学校であった須賀い話



私が最初に話すのか…

ああ、これはうちの部員の話なんだが、
話す前に、その…彼女の名前を伏せることはできないだろうか?

記事にしたいのは分かるが、彼女の名誉もあるからな
その条件でなら話そう


…ああ、すまない

では、続けよう

その彼女の名前はT山M月というのだが、ある男子生徒…そう須賀京太郎に心を奪われていてな…

いわゆるストーキング行為をしていたんだ


はじめは須賀の家の前までつけるだけだったそうだ
自分の目の前をその男が歩いている、それで幸福を感じていたらしい

……ああ、私だって理解はできないが、とにかくT山は彼の後をつけていた


しかし、段々とそれだけでは刺激を得られなくなったらしい

T山はカメラを持ち歩くようになり、つけている時に須賀の後ろ姿を撮り始めた

須賀の一瞬一瞬が自分の手のなかにおさまっていく快感にT山は酔いしれた

すると次の段階へ踏み込んでみたくなったんだ

今まではT山は須賀が家にたどり着くとそこで帰っていったのだが、
ある日、須賀が家に入っていくのを見届けたあと彼の家の前に忍び寄り、家を背景にしてカメラを片手に自分を撮った

記念撮影のつもりだったんだな

まるで自分が須賀の家の一部になった錯覚をおぼえて、T山は興奮した


するともう歯止めはきかない、また次にいきたくなった

とうとうT山は須賀の家のなかに侵入し、居間、台所、トイレ、風呂、そして須賀の部屋と各部屋の写真を撮っていった

特に須賀の部屋に入ったときはめまいがしそうになったそうだ

彼のにおいで満たされたその空間にたっているとT山は理性を保てなくなっていった


…別の日に侵入した際、T山は家中に盗聴器を仕掛けていった
しかも、その日は自分の家には帰らず、彼の家の近くで中の音を聞いていたんだ

そこには自分の知らない須賀京太郎がいた

須賀が出すあらゆる生活音が彼の声と一緒に自分の耳のなかに入ってきた
至福のあまり涙が出そうになったが、T山はこらえてじっと音に聞き入った

……そんなことを一週間以上も続けた
彼が帰宅してから寝るまでの間の全ての音を聞くのが日課になっていった

須賀が家のどこにいて、何をしようとしているのかが手に取るように分かるようになり、

彼が何か探し物をしているのであれば小声で

「違う、小麦粉は横の戸棚だ」

「牛乳は先日きらしていただろう」

「昨日の新聞なら母上が捨てていったぞ」などと呟くようになっていた

もう気分は須賀家の一員だったんだ…



………私がこのことを知ったのは、T山が部室内でこの盗聴していた音声を聞いていたからだ

音楽を聴く事もあるのだな、と珍しく思って話しかけたら

あっさりとこの事を話してくれたんだ


明らかな犯罪行為を告白しているのにも関わらず、彼女は眉一つ動かさず実に滑らかな口調で話していた
その罪悪感の一切ない表情を私は心底恐ろしく感じたよ…今でも思い出す

…私は聞いてみた

「T山は須賀を好いているのか?」と、すると彼女は

「はい、勿論愛しています」とあっさり答えた

私は「そうか…」と呟くしかできなかった


本来なら警察に話すのが当然なのだが、あの話していた時の顔、須賀への愛を語った時の顔を思い出すと、
今止めようとしたら間違いなくT山は暴走するだろうと思ってしまうんだ

なにしろ、それは彼女にとっては何も悪いことではないのだから…

自分の愛ゆえの行動を止める人間を果たして容赦するだろうか…?

危険な行動に出るのではと考えると……


……今でもT山は須賀へのストーキングを続けている

私はずっと止める事ができずにいて、他人に話したのも今日が初めてだ


この企画に感謝する…

秘密の話を遠慮なく打ち明けられたし、

私のほかにも同じような悩みを抱えている人間がいると知って、少し安心できたからな


さあ、こんな途方もなく情けない私の話は以上だ…

次は誰が話すんだ?


カンッ