花は枯れてしまった
京太郎が前に来た時くれた花
その花びらが台に落ちて模様をつくっている

竜華「愛しの彼が来なくなって、随分寂しそうやんか」

竜華「花、捨てちゃったほうがいいで。みっともない」

怜「……嫌や」

怜「この花瓶を掃除するのは、京太郎って決まっとるんや」

怜「勝手に触ったらあかんで?竜華でも怒るで?」

竜華「はいはい。触らんから心配要らんわ」

竜華「……京太郎、どうしちゃったんやろね、連絡も寄こさんと」

怜「電話しても繋がらんしな。ほんまどうしたんやろか」

怜「流石に、へこむし……寂しいで……」うつむき

竜華「怜……」


竜華「……」にや

竜華(ごめんな、怜)

竜華(でも仕方ないことやんな。このまま怜には京太郎を諦めてもらわんと、困るんや)

竜華(──京太郎は今、私の彼氏なんやから)

竜華(病室に通うのを辞めさせたのは、あまりに怜の気持ちが強くなり過ぎてきとるから)

竜華(あかんねんそれは。京太郎にとって、怜よりうちが、何もかもええんやから)

竜華(だからごめんな、怜)

竜華(そのまま布団にくるまって、京太郎のことは忘れていきや)にやっ

怜「……そろそろ時間やな」ぼそっ

竜華「?」

怜「ごめん竜華、そろそろ帰ってええで?診察があんねん」

竜華「そっか。じゃあまた来るで、夜更かしはしんときー」すたすた

怜「全く、母親ちゃうんやから……またな、竜華」ふりふり


ばたんがちゃん


怜「……」

かつかつかつかつ

がちゃ

怜「……ふふふ」

京太郎「勘弁して下さいよ……あやうく竜華とすれ違うトコでしたよ?」

怜「そのほうがスリルがあって、たまにはええやろ?よく来てくれた、京太郎」

怜「──抱き締めて欲しい……」

京太郎「……全く」

ぎゅっ

怜「ああ……あああ……」

怜「最高や……」にこにこ

怜「今まで、竜華のふとももが、この世で一番のぬくもりやと思っとった」

怜「こんな、こんなもんがあるなんて、知らんかった……」ぎゅっ

京太郎「……怜さん」

京太郎「いいんですか、花を替えなくて」

怜「はぁ。何言うとんねん、浮気もんが。竜華にバレないように演技するのも、しんどいくらい繊細な作業なんやで?」じとー

怜「うちとしては、さっさと竜華と別れて欲しいねん。いつまで待たせるん?」

京太郎「すいません……こんな最低なこと、はやく断ちたいのに……それには俺は二人とも、好き過ぎる」

怜「その言葉も聞き飽きたなあ?……まあええわ。うちはこんな身体やし、京太郎が隣に居て、私の"彼氏"で在り続けるなら、少しくらいのやんちゃは許したる」どやっ

京太郎「と、怜さん……」

怜「ふふ、京太郎可愛いなあ……んー♪」ちゅー

京太郎「んんっ……んーっ……!」

怜「ぷはっ……もっと味わいたいなあ……」じっ

京太郎「……全く、病室だっていうのに……」

怜「ええやろ、スリルがあって。……京太郎、ほら……」ばさあ

京太郎「……」ごくり


竜華「あっ!」

竜華(そういや、部活の連絡忘れてもーたな。今から戻っても診察中やろか?)

竜華(まあええわ。書き置きだけでも残しとこ)くるっ

竜華(ほんまはやく良くなって、バシバシ部活にも来てほしいけど、無理はあかんしなあ)すたすた

竜華(でも部活にくるくらいになれば、私と京太郎のことも自然にばれちゃうやろーなあ)すたすた

竜華(どう言おう?心は痛むけど、そのまま言ったほうが傷は浅いかな……)ぴた

「……っ……あっ……」

竜華「?診察中かな?」

「ええよっ……きょう……」

竜華「なんやよーわからんけど、とりあえず突入や!」ばーん


ぱんぱんぱんぱん

怜「はぁっ……はぁっ……」ぐりぐり

京太郎「おお、それすげ……」

京太郎「てか、そんな動いて大丈夫なんですか?」

怜「んー?今はオールオーケーやで♪」にこっ


ばさああああっ!!


「「!!?」」

竜華「……な、なんやねんこれ」

竜華「なあ、カーテンと壁で隠せたつもりか?外まで響いとったで?はは……」

怜「……」

京太郎「あっ……そ、その……ごめん!!」ずたばた

京太郎「い、言い訳出来ない、ほんと……あの……」

竜華「え、何が?言い訳てなに?え?」

竜華「なに?どーいうことやこれ?」ぽろっ

怜「……泣いちゃった」

竜華「怜、どうして……」

怜「どうもこうもないやろ。今、竜華が見ているものが現実や」

竜華「きょ、きょうたろ……」くるっ

京太郎「……ああ、俺は怜さんと……そういう関係にあった……」

竜華「っ……」くらっ

怜「理解、出来とるか?竜華」

怜「竜華は京太郎とまだヤれてないって聞いとる」

怜「京太郎は、私と共に初めてを散らしたんや」

怜「……竜華、聞いとるか?」


竜華「聞いとるわボケ……」ぼろぼろ

竜華「あほ……京太郎のあほ……」ぼろぼろ

京太郎「ごめん……」

竜華「……」ぐっ

竜華「なんや、ずっと騙しとったんか……?」

竜華「感服やな。京太郎は厳しく監視しとったつもりやのに、まんまと騙されたわ。いや、流石怜やな」

竜華「この花もフェイクか。厭になるくらい細かいことやね」すっ

竜華「なあ、この花瓶ええ形しとんな?」がしっ

竜華「そう思わんか?怜」

怜「……さあな」


ばこっ!!


京太郎「怜さんっ!」

怜「……つぅ……」ぼとぼと

竜華「ちっ……」

竜華「笑っとったんか?」

竜華「うちを出し抜いて、京太郎を寝取って、そら気分ええやろな?」

竜華「どうなんや、怜」

怜「……くっ……くははっ」

怜「あはっ……あははは!!」けらけら

竜華「……」ぎろっ

怜「ひぃー……ひぃー……せやな、気分ええわ」

怜「気付いとるか?今こうやって竜華が真相に気付いて、花瓶でうちを殴った時点で」

怜「竜華、オシマイなんやで?」にたあ


ばこっ!!


京太郎「竜華やめろ!」

竜華「京太郎は黙っとき!!!!!!」

竜華「浮気者……」

京太郎「っ……!」

怜「な、もう解ったやろ?」どくどく

怜「もう無理やて。竜華はすぐ暴力ふるうし京太郎は竜華を捨てるで」

怜「な、京太郎?」

京太郎「そ、それは……」

竜華「怜ィ……いい加減にしいや……」がしっ


怜「竜華……ごめんな。いくら竜華でも退かへんで」

怜「うちな……京太郎は、絶対手放せないんや」

ぱしんっ

怜「……」ひりひり

竜華「そんなんうちもや!」

竜華「病弱やからていつもみたいに我儘通ると思うたんか!?通るかぁボケ!!」

竜華「他の何だって、怜にやる!!けど京太郎だけは駄目や!!」

竜華「ああ!!なんもかも滅茶苦茶や!!全部真っ白や!!京太郎とうちはうまくやれとったのに!!」

竜華「このままずっとうまくやれると思っとったのに!!怜のせいで滅茶苦茶や!!どうしてくれんねん!!?」

竜華「それでいて京太郎は手放せない!?ふざけるのも大概にしろやぁ!!!」

竜華「ああああ……」ぼろぼろ

京太郎「……竜華」

怜「京太郎、ええで。京太郎が気に病むことちゃう」ぽんぽん

京太郎「で、でも」

怜「これはうちと竜華の問題や」

怜「悪いけどな、竜華。竜華がもたもたしとるあいだに、京太郎の全ては私が貰ったんや」ぎろっ

怜「殴ったことは不問にしたる。もう出てけ。そして京太郎と別れろや」

竜華「~~っ!」ぐつぐつ


竜華「ふざけるな!!ふざけるなああっ!!!」

がしゃっがしゃーん

竜華「怜のあほ!かす!泥棒猫!!」

ばごっばごっぱりーん

怜「派手に暴れんといてや。病室やで?」

竜華「うるさい!!!」

怜「目の充血が酷いで。もう帰り。じきに人が駆け付ける。私がやったことにしとくから」

怜「ほんま、ごめんな」

竜華「……許さへんで、怜」

竜華「これで済むなんて、思うんちゃうぞ」

竜華「京太郎、行くで」すたすた

京太郎「あ、ああ……いや……」

竜華「なにもたもたしとんねん!?お前誰の彼氏や!!?」

京太郎「っ」だだっ


怜「……またな、京太郎」にや

竜華「ドアホ。もう来ることなんて無いわ」ぎろっ


がちゃん



竜華「京太郎……」

京太郎「すいませんでした」ずざあ

竜華「土下座なんてやめーや。みっともない」

竜華「ええよ。怜のバカはいつかやらかす思っとったわ」

竜華「京太郎やて男や。ぐいぐいくる怜を前にしたら揺らぐのも理解出来る」

竜華「はっ!アタマ冴えてきたわ。目の前で彼氏が他の女とヤッとんの見たのに」

京太郎「すいません……すいません……」ぼろぼろ

竜華「泣くな!なんで泣く!?私をフる気か!!?」ぶんぶん

京太郎「いや、そんなわけ!」

竜華「せやろ?うちと京太郎は一生、一緒やもんな。怜なんか一時のノイズや」

竜華「そうや、怜なんか……怜なんか……」ぽろっ

竜華「怜ィ……」ぽろぽろ

竜華「親友ちゃうかったんか、怜ィ……」ぽろぽろ

京太郎「……竜華さん」

竜華「ええよ。怜とは絶交や。あんなボケ、もう知らんわ。京太郎!」

京太郎「は、はい」

竜華「もう私から逃げられると思わんといてや。朝も昼も夜も一緒やで?」

京太郎「そ、それは……」あせ

竜華「ん?」にこっ

京太郎「あ、ああ!俺も本意だよ、本意!」がっ



花はもう飾ってない
あの日から京太郎は来ない竜華も一度も接触してない
部の報告に来るのはセーラ
うちと竜華の間に起こったことは知らんみたいで少し落ち着く

でももう終わり
ハルシオンデイズとはお別れ

退院して身体もそこそこ動く計画は固めた
竜華のことやどうせ京太郎をより束縛しただけなんやろな
そんなん意味ないのに

怜「……くすっ」

女のくせに、わかってない子やから
うちの枷が外れてることにもまだ気付いてへんかも
リアルを見せつけられても、根が優しいからうちをそのままにしとる
竜華のそういうとこが好きやった
それが命取りになるところまで

怜「……」ずきっ

怜「……」ふりふりぱっ

ありがとう竜華
そしてさよなら

怜「今行くで……京太郎」

カンッ