彼と付き合ったのはーーー罪滅ぼしとほんの少しのいたずら心からだった

彼が連れてきた幼なじみの少女がきっかけで団体戦に出れるようになって
そして彼が支えてくれたおかげで私の夢が叶った

でも…それと同時に彼の好意に甘え続け、彼の時間を奪っていたという事実に向き合わざるを得なかった

そしてただ指導するだけというのは味気ない気がして、だからといって他に出来ることも思い浮かばなくて
ーーー冗談混じりにその言葉を口にしてしまった

「ねぇ須賀君、私と付き合ってみない?」と

言ってしまってから後悔はしたけれど、彼は和に好意を抱いていたし
さすがに彼も冗談だと気づいているだろうと思っていたのにーーー

彼は喜んでその提案を受け入れてしまった

少しは考えたりしないのか、とか和が好きなんじゃなかったのか、とか色々思ったけど
嬉しそうにする彼を見てしまうと今更冗談だとは言えなくて…

私だって花の高校生だ、人並みに恋愛に興味はあったし
ちょっとエッチなのがたまに傷なくらいで女として自信がなくなるほど家事万能で気遣いもできる
その上容姿もいい彼は十分優良物件だ

ーーーこれは一時の夢、彼もいずれ目を覚ます…

そう思っていた、だけど

気づけば彼を目で追うようになり、彼と目が合うと嬉しく思うようになり…そして

そして彼が他の女の子と話していたり笑いあっていたりすると…
ーーー心がチクりと痛むようになった

一時の夢だと思っていたはずなのに…私は…

私は彼をーーー

彼女と付き合って、しばらくしてから何となく気づき始めていた
ーーー彼女は俺のことを好きなわけではない、と

人数合わせにはなるだろう、位の考えで連れていった幼なじみがきっかけで清澄麻雀部は団体戦に出れるようになって
ーーーそして全国で優勝を果たした

一方俺は個人戦には出たものの、あっさりと敗退した

悔しくもあったしそのための練習もするべきとは思ったけど…
その程度の腕の自分に時間を割いてもらうのも悪い気がしたし、それよりも全国に出る皆の方が大事だからと雑用を請け負うことにした

インハイが終わり、今まで裏方に徹してくれたお礼だ、と
ぶちょ…じゃなくて竹井先輩が付きっきりで指導してくれるようになった
受験は大丈夫なのかと思ったけど自信満々に大丈夫だと言い切っていたし大丈夫なんだろうと納得することにした

そんなある日のことだ、彼女の口からその言葉が出たのは

「ねぇ須賀君、私と付き合ってみない?」と

…和に好意を抱いてはいたが、和の俺の認識は同じ部活の部員兼咲の保護者、というぐらいで
おそらく告白したとしても失敗に終わるだろう

俺だって思春期の男子だ、人並みに彼女が欲しいと思っている
ちょっと人使いの荒いところがあるけど美人だしおもちもそこそこある

ーーー付き合っていく内に彼女のこと知っていけばいい
そう思ってその場で受け入れた

最初の内はよかった、二人で一緒にいてたまにデートをしたりして…本当に彼女のことを好きになり始めていた
でも…付き合っていく内に少しずつ理解してしまった

彼女は本気で俺のことを好きなわけではない、これは彼女なりの俺に対する罪滅ぼしだ、と

俺自身は納得していたことでも彼女はやはり気に病んでいたのだろう
気づいてからはどうするべきか悩んだ
このまま彼女の罪悪感につけこんでいていいのかと
そうまでして彼女と付き合い続けていいのかと

ただ一つだけはっきりとしているのは…

俺は彼女のことをーーー



ーーー本気で好きになっている

そう気づいてからは私はどうすればいいのか悩んだ

彼を見るのが…怖くなった

ただの罪滅ぼしから言い出したと知られたら嫌われてしまうのでは、と


そう気づいて悩み始めてから彼女のことを見るのが怖くなった…

気づいたことを知られたら彼女は俺から離れてしまうのでは、と


ああ、私はなんて愚かなことをしてしまったのだろう

ああ、俺はなんて卑怯なんだろう


でも私は…私はそれでも…

でも彼女のことを思うなら…いっそのこと…

ーーー彼の傍にいたい

ーーー終わりにしてしまおう


京太郎「…竹井先輩」

久「っ…なぁに?須賀君」

京太郎「……別れましょう」

久「…え?」

京太郎「もう終わりにしましょう、こんな関係」

久「なん…で…?私のことを好きって「だからですよ」っ!?」

京太郎「確かに俺は貴女のことが好きです。でも…貴女はそうじゃないでしょう?」

久「そ、そんなわけ…」

京太郎「貴女はただ俺に対する罪悪感からそんなことを口走ってしまっただけで
    それを俺が浮かれて了承したからこんな関係が続いてしまったんでしょう?」

久「………」

京太郎「だからもう終わりにしましょう、これ以上は貴女のために「…がう」…え?」

久「…」ポロポロ

京太郎「っ!?」

久「確かに…確かに最初はそうだったわ…」グスッ

京太郎「せん…ぱい…?」

久「貴方の時間を奪って…ただ指導するだけじゃ貴方に報い切れてない気がして…」

久「でも他に出来ることなんて思い浮かばなかった」

久「そしてつい口に出してしまったのがあの言葉よ」

久「あっさりと受け入れられた時は驚いたけど…でも」

久「一緒にいる内に本当に好きになっていった」

久「貴方の隣がとても居心地よく感じるようになっていった」

久「笑いかけて欲しい、触れて欲しい、私だけを見て欲しいと思うようになった」

京太郎「………」

久「知ってた?貴方が他の女の子といるのを見かける度に嫉妬してたのよ?」

京太郎「先輩…」

久「私は貴方が好き。虫のいいことを言っているのはわかってる」

久「でも…それでも…私は…貴方が許してくれるのなら…」

京太郎「先輩」ギュッ

久「須賀…君…?」

京太郎「もういいですよ」

久「…っ」

京太郎「竹井先輩…いえ、竹井久さん」

京太郎「改めて…俺と付き合ってください」

久「!」

久「いいの…?こんな私で…本当にいいの…?」ポロポロ

京太郎「貴女じゃなきゃ嫌です。貴女じゃなきゃ駄目です」

京太郎「俺が好きになったのはそんな貴女なんですから」

久「…っ!私もっ!…私も…須賀京太郎君がーーー」


ーーー好き、です。



カンッ