2 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/01(火) 05:09:22.13 ID:FkhuXWcNo [1/3]

【プロローグ】




如何にしてこうなったか。

今の状況を問うとすればこれが適切である問いかけだろう。

男、須賀京太郎は一人、身動きせず自答した。

京太郎は一人、暗闇にいる。

時刻は昼過ぎ、別段寝ているという訳ではない。

そもそも、自分の意思で動いたのは何時以来だろうか。

少なくとも、もう忘れてしまったこと。

相当は昔の話だ。

ひゅるり。

暗闇の中、敏感に外部の情報を察知する京太郎には少しの隙間風が身に染みる。

寒いな、と思わず身を捩る。

じゃらり。

鉄の擦れる音が響いた。

音の元は三箇所。

手と、足と、首。

目を凝らせば、僅かな明かりからそれが鎖の形状をしていると分かる。

それは京太郎を縛るもの。

京太郎の自由を奪っている、枷であった。

枷は肌との接触面に緩衝材を添えられた鋼鉄製。

力では絶対に破れず、だが拘束による痛みを目的としたものではない。

それは犬の首輪に似ている。

飼い主は首輪をつけることで犬を守ることへ繋げる。

自分より離れていかないように。

他者に連れて行かれないように。

所有物であるのを意味する枷と、京太郎に付けられた枷は似ていた。

そして京太郎も理解している。

この枷を課した相手が、そういった意図でこうしているのだと。





3 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/01(火) 05:10:16.79 ID:FkhuXWcNo [2/3]


『どうしてこうなったんだ』

そんな問いは意味ないものだ。

京太郎がこうして拘束・監禁される前。

ある一人の女とよく言葉を交えていた。

京太郎の為す行為に小さく、あるいは大いに笑っていたのが印象深い女だ。

そんな、女。

あの女の家にと招かれたその瞬間が、今の状況へと繋がっている。

食事に薬を盛られ、監禁。

監禁当初の混乱から冷め、少しの余裕を持ち始めた時、見事な手際だと感心したものだ。

京太郎が小さくクシャミをする。

地下室であった。

季節はまだ日が強い時期であるが、逆にここは冷えすぎる。

何も言えず震えていると、ドアが開く音。

地下室から地上へと繋がるドアが開き、光を暫くぶりに取り込む。

眩しい。

京太郎が目を細めて見上げる。

光をバックに、人影があった。

京太郎を拘束した女だった。

???「――――」

寒いのか?

女が問う。

寒い。

京太郎はそう答えた。

女が微笑む。

なら、暖めてあげる。

そう告げて、己の服に手をかけた。

衣擦れ音、衣服が床に落ちる音。

光のシルエットから服の輪郭が消え、女特有の丸みを帯びた肉体。

それがゆらゆらと揺れながら、京太郎へと覆いかぶさる。

『愛してる』  『暖かいね』  『気持ちいい?』

そう、無邪気に。

自分だけが独占できる宝物を楽しむように。

京太郎は一人、己の上で女の顔をする、愛欲に満ちた少女を濁った目で見つめていた。

香りがする。

それは、淫ピな匂いではない。

何処からともなくやってきた、ガソリンの香り。

家の外で、空のポリタンクを持った女が小さく笑っていた。



――――京太郎の意識が喪失、そして巻き戻されていく。
【→最初から】

25 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/01(火) 17:08:27.81 ID:K+u4DXQTo [2/4]

【~introduce~】




夢を見ていた気がする。

熱い夏の夜。

こんなにも汗がひどいのは初めてだ。

見れば、部屋のエアコンはすでに停止していた。

東京、ホテルの一室。

こじんまりとした一人部屋、男が自分だけだからこその個室の主である俺は息を吐く。

暑い、熱い夢だった。

肌と肌が触れ合う熱さ。

男と女が交じり合う熱気。

まるで毒の熱。

肉を内側から焼かれる熱だ。

夢にしたって、あれはあんまりというものだ。

京太郎「溜まってるのか、俺よ」

我が分身に声をかけてみる。

返事はない。

それが当然。

思わず苦笑すると足は風呂場に向かう。

肌に張り付く汗を流したかった。

冷水を出す。

冷たい。

同時に、火傷を冷やしたようなぴりりとした痛みがある。

火傷は当然のように、存在しなかった。

京太郎「………?」

ふーむ。

冷水を頭に浴びつつ腕を組む。

火傷するようなことをしただろうか?

優希にタコスを作ってやったくらいでしか最近は火を使った覚えが無い。

どういうことだと思いつつ、俺はバルブを閉じるために手を伸ばした。

その時、ノックの音が聞こえる。

来訪者が来たことを俺に教える。





咲「京ちゃーん、朝だよー!」

京太郎「咲か?」

声は咲のものだった。

咲、宮永咲。

俺の幼馴染。

俺は慌ててズボンを穿き、シャツを羽織る。

ノックがもう一度入る。

それに俺は「へいへい!」と声をかけてドアを開く。

目が合う。

驚いた。

咲はそういう顔をしたがすぐに視線は俺の顔から少し下に。

俺は片手で胸元のシャツのボタンを留めながら口を開いた。

京太郎「すまんすまん、風呂入ってた」

俺の声が廊下に響く。

少し顔を逸らして、咲は俺に声をかけた。

咲「……遅い!すぐに開会式に行くよ!」

開会式。

麻雀女子高校全国大会。

その開幕が、今よりほんの一時間もしない内に開幕するのだろう。

俺はの前を歩きながら、今その舞台へと立つ仲間たちを見送っていくことになる―――。

それに挑む、咲へと振り向く。

適当に髪をくしゃくしゃにして、俺は咲の手を引いていった。




咲が片手で俺がくしゃりと潰した髪を手櫛で直す。

そうして、小さく。

小さく、笑った。

少し、ほほを朱色に染めながら。

咲「うん、行こう。皆が、待ってる」


【次回より本編開始します、今夜やるかもです】