学校であった須賀い話



次は私が話しますね

これはね、お姫様のお話なの

…私達はその子の事をそう呼んでいるんですよ

名前はJ代K蒔ちゃんっていうんですけど

K蒔ちゃんは不思議な子で、いわゆる天然っていうのかな

おかしな事は言わないんだけど、ちょっと人とはズレてるっていう感じ?

だけど心は半紙のように真っ白で無垢、それでいて頑張り屋さんで…見ていると癒されるんだ

……でも、それは霧島の巫女として籠の中の鳥のように育ってきた結果だから、

少し考えちゃう時も、たまーにあるんですけどね


それで、これはそんな子が男の子と知り合ったらどうなるか

というか、どうなっちゃったかというお話


その男の子…ていうか京太郎君なんだけど

よくある話で麻雀部同士の交流で知り合ったの

私達はあの夏のいわゆるBブロック勢だったしね

第一印象はお互い最高によかったみたい

京太郎君は姫様の素直な性格と…うん、特定の部位に釘付けになっていましたよ

その姫様も相当なものだからね………少し分けて欲しいくらい

あはは……でね、我らがK蒔ちゃんも京太郎君とわかれた後は、

もう一度会いたい、会ってお話がしたい、ってしきりに言っていた

それもそうだよね、こっちがお姫様なら、あっちも絵本に出てきそうな王子様みたいな人だもん

…うん、少なくとも外見は

それでいて気さくで明るくて人なつこいし、本当に素敵な男の子と知り合ったのは姫様も初めてだったから
すっかり彼の虜になってしまったの

何しろ、県内、いや全国でも有数の大きい神社の箱入り娘、知り合える男性なんて
氏子総代か、神主か、父親ぐらい…

しかも皆、畏敬の念をもって接していたから、
フレンドリーに楽しくお話をしてくれる京太郎君は殊更、特別にうつったんでしょうね

…立場同じだったら私もコロっといっちゃってたかもなぁ


それはまあ、姫様が嬉しそうだったという意味では嬉しい誤算でした

だけどそうでもない誤算もあって……

京太郎君に特別な想いを抱いたのは姫様だけじゃなかった、

同じ仲間のT見Hっていう子も、去っていく京太郎君の後姿にじーっと熱い視線を送っていたの…


それから京太郎君が遊びにきてくれたから私達はかなり早く彼と再会できました

その時は京太郎君のアイディアでこっそり神社を抜け出して
市内にあるゴーカート乗れる公園があるからそこへ行こうって話になったんです

バレないように京太郎君がプランを練ってくれていて、本当に皆で静かに抜け出して……

あ、ちなみにこれは後で聞いたんだけど、
抜け目ないことに京太郎君はあらかじめ神社のほうに私達を連れて遊びにいく許可をもらっていたんですって

だから、実際は堂々と連れ出してよかったけど、こうしたほうが面白いからって事で…

とにかくその時は皆ちょっとした冒険気分で、最初は務めがあるのでと断ろうとしていた姫様も
京太郎君に大丈夫ですからと言われて結局参加して、みんなで私服に着替えて神社を抜け出していったの


公園につくとお目当てのゴーカートは平日のまだお昼前なのに少し人がいて、
二人乗り用が一台残っていた

そこで誰が乗るのかって話になったんだけど……

最初はH美さんとKさんという仲良しコンビの人らが乗りたい乗りたいってはしゃいでいたから、その二人が乗っていったの

それからすぐに別の二人乗りカートが戻ってきた

さて、次だよね

私は速い乗り物って苦手だから後にしてもらう事にしたの

一緒に来ていたA星ちゃんとYちゃんも公園を見て回りたかったみたいで、
どこかへふらふら行っちゃってた、まあこの二人は中学生だし大人しく待つのが退屈だったんだろうね

普段はそんな事しないんだけど、外に出てちょっとウキウキしていたみたい

となると残る姫様、H、京太郎君のうちの二人が先に乗るわけだよね

そうしたら、Hが京太郎君と一緒に乗りたいって珍しく強い口調で主張したんだ

京太郎君もオーケーして、Hと京太郎君が先に乗ることになった
…この時、姫様がどんな顔してたのか見ていなかったけど、今なら想像できちゃうな

二人が乗り込んで発進させようとしたとき、何故かカートが進まなかった

京太郎君は首をかしげながらアクセルを踏んだりしたんだけどダメだった

それで係りの人に見てもらったけど、それでもわからなかった

仕方ないからHと京太郎君が降りたら、姫様が
「もう一度動かしてみましょうよ、ほら京太郎さん」って京太郎君にもう一度乗るようにうながしたんだ

京太郎君が運転席についたら、私も少し見てみたいといって、姫様もその隣に座った

すると……あんなに動かなかったカートが途端に走り出して、
そのまま二人を乗せて猛スピードで発進しちゃったの

係りの人も私も唖然としてたけど、Hは………


……凄く怖い顔をしていた


しばらくするとKさんとH美さん、そして姫様と京太郎君が戻ってきた

姫様は運転中は京太郎君の腕にしがみついていたみたい

降りて怖かったーと笑いながら私達の方に戻ってくるとき、姫様はHにぼそっと呟いた


………ごめんなさい

ちょっと思い出しても震えちゃうんです…


あの姫様が……普段からは想像できないような低く冷たい声でね









「身の程を知りなさい、H…」







偶然聞こえてしまった私は耳を疑って急いで姫様を見たけど、
もう彼女は鼻歌をうたいながら京太郎君に「突然動き出して怖かったですねー」なんて
いつもどおりの口調と笑顔で話していた…


聞き間違いだって思いたかったけど、姫様の背中を射殺すような視線で睨んでいるHを見て、
確かに姫様が呟いたんだって分かったの…

この事、ちょっとKさんとH美さんにちょっと言ってみたんだけど、
二人とも何故か貼り付けたような笑顔で

「あらあら、A星たちはどこへ行ったのかしら」って露骨に聞かなかったふりをしたの


…その後は特に目立ったこともなく遊んでいたんだけど、私はずっとあの姫様の声が気になっていた

もし、あれが彼女の本性だったら……って

でも姫様は色んな神様を降ろせる人だから、突然なにかの神様が乗り移ってあんな事を呟いたのかもしれない
そう考えたほうが自然だし、私も気持ちが楽になれる


……だけど、ふとこんな事も考えちゃうの

今までの姫様の振る舞いは全部演技で、仲間の中で知らないでいたのは私だけ

神様も実際は自由に降ろせるから、あの時カートを不調にして京太郎君の隣に座ることぐらい朝飯前だったのでは…って


でもそんなのおかしな考えだよね、姫様が演技する必要なんてないんだし、神様がそう簡単に降ろせるわけがないもん
だからこれは私の妄想、突拍子もない馬鹿な妄想

…そうでなかったら私、怖くてどんな顔して会話していいかわからない


………姫様とHは今は仲良くしてるよ

私の妄想の通りなら、それは仕事があるから表面上そうしているだけで、
内心は京太郎君をどうやってモノにしようか策をめぐらせている事になるけど

あはは、そんなのあるわけないか

うん、絶対ね………絶対、あるわけない…


さて、私のお話は以上です

次はどなたですか?


カンッ