―部室―
久「はぁ…」

まこ「どうしたんじゃ、溜息なんぞついて。さては生徒会長が恋の悩みか?」ニヤニヤ

久「そうだったらいいんだけどねーいやあながち間違ってはいないんだけど」

まこ「どういうことじゃ?部長にもついに春がきたんか?」

久「あと、生徒会長じゃなくて学生議会長ね」

まこ「それはもうええから。それより説明せんかい」

久「簡単に言うと、ある男につきまとわれて困ってるのよね」

まこ「ストーカーか?」

久「それに近いかな。実はこの間放課後に隣のクラスの男の子に告白されて…」

久「まったく知らない人だったし、そもそも彼氏なんて今は作る気ないからやんわりと断ったんだけど」

久「意外とその子がしつこくてね」

久「好きな人はいるんですかって聞かれて、いないわって答えたら、竹井さんに好きな人ができるまでは絶対にあきらめませんからって言われたのよ」

久「それから学校の行き帰りにたまに付きまとわれて…」

久「それぐらいならまだギリギリ許せるんだけどその子は毎日昼休みにうちのクラスに来るのよ」

久「久さんいますか!!って…」

久「そのたびに注目浴びるからなんだかストレス溜まってきちゃって」

久「これ以上ほっといたら変な噂もたっちゃうかもしれないから、早くなんとかしたいのよね」

まこ「なるほどのう…部長も面倒な男に好かれたもんじゃな」

まこ「まあ何度も告白されればたまにそういう男に当たることもあるんじゃろなあ。部長はわしと違ってもてるけんのう」

久「あら、まこだって素敵だと思うわよ。なんでモテないのか私には分からないわ」

まこ「お世辞はやめんかい。じゃあわしのどこが男受けするかいうてみい」

久「え?いや…」アセアセ

まこ「やっぱり口からでまかせじゃろ…」ズーン

久「(このままじゃまこが……)た、例えばそのメガネとか!!清澄麻雀部の貴重なメガネっ子じゃない!」

まこ「麻雀部でって何の意味があるんじゃ…メガネかけてる奴ならこの世に腐るほどおるじゃろ…やっぱり…わしは…」

久「あーあー!!あと!その髪!まこらしくて可愛いわ!!私にはマネできないし!!」

まこ「そっそうかいのう?実はわしもこの髪はチャームポイントじゃと思ってるんじゃ!」

久「そうよ!だからまこも自信もってね!(自信あったのね…どうみてもワカメにしか見えないけど…まこの名誉のために黙っておきましょう)」

久「少し話がそれたわね、とにかくその子につきまとわれるのを何とかしたいわ」

まこ「でもそいつは部長に好きな男ができないとあきらめないって言っとるんじゃろ?」

久「そうなのよねぇ…好きな人なんていないからこのままじゃ卒業までずっと付きまとわれることになるわ 私に好きな人でもいればいいんだけど」

まこ「…!」ピーン

まこ「部長、いい考えがあるがの」

久「何か思いついたの?どんな方法?」

まこ「簡単じゃ。部長が誰か別の男と付き合えばいいんじゃ」

久「はあ?だから私に好きな人なんていないって「だからあくまで付き合う『フリ』を誰かにしてもらえばいいんじゃ」

まこ「部長が誰かと仲良くデートしてるとこでも見ればその男もあきらめるじゃろ」

久「…なるほど試してみる価値はありそうね」フムフム

まこ「(これは面白くなりそうじゃのう…!)」

久「じゃあさっそくそれを試したいわね」

久「私の周りの知り合いの男の人で協力してくれそうな人は…須賀君、副会長、ハギヨシさん、龍門渕の井上さん…」

まこ「おい。井上は女じゃろ」

久「冗談よ冗談。でも井上さんなら普通にばれなさそうじゃない?」

まこ「まったく好き勝手言いおって…」

久「じゃあ残るは須賀君と副会長とハギヨシさんね」

まこ「ハギヨシさんは忙しいし無理じゃないかのう…何より年が離れすぎとるじゃろ」

久「そうねえ。あと個人的に副会長には頼みたくないのよね。そうすると生徒会全体に協力をお願いすることになってめんどくさいわ」

まこ「そうなると京太郎かのう…」

久「そうなるわね。」

まこ「京太郎なら協力を仰ぐのも麻雀部だけで済みそうじゃから、ええかもしれんのう」

久「そうね。それじゃあ明日の部活で皆に協力をお願いすることにしましょう。ありがとねまこ」

まこ「お安い御用じゃ(さて…どうなるかのう)」ニヤニヤ


―翌日部室―
久「ねえ須賀君。私と付き合わない?」

京太郎「!?」

優希、咲、和「「「!!??」」」

京太郎「えっと?いつもの買い出しを部長が手伝ってくれるんですか?」

咲「そ、そうだよね。ぶ、部長優しいなあ」

久「違うわよ。もちろん男女のお付き合いに決まってるじゃない」

優希「京~太~朗!!どういうことか説明するじぇ~~!!!」

和「い、いきなりこんなところで告白なんて…」

咲「」

まこ「あー部長。皆盛大に勘違いしとるみたいじゃぞ。ちゃんと説明しんさい(部長も楽しむ気マンマンじゃの)」


(事情説明中)


京太郎「つまり彼氏のフリ…ですか?」

久「ええ。事情はさっき説明した通りよ。その男をなんとかするためにも須賀君に協力してほしいの。」

咲「なんだ…てっきり部長が京ちゃんに告白したのかと思ったよ」

和「そんなオカルトありえません」

優希「そんなことだろうと思ったじぇ。部長が犬のことを好きになるわけないじぇ!」

京太郎「お前らな…」

久「コラコラ。でもこのままストーカーが続いて被害が出たりしたら、麻雀部の全国行きが取り消しになるかもしれないわ。皆もそうなったら困るでしょ?」」

京太郎「確かに、せっかくの全国への切符がそんなことで台無しにされたらかないませんね…でも部長は俺でいいんですか?」

久「こっちからお願いしてるんだから、もちろん私は大丈夫よ。それとも…須賀君は私の彼氏役が嫌なの?」

久「そうよね…私なんかの彼氏なんて、嘘でもやりたくないわよね…」ウルウル

京太郎「…!!そんなことないです!分かりました!須賀京太郎!部長の彼氏役、やらせていただきます!!」

久「(チョロいわ…)ありがとうね」

京太郎「部長の…彼氏役かあ…部長が…彼女に…」

優希「京太郎鼻のしたがデローンてのびてるじぇ」

和「須賀君…」

京太郎「ち、違うぞ!俺は純粋に部長のために、ひいては麻雀部のためにだな…!」

優希「説得力ないじぇ」

和「ないですね」

咲「京ちゃん…」

久「はいはい。じゃあさっそく今日から須賀君には私の登下校に付き合ってもらうわ」

京太郎「と、登下校中ずっとですか?じゃあもしかして俺は部長の家まで…」

久「朝は迎えに来てもらって夜は送り届けてもらうことになるわね」

京太郎「そんな…俺の家と部長の家逆方向じゃないっすかー…」

久「つべこべ言わない!麻雀部の雑用がちょっと増えたと思えば問題ないでしょ?」

京太郎「問題しかないですよ…トホホ」

まこ「(えらく部長が余裕そうでつまらんのお。ひとつつついてみるかのう)」

久「いいわね須賀君」

京太郎「分かりましたよ…部長」

まこ「ちょっと待ちんさい」

久「なあにまこ?」

まこ「仮にも付き合ってる二人がその呼び合い方はないんじゃないかのう。わざわざ君付けすることはないじゃろうし、部長にいたっては名前ですらないじゃろ。」ニヤニヤ

久「べ、別にいいじゃない!第一私と須賀君は年が離れてるんだから、そこまで不自然じゃないと思うわ」

まこ「そうかのう…例えばそのストーカー男が二人の関係が麻雀部の先輩後輩なことを知って、その呼び方を聞いたらどう思うじゃろうか」

まこ「そもそも部長に急に好きな人ができること自体疑わしいんじゃ。もしかしたらばれるかもしれんじゃろ?」ニヤニヤ

久「(くっ…!まこのやつそれらしい理由をつけて私をいじる気ね…!でもここで断ったら本末転倒な気がするし、まこの言うことにも一理ある…よし)」

久「分かったわ。じゃあ私は須賀君のことを京太郎君って呼ぶわ。須賀君は私のことを…!そうね。竹井先輩って呼んで」

和「久先輩」ボソッ

久「和!?」

まこ「よーし決まりじゃの。京太郎は部長のことを久先輩と呼ぶんじゃ。なんなら呼び捨てでもいいんじゃぞ~」ニヤニヤ

久「よ、呼び捨てなんかダメよ!いい?須賀君は私のことを久先輩と呼ぶこと。これで決まり!いいわね?」

京太郎「分かりました。えーと…ひさ…せんぱい…」

久「それでいいわ…その…きょう、た、ろう…くん」カアアア

まこ「(計画通り!)」ニヤニヤ

和「(ごめんなさい部長。急にちょっと恥ずかしがる部長が見てみたくなりました)」

咲「(呼び方京ちゃんじゃなくてよかったよ~京ちゃんは私だけの呼び方だからね!)」

優希「(いったいこの空気はなんなんだじぇ)」





久「先に言っておくけど、部活中は呼び方はいつも通りでお願いね。登下校のときと、それかまた必要なときだけでいいから」

まこ「ほう。本当にそれでええんか部長」

久「な、なによ。何か問題あるっていうの?」

まこ「普段からその呼び方をしてないと、いざという時失敗するかもしれんのお…せっかく京太郎が協力してくれとるのにかわいそうじゃのう…」

久「!分かったわよ。須賀君!?登下校中に関わらずにさっきの呼び方を徹底するわよ!」

まこ「なんじゃて?須賀君?」

久「~~~~~!!!京太郎くん!さっきの呼び方を徹底するわよ!いい??これで満足!?」

優希「今日の染谷先輩は一段と輝いてみえるじぇ」

和「何かイライラすることでもあったんでしょうかね」

咲「なんか漫才見てるみたいだったよ」

まこ「(最近わしの出番少ないけんのう~なんか全国でもほとんど出番がカットされる予感がするしのう。これぐらいは許されるじゃろ)」




―部活開始―

久「(少し取りみだしちゃったわ…まこのやついったいどういうつもりよ!昨日の仕返しのつもりかしら)」

久「じゃあ今日もいつも通り全国に向けて練習を始めるわね。台につくのは私、和、まこ、優希ね。咲はまだリアルの情報に頼りがちだから、もう少し和みたいに理論的に考えられるようになるためにパソコンでもう少しネット麻雀で訓練をしてちょうだい。」

久「台についた私たち四人は特打ちよ。全国の一局一局だと思って真剣に打ちましょう。何か質問はある?」

京太郎「ぶち…久先輩。俺はどうすればいいですか?」

久「すg…京太郎君(やっぱり恥ずかしいわ…)。あなたにはまだ言ってなかったわね。県予選が終わって全国にいくことになった今、申し訳ないけどあなたに割く時間はあまりないの。これからは買い出しとか掃除とか雑用中心になると思うの。」

久「大変だと思うけど、よろしくね。あなた家にパソコンがあるそうね。空いた時間があれば持ってきたパソコンで麻雀をするといいわ。練習になると思う。あと何冊か麻雀の入門書を読みなさい。これも空いてる時間にね」

京太郎「分かりました、皆、がんばってくれよ!」

優希「さっそく京太郎は私にタコスを買ってくるじぇ!!」

咲「私はのどかわいちゃったから紅茶が飲みたいな」

和「じゃあ私も紅茶でお願いします」

京太郎「お前ら…久先輩と染谷先輩はどうですか?」

まこ「わしはワカメのみそ汁が飲みたいのお」

久「私はアイスティーでお願い」

京太郎「分かりました、行ってきます!!」


―部活終了後―
久「皆、お疲れ様。今日はここまでにしましょうか」

優希「今日は疲れたじぇ…ていうかこのメンツだと私が全然あがれないじぇ!」

和「そのために練習してるんですよ、優希。咲さんもそろそろ終わりにしませんか」

咲「今シャットダウンするね」

まこ「(ついに放課後…下校時間じゃ。よし。)」

まこ「優希、和、咲、あっ小声でよろしくじゃ」ヒソヒソ

和「先輩どうしたんですか」ヒソヒソ

まこ「部長と京太郎が帰りやすいよう、今日は二人きりにしてやろうと思うんじゃが」ヒソヒソ

優希「確かに私たちがいると切り出しづらいじぇ」ヒソヒソ

咲「分かりました」ヒソヒソ

まこ「よし、じゃあ行くぞ」ヒソヒソ

コソコソ スタコラサッサ


久「(今日はなんか疲れたわね。そろそろ帰りましょうか…別に…よく考えれば今日は須賀君と帰ることはないわよね。まこと帰りましょう)」

久「ってあれ?誰もいない??」

京太郎「部長ー?職員室から鍵持ってきましたよー!(あっ部長って呼んじまった。まあいいか)」

久「あ、須賀君。なんか皆いないのよ。どうしたのかしらね(あっ須賀君に戻ってる。まあいいわよね)」

京太郎「さあ?…もしかして俺たちに気をつかって帰ったとか…でしょうか?」

久「ありえるわね…まあいいわせっかくだし今日は一緒に帰りましょう。送ってくれるわよね?す・が・く・ん」ギュッ

京太郎「ちょっ…急に腕に抱きつかないでくださいよ…」ドキドキ

久「いいじゃない。私たち付き合ってるんだから(まこたちがいなければどうってことないわ♪)」

京太郎「フリですけどね…」ハハハ


―久家―
久「なんということもなく家に送ってもらったわ…」

久「まあ普通に会話もしたし、問題ないわよね?」

久「こんなんで効果あるのかしら…」

久「まあ、今日だけじゃ分からないわよね。しばらく続けてみましょう」

―須賀家―
京太郎「なんということもなく送って帰ってきたな…」

京太郎「まあ普通に話せてたし、問題ないよな?」

京太郎「これで彼氏の役を演じられてるのだろうか…」

京太郎「まあ部長の頼みだし、がんばって続けるとするか!ちょっと遠いけど」





―四日目―
久「(今日で須賀君に彼氏のフリをしてもらってから四日目ね)」

久「(登下校中は、須賀君のおかげか彼を見なくなったわね…相変わらず昼休みに教室に来てうっとおしいけど)」

久「す…京太郎君?帰りましょう?(くっ…この呼び方にまだ慣れないわ…でも麻雀部の間だけよ…あれ?これって本末転倒?))」

京太郎「帰りましょうか久先輩」

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

久「いつも送り迎えしてもらって悪いわね」

京太郎「いえ、これも俺の仕事ですから」

久「(仕事、ね…)そうね。朝起きるのとか、つらくない?」

京太郎「まあ、多少は…でも少し慣れてきましたよ」ハハハ

久「朝は何時ぐらいに起きてるの?」

京太郎「部長を迎えに行くようになってから5時半ぐらいっすかね」

久「?!そんなに早いの?な…なんか本当に申し訳なくなってきたわ」

京太郎「そんな気にしないでくださいよ。慣れたんでそこまでしんどくありませんし。それに部長と一緒に帰るの、楽しいんですよ」

京太郎「俺って麻雀も強くないですし、少しでも皆の役に立ちたいんです」

久「ふ、ふーん。そう。それならいいんだけどね」

久「(これって彼女的には喜ぶとこなのかしら。そういえば私って今まで誰とも付き合ったことないから、こういうの初めてだわ)」

京太郎「やっぱり部長ってモテるんでしょうね」

久「へ?」

京太郎「へ?って…自覚ないんですか?先輩は美人だし、頭もいいし、頼りになるし、それでいて麻雀も強いしモてる要素しかないですよ」

久「自分で聞くのもなんだけど、私って美人かしら?学業とか信頼性とか麻雀の強さはなんとなく図ることはできるんだけど、顔のよさっていうか…その…それはどうなのかなって」

京太郎「そうですね、部長は美人でもあるし…可愛いと思います」

久「す、須賀く…」カアアッ

京太郎「それにスタイルもいいし…出るとこ出てるし。ウエストは引き締まってるし」

久「………」ジーッ

京太郎「す、すいません。でも本心ですよ」

久「そ、」

京太郎「そ?」

久「それなら須賀君だって、その…か、かっこいいほうじゃないの?背は高いし体つきもいいし、それに顔もかっこいい?し…たぶん」

京太郎「部長に言われると嬉しいですね。でも俺は本当に対したことないと思いますよ」

久「もう!私がほめたんだからもっと自信もちなさいよ!」

京太郎「すいません」ハハハ

久「あ、家に着いたわね。今日も送ってくれてありがとう」

京太郎「どういたしまして。では部長、さようなら」

久「うん。また明日ね」


バタッ

京太郎「さて、帰るか…」

京太郎「少し、疲れたな」フラフラ

京太郎「帰ろう」


―久家―
ドサッ

久「可愛い、ね」

久「そんなの初めて言われたわ」

久「須賀君ってちょっと見た目はチャラっとしてるけどいい人よね…」

久「…」

久「きょう、たろう、くん…」

久「zzz」


―京太郎家―
ドサッ

京太郎「やば…マジで体重いぞ…」

京太郎「風邪でもひいたかな」

京太郎「部長、に電話しないと…」

京太郎「っ…」

京太郎「zzz」



―五日目朝―
京太郎「うわっ」

京太郎「寝過しちまった!!」

京太郎「急いで支度していかないと!!」

京太郎「まだ体重いな…」



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 

久「今日は須賀君遅いわね…」

久「…」キョロキョロ

久「もうっ送れるなら連絡の一つでもよこしなさいよ…」


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 

京太郎「早く、行かないと…」

京太郎「(たぶん部長はもう外に出てるだろうから、電話しても意味ないな…)」

京太郎「(こういうとき、携帯がないと不便だよな…)」

京太郎「あと少しで着くぞ…」フラフラ


?「今日と明日は創立記念日と振り替え休日で休みやから長野に来てみたはええけど」

?「大阪から夜行で来たからちょっと早すぎたなー暇すぎるわー朝早いからどこも開いてへんし」

?「ホンマに田舎やなあ」

?「まあ長野には今年初出場の清澄とかいうところと天江衣のおる龍門渕に打ちにいけるから我慢しよか…」

?「アポとってへんけど…ってなんかすぐ先にフラフラしとる男がおるで」

?「あいつ大丈夫かいな~って言ってるそばから倒れよったで」

タタタタタタ

?「おい!自分大丈夫か!?」

京太郎「だ、大丈夫です。それより早く、部長のところにいかないと…」

?「アホか!自分がまず行く場所は病院か自分ちのどっちかや。自分学生やな?どこの高校や」

京太郎「…清澄高校、です。あなたは?」

?「人に名前を聞くときはまず自分が名乗らんかい…と言いたいところやけど、今はそれどころちゃうな。うちは姫松高校麻雀部の愛宕洋榎ちゅうもんや」

洋榎「じゃあ、まず自分ち行こか」

京太郎「待ってください…あと少しで着くんで…部長の所に行かせてください…」

洋榎「……何をそこまでこだわるんかは知らんけど、まあええやろ。そこまで送ったろやないか」

京太郎「部長は…俺の彼女です…」

洋榎「なるほどな」ニッ

洋榎「自分、名前は?」

京太郎「須賀、京太郎です…」

洋榎「じゃあ京太郎、さっさと行くで!」


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 
久「須賀君遅い…って遠くに見えるのは須賀君…と女の子?」

久「…」ムッ

久「(ってムッて何よムッて。私は須賀君の彼女でもなんでもないのよ?でもこんなに待ってたのに、他の女の子と一緒に来るなんて…)」

久「須賀君?どれだけ遅れてるのよ!…ってどうしたの?そんなにフラフラして?」

洋榎「あんたがその部長かいな(あれ…軽く睨まれとる気がするな…)」

久「あなたは…姫松高校のエース、愛宕洋榎ね。どうしてこんなところにいるの?学校は?」ジッ

洋榎「学校は創立記念日で休みで今こっちに来てるだけや。今はそんなことどうでもええやろ。京太郎、とりあえず病院連れて行き」

久「(ずっと須賀君を待ってたのにいきなり現れたと思ったら…なんなのかしらこの女は。京太郎…ね。私は京太郎君って呼ぶのがが限界なのにこの人は…)」

久「…そうしたいのは山々なんだけど、私は今日どうしても外せない会議があるの。(え?私何言ってるの?)見たところ須賀君は急を要するほどじゃないわ。(いやいや今すぐ病院いくレベルでしょ)須賀君、悪いけど私急ぐから…(ああっ一緒に病院に行ってあげるべきでしょ?なのに心がいうこときかない…!)」タッ

洋榎「お、おい!!…行ってしもた。ホンマか…それでも彼女かいな…」

洋榎「うちが連れていくしかないやろこれ…」

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

洋榎「とりあえず病院には行けた、薬ももらった、後は家に連れて帰るで」

京太郎「すいません、見ず知らずの俺に、こんな…」

洋榎「ホンマやで。後でたっぷり礼はしてもらうで。…まあその分ちゃんと面倒は見たるわ」


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

洋榎「家はここか。親御さんはいてるんか?」

京太郎「両親共働きなんで、今は家に俺一人です。帰るのも夜遅いんで…」

洋榎「そうか…まあええわ。薬飲んで、今はとりあえず寝とき」

京太郎「お言葉に甘えます、すいません……」

京太郎「zzz」

洋榎「さて。清澄高校やったな」

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

―その日の放課後―

久「(…須賀君大丈夫だったかしら…というか私いったい何してるんだろう…)」

久「(落ち着け、落ち着け私は竹井久。清澄高校三年学生議会長、麻雀部部長。)」

久「(どんな事態に陥っても常に冷静じゃなきゃいけない。どんなにみんながあわてても私だけは冷静じゃなきゃならない。そうやっていつも生きてきたんだから)」」

久「(麻雀でこそ悪待ちはするけれど、ほかでは至って冷静で的確なつもりよ)」

久「(だからさっきのは…ええと…ええと…)」

ガチャ

優希「やっと授業終わって部活だじぇ~!」

和「そうですね」

咲「今日の授業はちょっと疲れたね。そういえば今日京ちゃん休みなんだって」

久「」ピクッ

優希「バカでも風邪はひくんだじぇー!!」

和「優希がそれをいいますか…」

優希「のどちゃんひどい?!」

まこ「部長~?京太郎のお見舞いに行かんでええんか~?」ニヤニヤ

久「(やっぱり学校には来てない……心配ね…って校門の前にいるのは愛宕さん?!)」

まこ「部長?聞いとるんか?」

久「私ちょっと職員室に行ってくるわ」

和「分かりました」

優希「ついでにタコスを買ってくるじぇ!!」

咲「優希ちゃん、職員室にタコスはないよ…っていうか部長にやらせちゃだめでしょ。私たちは三人で打ってようか」

まこ「心ここにあらず、じゃの~」ニヤニヤ


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
久「愛宕さん!」

洋榎「清澄の…部長か、なるほどあんたが清澄高校の麻雀部部長の竹井久やな。うちのことは知っとるみたいやから自己紹介はせんで」

久「ええ。それより須賀君は大丈夫だった?」

洋榎「あんたな…とりあえず病院に行かせて、今は家で寝かせとるよ」

久「そう、それならよかったわ。ちょっと無理をさせすぎたのかもしれないわね。気を付けるわ。愛宕さん本当にありがとう(あとで須賀君のお見舞いに行こうかしら)」

久「じゃあ、部活の途中だから「ちょっと待ちや」

久「あら、なにかしら」

洋榎「自分須賀京太郎の彼女やろ?ちょっと冷たいんやないんか?」

久「え?違うわよ。私は彼とはなんでもないわ(えっ?確かになんでもないけど、別に否定する意味はないわよね?普通に謝ればいいじゃない私)」

洋榎「でも京太郎は自分のこと彼女やて言ってたで」

久「(え…須賀君私のことそう説明してくれたのね…なんか嬉しい?かも)…誤解されてるみたいね。事情を説明しておくわ(なのになんで余計なことペラペラしゃべってるの?)」


―事情説明中―

久「(結局全部しゃべってしまった…)」

洋榎「…なるほど、彼氏のフリ、な」

久「誤解させて悪かったわね(クールぶるところじゃないでしょ私)」

洋榎「…」

洋榎「ちょっと聞いてええ?」

久「何かしら?(えっ何?)」

洋榎「それでまあだいたい分かったんやけど、なんでさっきうちを軽く睨んでたん?」

久「え?!い、いや私そんはつもりではなかったわ。もしそう見えたのならごめんなさい(なんか私もうどうしたいのか分からないわ)」

洋榎「(ははーん…なるほどな…この人がんばって取りつくろっとるけど、バレバレやな…もう少しいじっってみよか)」

洋榎「あれだけ京太郎が毎日送り迎えしてくれとんのに、ひどい部長やな~」

洋榎「京太郎、可愛そうやと思わんのかな~?」ニヤニヤ

久「!べ、別に本当に付き合ってるわけじゃないもの。それにあなたには関係ないでしょ?(だからなんで京太郎って呼び捨てなのよ!)」

洋榎「確かに関係ないけどな~でも冷たくされてて元気ない京太郎見てると、なんか優しくしてやりたくなるんよな~」ニヤニヤ

久「(くっなんなのこの人?!)か、勝手にしたらいいんじゃない?別にその、京太郎、くんは私にとってなんでもないわけ、だし?」

洋榎「ふ~ん…じゃあ自分にとってあいつはなんなんや?」

久「そうね…麻雀部の役に立つ後輩、かしら?(うわっ何この最低な回答)」

洋榎「さよか~。分かった。ありがとな(思った以上に素直じゃないでコイツ)」

洋榎「あんたのことを想ってくれとる後輩がかわいそうやな」ボソッ

久「(小声だけど聞こえてるんだけど)」

洋榎「ほな(もうアカンわ。うちがなんとかせな)」

久「ええ、ありがとう(何やってるのー私)」

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

―須賀家―

洋榎「京太郎、帰ったで。…まだ寝とるんか?」

京太郎「いえ、半日寝たらすっかり回復したみたいです。本当にありがとうございました」

京太郎「あの…お世話になったお礼をしたいんですけど…」

洋榎「当然やで!たっぷり礼はいただくで~♪」

京太郎「たいそうなことはできませんが…何か俺にできることがあれば」

洋榎「じゃあここに泊めてくれへん?」

京太郎「へ?」

洋榎「うち大阪から来たんやけど、あんまお金ないんや。やからホテル代わりにこの家泊まらせてーな」

京太郎「それはさすが「嫌とは言わせんで!」

洋榎「大丈夫や!あんたのことは信用しとるからな」

京太郎「そういう問題じゃ…」

洋榎「大丈夫やって!親にはばれんようにこっそり寝泊りするで!」

洋榎「(それに…このままこいつらをほっとけんしな。清澄の部長、事情が事情にしても、こいつが可哀そうやと思わんのか。…よっしゃいっちょやったるか)」

洋榎「あともう一個お願いやけど、あと明日学校休みやろ?」

洋榎「うち長野見物したいねん、案内したってーな!」

京太郎「そういうことでしたら、いいですよ」

洋榎「明日楽しみやで~♪」

洋榎「あっでも京太郎彼女おるんやろ?」ニヤニヤ

洋榎「うちとデートなんてして大丈夫なん?」ニヤリ

京太郎「あ~実はさっき言ったのは…その…」

洋榎「あーうち全部事情聞いてるから言わんでいいで。でもなんで彼女っていうたん?」

京太郎「なんか変な誤解を招くかなと思って…ストーカーとか」

洋榎「なるほどな(それで信用してくれる人はいるんやろか)」

京太郎「あ、というかこれデートなんですか?!」

洋榎「女の子と遊びに行くんやからデートに決まっとるやろ!ちゃんとエスコートしいや!」バシッ

京太郎「い、痛いですよ…ええと」

洋榎「洋榎でいいよ」

京太郎「あ、はい洋榎さん」

洋榎「自分日本語分からんの?洋榎でいいよて。あとその敬語もやめ!」

京太郎「え、でも俺年下だし…」

洋榎「細かいこと気にする男は嫌われるでーええからそう呼び!」

京太郎「わ、わかったよ洋榎(部長のときとは大違いだな…)」

洋榎「(よし、これで裏付けはとれたで)」

京太郎「(なんか突然すごいことになったな…明日どこ案内しようか……)」

京太郎「(部長、なにしてるかな。お見舞い、来てほしかったな…)」

洋榎「あ、京太郎うちちょっと出かけてくるわ」

京太郎「お、おう行ってらっしゃい」

洋榎「あと、京太郎、ちょい耳貸し」

京太郎「へ?」


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

―久家―

久「……………………………………………………」ズーン

久「何この罪悪感」

久「あのあとお見舞いに行こうと思って須賀君の家までいったけど、なぜか尻込みしてしまったし…」

久「なんでこうなったんだろ…」

久「私らしくないわね。いったん落ち着きましょうか。そして冷静に分析してみましょう」

久「私がおかしくなったのはどこからだっけ?」

久「朝須賀君を待ってるとき、まあ少し遅くてイライラしてたけど、別にいつも通りだったわ」

久「じゃあおかしくなったのは愛宕さんが来てからってことね…」

久「…」

久「?」

久「…」

久「?」

久「…」

久「嫉妬?」

久「いやいやないわよね」

久「嫉妬というかshitのほうがまだしっくりくるわ。全然うまいこと言えてないわね」

久「ふらふらで倒れそうな須賀君をみて心配したのに、他に心配してくれてた人がいたんだって思った時にがっかりしてないし」

久「初対面のはずの須賀君をいきなり京太郎って呼び捨てしたからなんかくやしかったなんてこともなかったわね」

久「…」

久「いい加減にしなさいよ私…」

久「(この数日でどんだけ須賀君に惚れてるのよ私)」

久「(あーあ…ホントにそんなつもりじゃなかったのにな)」

久「(しかも素直になれない女ってどんだけめんどくさいのよ)」

久「(まこにしてやられた感があるわね…)」

久「はあ…」


ピンポーン


久「あら、誰かしら…(もしかして須賀君?)」ドキドキ

久「はい」ガチャ

洋榎「どもー」

久「」ガチャ

洋榎「ちょ、しめんといてな!せっかく来たんやで!」

久「…何しに来たのよ。しかもなんで私の家の場所知ってるのよ。」

洋榎「まあ、細かいことはええやん。いやー清澄のデクにいいこと教えたろーと思てな」

久「何よ?」

洋榎「明日うち京太郎とデートするでー!」

久「?!嘘?!」

洋榎「嘘やないで!京太郎が直々に長野案内してくれるってうるさくてな!」

久「」ピクピク

洋榎「一日中デートして、そのあと、は…」ニヤニヤ

洋榎「まあ、この先は言われへんな♪」

久「」イラッ

洋榎「あー楽しみやなあ、ホンマに楽しみや(よっしゃいい感じで苛立ってるな)」

久「…」

洋榎「まあ、デクには関係のない話やったな」

久「…」

洋榎「だいたい付き合ってるわけでもなんでもないし(もうひと押しか?)」

久「…」

洋榎「役に立つ便利な後輩やしうちも利用しよー♪」

久「」ブチッ

久「ふふ…ふふふ」

洋榎「…(どーくるんや)」

久「そうよ…」

久「どうせ私は可愛くない女よ」

久「…………好きな人に他の女が関わってるのをみるだけで嫉妬する器の小さい女だし!!」

久「………京太郎って呼び捨てしたくてもいまだに須賀君って呼んでるチキンな女だし!!」

洋榎「(そこまでは言ってへんけど…まあええか)」

久「……かといって繊細で健気で守りたくなるような女の子でもないし!!」

久「…しかも好きな人が病気で苦しんでいるのに自分の醜い嫉妬心を優先させるような思いやりのない女だし!!」

久「それで結局愛宕さんには京太郎君をとられちゃうし!」

久「何より…素直になれなくて自分の想いを伝えずにこのまま須賀君と付き合い続けようとしてた卑怯な女よ…」

洋榎「……」

久「これでいいんでしょ?満足した?私はこんな女なのよ…」

洋榎「なるほど…だそうやで?須賀君?」

久「?!」

京太郎「部長…」

久「えっえっ…??」

久「何今の須賀君聞いて…」

久「~~~~~!!」カアアッ

京太郎「部長…いや久先輩…」

久「いやっ!見ないで!今私の顔見ないでっ!お願い!」

京太郎「こっち向いてください、久先輩」

久「お願い…今私ひどい顔してるから…」

京太郎「久!!」グイッ

久「?!」チュッ

洋榎「(あちゃーここまでやってしもうたか。まあキスぐらいはしてくれなあかんわな。約束通り、面倒は見たで、京太郎)」

久「え?え?何?え?今のは何なの須賀君?なんでキスしたの?私たち恋人でもなんでもないのよ?」

京太郎「だったらたった今から恋人になりましょう」

京太郎「確かに久先輩は素直じゃないと思いますし、俺のことこき使うし、たまにイタズラするし、見かけによらず嫉妬するし…」

京太郎「モテモテなくせに恋愛の仕方知らないし、たまに意地悪するし…」

久「グスッ」

洋榎「(…多ないか?部長はん泣いてるで…あとイタズラと意地悪は一緒やないんか?)」

京太郎「でもそれ以上に先輩は魅力的なところをたくさんもってます!」

京太郎「素直じゃないところは大人びててクールで可愛いし!」

京太郎「こき使うっていってもそのあとちゃんと褒めてくれますし!」

京太郎「イタズラも俺を本当に困らせることはしないし!」

京太郎「嫉妬してる先輩なんてありえないと思ってた分のギャップがやばいですし!」

京太郎「モテモテなのに恋愛はよくわからないところはドジっ子で可愛いし!」

京太郎「意地悪をするのは構ってほしいだけのときもあるし!」

京太郎「俺はそんな先輩が大好きです!!」

洋榎「(京太郎さすがやな…いろいろ無理があるところもある気がするけどなんか堂々としててカッコいいで!)」

京太郎「先輩の返事、聞かせてくださいよ」

久「…さっきの私の聞いてて聞いちゃうんだ…」

久「須賀君の意地悪…」

久「スキニキマッテルデショ」ボソッ

久「京太郎君、今度は正式に、お願いします」

‐完‐