元々存在感が薄く少し大きな動作をしなければ気付かれなかった。

そして、気付けば私を認識してくれる人は誰も居なく無っていた。
それからは、何も目的もなく惰性で生きていた。

そんな中こんな私を必要だと言ってくれた人がいた。
教室に来ては突然に「私は君がほしい」と叫ばれて呆然としたが、おもしろい人だと思った。

そんな加治木先輩と麻雀部として全国を目指したが、決勝敗退。

あれから数ヶ月先輩は無事卒業し、志望大学へと飛びだっていった。

一方で私は麻雀への熱が冷めていた。
むっちゃん先輩やかおりん先輩は良い人たちだ。けれど、存在が薄い私は見つけられない。
新入生たちも私を見出すことはできない。

だから、私にとって教室も学校も家も加治木先輩に会う前のように何の意味もないモノに戻ったのだ。


そんな時だ。

彼、――須賀京太郎に出会ったのは。


彼は、全国優勝を果たした清澄高校の男子麻雀部員だという。
かおりん先輩と同じように初心者で去年は個人戦で初戦敗退。それからは、マネージャー紛いの事をしていたという。

今までは牌譜整理や買い出し等は彼がやっていたそうだが、新入生が入部してからは他の子達がやるようになってからは、部内に居場所をなくしてしまったらしい。


話を聞いてどこと無く似たもの同士だなと思った。
世界に意味を見出せない私。楽しかった筈の場所が苦痛になった彼。

だからこそ私は惹かれたのだろう。
同じような気持ちを抱いた者同士、そして、私をちゃんと認識してくれる彼に。

出会ってから1月ほど経っていた。
あれからと言うものほぼ毎日というほど彼と逢った。

最初は会話なんてものは無かった。一緒に居る事に意義があった。
段々と会話をするようになった。

教室も学校も家も何の意味も無かったけど、今となっては彼との話の種を探す物になった。

彼に「モモは俺にとっての光だよ」と言われた。
そんなことは無い。彼こそが私にとっての光なのだ。私を何時でも見つけてくれる彼。

もう彼無しでは生きていけそうにない。

人気があったから、部活勧誘の際の部長に惹かれて、和に一目惚れしてとか麻雀部に入ったのは色々とある。

初心者の俺には難しい所もあったがそれでも楽しかった。
偶々先輩たちが遅れると連絡があったので和と優希で三麻になると思ったが、幼馴染で麻雀を知ってるっていう咲を誘ったら凄い打ち手だった。

部長は念願の団体戦に出られると意気込んていた。卓に入っても練習相手にもなれず、役も覚えきれない。

個人戦に出てみるも結果は火を見るより明らか。
初戦で敗退した俺は、麻雀部のマネージャー紛いの事をしていた。

道具の移動や雑貨の買い出し、牌譜などを行っていた。
タコスでお世話になってから仲良くしてくれるハギヨシさんのおかげで出来ないものはない位にまでなった。

清澄が全国制覇を達成した時はとても嬉しかった。
幼馴染の咲がどこか遠い人になったかのようにも思えた。

全国優勝後清澄高校麻雀部への入部希望者は最高値にまで達していた。

和や優希の後輩である室橋 裕子を始めとした有望な者が多かった。

初心者も居て新入生同士で教え合っていたり、2年生の3人も教えていたが、然して麻雀が強い訳でもない俺が教えることは無く買い出し等の雑用をしていた。

それも長くは続かず買い出しを始めとした雑用は後輩たちに取られ、麻雀の腕は新しい初心者にも超され麻雀部に俺の居場所はもう無くなっていた。


咲たち3人に何も言わずに休部するようになってから数日。

とある公園で何をするでもなくブランコに腰を下ろしていた彼女――東横桃子を見付けた。


彼女に話しかけたら「私の事見えるすっか?」と聞かれ意味が分からなかったが話を聞くと彼女は存在感が薄いらしい。

そんな彼女を必要としてくれた加治木ゆみ先輩が卒業してからは麻雀だけではなく何事にも冷めたという。

どことなく放っておけない人だと思った。胸がとかじゃなくその憂いた表情や死んだような目が何となく蔑ろにできないと思った。

それから毎日彼女と会った。
何を話すべきかと最初は戸惑ったが何の変哲も無い会話をしたら、彼女が笑った気がした。
それからは、今までのことや今日起きた出来事とかを話したり、聞いたりしていると彼女の表情と目に元気が戻ったのだ。

彼女は本当に楽しそうに笑う。もっと笑って欲しくて、学校で起きた楽しいことを彼女にも知って欲しくて行くのが一寸億劫だった学校が楽しみになった。

彼女に「モモは俺にとっての光だよ。」と言ったら「そんなことないっす、京ちゃんさんこそ私の光っすよ。」を返された。

麻雀が強いわけでも無いし、雑用もやろうと思う前には後輩たちがしている。
そんな俺にとって唯一の居場所となった彼女が光じゃない訳がない。

きっと互いが互いにとっての光であり、居場所なのだろう。





俺はモモという名の、モモは俺という名の底無し沼に嵌ってしまったのかもしれない。



カンッ