一「トリックアンドトリート!」
京太郎「……」
一「あれ、反応なし?」
京太郎「えっと……一さん。それ間違ってますよ?」
一「ん、何が?」
京太郎「アンドじゃなくてオアですよね?」
一「一般的にはそうだね」
一「でも、僕にとっては間違ってないよ?」
京太郎「……はい?」
一「さあ、京太郎君。トリックアンドトリート!」
京太郎「……」
一「お菓子を頂戴?」
一「悪戯してあげるからさ」
京太郎「……生憎今お菓子の持ち合わせがないんです」
一「それじゃあ僕が京太郎君にお菓子をあげるよ」
一「今日はハロウィンだからね」
京太郎「おっと、悪戯を封じられてしまった」
一「京太郎君は僕に悪戯をしたかったの?」
京太郎「はっはっは」
一「……どういう意味の笑いなのかなー、それ」
一「ま、いいや、京太郎君」
一「トリックアンドトリート!」
一「お菓子を頂戴!」
一「悪戯してあげるからさ!」
京太郎「今お菓子の持ち合わせが――」
一「君の右手にあるじゃない」
京太郎「すごい本末転倒ですね!?」
一「大丈夫大丈夫、最終的に京太郎君の下に戻ってくるから」
一「ちょっと僕の手に預けるだけだよ、すぐに悪戯して返すつもり」
京太郎「最初からそれ使って悪戯すればよかったと思うんですけど!」
一「やだなぁ、京太郎君から何かを貰えるってことが重要なんだよ」
京太郎「これもともと一さんのものだったんですけど、いいんですか?」
一「考えてみて、京太郎君」
一「京太郎君が作ったお弁当を、僕がお箸で『あーん』って京太郎君にしたらすごいうれしいでしょ?」
京太郎「……あー」
京太郎「確かに、天にも昇る気分になれそうです」
一「それと同じさ」
京太郎「……なんか納得しちゃった自分が恨めしい」
一「さ、京太郎君、トリックアンドトリート!」
京太郎「……」
京太郎「あーん」
一「あーん」パクッ
京太郎「嬉しいですか?」
一「ん、すっごい嬉しいよ」ングング
京太郎「それはよかった」
一「それじゃ、次はトリートだね」
一「んー……」
一「ちゅっ」
京太郎「んうっ!?」
一「ん……んっ……んーっ…………ぷはっ!」
京太郎「ぷはぁ……っ……は、一さん……」
一「ふふっ……ほら、ちゃんとお菓子は戻ってきたでしょ?」
京太郎「いや、そうですけど、そうですけども……!」
京太郎「び、びっくりした……」
一「作戦成功っ!」
一「悪戯っていうのはやっぱりびっくりさせないとね、えへへっ!」
京太郎「心臓に悪いですよ……もう」
一「ドキドキしちゃって?」
京太郎「……その通りですよ、畜生」
一「ふふっ、やっぱりアンドで間違ってなかった!」
一「それとも、やっぱりオアの方が正しかったって思う?」
京太郎「どう考えてもアンドが正しいですね」
一「だよね?」
一「……ところで京太郎君」
一「実は僕まだお菓子いっぱい持ってるんだけどね」
京太郎「……」
京太郎「トリックアンドトリート!」
カンッ
最終更新:2014年11月16日 06:52