俺はついに今日、咲に好きだという気持ちを告げた。
 長い付き合いでお互いのことよくわかっているし好意もあった、正直いけると思っていたが…

京太郎(付き合いが長すぎてもう京ちゃんのこと男として見れませんか…)

 逆だった、むしろその長い付き合いが足を引っ張った。
 もし中学のころに告白していれば結果は変わったのだろうか…

京太郎「はぁ…なんか疲れたな…」

 嫌な気分を変えるため外をうろついていたがいつのまにかずいぶんと遠くへ来てしまっていたようだ。
 身体と頭、心を休ませるため近くの公園へ入りベンチに腰かけた。

京太郎「ははっ…まさか咲にフラれるなんてな…」

 これを口にするのは何度目か…口してもなにも変わらない…はずだった。

「へぇ…君も失恋しちゃったんだ…?」

 いつの間にか俺の前に若い女の人が立っていた。

京太郎「……君も?」

「うん、とりあえず隣座ってもいいかな?」

 そう言われ俺は少し横にずれて女の人の分のスペースを空ける。
 ありがとうと一言言いその人は俺の横に座った。  

 ただこの人どこかで見たことあるような……あっ!

京太郎「もしかして…瑞原はやりさんですか?」

はやり「あっ、ばれちゃった?」

 軽く変装しているからわかりにくいが俺の隣にいる人は確かに牌のお姉さんの瑞原はやりだった。

京太郎「さっき”君も”って言いましたよね、ということは…」

はやり「うん、私もさっきずっと付き合ってた彼氏に別れようって言われちゃったんだ」

京太郎「ははっ、あの有名な牌のお姉さんに彼氏がいたなんて大スキャンダルですね」

 下手なアイドルよりはるかに人気のあるはやりんだ。もしばれていたらとんでもないことになっていただろう。

はやり「あの人収入が私より低いし家事もできなくてね、私といて自分が情けなく思えちゃったんだって」

 テレビで見かける姿とはまるで違う…なんというか語尾に☆がついていない感じがする、とにかくすごくまじめだ。
 確かにはやりさんはテレビや雀士としての収入が膨大だろう、家事もテレビ番組を見る限り人並み以上にできそうだった。

 その彼氏が劣等感を抱いてしまうのは俺もよくわかる。 

はやり「ほんとバカだよね。私はそんなこと気にしないし一緒にいられればそれでいいのに…」

 なんで男の子にはそれがわからないんだろう、そう言いたそうな顔をしていた。

はやり「よかったら君の話も聞かせてくれないかな?」

京太郎「俺の…ですか……」

京太郎「俺はですね…さっき幼馴染に告白してフラれました」

 少々悩んだが俺も打ち明けることにした。
 理由はよくわからないがただぶちまけて楽になりたかったのだろうか?

京太郎「もう長い付き合いで昔から好きだったんですよ…でもつい最近あいつが告白されたって知ったんです」

はやり「……」

京太郎「そして気が付いたら告白していて…でももう男として見れないって言われました…」

 話し終わったがはやりさんは何も答えない、少しの間沈黙が続く。
 お互いになんと声をかけたらいいのかわからない。  

はやり「失恋ってつらいねぇ…」

京太郎「ええ、つらいですね…」

 長い沈黙の後何とかお互いに言葉をひねり出した。

京太郎「今まで一緒だった人と関係が変わっちゃうのって本当につらいですね」

はやり「うん、本当につらい」

 もう咲とは以前のようにはいられないだろう。
 仮に表面上は変わらなくても奥底で絶対にしこりが残っているだろう。

はやり「こういう時に傷を舐めあえる人がいたらいいと思わない?」

京太郎「そんな人がいてくれたら楽ですよね」

 もう俺もはやりさんも心がボロボロなんだろう。
 まともな思考なんてしていない。

はやり「ねえ君、傷を舐めあう仮の恋人にならない?」

京太郎「そうですね、それもいいかもしれませんね」

 会って5分と経っていない、自棄になっているとしか思えない考え。
 そんなことをする理由はただ同じ境遇同士慰め合いたいと思っただけ。

はやり「お話したりデートやエッチなこともする、でもあくまでそれは仮初」

京太郎「お互いが立ち直るまでの都合のいい関係」

 互いに居なくなった人の代わりをするだけの関係、都合が悪くなったらいつでも捨てられる。

京太郎「これからよろしくお願いします、はやりさん」

はやり「これからよろしくね…えっと…そういえば名前聞いていなかったね☆」

京太郎「そうでしたね、俺は…」

 でも今の俺たちにはこれがちょうどいい。


カン!