人というものは、本当に奥が深いものなんだと実感する。
普段接している人が、一段深い関係になるだけでこうも印象が変わるものなのだと。

真面目で厳格で、でもちょっぴり可愛くて。
そんな彼女に憧れた俺なのだけど、目の前の光景には思わず絶句した。

「あ、あの…。菫さん?」

「き、京太郎…」

汗をかいたから着替えてくるという俺に、なら脱いだYシャツは脱衣所に運んでおこうという菫さんの言葉。

付き合って間もない彼女に、一人暮らしとはいえ家のそんなところを見られる恥ずかしさから断りを入れたのだが押し切られ。

遅くなっては悪いとものの数秒でTシャツに着替えた俺が目にしたのは。
俺のYシャツに顔をうずめる菫さんの姿だった。

「こ、これは…!その…!」

顔を赤らめこちらを見つめる菫さんは大変可愛らしかったがさすがに戸惑った。
そのまま次の言葉を待ってみると彼女らしからぬ言葉が飛び出した。

「お、お前の匂いが全部悪いんだ!」

「こ、こんなに私をこんなに虜にするのが!」

「ついでに言えば地球も悪い!」

「ち、近頃気温が上がってきて!余計に私を惑わせるから!」

「だから私は悪くない!」

つまるところただの匂いフェチですよね分かります。
俺の脳裏をよぎった言葉はそんなものだった。

ふむ。ならば仕方ない。
菫さんばかりズルいということで俺も得をしようではないか。

ゆでダコのようになった菫さんを黙って抱き寄せる。
胸の中でパニック気味の彼女に優しく問いかける。

「なら、直に嗅いでもらった方がいいかなって」

「ダメ…?でしたか…?」

限界が訪れ爆発した菫さんを見て、少々やりすぎた事を反省し。
お詫びに寝巻用のYシャツの定期供給の約束をさせられたりするのだが。
まぁ些細な事だろう。

カンッ