何故?どうして?いつから?まとまらぬ思考のまま、自分の頬が火照っていることに気付いた。
宮永咲は痛む胸を抑え、どくんどくんと鳴らす鼓動を手のひらで受け止める。その痛みの理由を、知ってしまったから。
片岡優希とベタベタしてくっ付いている彼を見て、痛くなった。
染谷まこに指導を受けて真剣な表情をしている彼を見て、痛くなった。
竹井久にからからわれて振り回される、苦笑している彼を見て痛くなった。
原村和を、憧れと、そして異性として意識する彼を見て痛くなった。

「苦しい、よ。京ちゃん」

彼と一緒にいるだけで、痛みは和らぐ。
彼と会話をするだけで、心は穏やかになる。
彼と食事を一緒にするだけで、喜色満面な顔に自然となる。
──彼を想うだけで、胸の痛みは強くなり。熱は猛火の如く燃え盛る。

「……もう、我慢できないよ」

自分と、彼以外にいない部室。その彼も、夜更かしをしたせいで寝不足ということで、ベッドで寝ている。
もう、どうなったっていい。どうなったって構わない。
制服のリボンを外し、一枚ずつ制服を脱ぎ、下着姿となる。
残暑も通り過ぎた秋空は、裸に近い姿では肌寒い。しかし、火照る体はその涼しさがとても心地がいい。
眠る彼の側に潜り込んで、唇を重ね合わせる。

「ねぇ、起きて京ちゃん」

──こんな勝手なことをする、私を許さないで。起きて私を、咎めて。
僅かに残った理性が、彼にそう伝える。しかし、彼は起きる気はなく。
彼女の中の獣性が、本能のままに動き出す。少女の中に確かに存在する、女のサガのままに。

「ごめんね、京ちゃん」

涙声が混じった声は、誰も聞こえない。