「京太郎さまっ!」

後ろから、姫様の声が聞こえて振り向こうとした途端体に温かく、そして柔らかい感触が伝わる。
背中にぴったりと抱きつかれ、まるで張り付くかのようにしてこちらへと体を密着させてくる。
腕は絶対に離さないと言うかのようにきつく俺を抱き、少し体が痛い。

「いきなりどうしたんですか? 姫様」

「聞きました。京太郎さま、今月中にここを去るって・・・」

そう言うと余計に強く体を締め付けてくる。
声が少し震えてるのが背中越しでも分かり、なんだか申し訳ない気持ちになる。
霞さんとの会話を聞かれてしまったか・・・。
姫様は絶対に反対するだろうから、と姫様が寝ている時間帯に話をしたはずなのだが、どうやら聞かれていたらしい。

「どうして、どうして出て行くんですか!? ずっとここに居るって前言ってたじゃないですか!」

そして声を荒げ、更にきつく密着してくる。
こうなることが分かっていたから裏で話を進めていたんだけどな・・・。
姫様は、俺にすごく懐いていて俺よりも付き合いがはず長い他の分家より懐いている。
最初はびくびくと小動物みたいに怖がっていたはずなのだがどうしてこうなってしまったのだろうか。

「姫様、人に別れというものはつき物です。生きていくうちに何度も経験するでしょう」

「それになにより、出発まで時間はありますし死に別れるという訳ではないんです。また会える時もきっと来るはずですから・・・」

姫様からの返答は無い。
ただ、後ろで鼻を啜る音と小さく喘ぐのが聞こえる。
やはり俺なんかの為に泣いてくれているのだろうか。
それだけ好きでいてくれているという証拠だが、如何せん姫様の場合は懐きすぎた。
元々の身分の違いがありすぎて本家の偉い方からこのままだと危険だ、と判断されたのだろう。
いきなり長野に帰ってもいいと言われたのはそれが理由だと俺は思う。

唐突にここへ攫われて用が済んだら帰っていいと言われ、なんとも身勝手な連中だとは思う。
だがこの少女達は一切関係なく、悪いのは上の連中だ。
たったの三年の付き合いではあったが姫様や霞さん、初美さん巴さんに春。
皆仲良くしてくれてこれはこれで楽しかった。
会おうと思えば会えると姫様には言ったが、正直ここで別れたら一生会えないだろう。
姫様はこう見えて賢い方だ。気づいているかもしれない。

「・・・わかり、ました」

小さな、耳を澄まさないと聞こえないような小さい声で姫様は言った。
俯いていて顔は見えない。
そしてそのまま姫様は来た道をふらふらと、危うげな足取りで戻って行った。
分かってはいたが、遣る瀬無くなる。
姫様が俺に恋愛感情を抱いているのかは定かではないがやはり危険分子を近くに置く訳にはいかないのだろう。

正直、長野に帰れると聞いて少し喜んだ自分も居る。
あちらに置いてきたものが多すぎた。
幼馴染や幼馴染に預けたペットのカピー。
帰ったら死んだ親の墓にも行かないと、な。


夕食の時には姫様は元に戻っており、立ち直ってくれたかと安心した。
そこからは何事もなく、時が経ち、夜。
一人で勉強をしている時、襖の前に人影があるのが見えた。
それに気づいた一寸後姫様が小さな声でお邪魔しますと言い入ってきた。

「……? 何か用事でもありますか、姫様」

「いえ、用事というわけではないのですが……。京太郎さま、本当にここを出てお行きになるんですか?」

どこか不安そうに、こちらへ尋ねてくる。
表情には陰りが見られ姫様本人は答えが分かりきっているのだろう。
自分の意思でここから出て行く、というのならばまだ答えを変える術はあっただろうが、
本家から出て行けと言われている以上ここに残ることは不可能に近く俺自体にそれを拒否する権利はない。

「確かに長野へ帰りますが、すぐに帰るわけじゃありません。それまでの間せめて思い出作りをしたりいっぱい遊んで、たくさん思い出を作って長野に帰れれば本望です」

「そう、ですか……。ここになんとか留まるという選択肢はないんですね?」

「残念ながら」

突然、部屋の中の灯りが弱まり、薄暗くなったように感じる。
さっきまで部屋の中は温かい風が入ってきていて春を実感させる暖かい室温だったにも関わらず風は冷たくなり、
室内の温度が急激に下がったように思う。
背筋には悪寒とも取れる寒気が迸り、室内の温度と共に体温すら急激に下がったような気がする。
まるでこの感覚はよからぬことが起こる前兆のようなもので何故急に、と考察をする。

まさか、姫様か? そう思い姫様のほうに目を遣るが笑顔でそこに佇むだけで――
ふとそこで可笑しなことに気づく。
何故、姫様は笑顔なのだろう。先ほどまで普段明るい表情の姫様からは考えられぬほど暗い表情だったはず。
無理に笑顔を作っているというよりは何かいいことがあったで喜ばしく感じているかのような満悦の笑みだ。
姫様が演技上手でないことを俺は知っている。ましてやすぐに泣き顔から笑みに変えれるような性格ではないはずだ。

「……京太郎さまお慕いしておりました。どうか、これからすることをお許しください」

姫様が言い終わった瞬間、体の力が抜けて動けなくなる。
力を失ったその体は体勢を維持できなく、ゆっくりと横に倒れ伏す。
口からは力なく空気が微かに漏れるだけで助けてくれと言おうにも声が出ない。
どうして、急に。脳内が瞬く間にして疑問の海に満たされ他の事を考える余裕すら無くなる。
それは軽く現実逃避も兼ねていて、考えなくともこうなった原因は分かる。
しかし、今までも経験と信頼から心が否定して思うように考えが回らない。

言わずもがな目の前の少女がこの事態を惹き起こしたのだろう。
体に神を憑依させる、ということは神の力を一時的に、少しだが操れるようになるということ。
姫様は神をおろすと意識が無くなってしまうが、もし自分の意識をはっきりとさせ力を自在に操れるようになったら。
そう考えたことが何度かある。霞さん曰く、その可能性を秘めてはいるが開花するのは数年先だと言う事であったが……。
今の自分の現状を思い出し言っていたことと違うではないか、と脳内で霞さんに言いつける。

辛うじて動く目玉をなんとか動かし姫様を見る。
やはり、いつもと違い意識を失っていない。完全に神の力をコントロールしている。
元々分家で自分が一番その血が濃いとは言っても元居た場所に帰れと言われるぐらいに力を失い衰退している。
こうなった姫様を止められるのはそれこそ姫様自身しかいないだろう。
霞さんですら手を付けれるかどうか分からない。
正直、詰みの状態であった。

ゆっくりと姫様が俺に近づいてくる。
いつもはきらきらと輝き、穢れをしらない無垢な少女のような綺麗な薄暗く濁り、ハイライトを失ってしまっている。
不自然に口元が吊りあがり普段可愛らしく笑っている姫様が今では不思議と妖気に満ちた艶っぽい笑みを浮かべて、
女性を感じさせる濃艶とした色気を放っている。
見ただけで、股間のモノに血液が流れ少しずつ膨れていくのが自分でも分かる。


初な中学生がグラビア雑誌でも見ておったてているような、変な気持ちになる。

「あ、はぁ……ずっと、ずっとずっとこうしたいと思っていました」

未だ倒れ伏している俺の胸板に、片手を乗せ隣に、吐息が聞こえるほど近くぴったり寄り添ってくる。
姫様が近くなるほど香りに、柔らかさに、雰囲気に、全てに興奮し一気に股間へ血液が流れ愚息を大きく膨れ上がらせる。
柔らかく耳朶を甘く噛まれ口の中で弄ばれる。
なんとも形容しがたいくすぐったさと気分におされ今まで体験したことがないような胸の高鳴りが襲う。
もっと、もっとしてほしい。そういった欲が胸の中で生まれるが必死の思いで止める。

「京太郎さま、とてもいい香りです、ずっと嗅いでいたいくらいに」

次は首筋に顔をうめてきて、スンスンと鼻をならし匂いを嗅がれる。
抵抗したくとも体が動かない。声も出ない。一方的に、自分よりか弱い少女に襲われているこの現状に、
興奮を隠せない自分が居る。
そんな性癖はないはずだ、と否定しようにもいきり立っている愚息がそれを邪魔する。

倒れている自分の体に姫様が乗ってくる。愚息の位置に姫様の程よく肉がついた尻が乗ってきて巫女装束越しにだが、
僅かに愚息を挟むほんのりとあたたかく、柔らかいもちもちとした肉の存在を実感する。
途端にとてつもない快感が体全体を迸り、動けないはずの体をピクピクと痙攣させる。

「んちゅ……はぁ、はぁ、ちゅっ……」

そこから休みなく首筋に生暖かい何かが蠢くのを感じる。
印をつけるかのように、痛みを感じるほど強く首筋に吸い付いてくる。

「はぁ……京太郎さまの首に私の印、つけちゃいましたぁ……♪」

吸い終わると、顔を離すなり艶っぽく溜め息を吐くと頬を薄く桃色に染め恍惚とした表情でそう言う。

「いけないことをしているはずなのに、なのになんだか心地良いんです」

俺の着ていた和服をはだけさせ、柔らかく胸板に人差し指を滑らせる姫様。

「京太郎さま、キス、しましょう?」

腰の上に乗ったまま姫様はこちらへと体を倒してくる。
姫様の大きな胸は俺の胸でむにゅりと形を変える。その、なんとも卑猥な光景に最大まで大きくなっている筈の愚息が更に、
大きさを増す。
自分の胸に感じるふわふわとした柔らかい、感じたこともないような感触に体が固まる。
脳の中がまっさらになった後、この胸の上で形を変える存在を好きなように揉みしたげたら、と下衆な考えが浮かぶ。

ここに来る前は、人並み以上に女子の胸が好きだったがそういった感情を持ってはいけないと欲望ごと捨てたはずなのに。
やはり、人間胸の奥底に潜む欲望までは捨てきれないということなのだろうか。
気がつけば、目の前に姫様の顔が近づいてきている。
姫様の目から見える、自分の顔はなんとも呆けた、間抜けな顔をしていて情けない。
そこでふと正気に返る。

なんとしてもキスだけはいけない、そのような気がして最後の力を振り絞り顔を横へ向け、避ける。
それに姫様は驚いたような顔をした後、すぐに悲しそうに表情を沈ませる。

「やっぱり……やっぱり私じゃ駄目でしょうか。いつも、楽しそうに話してた幼馴染の人のこと……咲さん、でしたっけ。その人じゃなきゃいけないですか?」


いきなり出てきた咲の名前に驚愕する。
確かに、咲の話はたまにしてたが、恋愛感情を持っているとまでは言ってないはずだ。
そこまで俺の感情は分かりやすかったのだろうか。
何故だか申し訳なくなり、姫様から目を逸らす。

「そうですか。ふふふ、わかってました。京太郎さまの想いは私でなく咲さんとやらに向かっていることも」

「でも」

姫様の白い、綺麗な両手が俺の頬を押さえつける。

「ごめんなさい、諦めるのは無理そうです」

姫様と俺の唇が、合わさる。
俺の唇を割いて入ってきた姫様の舌が、口腔を味わうように貪る。
なすがままにされている自分の口と姫様の口からは聞いたこともないような厭らしい音が溢れ出て、耳まで犯されているみたいだ。
あまりにも強烈な接吻に息が続かなく、息をつぎをしようとするが逆に姫様の口へ吸い付くような形になってしまう。

舌を引きずりだされ、その舌は姫様の口の中に無理矢理入れられる。
口の中へ入った俺の舌を軽く甘噛みし、歯と歯の間からはみ出た舌を執拗に舐めたり吸ったりしてくる。
いつか、舌を食われるんじゃないかと思うような舐り具合で舌を逃がそうにもできない。

「んふぅ……ずぢゅるるるるるっ」

今度は口の中のものを全て吸い出すかのように、頬を軽くへこませて強烈に吸い上げてくる。
一際厭らしげな音をたてて溜まっていた唾液事余すことなく吸い出し、それを飲み込まれる。

「はぁ、はぁ、とても、美味しかったです。ごちそうさまでした」

少し唇から垂れた唾液をぺろりと艶っぽく舐めあげて、まるで本当に唾液を食べたかのよう手を合わせ言ってくる。
天然でやっているのだろうか。そうだとすれば変なところで律儀で場違いだが笑いが込み上げてくる。

「京太郎さま。ここ、触ってください」

姫様は俺の片腕を持ち上げると、自分の股のほうに誘導させる。
それはまずい、と思うがぴくりとも手が動かずなすがままだ。
指に湿っぽい感触が伝わる。姫様も興奮して濡れているのだろう。

「んっ、あぁん……はぁ、ところで、京太郎さまは絆結びの呪いを知っていますか?」

「それをすると、お互い、死んだとしても魂同士離れられなくなり生まれ変わっても永遠と二人で過ごすことになるんです」

「とっても素敵だと思いませんか?」

いつの間にか露出させられていた自らの愚息が目に入り、その先には姫様の股間がある。

「前準備はもう出来ています。後は、京太郎さまに処女を捧げるだけ――」

拘束された体を動かそうにも力が入らずやめろ! と声を出そうにも力が入らない。
儚い抵抗もむなしく、姫様の中へと愚息が包み込まれるのが見えた。
それと同時に、俺の意識は薄暗い闇の中へ沈んでいった。


結局長野には帰れなかった。
帰ろうとすると、心臓がとてつもなく痛くなり倒れて、気を失ってしまう。
それどころか姫様から離れようとすると死にそうなほどの激痛に襲われてしまい離れられないようになってしまった。
それは姫様自身も同じらしく、絆結びの呪い――まじない、というよりかのろいだが――をかけているのがばれるのは時間の問題であった。
俺は激痛が体を襲うたびに姫様への罪悪感に襲われ、夜満足に眠れなくなってしまった。
満足に眠れないのはそれ以外の理由もあって――

「ふふっ京太郎さま、今夜も可愛がってくださいね?」

幸せそうに笑う姫様に、俺は為すすべもなく体を重ねるのだった。


カンッ