http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1341845152/



京太郎「へ?」

久「姫松の偵察よ、偵察。全国でも五指に入る強豪校なんだから、当たると思って対策したほうがいいでしょ」

優希「私もいくじぇ!」

まこ「お前さんは練習じゃ!」ボコー

優希「なじぇなんだじぇー!?」

和「須賀君、頑張ってきてくださいね」ニコ

咲「カン、カン、カン、ツモ、嶺上開花。カン、カン、カン、ツモ、嶺上開花。……京、ちゃん?うっ頭が」

和「宮永さんはえらいですねー」プシュッ

咲「ぴゅっ」ドサッ

和「さ、東二局ですよ」

咲「カン、カン、カン……」ムクッ


京太郎「は、はい。頑張ってきます」

京太郎「電車賃とかは出してもらえるんですよね?」

久「まぁ。流石に宿泊費は出せないけどね」

京太郎「そんな!じゃあ俺はどこに泊まればいいんですか!」

久「……野宿?」

まこ「どうして肝心な所で何も考えが無いんじゃ……」

久「ああ、それとお土産も忘れずにね。お駄賃は渡すから」

京太郎「なんでお土産代があって宿泊費がないんですか!」

久「細かいことはいいじゃないの!ほら、準備準備!」

京太郎「どうすりゃいいんだ……」

和「さ、宮永さん。東三局ですよ」

咲「カン、カン、カン、ツモ、嶺上開花……麻雀ってタノシイヨネ、タノシイヨネ」

京太郎(ここにいるよりもマシだな)ブルッ


ーー特急しなの

京太郎(それにしても、学校は連休だからいいとして……親に話とか通さなくて大丈夫なんだろうか)

京太郎(ん?メモ?)

『親御さん側には特になんも話してないから(話しても通らないだろうしね)そこんとこ諦めてね☆ 久より』

京太郎「そうかぁ、なんも考えてないのかぁ」

京太郎「畜生!」バシーン

『間もなく、大阪ー大阪ー』

京太郎「あー、ついちまった……」グッタリ



ーー大阪駅

京太郎「うーん、この独特の空気」

京太郎(なんか匂いからして違うなぁ、どことなくこってりした匂いがする)

京太郎「とりあえず姫松に行かないとな……日帰りなら宿泊費もかからんだろ」

京太郎「あ、すいません。姫松高校に行く電車ってどれですかね」

おばちゃん「何ボケかましとるねんアンタ!姫松言うたらこっちのこーしてこーのこの路線にこー乗ってこうすりゃええやんか!」

京太郎「お、おう……ありがとうございます」

京太郎(すっごいまくしたてられたけど、とりあえず場所は分かった。……にしてもやかましいな、大阪ってのはみんなこうなのか?)



ーー姫松高校前

京太郎「はい、つきましたー」

京太郎(ていうか近っ)

京太郎「えーと、とりあえず麻雀部の部室はっと……」

絹恵「ちょっとそこのアンタ、なにしてはるん?」

京太郎「うおっ!?」ビクッ

絹恵「なんやけったいな奴やなー……どこのモンや?」

京太郎「お、俺は長野の清澄から来た須賀京太郎といいますですはい」

絹恵「清澄?知らんなぁ……何の用や?」

京太郎「偵察に来たんですけどね」

絹恵「……はぁ?」

京太郎「いや、だから女子麻雀部の偵察」

絹恵「ウチの女子麻雀部、男子禁制なんやけど」

京太郎「えっ」

絹恵「当たり前やん。なにボケかましとんねん」

京太郎「じゃあ俺はどうすりゃいいんだ!」ガー

絹恵「んなもん私が知るか!」ガー


洋榎「絹ー、何しよん?」

絹恵「なんや長野からアホがきよってん。男なのに女子麻雀部の偵察に来たとかで」

洋榎「……そらアホやな。ドのつくアホや」

京太郎「アホアホ言うなよー」

洋榎「アホにアホ言うて何が悪いねん」

絹恵「せやせや。実際自分アホやんか」

京太郎「ああもう、いいよ!帰るよ!帰って部長をロッカーに閉じ込めて詰問してやる!」

洋榎「絹、……」ゴニョゴニョ

絹恵「ん?……あーなるほど」ニヤ

洋榎「なぁ自分。せっかく大阪に来てそれはないんちゃうんか?」ニヤニヤ

絹恵「一通り大阪エンジョイしていけばええやん」

絹恵「どーせ長野に帰ってもけったいな部長しかおらへんのやろ?キミもてそうにないし」ニヤニヤ

京太郎「うるへっ!こちとら宿泊費すら持ってないんだ、長居できねーよ!」

洋榎「君にその気あるんやったら、泊めてやってもええよ?」

京太郎「……へ?」

絹恵「どないするー?」ニヤニヤ

京太郎(仮に、ここでお誘いを断ったとして……)モンモン



久「え?偵察出来なかった?何やってんの?」

まこ「ほんっと、使えんのう……」

優希「ま、犬はしょせん犬。本編でも映す価値なしだじぇ!」

和「全くですね。もうキャラ表から消してしまえばいいんじゃないでしょうか?」

咲「カン、カン、カン、ツモ、嶺上開花……カン、カン、カン、ツモ、嶺上開花……」ブツブツ



京太郎(……ひでぇよ、あんまりだよ)

京太郎「えー、じゃあ……」

洋榎「あーもうまどろっこしいやっちゃな!ほら、行くで!」グイッ

絹江「大阪のスケールの広さ、教えたるわ!」グイッ

京太郎「わっ、ちょっ、えっ!?」



ーー愛宕家

洋榎「ここがウチらの家やで、どや?広いやろ?」

京太郎「そ、そうっすね」

絹恵「まー実際そんな広くないんやけどね」

京太郎「なんで聞いたんですか!?」

洋榎「そらもうアレよ、君を試したんよ」

絹恵「大阪ではどれだけ面白い返しが出来るかがそのまま戦闘力になるんや。覚えときー」

洋榎「君の戦闘力は……まぁ5やな。ゴミめ」

京太郎「ひでぇ……」

絹恵「ちなみにウチらの戦闘力は53000やで」

京太郎「高すぎでしょ!?」

洋榎「一緒にしてもろたら困る」

洋榎「格が違うわ」ドンッ

京太郎(うぜぇ……)

洋榎「そういえば、君の名前聞いとらへんね」

京太郎「あー、須賀京太郎って言います」

洋榎「ふーん……なら京ちゃんやね」

絹恵「あ、それええね!そしたらこれから頼むで、京ちゃん!」ドンッ

京太郎「なんでどつく必要があるんですか!」

絹恵「うそ、そんなんあったん!?超便利やん!新聞いらんやん!」

絹恵「京ちゃんすっごいな!見直したで!」バシッ

京太郎(ああ、分かった。この人たち咲と同じような人種なんだ)

洋榎「えっとな、えっとな、この阪神戦なんやけど!」ワクワク

京太郎「ハイハイ」ピッピッ

絹恵「すっごい……ホンマにやってしもた」



京太郎「終わりましたよ」

洋榎「……ま、まぁ偶然やろ?」ホニャッ

絹恵「お姉ちゃん、流石にこれに偶然はないわ。あと顔綻びすぎや、ちょっとは締めぇ」

洋榎「わ、分かっとるわ!」

京太郎「はー……これが関西のテレビか」



『なんでや!ユリン関係ないやろ!』

『意味なんてあらへんよぉ!弄る若手が減った、それだけのことやん!』

『命は……命は玩具とちゃうねんぞーーーーー!浜田ーーーーーーーーーー!』



京太郎「アニメも関西弁なのか……」

洋榎「な、なぁ」グイグイ

京太郎「なんですか?」

洋榎「これ、ほんとに録画出来とるん?後になって釣りでしたー、とか嫌やで?」オロオロ

京太郎「出来てますって……」

洋榎「そ、そか。そうやな。赤いランプついとるもんな」

絹恵「もー、お姉ちゃんは機械に限ってはホンマ心配性やなぁ」

洋榎「そんなこと言うたかて、気になるやんか」

京太郎「あのー、俺の出番はもう終わりでいいんですかね?」

絹恵「あ、私のパソコンの設定もしてほしいんやけど」

京太郎「俺、そこまで詳しくないですよ?」

絹恵「大丈夫大丈夫!京ちゃんならできるやろ!」

洋榎「テレビ、綺麗やなぁ……これで阪神戦も見れるんか……幸せやなぁ」ポー

京太郎「あの人は放っておいていいんですか?」

絹恵「あー、ああなったらお姉ちゃん止まらへんから。ほっときほっとき」

洋榎「どのくらい幸せかっていうとな!」バッ

京太郎「話しかけてきてますけど」

絹恵「あれ独り言やから」



ーー絹恵の部屋

絹恵「ここの設定なんやけど」

京太郎「あー、ネットですか」カタカタ

絹恵「自分キーボード見らんで打てるんか?」

京太郎「まぁ、一応」

絹恵「はぇー」

京太郎「終わりましたよー」

絹恵「あ、こらどうも。……長野人は皆こうなんか?」

京太郎「いや、こっちにも機械がダメダメな奴は居るよ」

京太郎(正確には『居た』かなぁ。咲……)

絹恵「へー……いや助かるわー」



ーーリビング

京太郎「そういえば、あなた方の名前を聞いてないんですが」

絹恵「あー、そういえばそうやったな。私は愛宕絹恵」

洋榎「綺麗や……」ポケー

絹恵「んでこっちのボケーっとしとるんが姉の愛宕洋榎や。これでも麻雀は私よりずっと強いんよ」

絹恵「そしたら、よろしゅうな京ちゃん」ニコッ

京太郎「よ、よろしくお願いします」


京太郎「……ついでに質問なんですが、ご両親は?」

洋榎「……」ズーン

絹恵「……」ズーン


京太郎(あっ、まずいこと聞いちまったかな……)

洋榎「かーちゃんとーちゃんは遠くの空から、うちら見守ってくれとるねん」

絹恵「もう、あれから一か月になるんやね……」

京太郎「……」

絹恵「ま、アメリカに旅行に行っとるだけなんやけどね」シレッ

京太郎「まぎらわしい顔しないで下さいよ!?」

洋榎「あはははははは!そない親が死にまくっとったらなんぼ子供産んでも育たんやん!」

京太郎「もー……」


絹恵「お姉ちゃん、どうする?」

洋榎「……そら、あれやろ。あそこや」

絹恵「せやね。余所者にはきっちり大阪の流儀言うやつを刻み込んでやらなアカンね」

京太郎「あの、なんか不穏なこと話してません?」

洋榎「歓迎したるって言うとるだけや。怯えんでええんやでー」ニヤリ

京太郎(間違いなくなんか違うこと話してる気がするんですが)

洋榎「よーし絹!出発するで!」

絹恵「了解!」

京太郎「ノリノリですね……」

京太郎(どこに連れて行かれるんだ……)



ーー串カツ屋『勘定』


ガラッ

おばちゃん「あらキヌちゃんにヒロちゃん!……隣のへなっとるのは彼氏?」

絹恵「おばちゃんなぁ……ええかげん連れ込んだ人全員彼氏認定すんのやめんと、もう来てやらんで」

おばちゃん「はいはい、えろうすんませーん」

洋榎「おばちゃん、串カツセット3つ!」

おばちゃん「はいよー」ガチャッ

京太郎「……串カツ?」

絹恵「大阪の名物……っていうよりはファーストフードや。まぁ細かい事言わんと食うてみ食うてみ」

おばちゃん「はい、セット三丁上がりや!熱いうちに食べてーな、へない兄ちゃん」

京太郎「あ、ありがとうございます」

洋榎「こーやってソースにちこって漬けて食うんよ」

京太郎「へぇー!」ザバー

絹恵「って言ってる傍からドバ漬けやんか!アホか自分!?」

京太郎「……」モグモグ

洋榎「どや?どや?やっぱ原点の牛肉が一番やろ?」

京太郎「衣サクっとしてて、中の牛肉がこう、ジュワっと……上手く言い表せないんすけど、ホントに旨いですこれ!」

洋榎「せやろー流石やろー?」

絹恵「ほほーう……そない言うんやったら、こっちの海老も食べてみぃ?」フリフリ

京太郎「……」パクッ

京太郎「旨い!ウスターソースと海老ってこんなに合うのか!」

おばちゃん「それはウチやから合うんや。他の店やったらこうはいかへんよ」

洋榎「……絹、ええ度胸やなぁ」

絹恵「余所者に誤った串カツの知識つけられても困るさかいなぁ。日々進化しとるっちゅーことを分かってもらわな」


京太郎「これもっとソース欲しくなる……」ソーッ

洋榎「!?」

絹恵「!?」

おばちゃん「やめんかいこのスッタコ!」バシッ

京太郎「いてっ!?何するんですか!?」

洋榎「あー、言うてへんかったな。そういや」

絹恵「自分なー、一度口つけた串をもういっぺんソース壺につけたらばっちいに決まっとるやろ」

京太郎「あー……すみません」


おばちゃん「これはアレやね、一発芸みしてもらわなアカンね」

洋榎「お、おばちゃんええこと言うやん!ほら京太郎、ド肝抜いてみせえ」

絹恵「期待しとるでー」パフパフ

京太郎「え?えー?」

おばちゃん「はーよーう!」

洋榎「なんかせえ!」

絹恵「おもろいことやったら何でもええでー」


京太郎「えー、それでは俺の友人が世界旅行に行った時の話なんですが……」

洋榎「ふむふむ」

京太郎「出発する前に散々自慢してきまして。旅の用具とか詰め込んだバックとか見せに来たんです」

絹恵「それでそれで?」

京太郎「そいつドジでしてね、目的地に着いた時にはなんと荷物の中身が空になってたらしいんですよ」

おばちゃん「ほう……」

京太郎「なんでもバックのチャックを閉め忘れてましてね、後ろからダダ漏れだったらしいんです」

京太郎「バックがパカーでこれがほんとのバックパッカー……でどうでしょう」ドヤッ


洋榎「……絹」ゴゴゴ

絹恵「はーい京ちゃんの串カツ全部ボッシュート」ヒョイッ

京太郎「な、なんで!?」

おばちゃん「おもろいことやれって言うたんにおもろくない事やったら、そらアカンよ」

おばちゃん「……噺家になりたいんやったらもう三十年ここで修行せなな。今なら自給240円で雇ったるよ」

絹恵「あー串カツおいしーわー」パクパク

洋榎「ほんまやなー。どっかのクッソおもろないのにはもったいないわ」パクパク


京太郎「うう……振ってきたのはアンタらじゃないか」

絹恵「欲しい?」ヒョイッ

京太郎「欲しいです」

絹恵「そしたら顔だけこっちに寄せて、口だけで食べてみ?」

京太郎「えー……」

絹恵「なんや、いらへんのやったら別にええよ」ヒョイッ

京太郎「ああ!そんな!分かりましたやらせていただきます!」

絹恵「ほれ、あーん」

京太郎「あ、あーん」

絹恵「なんや自分えらい似合っとるやん。犬みたい」クスクス

洋榎「あははははははは!ほんまやなぁ、こら犬そっくりやわ」

京太郎「くそっ!いい加減にしないと俺泣くぞ!?」グスッ


おばちゃん「二人とも、その辺にしたらんとこの子ホンマに泣いてまうよ?」

洋榎「あはははははははははは!こらすんませんでしたー」

絹恵「好きなだけ食べてええで、泣くな泣くな。男の子やろ?」

洋榎「ほれ、ウチの串も持ってけドロボー!」ポイッ

おばちゃん「ほんなら私もサービスしたるわ!」ドサッ

絹恵「ほら京ちゃん、特別サービスや。あーんやであーん」フリフリ

洋榎「ハッ、海老なんかより牛のがええよなぁ?」フリフリ

絹恵「お姉ちゃん、私中学でキーパーやってんねんで?」

洋榎「だからなんや?後引っ掛けの洋榎とはウチのことやで?」

洋榎「一緒にしてもろたら困る」

洋榎「格が違うわ」ドンッ

絹恵「やかましいわ!」

絹恵「さぁ京ちゃん、キーパーか!」

洋榎「後引っ掛けか!」

絹恵&洋榎「「アンタならどっちや!」」

京太郎「んなこと知らねえよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーー!?」

おばちゃん「まだまだ揚げるでー!」ジュウウ



ーー愛宕家

京太郎(俺、やっていけんのかなぁ……)

洋榎「はー食った食った、もー食えへんわ」

絹恵「おばちゃんノリノリ過ぎやん……あんなんよー食わんわ」ゲプッ

京太郎「風呂とかどうするんすか?」

洋榎「お、なんや自分一丁前にスケベ心持ってるんか」

京太郎「いや違」

絹恵「お姉ちゃん、しゃーないんよ。京ちゃんも男なんや」

洋榎「そうかそうか。絹のブラやったら好きにしてええで」

絹恵「お姉ちゃんのパンツやったら被ってもええよ」

京太郎「遠慮しておきます」

洋榎「なんやつまらんなー。まぁええけど……そしたら風呂先に貰うでー」スタスタ

絹恵「あいよー」

京太郎「……凄いなぁ、大阪って」

絹恵「一応、これでも抑えとるんよ?」

京太郎「そうなの!?」

絹恵「そら、余所者がいきなり大阪に馴染もうとしても無理やって。ちょーっとずつ慣れていけばええねん」

京太郎「一応偵察が目的で、早く帰りたいんですが」

絹恵「目の前にドラえもんがおるのにみすみす未来に帰すのび太がおると思う?」ニッコリ

京太郎「俺そこまで便利じゃないですよ!?」

絹恵「メカに強いだけで十分頼りになるわ。時は金なり言うけど、まぁたまには損するのもアリやろ。ゆっくりしていけばええやん」

絹恵「……それとも、大阪そんなにいや?」

京太郎「いや、そいういう訳じゃないっすけど」

絹恵「なら、よし!ここで会ったのも何かのやろ、君に大阪魂を叩き込んだる!」

京太郎「よ、よろしくお願いします」


洋榎「ボディーソープ無いんやけどー」ガチャ

絹恵「あ……」

京太郎(なんでバスタオルすら巻いてないんですかね)

洋榎「……」ツカツカ

京太郎「え?」

洋榎「何っっっっ……見とんねんこのドアホ!!!!!!」バゴッ

京太郎「理不尽っ!?」バタッ

洋榎「やかましい!それ以上喋ったらケツの穴から手ぇ突っ込んで奥歯ペンチで引っこ抜いて全裸であいりんに放り投げるで!?」

絹恵「いや、今のどう考えてもお姉ちゃんが悪いやろ」

洋榎「知らんわ!それにしたかて注視することないやろ!?」ハァハァ

絹恵「あんまりにも美しうて見とれてたんとちゃいますかー」

洋榎「べったべたなお世辞どーもありがとさん。あーもー、見せ損してしもうたわ」

絹恵「京ちゃんも初日から災難やねぇ」

京太郎(俺、ここで生きていけるんでしょうか)


絹恵「あ、京ちゃん。寝る場所の話やけど」

絹恵「お姉ちゃんの部屋か、私の部屋か、リビング。どれがええ?」

京太郎「リビングで」

絹恵「……」ハァー

京太郎「なんで残念そうな顔してるんです!?」

絹恵「自分霞食って生きとる仙人か何かか?なんでそんなに草食やのん」

京太郎「あなた方が肉食過ぎるだけだと思うんですが」

絹恵「長野の連中はリンゴの食い過ぎで頭虫食いになっとるんと違う?大丈夫?」

京太郎「大丈夫ですよ!てかそれ偏見!」


洋榎「あがったでー」ホカホカ

絹恵「りょーかーい。そしたら次私やね……お姉ちゃん、京ちゃんリビングで寝るらしいで。布団出してやり」

洋榎「なんやつまらんやっちゃなー。寝る場所くらい奇妙な冒険すればええのに」

京太郎「見知らぬ土地で一日目から冒険とかしたくないです」

洋榎「まぁええけどね。布団はそこの押入れの上の方や」

京太郎「ここですか?」ガラッ

洋榎「あっ……!」バッ


ドサァァァァァァァァァァァァ!

京太郎「ちょっとおおおおおおおおおお!?」

洋榎「……ぷはっ。いや、言い忘れとったわ。ウチら客用の布団とか出すの久しぶりやってん」

洋榎「押入れはゆっくり開けんと破裂するんや」

京太郎「先に言ってくれよ……」

洋榎「まぁ布団は出せるし、ええやろ」

京太郎「この散乱した物品の収納は」

洋榎「かよわい女の子にそんな力仕事させるん?」

京太郎「俺がやれってことですね、分かりました」

洋榎「まぁ気落とさんと、大阪をエンジョイする気分で楽しみやー。そしたら、ウチはもう寝るさかい」

京太郎「へーい」

洋榎「京ちゃんまた明日なー。逃げるんやないでー?」ニヒヒ

京太郎「逃げませんって。逃げ切れそうもないし」


絹恵「今あがったでー」ホカホカ

絹恵「あら京ちゃん、押入れ爆弾の事後処理中?」

京太郎「そうや↑ねん」

絹恵「ぷっ。なんやねんその発音」

京太郎「手伝って↑やー」

絹恵「ちょっ、やめっ、それ私ちょっとツボに来た……」ククク

京太郎「でんがな↓まんが↑なー」

絹恵「あははははははははははははははは!自分おもろい事できるやん、最初からそれやっとけばよかったんに」

京太郎「いや、これ素なんですよ」

絹恵「あ、ホンマ……」

京太郎「なんかすんません」

絹恵「こっちこそすまんな」


京太郎「……やっと終わった」

絹恵「事後処理お疲れさーん。明日も早いから今日ははよ寝た方がええよ」

京太郎「明日?なんかあるんですか?」

絹恵「そらお天道様が顔出してからのお楽しみや、よい子はさっさと寝らんとお化けに身ぐるみ剥がされて見世物小屋に売られるでー」

京太郎「嫌なお化けですね!?」

絹恵「まぁ確かに商人根性しみつき過ぎやね。……それじゃ私も寝るわ。おやすみ、京ちゃん」ニコッ

京太郎「お、おやすみなさい」

京太郎(なんか、一日で色んなこと起こり過ぎて訳わかんねーな)


パチッ

京太郎「ふぁぁ……」ドサッ

京太郎(とにかく、疲れた……寝るか)

京太郎「Zzz……」



京太郎「Zzz……」

洋榎「おい起きぃや京ちゃん、起きぃ言うとるやろ」ペシペシ

京太郎「う、うーん……Zzz」

洋榎「あーこりゃダメやわ。ぐっすり逝ってますわ」

絹恵「お姉ちゃん、ほい氷」ヒョイッ

洋榎「やっぱ寝坊助にはそれが一番やな。喰らえやダブルブリザード!」ピトッ

京太郎「うおっ冷てっ!?」ビクッ

絹恵「かーらーのー?」

洋榎「烈風!」ヒュッ

洋榎「エルボードロォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォップ!」ドスッ

京太郎「ぐふぇえええええええええええええええええええええええええええええええ!?」

絹恵「朝っぱらからやかましいなぁ京ちゃん。そんな喉絞られた鶏みたいな声出して」

京太郎「ぉぉぉ……!」ゴロゴロゴロゴロ


洋榎「どうや?どないやった?」バッ

絹恵「いつもながらお見事どすえー」

洋榎「せやろー無敵やろー?」

京太郎「あ、朝っぱらから鳩尾にエルボードロップって……殺す気ですか……?」ピクピク

洋榎「ウチではよう起きんアホタレにはこうするのがしきたりなんや」

洋榎「絹もとーちゃんもかーちゃんも一度は喰らっとる。闘将洋榎とはウチのことやで!」

絹恵「ま、鳩尾に当たったのは偶然やろうけどな」

京太郎「こんなに長野人と大阪人の間で起こし方に差があるなんて思わなかった……!」

絹恵「はいはい。猿の反省ポーズみたいに壁によっかかってへんと、はよ朝ごはん掻き込んでしまいー」

京太郎「オ、オッス……」フラフラ


絹恵・洋榎・京太郎「「「いただきます」」」

京太郎「うー、眠ぃ」

洋榎「なんやもう一発ほしいん?」

京太郎「目ぇばっちりです!しっかり開いてます!」

絹恵「京ちゃん目ぇ開けすぎ。ぶっちゃげキモいで」パクパク

京太郎「えろうすんません……そういや、今日は結局何するんですか?」

洋榎「そらもうアレよ……なぁ絹?」

絹恵「ま、アレやね」

京太郎「アレってなんですかアレって」

絹恵「京ちゃんの目的を一番手っ取り早く達成させる方法があるんよ。それを紹介したろ思って」

京太郎「俺の目的って……偵察ですか?」

洋榎「そう、それや。たぶん結構な成果が得られるでー?」ニヤニヤ

絹恵「私らに感謝せなアカンよー?」ニヤニヤ

京太郎(なんか悪そうな顔してるように見えるのは俺の目が濁ってるからなんだろうか。そういうことにしておこう)


洋榎「ごっそさんでした、っと」パンッ

洋榎「さて準備や京ちゃん、さっさと行くで!」ダッ

京太郎「せっかちだなぁ」

絹恵「関西の人間はみんなこんなもんなんよ。……お姉ちゃんは普通に輪をかけてせっかちやけどね」

京太郎「でしょうね……」

絹恵「あ、そうそう。京ちゃん携帯貸してーな」

京太郎「?はい」

絹恵「ふむふむ……ほいの、ほいの、ほいっと」

絹恵「今メールで送ったんが私とお姉ちゃんの携帯番号とメアドやから……それにしても一々メールアドレス打つのはしんどいなぁ」

京太郎「今の携帯には赤外線ってのがあってですね。ほら、ここです」ピッピッ

絹恵「まさか……これで連絡先送れるん!?」

京太郎「その通りです」

絹恵「開いた口が塞がらんわ……もう一々相手のメールアドレス打ち込む必要ないんか……」ポカーン

京太郎「むしろ今まで赤外線をなんだと思ってたんですか?」

絹恵「目くらましビームでも打つ機能かと」

京太郎「……」

洋榎「はよせんと置いてくでー!」

絹恵「はーい!」

京太郎「今行きますってー!」



ーー姫松高校

京太郎「え?姫松?」

洋榎「姫松の偵察に来とんのにここ以外どこに行くねん。さっさと終わらせて大阪観光や!」

京太郎「でも女子麻雀部は男子禁制なんじゃ」

絹恵「せやでー。やからちょっとした助っ人呼んでん」

京太郎「助っ人?」


洋榎「おーい恭子!こっちやこっち!」

恭子「何ですか朝っぱらから」

絹恵「はい、こちら私の先輩の末原恭子さんや」

京太郎「須賀京太郎です、よろしくお願いします」

恭子「はぁ、よろしゅう。……で、何者ですかコイツ」

洋榎「なんでも長野の清澄言うところからわざわざ来たらしいでー」

恭子「へぇ、清澄」

絹恵「それも目的はなんと実地偵察!これはもう末原先輩の出番ですわ」

恭子「なるほど。そら珍しいお客さんやなぁ」

京太郎「でもここの女子麻雀部男子禁制なんですよね?それでどうしたもんかと……」

恭子「あー確かにウチの部はそうなんよ。わざわざ遠くから来てもろたんに、ごめんなー?」パシッ

京太郎「あ、いえそんな!」

恭子「私でよかったら色々お話するけど……どない?」ニコッ

京太郎「いいんですか!?」

恭子「ええよええよー、帰って部長にどやされるのは勘弁やもんなぁ。……じゃあちょっとそこら辺歩こか」

絹恵(恭子先輩、ファイトです!)グッ

洋榎(たっぷり絞ったりやー)

恭子「……」ニヤァ

京太郎(なんだ?急に寒気が……)ブルッ


恭子「改めて自己紹介しとこか。私は姫松の三年、末原恭子や」

京太郎「長野の清澄の一年、須賀京太郎です」

恭子「須賀京太郎君、か。ええ名前やね」ニコッ

京太郎「あ、ありがとうございます」

京太郎(なんか凄くいい人そうだ……警戒する必要もないか)ホッ

恭子「えいっ」ピロリンッ

京太郎「えっ!?」

恭子「いやー君結構イケメンやんか?友達に紹介したろ思って。……アカンかな?」

京太郎「いや、そういうことはないっすけど……俺なんかでいいんすか」

恭子「須賀君は自己評価低過ぎやって」

恭子「十分かっこええよ……それよりここに偵察に来たいうことは、須賀君の高校の女子麻雀部は地区予選突破したんや?」

京太郎「そうなんですよ。いやー俺もビックリで」

恭子「へぇー……須賀君も麻雀部なんやろ?誰かと仲良かったりするん?」

京太郎「仲がいいって言うと……やっぱタコスの奴ですかね」

恭子「タコス……なんやえらいけったいな名前しとるね。留学生か何か?」

京太郎「あーいえタコスってのはあだ名で、本名は片岡優希って言うんですよ」

恭子「優希ちゃん。一年生?」

京太郎「そうですね。俺と同学年ですから」

恭子「……君相当強そうに見えるけど、その優希ちゃん言うんは君より強いん?やったら怖いわー」

京太郎「いえ、へへ、俺なんて全然強くないですよ!……でも南場ならチャンスあるかな」テレテレ

恭子「……!南場になると優希ちゃんは弱なるん?」

京太郎「ていうか東場に……」ピリリリッ

京太郎「あ、ちょっとすみません」

恭子「ええよええよー」


京太郎(部長?)ピッ

京太郎「はい、須賀です」

久『あ、須賀君?分かってるとは思うけど、偵察返しとかされたらお仕置きだからね?』

京太郎(偵察返し……ってオイまさか!?)

京太郎「……」ダラダラ

久『須賀君?聞いてる?』

京太郎「は、はい!大丈夫っす!」

久『ならいいんだけど……伝えたいことはそれだけだから。あ、ちょっと待って……原村さんがメッセージがあるって』

和『須賀君、調子どうですか?水道水には気をつけて下さいね』

和『後、ちゃんと結果出さないと部長の言う通りおしおきしちゃいますからね?……なんちゃって』クスッ

まこ『お、和も冗談が言えるようになったんじゃなぁ』

優希『……冗談じゃないと思うじぇ』

京太郎「精一杯頑張ります!」

和『はい、期待してます。……あっ、宮永さん!?』

咲『京ちゃん!その声、京ちゃんなの!?』

和『……』プシュッ

咲『ぺゅっ』ドサッ

和『さ、宮永さん。偵察は須賀君に任せて、私達は麻雀の練習しましょうね』

咲『ウン!カン、カン、カン、ツモ、嶺上開花。アリガトウゴザイマシタ!ペコリンッ!アリガトウゴザイマシタ!ペコリンッ!』

京太郎「は、ははは……」ガクガクブルブル

久『……うん、まぁこんな感じだから。じゃーねー』ガチャッ


京太郎「お待たせしましたー」ダラダラ

恭子「なんや彼女との電話?やったらもう少しゆっくり話せばええんに」

京太郎「いやー俺まだ彼女いない歴=年齢っすよ、あはは……」

恭子「あはは、そら気張らんとなぁ」

京太郎「ははは……いやー今日はいい天気っすねー」

恭子「今日は曇りや。そないなありがちな話題逸らしせんと、私達麻雀部なんやから麻雀の話せーへん?」ニコッ

恭子(気取られたか)チッ

京太郎「あ、それなら姫松の話聞いていいっすか?」ダラダラ

恭子「ええよ。何が聞きたい?」

京太郎「じゃあエースは誰か、とか……」

恭子「エースはさっきまで須賀君と一緒におった3年の愛宕洋榎やで。あんな性格やからね、かなり豪快に打つんよ」

京太郎「へぇー……」

恭子「須賀君とこのエースは誰なん?やっぱり大将?名前は?打ち筋は?なんか凄い能力持ってへんの?」

京太郎「いやー、それはちょっと……」

恭子「そないないけず言わんと、ちょっとくらい教えてーな。減るもんやあらへんし」ニコー

京太郎(勘弁してくれっ、俺の命が削れるんだよ!)

恭子「それに、こっちは須賀君の要望にお応えして情報を公開しとるんよ?」

恭子「聞くだけ聞いて自分だけ隠しますーて、そらぁ筋が通らんなぁ」ジリジリ

京太郎「ひっ……」

恭子「ちゃんと話してくれれば、なーんも怖いことあらへんでー?大阪楽しみたいやろー?」ニコー

京太郎「っ……!」ダッ

恭子「逃げたか……」ピッ

恭子「あー漫ちゃん?今大丈夫かいな?」


恭子「今から男の写真送るから麻雀部全員に拡散して」

恭子「手の空いとる奴はそいつ見つけたら私の携帯に連絡するように頼んでくれへん?」

恭子「名前は須賀京太郎。長野の地区予選勝ち抜いとる清澄から来た「生きた情報源」や。絞れるだけ絞りたいんよ」

恭子「でも無理やり捕まえて警察のお世話になったらアカンよ?「お話」したいだけなんやから。知らせてくれるだけでええで」

恭子「え?麻雀部以外の知り合いも総動員する?ありがとなー漫ちゃん。今度のお仕置きペンは水性で勘弁したるよ」

恭子「あはは、そうやねー。まずはお仕置きを受けんようにせんとアカンね。……それじゃ、また後で」ピッ

恭子「飛んで火に入る~夏の虫~♪……ってなぁ」

恭子(私は凡人や……)

恭子(能力もないし、ただ単純に打って勝てるような運もない)

恭子(かといってオカルト全否定してやっていけるほど頭もようない)

恭子(せやから、やっと来たチャンスをみすみす見逃すわけにはいかへん)

恭子(須賀京太郎君……絶対に吐いてもらうで!)



ーーアメリカ村

京太郎「はぁっ、はぁっ……こ、ここまで来れば……とにかく、一旦対策を」

恭子「いきなりここかぁ……昼間やからええけど、夜はあんまり来たらアカンよ?」

京太郎「!?」バッ

恭子「若者の活気が溢れとるんも確かやけど、危ない兄ちゃんらがぎょーさんおるんやからな」ニコッ

京太郎「ウソだろっ……!」ダッ

恭子「おーおー、若いもんはよー走るわ」

恭子「せやけどなぁ須賀君。大阪には世話焼きが多いんよ?」



ーーNU茶屋町

京太郎「……こ、ここなら」

恭子「ここはアメリカ村から世代交代した若者の町なんよ」

恭子「なんなら私とそこら辺のカフェでも行かへん?美味しいケーキがあるとこ教えたるよ」ニコッ

京太郎「なんで振り切れてないんだよ!?」

恭子「さぁ、なんでやろなぁ」

京太郎「……のやろっ!」ダッ

京太郎(まさか、行動を予測されてる!?)

恭子「中々ガッツあるなぁ須賀君。そういうの私嫌いやないよ」




ーー法善寺横丁

京太郎(若者の人通りがあんまりないここなら……!)

恭子「うん、私はここ好きなんよ」

恭子「やかまし過ぎんくらいには賑やかやろ?古めかしいのもまた味があるっちゅーもんや。外の人達は浪速情緒言うんやろか」

京太郎「~~~~~~っ!」

恭子「この辺には粉物の店も美味しいのがあってなー……ちょーっと高いけど」

恭子「まだ夕方やないし、この時間帯やったらそこら辺のお好み焼き屋で簡単に二人っきりになれるんよ?」ニコッ

京太郎「くそっ、捕まって、たまるか……!」ダッ

恭子「……まだ走るか。がんばれ須賀君、ファイトやでー」



ーー天保山マーケットプレイス

京太郎「はぁっ、はぁっ……!」ピッ

絹恵『あら京ちゃん。そない息切らしてどないしたん?』

京太郎「知ってて二人っきりにしましたね!?」ガーッ

絹恵『なんのことかいなー?私アホやからわかりまへーん』シレッ

京太郎「にゃろう……!」

絹恵『まぁホンマにお疲れみたいやから、ちょっとだけ助け舟出したるわ。今どこ?』

京太郎「えーっと……天保山マーケットプレイス」

絹恵『そしたらそのまま観覧車に乗ればええよ。一周十五分、とりあえずゆっくりできるで』

京太郎「……ありがとうございますっ!」ピッ



ーー愛宕家

絹恵「でも時間稼げるだけで根本的な解決には……って切れとるし」

洋榎「京ちゃんまだ逃げとるん?」

絹恵「みたいやねー。いやーへたっとるように見えて中々根性あるわ」

洋榎「全くやな!」

絹恵「ま、それ以上に根性あるのが」

洋榎「恭子なんやけどね」



ーー???

恭子「え、観覧者のほうに向かってる?」

恭子「りょーかい。ありがとなー」

恭子「時間稼ぎのつもりなんやろうけど。高いとこに逃げるのはバカと煙だけやでー、須賀君」



ーー大観覧車

京太郎「お、男一人!はいお金!」

係員「お、おい急に乗り込むなや!あぶないやろ!」

京太郎「いいから早くゴンドラ閉めて!回してください!」

係員「ったく……」ガチャッ


ゴウンゴウンゴウン……

京太郎「……っようやく一息つける」グタッ

京太郎「あー疲れた……もう走れん」


『……んな事言うたかて……もう回り始めとるし……』

『……願いします!私の……氏なんです!もう一度、もう一度、思い出のこの場所で話し合いたいんです!』グスッ

『……そこまで言われたら黙ってられんわ。浪速者の人情見とれ!』


ガシャァァン!

京太郎「うおっ!?」ビクッ


ゴウンゴウンゴウン……

京太郎「おい、なんかおかしくねーか……?」

京太郎「俺はまだ乗ってから数分しか経ってねぇぞ?」

京太郎「なんで、なんで……」

京太郎「観覧車が止まったと思ったら次の瞬間には景色が「低く」なっていってるんですかァーッ!?」


ガシャァァァン!

恭子「よっ、須賀君。待ってたで」ニコー

京太郎「」

係員「ええ男が女の子泣かすなや!……しっかり話し合うんやで」ガチャッ

京太郎「あっちょっ待っ!やっぱ降ろして、ここから降ろしてー!」バンバン

恭子「観覧車の窓叩いたら危ないで?どうせ外側からロックかかって開かへんのやから。……観念しいや」

京太郎(終わった……)


ゴウンゴウンゴウン……

京太郎「……」ズーン

恭子「……ホント言うとな、私も心苦しいんよ。君みたいなひよっ子を執拗に追い回すのは」

恭子「でも、私は凡人や。天才の百分の一回しかチャンスなんて回ってこん」

恭子「せやから目の前にチャンスが降ってきたんなら、天才の百倍の苦労をしてでも食らいつかなアカンねん」

京太郎(……)

恭子「そこんとこ、ちょっとだけ分かってくれると嬉しいんやけどなぁ」

京太郎「俺も、です」

恭子「ん?」

京太郎「俺も、凡人なんです。末原さんみたいに麻雀も強くない、ただの人です」

京太郎「でも、だから、せめて偵察くらい……上手く言えねーけど、俺も部の役に立ちたいんです!」

京太郎(まだ死にたくないし!)

恭子「……なんや。君も諦めた訳とちゃう、ちゃんと足掻いとる凡人なんやな」フッ

恭子「じゃあ、私らこれから凡人同盟や。よろしくな、須賀君」ニコッ

京太郎「よ、よろしくお願いします……?」

恭子「で、須賀君とこのエースの打ち筋は?」

京太郎「言いませんよ!?」

恭子「なんやケチやなぁ」チッ

恭子「……まぁええわ。ほら、一番てっぺんに着いたで」

京太郎「おお……もうそんなとこまで来たのか」

恭子「いつ来ても、ここからの景色は胸がスッとするわ」

京太郎「……」

恭子「これだけぎょーさん人がおる土地で、私らが代表になったんや。姫松が背負っとるモノは私なんかには重過ぎるくらいやで」

京太郎「俺達だって……清澄だって、そうですよ」

恭子「そうやなぁ……須賀君とこも県代表やもんな。たくさんのモノ背負うとるもんな……」

京太郎「……」

京太郎(こうして見ると、凄く可愛いんだけどなぁ)

恭子「なぁ、須賀君……?」ソッ

京太郎「は、はい」ドキドキ

恭子「一人だけでええから、須賀君とこの子のクセ教えてくれへん……?」

京太郎「嫌です」

恭子「……チッ」

京太郎「どうせそんなこったろーと思いましたよ」

恭子「あんま擦れとる男はモテへんよー?」ハァー

京太郎「モテるより命のほうが大事ですっ!」


ガシャァァァン!

係員「はい、お疲れさーん」ガチャッ

京太郎「……なんか、昨日に増して疲れた」

恭子「アハハ、ちょっと苛め過ぎたかいな?」

京太郎「ちょっとどころじゃないですよ……」ピリリッ

京太郎「はい?」ピッ

絹恵『あ、京ちゃん?どやった?』

京太郎「絹恵さんですか……おかげさまでなんとかなりましたよ」

恭子「……」ピクッ

洋榎『お疲れさんさんさんころり~♪』

京太郎「やかましいわっ!」ガーッ

絹恵『ま、お疲れさん。ごはん用意できとるから、はよ帰ってきぃやー』

恭子「須賀君、絹恵さんって」

京太郎「ああ、俺愛宕さん家に居候させてもらってるんですよ」

恭子「なるほど。ま、あの二人ならやりそうやなぁ」

恭子「ならはよ帰らんと絹ちゃんに怒られてまうね。あの子しっかりしとるし……この辺で別れよか」

京太郎「もう遅いし、送っていきますよ?」

恭子「アホッ」ツン

京太郎「てっ」

恭子「今日一日私から追い回されたヘタレがどうして私のボディーガード出来るねん」

京太郎「う……」

恭子「そんな心配せぇへんでも、私かて大阪の女や。自分の身くらい自分で守るわ」

恭子「まぁもし送り狼狙いなんやったら、せめてもう少し男磨いてきーへんとな。今の君じゃ"送られ羊"がせいぜいや」ニカッ

京太郎「ひでぇ!?」

恭子「あはは!そしたら須賀君、さいならー」

京太郎「さよーならー」

京太郎「……」

京太郎「……ふぅ」

京太郎「……っしゃ勝った!逃げ切ったぞ!」グッ

京太郎「なんとか雰囲気に任せて話題を逸らす作戦が成功してよかった……」

京太郎(あれ以上追及されたら本当に全部情報が漏れちまうところだった)

京太郎「ふぃー……これで安心して眠れる。皆、俺頑張ったよ」

京太郎「今日の晩飯なんやろな~♪っと」ウキウキ



ーー愛宕家

京太郎「今帰りましたー」

絹恵「お、京ちゃんお帰りー。お疲れさーん」

京太郎「ホントに疲れましたよーもー」グタッ

洋榎「今日の晩飯は小田巻蒸しやでー」ホカホカ

京太郎「小田巻蒸し?」

恭子「まぁ簡単に言えばうどんの入った茶碗蒸しやね」ズルズル

京太郎「あー確かにそれ旨そうですね」

洋榎「せやろー?絹の小田巻は絶品やさかい、いっぺん食うたら止まらんでー」

絹恵「おかわりは別料金でっせー。身内親類でも容赦せーへんよ?」

京太郎「ハハハ……んじゃ、いただきます」パンッ

恭子「パラパラーっとゆず胡椒掛けると美味いで。いっぺん試してみ」トンッ

絹恵「ホントはゆず千切りにするんやけど、面倒やしなぁ。ゆず胡椒で堪忍してや」

京太郎「あ、こりゃどうも失礼します」パッパッ

恭子「……」ズルズルー

京太郎「あ、スープの部分も食べれるようになってるんですね」パクパク

洋榎「ま、その辺が大阪の商人根性っちゅうとこやな。昔は卵がよーとれへんから高級品やったらしいけど」

京太郎「ちょっと熱いけど、美味いっすね!」パクパク

恭子「……」ズルズルー

洋榎「なぁなぁ、京ちゃん京ちゃん」

京太郎「なんですか?」パクパク

洋榎「ツッコミまだ?」ワクワク

京太郎「……」

絹恵「京ちゃん、そろそろネタも潮時や。我慢せんでもええで」


恭子「ごちそうさまでした」パンッ

京太郎「ーーーーーっなんで!!!!!!アンタが!!!!!!!ここに!!!!!!!!いるんですか!!!!!!」ドンッ

恭子「よっ、須賀君。待っとったで」ニコッ

京太郎「いやおかしいでしょ!?なんかいい雰囲気で終わったじゃないですか!決着したじゃないですか!」

恭子「私もそう思っとったんやけどなぁ……」

絹恵「京ちゃん、なんか隙見せへんかった?」

京太郎「隙?……ってまさか」

恭子「そうなんよ。須賀君が『勝った!』って言ったの、私ばっちり聞いてしまったんやな」

洋榎「で、負けん気に火がついたちゅーこっちゃな。恭子が電話してからこっちに来るスピード、あれボルト超えとったわ」

絹恵「アホやなー京ちゃん。そんなフラグびんびんのセリフ吐くからや」

恭子「そんなわけで、しばらく……須賀君を絞り倒すまで、お世話になりますー」

洋榎「にぎやかな方が楽しいし、ええでええでー」

京太郎「嘘……だろ……?」

絹恵「……現実や。受け止めなアカンよ京ちゃん」ポンッ

洋榎「なぁ、寝る場所はどないするん?」

恭子「そうですね……須賀君は?」

絹恵「リビングに布団しいとるよ」

恭子「なら私はリビングのソファーで」

絹恵「……流石、末原先輩。迷いがないですね」

洋榎「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!こらおもろい!やっぱ京ちゃん家に入れて正解やったわ!」バシバシ

京太郎「俺、どうなるんですか」

恭子「早めに全部吐いた方が、楽になるで?」ニッコリ

洋榎「いやーそれやったらおもろない。どっちも頑張りやー」ゲラゲラ

絹恵「あ、風呂開いたんやったら次私が貰うで」

恭子「さ、須賀君。手始めに絹ちゃんが風呂あがるまで楽しくお話ししよか。24時間戦えまっか?」ニコー

京太郎「無理に決まってるじゃないですか!誰かー!誰かあああああああああああああああああ!」


京太郎「うーん……Zzz……嫌だ……薬漬けはいやだ……」

洋榎「……清澄はどういう教育しとるんやろか」

絹恵「深く突っ込んだらアカンとこのような気がするわ、それ」

恭子「って言うか須賀君起きませんね」

洋榎「んー、こらしゃーないなー。ウチもあんまり手荒な真似はしたくないんやけどな。絹、氷ー」ニヤリ

絹恵「あいよー」ヒョイッ

恭子「あ、ちょっと待ってください。須賀君起こすの、今日は私がやらせてもらえませんやろか?」

洋榎「別にええけど……こいつ結構しぶといで?」

恭子「私の親もこんなもんですから、慣れてますよ。……須賀君、朝やで」ユサユサ

京太郎「ぅぅ……注射針が……Zzz」

恭子「…………で、君の大事な大事な清澄の大将の弱点は?」

京太郎「絶っっっっっっっ対言いませんからね!?」ガバッ

洋榎「おお、効果てきめん」

絹恵「こらたかた社長も絶賛ですわ」

恭子「なんやおもろない。寝惚け眼でつるっと口滑らせてくれたら首筋にチューくらいしたるよ?」

京太郎「お断りします!てかなんでそんなに場所がマニアックなんです!?」

恭子「してみたいから」

京太郎「露骨に耳年増!?」


小鍛冶「年増じゃないよ!!アラサーだよ!!!!」バッ

京太郎「誰だアンタ!」

絹恵「はいはい。京ちゃんも末原先輩も朝っぱらからアホな漫才しとらんと、飯にしますよー」

恭子「さ、飯やで須賀君」

京太郎「……どーも納得いかねぇっす」





洋榎「ごっそさんでしたー」パシッ

恭子「ごちそうさまでした」パシッ

京太郎「ごちそうさまでした」パシッ

絹恵「お粗末さまでしたー。さて、これからどうする?」

洋榎「当然、京ちゃんを引きずり回して!」

恭子「出すもん出させるに決まっとるわな」

京太郎「お願いですから人権を下さい」

洋榎「そないなおもろないこと言うとらんで、もーちょい楽しまんかい!」

恭子「確かに須賀君は多少ノリが悪いとこあるやんな」

洋榎「ほら京ちゃん好き勝手言われとるで!それでええんか?長野のノリのよさ魅せつけてやリーや!」

京太郎「……分かりました。俺だって男です。やらせて頂きます!」

絹恵「おお、予想以上に前向きなセリフが出てきよったで」

洋榎「期待しとるでー!」

京太郎「末原さん、付き合ってもらえますか」

恭子「……なんで私なん?」

京太郎「この面子の中で一番俺の事知ってるのは末原さんだと思うんで」

絹恵(字面だけ見たらえっらい意味深なセリフの連打やね)

洋榎(本人絶対その気無いんやろうけどな)

恭子「なんやねんそのリアクションに困る物言いは……まぁええよ。合わせるだけでええんやね?」

京太郎「はい、よろしくお願いします」

洋榎「おうはようせーや、おもろくなかったら承知せーへんで!」バシバシ

絹恵「10点満点で評価したるよー」パフパフ


京太郎「それでは」

京太郎「須賀京太郎でーす」

恭子「末原恭子です」

京太郎「という訳でですね、コンビ名も決まってない段階から無茶振りさせられてる訳ですが」

京太郎「末原さんのご機嫌を伺いつつなんとかウケを狙っていこうと思ってるわけですわ」

恭子「その発言ですでに私のご機嫌-1やけどね」

京太郎「まぁまぁいいじゃないですか細かいことは!……えーと、末原さんはサンマ慣れてるんですよね?」

恭子「ん、まぁな。ここら辺に住んどったら結構やることあるし」

京太郎「それじゃあ、俺が今からサンマに関するクイズを出しますんで。当ててみてください」

恭子「ええで。なんでも来てみぃ」

京太郎「一般的に除外する牌は?」

恭子「二萬~八萬やな」

京太郎「ポン、チー、カンの内一般的に出来ないのは?」

恭子「チー」

京太郎「東家西家南家北家の内居ないのは?」

恭子「北家。ってかこれ簡単すぎるわ。クイズになってへんよ」

京太郎「paparda del Pacíficoの意味は?」

恭子「は?」

京太郎「10、9、8、7、6、5、……」

恭子「いやいやいやいやちょい待てぇやオイコラ。それサンマと関係あるん?」

京太郎「ええ。そりゃもうばっちりですわ……さっきまでの問題が分かった末原さんなら簡単ですやろ?」

恭子「……混老頭?」

京太郎「ブブー!正解は秋刀魚でしたー!サンマに慣れて秋刀魚を知らずとはいやはや末原さんもまだまだですねぇ」プークスクス

恭子「……須賀君。殴ってええか?ええな?殴るで?グーで。私の自慢の拳で」

京太郎「あっちょっと待って、せめてこれが終わるまで待ってくださいお願いします!」

京太郎「……まぁ俺もはるばる大阪まで来たわけです。大阪と言えばですね、市政選挙ありましたね」

恭子「ああ、大阪市のな。橋本さんが選ばれたんやったっけ」

京太郎「そうそれ。でも俺思うんです。あの人、市長するんならもう少し体鍛えた方がええんと違うかなって」

恭子「そらまたどうして」

京太郎「いやだって、あの人が当選したのは確かに本人の力もありますけど」

京太郎「周りに「アンタが市長せい!」って押し上げられた部分もありますやろ?」

恭子「まぁ、そうやね。なんやけったいな事ばっかり言いよるみたいやし、どっかのアホに襲われんとも限らへんな」

京太郎「いえ、俺には分かるんですわ……あの人体鍛えないと、確実に近々死んでしまいます」

恭子「またそんなデタラメ言いよって。いつから君にそんな能力が宿ったんや?それとも、証拠でもあるんか?」

京太郎「ありますよ、決定的な証拠が」

恭子「……ほう、言うてみぃ」

京太郎「俺がさっき言った橋本さんの取り巻きのセリフ、覚えてます?」

恭子「アンタが市長せい、やったっけ?」

京太郎「アンタが市長せい……しちょうせい……死兆星!つまり橋本市長の頭の上には死兆星が輝いていたんですよ!」

恭子「……橋本、病んでさえいなければ」

京太郎「ありがとうございましたー」

恭子「ましたー」


洋榎「……」

絹恵「……」

京太郎「……」

恭子「……」


ゴォォォォォォォォォォォォ……

恭子(エアコンの音が聞こえる……)

京太郎(死にたい)


絹恵「あっ、その、あれやな、うん、ヨカッタヨ?」アセアセ

洋榎「ごめんなぁ京ちゃん、ごめんなぁ恭子……ウチが無茶振りせんどけばこんなことには……!」

京太郎「末原さん、すみませんでした。俺のせいで恥かかせて本当にすみませんでした」

恭子「……いや、私も大口叩いといて完全にツッコミ切れんかった。戦犯ですわ」

京太郎「いえ、末原さんはちゃんとやってくれました。俺のせいです。吊ってきます」フッ

洋榎「それはアカン!京ちゃん、死んだら終いやで!?早まるなや!」ギュゥ

絹恵「そ、そうや!生きとればまだ楽しい事いっぱいあるで!?」

京太郎「いえ、俺なんてもう映す価値も生きる価値もないです……」

京太郎「京太郎「咲は百合漫画なんです……男は最初からいらへんかったんですよ」

洋榎「何をトチ狂ったことほざいとんねん!考え直してーや!お願いやから!」

恭子「主将これは無理ですよ。そうそう立ち直れませんって」

絹恵「末原先輩、もしかして経験が?」

恭子「……」

京太郎「えろうすんません、生まれてきてすんません」

洋榎「アカン京ちゃんマジへこみしてもうた……どないしよう絹」オロオロ

絹恵「どないしよう言われたかて……」

恭子「とりあえず楽しい事させてみたらどないでしょう?」

洋榎「せ、せやな!ほら京ちゃん一緒に64しようや!」

京太郎「64……」

洋榎「たまごっちあるでー?面白いでー?ウチのたらこっちは無双するでぇ?」

京太郎「ドリルの奴でアナログスティックが壊れる……」

洋榎「しゃーないやんかそれは!」

恭子「主将の家ってドカポンもあるんですね。私これ得意なんですよ」

洋榎「恭子、今それは止めへん?なんか取り返しつかへんことになりそう」

絹恵「じゃあじゃあ、コロコロカービィでどない?かわええよカービィ」

京太郎「そのゲーム知りません……すみません」

絹恵「あー、まぁそうやろうね……」

恭子「パワプロでひたすら嫌いな選手を外野に置いてフェンスにぶつけてみるのはどうや?小笠原とか阿部とか」

京太郎「いくらなんでも陰湿過ぎますよ!?」

洋榎「……やっぱ外や!外行くで京ちゃん!」ズリズリズリ

京太郎「分かりましたから引きずらないで下さいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

恭子「絹ちゃん、私らも行こか。面白そうやし」

絹恵「もちろんですわ!」



ーー電機屋

洋榎「はー……」ポー

京太郎(パソコンがそんなに気になりますかね)

洋榎「なぁ京ちゃん、これなんかすごいハイカラやない?」

京太郎「まぁ、最近のはデザイン重視も多いですからねぇ」

洋榎「かっこええわぁ……」

恭子「須賀君須賀君。ちょっと聞きたいことがあるんやけど」

絹恵「京ちゃーん、ちょっとこっち来てくれへん?」

洋榎「京ちゃんは今ウチが使うとるやろ!とらんといてや!」

恭子「だって主将、機械に見とれてるだけやないですか」

洋榎「恭子や絹かて大して変わらへんやろ!」

絹恵「実力行使っ!」バッ

京太郎「うおっ!?」

洋榎「あー!ちょい待てやコラ!」

絹恵「ほら、京ちゃんも走りぃ!いつまでも女の子に背負われたままでええんか!?」

京太郎「なんで俺が走る必要があるんですか!」

絹恵「……毎日の君のご飯は誰が作っとるんやったっけ?」

京太郎「そのことについてはホントに嬉しくて感動です!走らせていただきます!」ダッ



ーー携帯コーナー

絹恵「これなんやけど、これも赤外線出来るん?」

京太郎「あーこのタイプはちょっと無いですね」

絹恵「そうなんかー……かわいいから残念やわぁ」

京太郎「でもなんで赤外線なんです?」

絹恵「いや、なんかかっこええやん?ピーッて名刺交換するの。最近ずっとやっとるんよ。今も」ピーッ

京太郎「……ずっと?」

絹恵「四六時中暇さえあれば」

京太郎「送信してるんですか?」

絹恵「そうなんよ。通信が成功したらなんか嬉しいやん?……あ、成功した」

京太郎「何をやってるんですかアンタは!?」ガシッ

絹恵「そ、そんな怒らへんでも」ピーッ

京太郎「今怒られとるんやから送信止めんかいアホォ!」

絹恵「は、はい!」ビクッ

京太郎「なんで自分の個人情報を無償で他人に配ってるんですか!?」

京太郎「それ全裸であいりんに『ファックミー』って看板ぶら下げていくようなもんですよ!?」

絹恵「え、え?」

京太郎「……参考までに聞きますけど、赤外線覚えた後の迷惑メールの数増えませんでした?」

絹恵「なんと前日比約40倍(当社比)に。おかげでメルアド変える羽目になったわ」

京太郎「ほら!ほら!ほら!ほらぁ!実害出てるじゃないですか!やだー!」

絹恵「そ、そんなアカンことやったん?」

京太郎「チョンボもチョンボ、大チョンボですよ!ここで発覚しなかったらどうなってたか……」

絹恵「え、えろうすんませんでした……」

京太郎「……ハァ」

絹恵「あんまり楽しかってん、つい……」シュン

京太郎「とりあえず、電子機器でわかんない事あったら勝手に使わないで、俺に聞いてください。やれるだけ、力になりますから」

京太郎「俺なんかでいいなら、いつでも頼ってくれていいっすから」

絹恵「京ちゃん……ありがとな」

京太郎「一宿一飯の恩って奴ですよ。この程度でいいなら好きなだけこき使ってくれて構いませんから……ってうおぉぃっ!?」ビュンッ

絹恵「へへ、なんや、どないしたん京ちゃん。そないな事急に言われたらこっ恥ずかしいやんか」テレテレ

絹恵「そしたらな、こっちの奴について聞きたいんやけど…………って早速おらへんやんけ!」



ーーマッサージチェアコーナー

恭子「まぁ座りぃや須賀君」ウィーン

京太郎「……なんで俺引っ張って来られたんですか」

恭子「そらお話したかったからよ。っアイタタタタ……このポンコツ」ボコボコ

京太郎「それ力が強すぎるんじゃないですか?」

恭子「かもなぁ。ったく技術者ってのはどうしてこう強力にしたがるんやろか」

京太郎「じゃあ機械を止めて、っと……動かないで下さいよ?」ピッ

恭子「……?」

京太郎「よっ、と」ギュムッ

恭子「あ……」

京太郎「こっちの手もみマシーンならいかがっすかー」モミモミ

恭子「んー、もうチョイ内側ー」

京太郎「ここらへんですか?」モミモミ

恭子「あーそこやそこ……もうちょい続けててーな」

京太郎「アイヨー」モミモミ

恭子「にしても、手もみマシーンって名前だけやったら卑猥やね」

京太郎「……そうですねぇ」モミモミ

恭子「……今「お前揉めるほど乳も尻もあらへんやろ何言うてんねんちったぁ自覚せぇやこのまな板バディーが」とか思うたね?」

京太郎「全然思ってないっす!」モミモミ

恭子「ホンマに?私君の事信用するで?「私須賀君にナイスバディー言われてん!」って妙にキラッキラした瞳でここらへん一帯に言いふらすで?」

京太郎「……すんません。ホントはちょっと思ってました」モミモミ

恭子「ん、ええんよ。私も自覚しとるから……絹ちゃんとかなぁ。あれで肩凝らへんのやろか」

京太郎「凝るんじゃないっすかねぇ。いつか絹恵さんからも肩もめー言われるようになるかも」

恭子「言われても、やったらアカンよ?」

205 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県)[saga] 投稿日:2012/07/13(金) 21:41:27.45 ID:nvF9ZswG0

京太郎「え?」

恭子「須賀君の肩もみは私の特権や。今決めた。他の人にやったらアカン」

京太郎「そんなこと言われてもー……俺愛宕家では人権ないですし」

恭子「……ほら、手ぇ止まっとるよ」

京太郎「おっとと……すんませーん」モミモミ

『だっ、誰かぁーーーーー!助けてやーーーーーーーー!京ちゃーーーーーーーーーん!』

京太郎「あの声……洋榎さん!?すみません、ちょっと行ってきます!」ダッ

恭子「うーい。行ってきぃやー」



ーーパソコンコーナー

京太郎「洋榎さん!どうしたんです……か……」

PC『デンジャー、デンジャー、デンジャー』

洋榎「き、京ちゃん!助けて!展示品のパソコン弄っとったらなんか画面青くなってアルファベットがいっぱい並んでん!」オロオロ

京太郎(コーナー中のパソコンを全てブルースクリーンにした……だと……?)

京太郎「参考までに聞きますけど、何したらこうなったんですか」

洋榎「割って挿したり抜いて挿したり皆の絆で宇宙を掴んだりしただけや!ウチなんも悪い事してへんよね!?」

京太郎「帰っていいっすか」

洋榎「そないな薄情な事言わんといて!お願いやから!」

京太郎「……じゃあ、俺の質問に正直に答えてください」

洋榎「……?」

京太郎「途中警告とか結構出たと思うんですが、「どうせ京ちゃんおるし大丈夫やろー」とか思って面白半分でOK押しましたね?」

洋榎「……はい」

京太郎「笑えませんから。俺そこまで詳しくないですから」

洋榎「はい」

京太郎「……ほら、店員さんが集まってきてますから。事情説明しましょう。一緒に謝りますから」





洋榎「ホンマ、すんませんでした……二度としません」

店員「言うたな?お前の顔、覚えたさかいな?ホントにもうすんなよ」

洋榎「はい……」

京太郎「自業自得の極みですね」

洋榎「京ちゃん容赦ないわぁ……」グスッ

京太郎「ほら、帰りましょう。もうそろそろ夕飯の時間ですから」

洋榎「うん……」

絹恵「京ちゃん、お疲れ。……色々な意味で」

恭子「須賀君も大概巻き込まれ体質やねぇ」

京太郎「皆さんが事件起こしすぎなんですよ!」

洋榎(ぐぬぬ……)



ーー愛宕家

恭子「上がりましたー」ホカホカ

京太郎「じゃ、次俺風呂もらいまーす」ガラッ

洋榎「……よし、行ったな」

洋榎「全員集合!作戦会議や!」コソコソ

絹恵「お姉ちゃん、作戦ってなんの作戦?」

洋榎「アホ!今日一日ほとんど京ちゃんのターンやったやろ?なんや悔しいやん」

恭子「確かに、腹には据えかねますね」

絹恵「えー、私別に気にしてへんのやけど」

洋榎「やかましい!とりあえず「京ちゃんになんとか一泡吹かせよう会議」開始や!」

恭子「一泡吹かせるくらいなら割と簡単に出来ますけど」

絹恵「末原先輩がやると一泡で済みそうな気がせぇへんですわ……」

洋榎「うーん、効果的で記憶に残るようなものがええんやえけどなぁ」

絹恵「効果的で」

恭子「記憶に残るもの、ですか……トラウマでも植えつけてみます?」

洋榎「それはアカン。京ちゃんはこう、いい方向に困らせたいんよ」

恭子「あ、それちょっと分かりますわ」

絹恵「とは言うても……どうしたもんでっしゃろなぁ」

恭子「一晩中耳元で囁き続けるとかどうですやろ」

洋榎「何を?」

恭子「口にするのも憚られるような下ネタを」

洋榎「……悪くはないけど、最悪京ちゃん目覚めてしまうから止めとこ」

恭子「楽しそうやけどなぁ……」

絹恵「じゃあ、みんなで京ちゃんを囲んで寝るとかどう?」

洋榎「あ、それええね!それに決定や!」







京太郎「今上がりましたー」ホカホカ

洋榎「よっ、京ちゃん!待ってたで」

京太郎「なんでリビングに布団が敷き詰められてるんですか?」

絹恵「偶にはこういう絆を深めるのも大事かなー思うて企画しましてん!後冷房代の節約!」

京太郎「いやいや偶にはってまだこっち来てから3日しかたってないんですが」

恭子「細かい事気にしとったら生きていけんでー」

京太郎「十分大事件ですからねこれ!?」

洋榎「ええっ……からっ……来いっ!」グイッ

京太郎「おわっ!?」ボフッ

絹恵「ふっふっふ……もう逃げられへんで?」ニヤリ

恭子「電気消すでー」ニコー

京太郎「あぁっちょっ待って!弁論させてください!お願いします!」

恭子「却下や」カチッ


シーン……

京太郎「……」

洋榎「……」

絹恵「……」

恭子「……」

洋榎「なぁなぁ京ちゃん、好きな子おるん?教えてーや」

絹恵「誰にも言わへんからー」

京太郎「修学旅行ですかっ!……ってか絶対こういう展開で来ると思いましたけど」

恭子「……で、前話してくれた優希ちゃんについてなんやけど。どうなん?好みなん?」

京太郎「末原さんまで……タコスの事は友達としか思ってないっすよ」

洋榎「へー、友達なぁ……」

絹恵「よし京ちゃん、この際やから全部吐いてしまいや」

京太郎「この流れ昨日も食らったんですけど」

恭子「それは違うで須賀君」

京太郎「?」

恭子「今日は威力が三倍や」ニコー







京太郎「Zzz……」

洋榎「Zzz……」

絹恵「Zzz……」

恭子「Zzz……」

洋榎「んぁ……Zzz」ゴロン

絹恵「……Zzz」ギュッ

京太郎「Zzz……腕が……思い……」

恭子「Zzz……」ギュッ

恭子「……Zzz」ゲシッ

洋榎「ぐっ……Zzz……」

京太郎「Zzz……」ビシッ

洋榎「ったぃなぁ……Zzz」

絹恵「Zzz……」ゲシッゲシッゲシッ

洋榎「……」イラッ

絹恵「Zzz……」ゲシッゲシッゲシッゲシッ

洋榎「……」イライラッ

恭子「Zzz……」ガッシ!ボカ!スイーツ!

洋榎「やめんかいワレェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェっ!?」ガバッ

絹恵「ひゃあっ!?」

京太郎「なんだっ!?」ガバッ

恭子「なんややかましい……まだ二時やないですか?」ゴシゴシ

洋榎「やかましいのはそっちやっちゅーねん!なんや自分ら寄ってたかってウチに恨みでもあるんか!?」

絹恵「おねーちゃん……寝ぼけとるん?ふぁぁ……」

洋榎「寝ぼけとらへんわ!自分らがガシガシ殴る蹴るの暴行を加えてきよったんやないか!」

絹恵「まったく」

恭子「記憶に」

京太郎「ございません」

洋榎「三人そろって腐れ政治家のお手本みたいなセリフ吐いてどないすんねん!」ガーッ

恭子「あー、私ちょっと下方向に寝相悪いんですわ」

絹恵「あー私も。最近お姉ちゃんと一緒に寝る機会あらへんからなぁ、忘れとったん?」

洋榎「寝相なん!?あれ寝相なん!?どんだけ狂暴やねん自分らの寝相!」

洋榎「それでいて京ちゃんには傷一つついてへんし!その識別の正確さたるや芸術点入りそうなくらいやん!」

恭子「せやから下方向限定なんですって。布団敷いた場所がまずかったんと違いますか?」

洋榎「んなこと言うたかて……ここ以外敷けるとあらへんし」

絹恵「私と一緒の布団で寝ればええやん。姉妹なんやし」

洋榎「……それもそうやな。お邪魔するでー」

絹恵「はーい」

京太郎「終わりですか?じゃあ俺もう寝ますよ……ふぁぁ」

絹恵「私もー……」

恭子「Zzz……」

洋榎(あ……)

京太郎「Zzz……」

洋榎(ここ、京ちゃんの顔……めっちゃ近いやん)

洋榎(へへ……ちょっとだけ、役得やなっ)ギュッ

洋榎「お休みな、京ちゃん」

京太郎(腕が重い……Zzz)