青春…

それは悔いなく燃えていく事…

打ちのめされるのも、栄光を掴むのも変わらないという事…



その日の午後、長野県内のある競技場に審判の笛が木霊した

「ゲームセット!」

中学生のハンドボール県予選大会、その決勝戦の終了を告げるホイッスルである


わっ、とフィールド場の勇者達に駆け寄る控えの選手達…

称える者、感動を分かち合う者、抱き合う者、

そして敗北に涙する者を慰める者…


「京太郎…お前が一番頑張ってたよ」

「そうだよ、いい試合だったじゃないか」

チームメイトの言葉を受けても京太郎と呼ばれた少年は泣き止まない

「終わった…終わっちまったんだ……ちくしょうっ…!」

うずくまったまま動かない京太郎の背中をさする仲間達…

「さあ、戻ろう」

「ふっ…うぅっ……!」

仲間の肩を借りて、控え室にさがっていく京太郎

全力で戦って負けた事で得られる誇りもあるという事を学ぶには、彼はまだ若かった…

……

「お疲れ!」

「ちゃんと観てたぞ!」

「頑張ってたな!」

控え室に戻った彼らを待っていたのは、それぞれの友人達であった

そして…


「京ちゃんお疲れ様!」

「咲…」


京太郎にはクラスメートの咲が彼の帰りを待っていた


「負けちゃったのは残念だけど、とってもかっこよかったよ!」

「ああ…ありがとう咲…」

「うん!…あ、京ちゃん、ユニフォーム少しほつれてない?見せて」

「え?そうかな…」

「そう見えるよ?」

「うーん、じゃあ頼む…」


そうして咲の言うとおりにユニフォームを脱ぐ京太郎


だが、その時…

「なあ、京太……」


チームメイトの一人は目撃してしまった!

咲は京太郎が脱いだユニフォームを決して急がない、そしてよどまない…

流れるように受け取り手元に…

その時京太郎成分たっぷりの汗だくユニフォームは、
咲が隠し持っていた別のユニフォームと…

すり変わるっ…!


「(うっ…!?)」


このとき、チームメイトの彼は気づくが、時遅く…

すでに手中に汗だくユニフォーム――!

瞬く間もない…電光石火っ…!


「(こ、この女…盗み慣れていやがる…!

この負けたチームを慰めようというムードの中でなんて大胆な事をっ…!

悪魔じみていやがるっ…!!)」


そして咲、すり変えたユニフォームを何食わぬ顔で京太郎に渡すっ…!


「うーん見間違いだったみたい、ほつれは無かったよ」

「そうか…」


京太郎、気づかずにそのユニフォームを着るっ……!

見ていたチームメイトの少年…ただただ唖然っ……!


「(なんていうか…早いだけじゃなく…そう、静かなんだ…

気配まで消している…

だから京太郎も気づかないっ…!)」


究静極技――

咲、京太郎の汗だくユニフォームを手にするっ…!


そして京太郎が咲から離れると、咲の目が目撃していた少年に向けられたっ…!


「(ひっ…!!)」


『誰にも言うな…』、その目はそう告げていた……

彼も黙って、それに従うしかなかった……

チームメイトの少年はこの小柄な少女に…


魔王の片鱗を見たのだ……

…………

「……で、これがそのときユニフォームなの」

「ひぇー、咲ちゃんやっるぅー!」

「明らかに場慣れしているように思えるんですけど、それは…」

「和、世の中には知らなくていい方の事が多いのよ…」

「なあなあ咲ちゃん!それ、着させて欲しいじぇー!」

「だぁーめっ!ただ汗を吸い込んだシャツとかならまだしも、
これは京ちゃんの流した涙とかも吸っているんだよ!

たとえ何億出されたって渡す気はないから!」

「ぐぬぬ~…!」

「その代わり、昨日手に入れたばかりのシャツとパンツならあげるから」

「ほ、本当か!?」

「あ、私もそれ欲しいですね」

「私も~♪」

「はいはい、順番だからね順番!」


「………」

その光景を、京太郎の靴下を片手に離れて見ているまこ…
彼女の胸中には咲への畏怖ににた感情がうずまいていた…


「(しっかし、なんて女じゃ…

普通は愛する男が泣いていたら懸命に慰めるところを、
あえてユニフォームを奪いにいくとは…

その時点で常人とは次元が違うけぇのう…!)」



咲は最初に女の子らしく振舞って服を脱がせ……

その後にバレないよう別の衣服を京太郎に着せ直すという……

異端の京コレ感性を武器とする女……!


カンッ