煌「先生、目を覚ましましたよ!」

京太郎「え、は……え?」


俺を見下ろす三人。

それに俺が混乱する。

えっと。

えっと?

え?

さっきまであった感覚は無い。

普通だ。

何処までも普通。

俺が思わず首をかしげると、入れ替わりに先生とやらが入ってくる。

もう大丈夫。

そう判断したのか、去っていく3人。

ただ、白い人が。

シロさんが。

俺に最後に、小さく視線をやっていた。




あれ?

何で、シロさん……?




45 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/14(月) 22:00:09.57 ID:oY6QcP2ko [2/24]
【8月14日:夜】



霞「須賀君、会場で倒れたそうね」

小蒔「大丈夫でしたか?」

京太郎「なんとか、ですけど……」


ここ、永水高校が止まっている“旅館”の一室。

俺は正座して石戸さんと神代さんの前に座っている。

今日の出来事。

それはどうやら伝わってるようで、帰った直後巫女総動員でのお祓いを受けたばかりだ。

ちなみに、お祓い担当の滝見さんと狩宿さんはダウンしている。

何でも今日、練習していた時にも神代さんのを祓ってたそうで、その分ダメージが深いらしい。

「もうお眠ですよー」という薄墨さんの声。

それはどうにも申し訳ないという気持ちにさせるばかりだ。


霞「それで、何があったのかしら」

京太郎「………」


石戸さんが問いかける。

嘘を言わせない。

そんな気概すら感じる声。

俺が少し、悩む。

いや、なんというか。

これ、言っていいんだろうか?

なんかとんでもない、とても恐ろしいものに巻き込んでしまう。

そんな気がするのだ。


京太郎「いえ……誰かとすれ違って、こうなってて……あんまり、覚えてないっす」

霞「そう……」

小蒔「そうですか……」

京太郎「ご迷惑、かけます」


深々と頭を下げる。

困った。

そんな空気が二人に流れていた。

いや、本当に。

色々と迷惑をかけているのだ。

しかも助かっているから、性質が悪い。

返せることは、何でもしてお礼しなきゃいけないなぁ。




  • 姫様の病み度が1上昇しました

97 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/14(月) 22:21:28.96 ID:oY6QcP2ko [6/24]
【8月15日:朝】一回戦開催日


本日、全国大会一回戦。

今日だけで約2/3近い高校が脱落する、最初の登竜門だ。

永水はシード。

つまりはその登竜門は関係ないのだけど。

そんな俺は今、非常に困っていた。


小蒔「頑張ります!」フンス

京太郎「いや何をですか?」


今現在。

俺の後ろにちょこちょこと着いてくる巫女さんが一人。

よく巫女さんが持っている棒に白い紙が付いたあれ(大幣というらしい)。

それを装備していて、実に巫女らしい風体である。

ここが全国会場じゃなければ。

俺の故郷の長野で言えば善光寺とか諏訪の方とかであればだけど。

しかも、神代さんは去年の大会。

それでえらいインパクトのある試合をしていたらしい。

報道陣も目立つ紅白を見ればカメラを向ける。

そんな状態だ。


小蒔「大丈夫です!私が守りますから!」

京太郎「むしろ神代さんに何かあったら俺が殺されかねません」


主にこの人たちのお家の方々とかに。

宗教は怖い。

実にそれを実感したものだ。

小さく息を吐き、俺はどうするかと考える。

こうして動くとなると、目立つ。

嫌でも目立つ。

だから試合を見るとか、そういう次元じゃないのだ。

俺は神代さんに向き直る。

「?」という顔。

ああもう、この人は…。


京太郎「……奢りますから、ちょっとお茶でも飲みに行きましょう」


うん、それなら問題ない。

ボディーガードはつらいよ、とほほ。




  • 姫様の病み度が1上昇しました。

149 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/14(月) 22:38:49.11 ID:oY6QcP2ko [9/24]
【8月15日:昼】



小蒔「すみません、須賀君。ご馳走になって……」

京太郎「いえいえ、お茶くらい奢らせて下さい」


会場近くの喫茶店。

そこで抹茶オ・レとケーキのセットを幸せそうに口に運ぶ神代さんを見る。

会場から離れ、誰とも出会うことは無い。

そういう場所へと来たが、待ってほしい。

こうして対面していると、あれだ。


小蒔「?」

京太郎「………もう一個、食べます?」

小蒔「いいんですか!」

京太郎「ええ、もうここでお昼にしちゃいましょう。お好きなのいいですよ」

小蒔「ありがとうございます!」


なんというか、うん。

デートみたいだよな、これ。

正直、永水の皆さん可愛いし。

おもちも非常にすばらですし?

そんな子とお茶できるなんて、それだけでご褒美じゃね?

うんうん、と俺は一人納得する。

そうだよ。

楽しんだもんが勝ちなんだよ。

何事も捉え方。

苦痛ですらそれが快楽だと思える人間もいるのだ。

あ、それは流石に特殊事例だけど。

今、この状況。

可愛らしい巫女さんとお茶してる。

そう思えばなんと甘美なことだろうか!

いやぁ、平和だなぁ!


小蒔「須賀君って霞ちゃんより優しいです!」

京太郎「あの人は厳しいけど優しいですよ」


まぁ、保護者みたいなもんですけどねー!!

はぁ。



  • 姫様の病み度が1上昇しました。

211 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/14(月) 22:57:00.68 ID:oY6QcP2ko [13/24]
【8月15日:夜】


満面の笑み。

女の子の笑顔はいいものである。

俺は今日、それを再確認した日でもあった。

時刻は夕刻。

それなりに長く、喫茶店に居たような気がする。

まぁ、それで一葉さんが英雄1枚と細かいのになって帰ってきてしまったけれど。

いやいや、これは必要経費。

実にそう思えるだけのゆったりとした時間だろう。

俺は電車を乗り、旅館近くの駅で降りる。

後ろには、笑みを浮かべた神代さんの姿がある。

ここから、歩いて10分ほど。

そこに旅館はある。

会話は、無い。

喫茶店で妙に話しすぎてしまった。

話題を使いすぎたのかも知れない。

いや、話題がそれで切れてしまうくらいしか話せない俺も俺なんだけど。


小蒔「須賀、君……」

京太郎「はい?どうしました?」


ふと、声をかけられる。

それに俺はなんだ、と振り返る。

見れば、うっつらうっつらとしてる神代さんの姿。

まさか、ここで?

俺は冷や汗をたらりと流す。

この人、唐突に寝ることがあるのだ。

別に病気じゃない。

無いんだけど、寝る。

この人は寝る。

ああ、今にも……。


小蒔「ぐぅ……」フラァ~

京太郎「どわあああああ!?」


慌てて腕を伸ばす。

姫抱きみたいな感じになる。

ああ、重力に負けないおもちなことで。

じゃなああああああい!!


京太郎「やっぱりどっちがボディーガードかわかんねぇぇぇぇ!!!」




302 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/14(月) 23:24:21.53 ID:oY6QcP2ko [19/24]
【8月16日:朝】



小蒔「……」ニコニコ

京太郎「………」


何でだろうか。

何でこうなってるんだろうか。

俺の一歩後ろ。

まるで忠実な飼い犬のように傍に控えている神代さんを俺は見る。

ああ、何でだ。

何でこうなったんだ。

一日中相手してたけどさ、昨日。

それでこうなるものなんだろうか?

石戸さんの視線が怖い。

僕なにもしてないよ!

……言っても無駄なんだろうなぁ。


京太郎「……あの、神代さん?」

小蒔「はい!何ですか?」

京太郎「……何でもないっす」


ああ!

なんか視線が痛い!

純粋すぎる視線が痛いよぉ!!

この人はそういう作為とか、そんなのは無い。

無邪気。

そういうのが見え隠れしているだけ。

何処までも、疑わない人だ。

なんというか。

はぁ。

とても、良い人だ。

だけど疑うことを知ってほしい。

そのうち、悪い大人に騙されそうで騙されそうで……。

……石戸さんとかが感じてるの、こういう感情なのかなぁ……?





350 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/14(月) 23:47:44.92 ID:oY6QcP2ko [22/24]
【8月16日:昼】



霞「須賀君、正座」

京太郎「へ?何で―――」

霞「正座」

京太郎「はい!!!」


こえええええええ!

散歩から帰ってきての第一声。

正座コールに俺が思わず震え上がる。

ああ、神代さん!

薄墨さん!神代さんを連行しないで!

セーフティーが!

俺の命のセーフティーが!!


霞「あらあら、何で震えてるのかしら?」

京太郎「」ガタガタ

霞「……何か、震えるようなことを小蒔ちゃんにしたのかしら」

京太郎「何もしてません!!!!」


冗談じゃねぇ!?

そんな度胸あるもんか!

俺がそう答える。

そうすると、「ふんふむ」と思案顔の石戸さん。

困ったような、そんな顔をしている。


霞「じゃあ何でかしら?須賀君にやけに懐いてるみたいなんだけど……」

京太郎「いやさっぱりなんですよね……」


うん、本当に。

俺は口を滑らせない。

神代さんが口にした、「霞ちゃんより優しい」発言。

俺は決して口にしない。

ただ、この人にはそんなのは通用しないみたいで…。


霞「まぁ、きっと須賀君が甘やかしたからでしょうね」

京太郎「うっ」

霞「……やっぱり。もう駄目でしょう、勝手に甘やかさないで下さいね」


も、申し訳ないっす……。

というか石戸さん、お母さんみたいっすね、言ってること…。





417 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/15(火) 00:14:06.89 ID:kRHMwVoko [2/27]
【8月16日:夜】


京太郎「うう、足が痺れた……」


石戸さんのありがたーいお言葉。

それを受けた俺は体をへの字型に伸ばして動けないでいた。

慣れない正座。

地味にこれがきついのである。

足のふくらはぎとか、ぴくぴくしてて攣りそうだ。

こういうのは慣れればどうにでもなるんだろうけど、そこまで行ってない俺。

この苦しみを甘んじて受け入れるしかないんだろう。

そんな俺に、こっそりと近づく影。

なんだなんだと、俺は振り返る。

そこに居たのは、噂のあの人。

神代さんが、居た。


小蒔「京太郎君、大丈夫ですか?」

京太郎「な、なんとか……」


心配そうに俺の傍に座る神代さん。

ああ、その優しい御心。

もう後光差してます。

とまぁ、そんなことは言えもしないけど。

しかし、俺はそこで気づく。

今、俺のことを須賀君じゃなく、京太郎君。

そう呼んだのを。

俺は聞き逃してはいない。


京太郎「あの……神代さん?」

小蒔「小蒔、でいいですよ?」

京太郎「いや、何でいきなり……」

小蒔「私たち、お友達じゃないですか?」


はぁ。

俺はそんな気の抜けた返事をする。

いや、確かにここ四ヶ月くらいの付き合いだ。

友人…と言われれば、そうだ、と言える。

そんな自信はまぁ……ある。

しかしなんというか。


京太郎「いきなりですね……」

小蒔「?」




500 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/15(火) 00:49:28.00 ID:kRHMwVoko [7/27]



さて、話を戻そう。

京太郎君。

そう神代さんが呼ぶなら、うん。

別に何の問題もない。

そういうことで不快になるとか無いし。

むしろこれは喜ぶべきことだ。


京太郎「えーと……小蒔、さん?」

小蒔「はい!京太郎君!」


にこり。

そう笑って俺に答える小蒔さん。

うん。

なんというか、悪くない。

非常に悪くないぞ。

むしろこれはこれで役得なんじゃないか?

そう思えるような気もする。


京太郎「小蒔さん」

小蒔「京太郎君」


うん。

いいかも知れない。

理由は言わずとも分かるな?





565 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/15(火) 01:10:42.93 ID:kRHMwVoko [13/27]
【8月17日:朝】

巴「須賀君、起きてますか?」

京太郎「あ、どうぞー」


朝。

部屋へのノック音が響く。

俺は何時もどおりのこと。

そう思いながらその声に答える。


京太郎「今日は狩宿さんでしたか」

巴「うん、じゃあちゃちゃっと祓うね」


そう言って、お祓い準備をする狩宿さん。

なんというか、手馴れている。

やっぱり巫女さんなんだなぁ、と思う。

こういう淀みない動作。

それはもう染み付いた動きですらある。

そう俺が考えていると、小さく狩宿さんが苦笑した。


巴「一応、巫女の経歴は一番少ないんですけどね」

京太郎「……顔に出てました?」

巴「はい、出てましたよ」


そういや、よくこの人は制服着ていたな、と思う。

やはりあれか。

それでもこんなにも見えるとは、衣装の効果なんだろうか?

いや、それにしたって効果絶大すぎるだろう。

巫女さんなんて普段目にしないけども。

ある意味では日本古来からある属性だけどもの。

小さく、俺はため息をつく。

なんか、あれだ。

永水に来てから、妙に価値観が変化した。

そんな気がする。


京太郎「……俺、卒業した後から普通に戻れるかなぁ……」

巴「あ、あははは……」


そんな乾いた笑いかたしないでください。

本当に怖いんですから。





615 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/15(火) 01:30:48.71 ID:kRHMwVoko [16/27]
【8月17日:昼】






全国大会。

その2回戦。

それが明日行われるということもあってか、今では麻雀はしない。

小蒔さんの性質上、それが一番なんだろう。

皆、牌を握ってはいじる。

それくらいしかやってはいない。

俺はそんな皆を見ては細かい雑事を行う。

そういうのが基本的な行動だ。

そして、今。

俺はその雑事をやっている。

そのはずなのだが……。


小蒔「京太郎君、何か手伝えませんか?」

京太郎「いえ、何も無いです」

小蒔「あうう」


……ああ、そうだよ。

またこういうことになってるんだ。

この人、もうわんこみたいに俺の後を着いてくるんです。

そのうち、紐を俺につけそうだ。

主に石戸さんと薄墨さんが。

あの二人は小蒔さん至上主義。

結果的にためになるなら、何でもする。

きっと。

恐らく。

確実に。


小蒔「あ、あの……」

京太郎「何もありませんよ」

小蒔「はい……」シュン


うな垂れる小蒔さん。

ああ、神様。

俺はどうすればいいんでしょうか?

たまに何が正解か分からない。

俺にはそういう時があります。

びしっと、言うべきなんだろうか。

うーん。

でも、言えば言ったでなんかその通りにしそうなんだよなぁ小蒔さん…。



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669 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/15(火) 01:53:21.28 ID:kRHMwVoko [20/27]
【8月17日:夜】



しょんぼり。

そうされると罪悪感が沸いてくる。

そんな状況が、今の俺だ。

俺の部屋、そこは男の聖域である。

そこに、何でか。

何故か、小蒔さんが居るのだ。

手に箒を持って。

……いや、分かる。

大体の理由くらいは察せれる。

親切心で掃除をしよう。

そう思ったのだろう。

ただ、いやなんというか。

俺も男な訳で。

そういう本は持っている訳でして。

ええまぁ。

……まぁ、そういうことです。


小蒔「……」チラッ


チラリ。

小蒔さんが本の表紙に目をやる。

次の瞬間には、真っ赤になって目を逸らす。

なんというか、あれだ。

子供はコウノトリが運んでくる。

それを信じている無邪気な子供に現実をマジマジと見せた。

そんな罪悪感がある。


京太郎「あー……」


言葉に困る。

何を言うべきなんだろうか。

ここは、なんか悩む。

ええと。

ええっと。

そんな俺の悩み。

それを払うように、小蒔さんが小さく尋ねた。


小蒔「京太郎君は……その、こういうのに興味あるんですか?」


男に聞かないでください、死にたくなります。





726 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/15(火) 02:13:02.97 ID:kRHMwVoko [23/27]



というか何の拷問なんだろうか、これ。

女の子と対面して正座。

その間には秘蔵のエロ本。

もはやこれだけで死にたくなるというのに、さっきの質問だ。

やめてください、死んでしまいます。

もはやその境地に達しているレベルだ。


小蒔「………」パラッパラッ

京太郎(捲らないでえええええええ読まないでえええええええええ!!!)


やめて!

本当にやめて!!

母ちゃんに机の上に整理されて置いておかれるより辛い!

苦しい!

というか何でそんなマジマジと見てるんですかーっ!?

そんな、俺の声なき叫び。

小蒔さんの手が動く。

ページが。

コスプレの記事へ。

どばっと。

俺の全身から汗が吹き出る。


小蒔「あ、巫女服……」


あ、死んだ。