小蒔「今年も桜、しっかり育つといいなぁ」

庭にあるまだ桜が咲いてない枯れた桜の木を見て、隣でぼそりと姫様が呟いた。
手には柏餅。
そして隣に濃いお茶といくつかの柏餅が置かれている。
ついでに言うと俺は見張り役兼一緒に留守番役として姫様と一緒にお茶を飲むことになり
何故か姫様とまったり過ごすことになってしまった。
目を細め儚げに桜の木を見る本人が美少女ということもあって
その様子はとても美しく、それこそ花のようだ。

かくっといきなり上下に揺れる頭。

小蒔「すぅすぅ・・・」

なんだか色々と台無しだ。
目を細めていたのもただ単に眠かっただけと。
まあどうせこんなこったろうとは思っていたけども、予想通りすぎて少し笑えてくる。
その体勢のまま寝てしまっては色々と危ない。
起こす為肩に手をやろうとすると、不幸にも男の性で胸に目がいってしまう。
今、小蒔さん寝てるっぽいしちょっとくらいおさわりしても大丈夫じゃね?
右のちっこい悪魔が誘惑してくる。
いや、しかしそんなことをしないと信じて姫様の監視を任せてくれた霞さん
に申し訳が立たない。と左の天使が訴えてくる。

ここでおさわりするか信用を失わないかを選択するならばやはり
一時の欲望に流されず信用を失わないだろう。
胸に行きかけている手を強制的に姫様の肩へとやる。
それにしても細い肩だなぁ、食べた栄養が全ておもちに吸収されているのだろうか。

京太郎「おーい、姫様~おきてくださーい。こんなところで寝ちゃ駄目ですよー」

肩を揺らす度にかっくんかっくんと大きく頭が上下に揺れる。
それと共に小さく結んだ髪もふわりと揺れる。
さらりとした艶のある髪は思わず撫でてしまいたくなるほどだが
ここはその欲望もおもち願望と共に引っ込めて気分を鬼にする。

京太郎「早く起きないと俺の手が段々下がって行きますよ。おきてくださーい」

完全には欲望を抑え切れなかったようで徐々に手を胸方面に動かしてしまう。
きっと、俺は今酷くだらしの無い顔をしているだろう。

小蒔「す、すぅ・・・すぅぅ~」

あれれ、おっかしいなぁ。
少し前まで普通だったのになんだか寝息が乱れているぞー
なんでだろう、不思議だなぁー
脳内でこの状況の後に起きる出来事を検索する。
しかしどれを見ても同じ結果で打開策などあったものじゃない。
もしかして、詰み?

京太郎「・・・」

小蒔「・・・」

京太郎「・・・・・」

小蒔「・・・続き、まだでしょうか?」

京太郎「きゃああああああああああ!!」

小蒔「え!?」

突然の悲鳴に驚く姫様。
それもそうだろう、野郎がいきなり女々しい叫び声を上げたら誰だって驚く。
俺でも驚かない自信はない。

京太郎「姫様が・・・姫様が肉食になられた!」

小蒔「え、えええ!?」

小蒔「私、肉食さんだったんですか!?ライオンさんみたいにがおーってしなきゃいけないんですか!?」

可愛らしく吠えてアピールする小蒔さん。
小ぶりな手を顔の横らへんで曲げ食べちゃうぞの形を作る。
あ、やばい、こんな肉食動物になら食べられてもいいかも、と一瞬思ってしまう。
って、そういうことを考えている場合じゃない。
ここからどうやって話を誤魔化していくか考えなければ!
どうして一度は引っ込めた煩悩が出てくるんだ!俺のバカ!アホ!おもち野郎!
違う違う、こんなベタでアホなことを考えている場合じゃない。
とりあえずなんとかして誤魔化さないと・・・。

京太郎「ライオンだったら猫科ですし、マタタビで懐かせないと食べられちゃうなぁ~」

小蒔「がう?」

役になりきっているのか精一杯のライオンの真似をしながらこちらを見る。
ええい、まだ数年の付き合いとは言え俺も姫様の扱い方には自信がある!
男京太郎、ここからどうするかを思いつけ!

京太郎「実は俺の指からはマタタビと同じ成分が出てまして・・・ほ、ほ~らマタタビだぞぉ~」

小蒔「!!がうがう、なぉ~ん」

姫様の目の前に指をやり、適当に揺らすと完全にライオンになりきっている姫様は
何故か、やけに上手い猫のモノマネをしてすりついてくる。
しかもマタタビ成分(仮)つきの指ではなく、俺に。

京太郎「ちょ、マタタビ成分があるのは俺じゃなくて指ですって!」

小蒔「にゃう~にゃぁん」

ライオンの真似をしていたと思えば今度は猫の真似になり、がばっと身体全体で抱きついてくる。
正面から上に乗るようにして抱きつかれたらそれはもう天国なわけで。
巫女装束の上からでも柔らかい肉のついたふとももの感触と大きなおもちの感触がダイレクトに伝わってくる。
余計な間違いが起こらないようあまり身体的接触をしないように避けてたせいか
今まではわからなかった姫様のほんのり温かい体温とおそらく下着をつけてないであろう胸の感触が
直に伝わってきてそれはもうパラダイスというかなんというか。

小蒔「にゃふー」

そして今度はその状態から徐々に俺の身体を後ろに倒して行き――ってこれマウントポジションじゃねえか!
俺の腰より少し下辺りに腰を落とし、その状態のまま抱きついてくる。
状況が悪化して冗談ではすまなくなってきた。
男との接触が少なすぎたのがアダになったか、距離感を把握していないのだろう。
っていうか女の子ともこんなやりとりは普通しないと思う。
現実逃避をしていたがむにゅりと俺の胸板で形を変えるおもちが目に入り強制的に戻される。
さっきよりも姫様のおもちの感覚が伝わってきて、しかも微妙に姫様が腰を前後に動かしている為
段々と暴れん棒将軍が戦闘体勢に入り始める。
ここで戦闘体勢に入られては困る為別のことを考える。
咲 咲 ポンコツ 咲 あ、やばい、なんか段々と出かける度に迷子になってた幼馴染に腹がたってきた。

小蒔「んふふっ・・・んちゅ、ぺろっ」

京太郎「!?」

脳内で咲に対しての愚痴を考えていると、姫様が顔を近づけてきて頬に唇をおとしてきて、舐められる。
ふれあいの範囲を超えている。
これはマズイ、直ちにやめさせないと。
よくよく感じてみれば徐々に俺の口に近づいてないかこれ!?
ちゃっかりと手を押さえつけてきている為腕が動かせない。
なにより万が一にでも男の俺が本気で退けようとして怪我でもさせたら霞さん達の前に顔を出せない。
しかし力の無い姫様にこんな力・・・まさか憑依か!?
いや、でも、そんな気は一切感じない。
一応俺も須賀家の一人、それが理由で拉致・・・じゃない、攫われたくらいだから霊感とかそういった類のものもある。
人一倍強いと言われていたくらいだし神様が降りてるか降りてないかくらいはわかる。
足をばたつかせるも片方の足は逆に姫様の足に絡め取られ無力化される。

「ただいま帰ったですよー!」

もう駄目かもしれないと諦めたかけた途端遠くから初美さんの声がする。
遅れて巴さんの声が聞こえてきて、静かだった屋敷がどたどたと騒がしくなる。
こんなところ見られたら終わる!
俺の人生が終わる!きっと家の権力で存在抹消されて首がとんでいく!
退いてもらおうとすると既に姫様は俺の上から退いていて、何事もなかったかのように隣に座っていた。
そのあまりの行動の早さに一瞬呆然としたがとりあえず俺も座る。

小蒔「ふぅ。時間切れ、ですか・・・」

残念そうな顔で息を吐き、すっかり冷めたであろうお茶を飲む。
そして柏餅を小さく食べる。

霞「小蒔ちゃーん、大丈夫だった~?悪い狼さんに何もされてないかしら?」

少しして、霞さんと春がやってくる。
歩きながらポリポリと黒糖を食べている春に食べかすこぼれてるぞ、と言いたいが今はそんな気分ではない。
そして逆に俺が悪い狼に襲われた気分だ。
狼じゃなくてライオンだが。

小蒔「あ、おかえりなさい!悪い狼さんはやってこなかったです!」

小蒔「それに、悪い狼さんが来たとしてもきっと京太郎さんがずばばーん!ってやっつけてくれます!」

そう言うとぱぁっと花が咲くかのような笑みで霞さんに顔を向ける。
それに俺は苦笑いをして適当に相槌をうつ。
しばらく雑談をしていると夕飯の支度があるからと言い去って行った。
まあ、これでいつも通りの姫様に戻るかなと思い立ち上がろうとすると
いつの間にか後ろにまわっていた姫様に抱きつかれる。
これは所謂あすなろ抱きってやつじゃないか!?
背中から伝わる姫様のおもちと香りに再びおっきしそうになるが出かける度に迷子になるポンコツを思い出す。

京太郎「ひ、ひひ、姫様!他に人いますしやめましょうよ!」

小蒔「大丈夫です、ばれませんよ。それにバレたって私がかばいます」

小蒔「言ってくれたらなんだってします・・・夜伽だってなんだって」

どうして、姫様が俺のことをそこまで慕っているのか検討がつかない。
元々小中と女付き合いが咲くらいしかなかった為女心とか一切理解できていない。
姫様も少し子供っぽいお方だし雰囲気に流された可能性もある。
お互いの為にもこの出来事は水に流したほうがいい。

京太郎「い、いやぁ、そういうのはやっぱり好きな男の人としかしちゃいけないですよ」

小蒔「・・・そうですね、こういうのは好きな人としかしちゃ駄目ですよね」

姫様が俺から手を離すと、勢いよく立ち上がる。

小蒔「今日は大好きなにくじゃがです!一足先に食卓のほうに行かせてもらいますね!」

にっこりとこちらに微笑みかけて、にくじゃがのことを考えているのか嬉しそうに頬を歪ませる。
よし、よし、今度こそいつもの姫様に戻ったようだな。
俺もその様子を見て立ち上がり、いつの間にか一つだけになっている柏餅を食べる。
食器とお茶を持ちそれを片付けるべく目的地へと向かおうとするが

小蒔「あ、そうだ!京太郎さん!」

後ろから声をかけられ振り向く。

小蒔「んっ・・ふふっそれではお先に!」

不意打ち気味に柔らかな唇を押し付けられる。
押し付けられている時間はあまり長くは無く姫様はすぐ離れる。
片手で自らの唇に触り、嬉しげに笑った後「にくじゃがにくじゃが~」と語尾に
音符でもつきそうなほど上機嫌で食卓へと向かって行った。

カンッ