怜「そんでなー……あいつ、なんかうちが退院する度に、バカでかいパーティーを開くんや……
  お金もかかるし正直どうなんそれは、とか思わへん?」にやにや

久しぶりに会った高校時代の先輩
彼女の生活の様子を聞かされると
昔のコトを思い出して少し胸が傷んだ

──彼に一度だけ関わった、その一瞬だけで
彼は私の憧れになった──

残念だけど彼と私は全く接点が無く
話し掛けようなんて思わなかったし
話し掛けられるのも怖くて、避けることすらしていた
ただ私は船久保先輩から彼の写真を買って
遠いところから彼を眺めるのが好きだった


今 須賀くんは
私の憧れの先輩の 運命の相手


泉「いや、そんなうれしそうな顔で言われても説得力ゼロですよ、園城寺先輩……」

怜「そーか? 嬉しくないわけやないんやけどな。たまには二人で静かに、沈むように過ごしたいんや」

泉「なんや詩人ですね」

怜「うるさいわ。泉は最近どうなん? 彼氏は出来たんか?」にや

泉「!」どきっ

泉「いや、まあ……ぼちぼちですわ」

泉(言えるわけないやん……今、先輩と話してる所為で、須賀くんのことを後悔してる最中や、って)

泉(先輩みたいに須賀くんと付き合えなかったうちに、そんな浮かれた話は縁ないわ)

泉(ああ……未だに"須賀くん離れ"が出来へん……実際にうちと須賀くんが触れ合ったコトは無いのに……)

泉(もー……恨みますよ先輩……また今日も枕の中で高校のとき、うちが積極的やったなら、なんて妄想をして睡眠不足に……)

怜「ふうん? なんかあったら相談のるで? うちこれでも長いしな」

泉「はは……まあそんときは世話になります……」

泉(全く羨ましいなあ……さっさと結婚すればいいのに)

怜「うーん。そろそろ京太郎が迎えに来てくれる筈なんやけど、なんや遅いな……まあ偶然にも泉に会えたしええか」

泉(うちも先輩と話せたのは良かったですよ)

ぶろろろろ

京太郎「おう怜、迎えに来たぞー……」

怜「遅い!」ぷくー

京太郎「ごめんごめん。ほら、今日はさ……」


竜華「よっ、怜!」ひょこ


京太郎「竜華さんの誕生日だろ? 色々忙しかったんだよ」

怜「まあ、そうやな。竜華誕生日おめでとう」にこ

竜華「あはは。ありがと~。って、もしかしてアンタ……泉!?」

泉「ども、先輩。誕生日おめでとうございます」

竜華「ありがとー!」にこっ

京太郎「知り合い?」

怜「昔の部活の仲間やねん。うちらの後輩の泉ちゃんや、可愛いやろ」

泉(流石に覚えてもらってはないけど、こんな間近に須賀くんが……おーきに、神様……)

京太郎「確かに、かわいいな」

泉「……」どきどき

怜「せやろ? 泉はこの後竜華の誕生日パーティー来る? うちの家でやるんやけど」

泉「それじゃあ、お邪魔させてもらいます」

竜華「いやー懐かしいなぁ。なんか嬉しいわ。な、京太郎」

京太郎「そ、そうですね」そわそわ

泉「……?」

泉(なんか須賀くん、挙動がぎこちない?)


怜「じゃ、クルマ乗るで。なんやうちは後ろかー」

竜華「あ! 怜ちょっと待ち、お願いあんねん。そこのコンビニでジュースだけ買ってきてくれへん?」

怜「えー、パシリなん?」

竜華「そやで? 今日のうちは王様なんや」

怜「ぷっ。なんやそれ、まあええわ行ってくるわ」すたすた

竜華「ありがとなー。ほら、泉もお願い!」

泉「ええですよー」すたすた

泉「……」

泉(なんか……おかしかったような?)はてな


この時 容易に拒めた筈の
清水谷先輩のお願いを 断らなかったことを


泉「……」くるっ


京太郎「……」


泉(あれ、清水谷先輩は?)


京太郎「……っ……」


泉(? なんか須賀くん苦しそう?)


私は 直ぐに後悔する ことになる


怜「買ってきたでー」

京太郎「……ありがとう、怜」

竜華「おーきにおーきに!」

京太郎「……」

泉(須賀くん、顔色が悪いような……)

怜「なんや、どうしたんや京太郎? 腹でも痛いんか?」

京太郎「い、いや! 何でもないんだ、何でもな」あせあせ

竜華「……」にこにこ


──

怜「くぅくぅ」すやすや

京太郎「むにゃむにゃ」すぴーすぴー

竜華「完全に眠ってもた。このバカップル」じとー

泉「はは、そですね」

竜華「全く……うちの誕生日に何やっとんねん……まーええけどな」

竜華「イズミ!」にやっ

泉「は、はい?」

竜華「騒いだら、あかんで?」


そう言って清水谷先輩は
寝ている須賀くんにキスした


泉「え、えええ、ふごっ!」

竜華「騒いだらあかん言うたやろ」やれやれ

泉「ふごーっ、ふごーっ!」じたばた

泉(いやいやいやいや! え!?)

泉(先輩何してんですか!!?)

竜華「泉、うちな、京太郎を盗ろうと思ってんねん」

泉「え……?」

竜華「うん……」

泉「須賀くんを、園城寺先輩から……?」

竜華「うん……」

泉「本気、ですか……?」

竜華「うん、本気やで」

泉「そ、そんな……」

竜華「今日、無理やり京太郎に枷をかけておいた」

泉「枷?」

竜華「ちょっと、クルマでな。まあ、わからんか」

わかってしまった
私は清水谷先輩が大変なことをしでかしたことに気付いて、呆然とした

泉「なんで、今さら……」

竜華「……何でもええやろ、ただ」

竜華「もう親友の幸せを素直に喜べる人間やないねん。年を重ねる中、うちは段々色んなことに我慢出来なくなってきて」

竜華「もう……」

清水谷先輩は自分の罪を吐き出しているように見えた
疲れた顔をしている
その中で須賀くんを捉えてギラギラした目だけが、異常だった


朝になって解散すると
清水谷先輩は果敢に須賀くんに飛び付いていった
須賀くんは明らかに困っていたけど
拒絶する言葉が見つからないようだ

泉「……」

私は少し笑ってしまった
理想に思えた恋人同士も
自分たちではどうにもできないことで
幸せの天秤が傾いてしまうのだと

泉(ごめんなさい、園城寺先輩)

園城寺先輩の家を出る直前
須賀くんの懐に忍ばせた私の御手紙が
須賀くんにとって拠り所となりますように

泉(こんな私をどうか、許さないで下さい──)

私は少し晴れやかな気持ちになっていた
心を入れ替えたりこれからのことを思ったりしたら
まるでいつも枕の中で妄想していた"私"を実現出来たみたいで
長年の恋に胸が高鳴っている



『須賀くんへ
清水谷先輩とのこと見てしまいました
悩んでるようでしたら何時でも力になれます
私だからこそ話せるコトもあると思います
溜めずに楽になりましょう
気楽に電話してください
須賀くんの幸せが壊れませんように
                 二条泉』



カンッ