久「須賀君、ちょっとしたボランティアをしてみない?」
京太郎「ボランティア?別にいいっすけど、ごみ拾いとかですか?」
久「そんな疲れさすようなものじゃないわ
ちょっと朗読してほしいだけよ、ほらコレ」
京太郎「赤ずきんちゃん……?」
久「そっ、ちょっとした幼稚園とかでやるような人形劇のお芝居用の音声よ
知り合いに探してほしいて頼まれていてね、できれば男の子の声がいいって言われたから」
京太郎「それで俺に、と…」
久「突然だけど、やってくれるかしら?」
京太郎「勿論っすよ!子供達のためならやらせてください!」
久「イエス!」グッ
京太郎「あはは、大げさに喜びすぎですよ先輩……で、どこで収録するんですか?」
久「ああ、ここでいいわよ
はい、このマイクに吹き込んでね」
京太郎「わかりました、じゃあ早速……」
久「あ、ところでひとつ注文があるんだけど、おばあさんに化けた狼の台詞あるでしょ?
あそこはなるべく色っぽく言ってほしいのよ」
京太郎「色っぽく、ですか……?」
久「ああ、ほら…ええと、あれよ
女の子を誘い込もうとしている悪い奴を表現するなら、そういう演技がいいって事でね」
京太郎「ふーん、なるほど……わかりました」
久「んじゃ、よろしく~」
京太郎「ああ、緊張するな~…
でも、俺の声で子供達が喜んでくれるならやるしかないな、よし!
こほんっ
昔むかしあるところに………」
久「(しめしめ……)」ニヤリ
…………
カチッ
『お前の声がよく聞こえるように、さ…』
『お前の姿がよく見えるように、さ…』
『お前を…強く抱きしめるためさ』
『お前を……食べるためさ!』
カチッ
久「いかがですか?狼になった須賀君の音声は…
短いものではありますが、実に妄想広がる色気のある声と台詞じゃありませんか!
目覚まし時計の声に使うなり、安眠CD代わりに使うなり、夜のおかずに使うなり、好きにしてください!」
ネリー「さあ、その声を録音したテープ!今なら一個千円だよー!買った買ったー!」
優希「あ、アイツの声で抱きしめるとか…そ、そんなの反則すぎ………買わなきゃ馬鹿だじぇ!!」
和「はいっ、一万円!お釣りは結構です!!」
照「ちょっとそこのまな板どいて、京ちゃんのテープ買えない」
咲「もうっ、お姉ちゃんこそ絶壁のくせに邪魔しないでよ!」
透華「キエェェーーー!全部キャッシュで買いますわぁぁーーー!!」
衣「一つ買ってみんなで聞けばいいと衣は思うのだが…」
美穂子「いいおかずがあるって聞いてきたけど…これ食べられるのかしら?」
佳織「ど、どうしよう…気づいたら三つ買ってた……うぅぅ、奪い合いが始まっちゃうよぉ…」
豊音「夜のおかずって、京太郎君の声でご飯食べるってことかな……うん、いけそうだよー!」
白望「逆に眠れなくなるかも…ダルい、でも買っちゃう…」
洋榎「うおー!人が多すぎて腕がワゴンまで届かんー!絹ー!」
絹恵「はいよお姉ちゃん!肩車作戦やー!」
怜「竜華ー、ウチらもあのアホ姉妹と同じのいくでー」
竜華「よっし、怜!乗りぃ!」
春「京太郎に黒糖のように食べられる夢が見れるなら……」
淡「あ、あわわわ…か、買っちゃった…////」
憧「な、なによこんなの…ずるいわよ…買うしかないじゃない…!」
穏乃「うーん、私はいいや…聞きたくなったら京太郎の家に乗り込むし」
洋榎「やいやい!いまのウチが先に手つけたやろー!」ビシビシ
怜「ウチが先やー」バシバシ
……
久「なんか騎馬戦始める人らもいたけど、何とか無事に終わったわね」
ネリー「やったやった、これで大儲けだよ!
ありがとね、久」
久「な~に、話を持ちかけてきたのはそっちじゃない
この商法でまた須賀君になんらかの声を録音させて売り出せば……」
ネリー「想像しただけで笑いがとまらないや…ネリリ…」
久「ヒササ…」
ネリー「ネェーッリッリッリッリッリィーー!」
久「ヒィーッサ……」
バタンッ
まこ「そこまでじゃ!」
智葉「全員膝をつけー!」チャキッ
久「チッ、思ったより早く勘付かれたか!笑わせてくれたっていいじゃないの!」
ネリー「逃げるよ久!」
まこ「待てー!」
智葉「今度という今度は許さんぞ!」
まこと智葉の懸命の追跡も甲斐なく、ヒッサとネリーは姿を消した
この日、会場内で売買された京太郎のテープは100本を超えていたという…
京太郎「それにしても人形劇って、どこの幼稚園でやったんだろ…俺も見に行きたかったなぁ」
カンッ
最終更新:2014年05月29日 16:12